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奥谷海人のAccess Accepted / 第266回:E3 2010プレビュー
2010年6月15日〜17日,ロサンゼルスで行われる世界最大のゲームショウ,Electronic Entertainment Expo。開幕まで約1週間となり,参加するメーカーからは,展示されるタイトルのラインナップが公開され始めている。今回は,開催を目前に控えたE3における注目の海外タイトルをピックアップしよう。
16回目を迎えるElectronic Entertainment Expo。紆余曲折を経て,あの華やかなゲームイベントに戻りつつある。モーションコントローラーや3D立体視,クラウドゲームサービスなどの最新テクノロジーも目白押しで,6兆円といわれる産業規模に恥じない“祭典”になりそうだ
いっときの停滞を経て,華やかさを取り戻しつつあるElectronic Entertainment Expo(E3)が,2010年6月15日〜17日,ロサンゼルスのコンベンションセンターで開催される。キャッチコピーは,「Creativity Unleashed」(創造力,大放出)。主催者であるElectronic Software Association(ESA)によれば,世界40か国からの業界関係者が参加し,すでにフロアスペースは完売。「ここ数年のうちで,最も素晴らしいショウになるだろう」とコメントしている。
ESAがそう言うのには,理由がある。2010年は,Sony Computer EntertainmentとMicrosoftがモーションコントローラーを,そして任天堂がNintendo 3DSや,Wii Vitality Sensorなどの注目アイテムをE3で公開する予定。
また,クラウドゲームサービスとして注目の集まる「OnLive」や「Gaikai」などもキックオフする予定だ。さらに,発表されたばかりの「KILLZONE 3」のように,さまざまな3D立体視対応ゲームも続々と登場するだろう。ESAが「最も素晴らしい」と言い切るに値するだけの要素はそろっているのだ。
開催されるE3では,新たに登場するNintendo 3DSやWii Vitality Sensor,そしてPlayStation MoveやProject Natalに対応したゲームタイトルが堰を切ったように登場してくるだろう。どのような驚きのタイトルが出てくるのか楽しみにしている人は多く,期待感は例年になく高まっているのだ。
今年のE3で残念なのは,大手メーカーのRockstar Gamesが参加を見合わせたことだ。Rockstar Gamesは,エキスポフロアに大きなスペースを確保していたが,つい先日,不参加が明らかになった。会期中,そこはカーペットが敷かれただけの空間になっているだろう。
多くの大手メーカーが進出を模索しているカジュアル分野には見向きもせず,Nintendo DS向けのタイトルさえMレーティング(18歳以上対象)というRockstar Games。コアゲーマー向けタイトルのみを提供し続ける同社は,メガヒットシリーズの最新作となる「Grand Theft Auto V」のアナウンスも噂されていただけに,残念だ。
Rockstar Gamesこそいないが,そのほかの大手欧米パブリッシャはE3 2010に顔をそろえる。詳しいことは,来週から始まる現地レポートに期待してほしいが,今週は,参加を予定する欧米各メーカーの出展予定リストから,期待できる作品をいくつかピックアップしたので,参考にしてほしい。
2010年の本命タイトル,「Call of Duty: Black Ops」のリリースを控えるActivision Blizzard。Infinity Wardを脱退したメンバー達とのいざこざは,4Gamerを含めた各メディアが報じてきたとおりだが,シリーズ初の試みとしてベトナム戦争や冷戦をテーマに据えたBlack Opsに関しては,「年内に1000万本は固い」とする業界アナリストもおり,セールス面での心配はなさそうだ。
Activision Blizzardは,これ以外にも多くの新作を抱えており,「DJ Hero」「Guitar Hero」といった音楽ゲームに加え,「James Bond」や「Tony Hawk」の新作発表が期待されている。また,オープンワールド型のクライムアクション「True Crime」シリーズの最新作も発表されるという情報があるが,開発はなんと,「ModNation Racers」(邦題,ModNation 無限のカート王国)をリリースしたばかりのUnited Front Gamesが行なうという。
また,Blizzard Entertainmentの「StarCraft II: Wings of Liberty」と「World of Warcraft: Cataclysm」にとっては,このE3 2010がリリース前最後となる大イベントであることから,何らかの展示が行われると予想されている。
「The Elder Scrolls IV Oblivion」や「Fallout 3」のヒットで一気に世界のトップデベロッパに駆け上がったBethesda Softworksだが,ここ数年,内部の開発チームは沈黙を続けている。
その代わり,サードパーティ製品の販売には非常に力が入っており,2009年の「WET」「Rogue Warriors」に続き,2010年9月にはSplash Damageの「BRINK」が発売予定になっている。
また,Obsidian Entertainmentが制作している「Fallout: New Vegas」も年内の発売が予定され,Fallout 3とは異なる,アメリカ南西部の砂漠地帯が描かれる。さらに,3月のGame Developers Conferenceに合わせて制作発表が行なわれた,inXile Entertainmentの「Hunted: The Demon’s Forge」もE3で詳しい発表が行われる予定だ。
親会社のZeniMax Mediaを通じてBethesda Softworksと姉妹関係となったid Softwareも,最新の「idTech 5」エンジンを使った「Rage」を展示する。こうして見ると,相当なラインナップだ。個人的には,「DOOM 4」やThe Elder Scrollsシリーズ最新作の情報もあれば文句ナシだが,どうなるだろうか。
EA Partnersを通じた独立系デベロッパとの関係強化や,カジュアル/オンライン戦略の成功により,再び走り始めた印象の強いElectronic Arts。
社内の開発チームであるVisceral Gamesが「Dead Space 2」を発表するほか,本格的なミリタリーFPS「Medal of Honor」,そしてコンシューマ機向けの「The Sims 3」が出るなど,今年のラインナップも多角的だ。EA SPORTSタイトルでは,「FIFA 11」「Madden Football 11」「NBA Jam」などの定番タイトルが並ぶが,総合格闘技をテーマにした新顔,「EA Sports MMA」がどれほどのインパクトを与えるのかが気になる。
EA Partnersのタイトルでは,Realtime Worldsのオンラインアクション「APB: All Points Bulletin」や,Epic Gamesの「Bulletstorm」,そしてCrytekの「Crysis 2」など,コアゲーマー向けの作品が魅力的だ。舞台をジャングルから摩天楼に移したCrysis 2は,美しいグラフィックスはもちろん,ステルスモードとタンクモードを自由に切り替えながら戦う新型ナノスーツの出来栄えが楽しみである。
財務状況が悪化し,日本から撤退するなどリストラの激しいTHQだが,今年のラインナップはなかなか見応えがある。
2010年内にリリースされるタイトルの中では,Kaos Studiosの「Homefront」に期待したい。Homefrontは,北朝鮮がアメリカを占領したという近未来世界を描くFPSで,プレイヤーは祖国の解放を目指して北朝鮮軍と戦ってくというもの。スクリプトを多用した,ドラマチックな展開が楽しめるゲームになっており,前作「Frontline: Fuel of War」で大きなヒットを収められなかったKaos Studiosも,本作を正念場と考えているだろう。
大阪に本拠を置くユークスが開発した総合格闘技ゲーム,「UFC Undisputed 2010」が大ヒットし,欧米メディアからは従来作以上の高評価を得たTHQ。この流れに乗り,現在制作中のプロレスゲーム「WWE SmackDown vs Raw 2011」のヒットも期待したいところだ。
2011年に目を向けると,「De Blob 2: The Underground」や「Red Faction Armageddon」,そして「Warhammer 40,000: Space Marine」といった作品が予定されており,この中のいくつかはE3で公開されることになるはずだ。
「Bioshock 2」「Mafia II」の開発/発売が遅れ,2009年を「Borderlands」一本で乗りきった2K Gamesだが,2010年2月の「Bioshock 2」,そして6月以降にリリースが予定される「Mafia II」で,ようやく軌道にのり始める感じだ。
Take Two Interactive傘下として兄弟会社となるRockstar Gamesが不参加を表明したのに対し,豊富なラインナップを引っさげてE3に登場する。
2K Gamesのタイトル中,なんといっても注目されるのが,3月に制作が発表された「Sid Meier's Civilization V」だろう。マップのヘックス化やユニットのスタック禁止など,これまでのCivilizationシリーズの伝統を大きく覆すシステムが採用された本作は,欧米で9月のリリース予定になっている。シリーズ従来作のファンだけでなく,新規プレイヤー層も獲得しそうなポテンシャルを持った,期待の新作だ。
「SpecOps: The Line」「X-COM」という,昔懐かしいゲームを復刻させたプロジェクトも楽しみだ。どちらもE3が初公開になる予定で,続報に期待してほしい。
「Assassin’s Creed II」「Splinter Cell: Conviction」,そして「Prince of Persia: The Forgotten Sands」など, モントリオールスタジオの制作したタイトルを次々に成功させて快進撃中なのがUbisoft Entertainment。「R.U.S.E.」や「Beyond Good &Evil 2」「I am Alive」といった作品が遅れているが,そんなことを気にかける必要もないほどのラインナップをE3で公開するようだ。
看板のトム・クランシーもののうち,つい最近発表された「Ghost Recon: Future Soldiers」とフライトアクション「H.A.W.X. 2」は,前者が2011年初頭,後者が2010年秋のリリースが予定されており,どちらもE3で注目される作品になりそうだ。
UbisoftのE3向けラインナップには情報の少ない新作が多く,「Assassin’s Creed: Brotherhood」や「Shaun White Skateboarding」などに加え,ピラミッドのような建造物の前に立つ男性のアートを公開し,E3での発表を匂わせている謎の作品など,どれも楽しみだ。さらに「Far Cry 3」や「Tom Clancy’s EndWar 2」なども開発中らしいが,これらがE3で紹介されるかどうかはなんとも言えない。
※次回6月14日のAccess Acceptedは,E3取材のため休載いたします。次回の更新は6月21日を予定しております。
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