レビュー
世界中で大ヒット中の現代戦FPS
コールオブデューティ4 モダン・ウォーフェア
» ミリタリーFPSの定番,Call of Dutyシリーズの最新作「コールオブデューティ4 モダン・ウォーフェア」は苛酷でシリアスな現代戦を描く注目作。対戦車ミサイルや攻撃ヘリコプターといったハイテク兵器が支配する近未来の戦場を,派手なやられっぷりなら誰にも負けない松本隆一が駆け抜けてみた。
出口のない混沌とした国際情勢
苛酷な最前線へようこそ
12月7日にアクティビジョンから発売された「コールオブデューティ4 モダン・ウォーフェア」は,これまで第二次世界大戦をテーマとしてきたCall of Dutyシリーズの最新作。シリアスな設定と苛酷な戦闘,そして意外な展開を見せるストーリーと,現代の戦争のさまざまな側面を「これでもか! これでもか!」と見せてくれる意欲的な内容になったのだ |
Zakhaevは,彼と同様に西欧を快く思っていない中東の実力者,Khaled Al-Asadと手を組み,アラビア半島の某国で暴力革命を惹起せしめる。さらに親米派の大統領を逮捕,処刑し,その光景を国営放送に流すことによって国際社会,とくにアメリカの世論を硬化させるのである。この事態を受けたアメリカ軍は海兵隊の武装偵察隊の派遣を決めるが,しかしそれこそが,彼らの狙いだった……。
2007年の話題作,アクティビジョンの「コールオブデューティ4 モダン・ウォーフェア」(以下,CoD4)は,これまで第二次世界大戦をテーマにしてきた Call of Dutyシリーズの最新作であり,タイトルからすぐ分かるように,内容を「現代戦」にスイッチしたミリタリーFPSだ。
以前よりはるかに強力かつ効率的になった現代兵器が次々に登場し,従来作を上回るスピーディな戦いが展開する。そこは,人工衛星がリアルタイムで情報を発信し,ナイトビジョンが夜を昼に変え,攻撃ヘリコプターが飛ぶ現代の戦場だ。
開発を担当するInfinity Wardが,現代戦をテーマにしたFPSを作ろうと思ったのは2002年。「Medal of Honor: Allied Assault」を開発した主要メンバーが2015から独立してInfinity Wardを立ち上げ,新作を作ろうとしたときのことだ。しかし当時,新たに彼らのパブリッシングを担当することになったActivisionには,すでにSoldier of Fortuneシリーズがあり,「現代戦FPS」というアイデアは却下されてしまう。
代わって彼らが作り上げたCall of Dutyシリーズは,現在まで世界累計販売本数が2000万を突破する大ヒットになり,Activisionの収益の大きな柱になると共に第二次世界大戦モノFPSの定番になった,というのはFPSファンなら誰でもご存じのことですね。
とはいえ,売り上げの多くはSpark UnlimitedやTreyarchといったメーカーの制作したコンシューマ機版が占め,それにともない,パブリッシャも次第にコンシューマ機にシフトしていくのは当然の成り行き。最新作である「Call of Duty 3」がコンシューマ機のみのリリースであったことは忘れないぞ,ちくしょう。
CoD4の開発が発表されたのは2007年4月のこと。PCゲーマーにとって嬉しいことに,最初から対応機種に“Windows”の名前が入っており,まずは一安心。7月のE3 Summit,8月のGames Conventionでは順調な開発進捗状況が発表され,9月の東京ゲームショウでは日本のアクティビジョンから日本語版「コールオブデューティ4 モダン・ウォーフェア」のリリースが発表された(ただし,コンシューマ機版のみ)。これだけの作品にしては珍しいほどのオン・スケジュールで,そのへんもInfinity Wardというデベロッパのプロっぽいところだろう。そして12月7日,PC版の「コールオブデューティ4 モダン・ウォーフェア」日本語マニュアル付き英語版がアクティビジョンから発売されたのである。欧米ではとっくに発売されている,なんてことは気がついても言わないように。
最近流行のマルチプラットフォーム展開だが,Xbox 360版とPLAYSTATION 3版もInfinity Wardが担当しており,同社がコンシューマ機用のソフトを開発するのは「Call of Duty 2」以来のこと(さすがにNintendo DS版の開発はほかのメーカーだが)。CoDシリーズはコンシューマ機用を含めて数多くのタイトルがリリースされているためあまりピンとこないが,数えてみればInfinity Wardとしてはこれが3本目のタイトルになる。
現代戦をテーマにすることは,雰囲気が変わって個人的には歓迎。とはいえ,従来作のように「小学生でも知っている歴史的激戦地」の片隅に身を置くことはできず,感情移入および没入感という点ではやや物足りないかもしれない。また,現代の戦いのほとんどはいわゆる“非対称戦争”であり,技術力/戦力に圧倒的な違いがあるため,これまでのゲームスタイルとうまくマッチしない。こうしたことから,CoD4の背景となるストーリーは現実の紛争に題材を取ることは避け,まったくのフィクションになった。
プレイヤーは,(基本的に)SAS第22連隊の新人隊員であるJohn“Soap”MacTavish軍曹とアメリカ海兵隊第一武装偵察隊に属するPaul Jackson軍曹を操作してゲームを進めていく。2003年に発売された「コール オブ デューティー」(以下 CoD),そして2005年のコール オブ デューティー 2(以下,CoD2)いずれも,イギリス軍,アメリカ軍,ソ連軍それぞれのキャンペーンが用意されているので,趣向としては似ている。プレイヤーが操作できるのは基本的に自分のキャラクターだけで,ほかの隊員に命令を下すというタクティカルな要素はない。また,自発的にビークル類に乗ることもできず,そのあたりは従来シリーズと同様だ。
用意されたシングルプレイミッションは21種類だが,チュートリアルとムービーシーンだけで構成されたもの,そしてオマケのミッションがあるので,実質18種類ほど。CoD2では30種類近くがあっただけに,かなり少なくなった印象を受ける。マップの進行はリニアで,このへんも(ある程度ゲームを進めれば)好きな国のミッションを選べたCoD2に比べてやや自由度が下がっている。総じてシングルプレイミッションは非常に短く,それを本作の最大の問題点とする声もあちらのPCゲームメディアに多い。言いたかないけど,やはりマルチプラットフォーム展開であることがその原因なんじゃないかしら。
また,それぞれのミッションは従来作に比べて非常に短く,中には10〜30分程度で終わってしまうものもあるが,これは制作者側の狙ったことだ。
敵の姿が見えない現代戦の実相に鋭く迫る
しかし,実際にプレイした限りでは,予想されたほど入り組んだ物語ではない印象を受ける。エキセントリックなZakhaevの企みはシンプルだし,「ミッションによってはテロリスト側としても戦う」という話は残念ながら実現されていない。過去にさかのぼるミッションは一つだけ。それ以外は,ほとんど二人の主人公のうちいずれかを操作することになるストレートな展開で,個人的にトム・クランシー御大のポリティカルフィクションのようなものを想像していたのだが,ちょっと肩すかし。まあ,基本はアクションゲームですからね。
当初言われていた,「次の展開を知りたくてプレイを続けてしまう」というほどではない。それでは,従来作が持っていたようなドラマチックな展開がなくなってしまったのかといえば,それがそうでもない。
個人的に最も「現代戦らしさ」を感じたのが,AC-130 Specterのミッションだ。ナイトビジョンを通して見たモノクロの戦場には,地上を行き交う敵味方兵士の姿が浮かび上がる。ストロボスコープが明滅しているのが味方部隊であり,中央の教会には民間人がいるため攻撃は許可されていない。だが,それ以外のシルエットは敵だ。
Specterの左側面に取り付けれているのはボフォース社のL60 40mm機関砲とM102 105mmカノン砲であり,同機はまさに空飛ぶ要塞と呼ぶにふさわしい攻撃力を持つ。その兵器オペレータとなったプレイヤーは,味方の脱出を助けるため,敵の立てこもる家屋を105mm砲弾で破壊し,畑を駆け抜ける歩兵を次々と機関砲の餌食にしていく。Specterが,アフガン戦争やイラク戦争で実際に使われて大きな戦果をあげたことを思い出し,背筋が凍るシーンだ。しかも,誤解を恐れずに言ってしまえば,非常にクールなのである。
1990年に起きた湾岸戦争を当時のマスコミは「テレビゲーム戦争」と呼んだ。スマート爆弾や巡航ミサイルといった精密誘導兵器から送られてくる映像がまるでゲームのようだったからだ。アメリカ軍は,このような,相手の反撃を許さないハイテク兵器による遠隔地からの戦争を「ハイパーウォー」と呼んでいる。Specterの場合はちょっと趣が違うが,そうしたテレビゲーム戦争を,本物のテレビゲーム(PCゲームだけど)がシミュレートしたわけだ。
乗務員達は,実際そうであったように,砲弾が命中すると「Ka-boom!」とか「Nice Kill」とか無邪気な声を上げる。モノクロの画面はきわめて抽象的であり,Specterに乗る兵士に血の匂いは届かず悲鳴は聞こえない。期せずして現代戦の非人間性,効率性を象徴するシーンになっているのだ。
また,二人の主人公を見舞う運命も現代的だ。前作までは,戦闘の最後に上官が部下を集め「よく戦ったな。戦争はもうじき終わりだ。みんな,家に帰れるぞ」といったハッピーエンドが待っていたが,現代の戦いでそれは通用しない。
一発の核爆弾が敵も味方も見境なくなぎ倒し,テロリストは姿を変えて次々に出現してくる。現代戦は損害だけが増え続ける,勝者なき戦いだ。開発者が意識したかどうかは分からないが,アクションまたアクションといったエンターテイメントの合間に,こうしたシーンを挟み込むことによって,CoD4は生々しい同時代性の表現に成功している。けして「善玉が悪玉をやっつける」単純な物語ではなく,前作までにはなかったような種類の異なる“深み”がゲームに加わっているのだ。もちろん,プレイしながらそうしたことを考える必要はまったくなく,ゲームなんだから純粋にゲームを楽しめばそれでいいのだが,こういうものを作らせると,向こうのクリエイターは本当にうまいと思う。
従来作のゲーム性を継承し,さらにパワーアップ
レビュー記事にも書いたが,基本的にプレイヤーが特定の位置に到達するか,あるいは目的をクリアすることでゲームが進んでいくスタイル。それまでは敵味方とも次々にリスポーンして,銃弾を激しく交換するものの,事態はちっとも進展しない。
ちなみに,初代CoDは,プレイヤーにドラマチックなゲーム経験をしてもらうためにスクリプトを多用しており,開発者が意図したコースをプレイヤーがはみ出すことをあまり許さなかった。また一人で特攻するランボースタイルのミッションも多く,リアリティに欠けるという意見も多かった。個人的にはまったく気にならなかったが,それを受け,CoD2ではドラスティックに戦闘システムを変更したという経緯があったりする。
概略,CoD4はCoD2と同様,プレイヤーが何もしないと敵は次から次へと出現して攻撃してくる。だいたいは合理的だが,たまに「あの小さい建物の中にいったい何人隠れているのだろう?」と思うこともあったりなかったり。ヘルスパックの類は存在せず,ダメージを食うと視界の周囲が赤くなり,そのまま撃たれ続けているとやられてしまう。
また,必ずしも無限リスポーンしてくるわけではなく,ある程度の数を倒すと突撃可能になったり,登場してくる敵の数が決まっていたりする場所もあるが,そのへんの見きわめはかなり難しい。マップはそれほど広大というわけではないが,ものによっては広めであり,進撃ルートはかなり自由に取れ,進み方によっても難度は変わってくる。とくに市街戦の場合,敵はいたるところにおり,どこから撃たれているか分からないうちに倒されてしまうこともしばしばある。敵AIはグレネードを巧みに投げてくるわ,数は多いわで,Regular(つまりノーマルモード)以上の場合,ゲームの難度は相変わらず高めだ。まあ,このへんは個人差もあって悔しい話だが,私は何度も「こりゃダメだ」とマウスを放り出してしまった。スモークを使い,味方ヘリコプターの応援が呼べる場合は出し惜しみせず使い,試行錯誤してジリジリ進むといったコンバットスタイルになる。ただし,Recruit(イージーモード)はかなりやさしくなるので,撃ちまくりの爽快なプレイが楽しめるはずだ。
アメリカでのレーティングがCoD2の“Teen”から“Mature”になったため,流血の表現も派手になり,前作でちょっとスカスカ感のあった銃撃の感覚もかなり改善されている。ゴアな表現はないが,かなり派手なアニメーションで反応してくれるので,当たっていることを確認しやすい。特殊部隊らしからざることに,敵の銃を拾って使うこともできるが,ミッションが短く最初から所持している銃弾も多いため,対戦車ロケットなどの特殊なものを除いてわざわざ拾う必要はないようだ。
いずれにせよ,CoD2ゆずりの戦闘システムは,スクリプトの多用によるドラマチックな展開には欠けるものの,そのぶんリアリティは高い。廃墟となった中東の街の一角で仲間と共に必死に戦っていたり,エリートSAS隊員として特殊作戦に参加していたりと,シチュエーションも豊富であり,雰囲気を重視するプレイヤーには評判がいい。
とはいえ,戦闘はどうしても乱戦に陥りがちで,「敵をいち早く発見し,正確に銃弾を送り込む」という純粋なシューター(そんな純粋なシューターを指向したFPSが最近あるだろうか,という議論はさておき)を好む人はやや大味に感じられるかもしれない。
そういうプレイヤー向けに用意されているのがオンラインのマルチプレイ対戦というわけだ。いい流れである。
多数の新機軸が盛り込まれたマルチプレイ
銃器のアンロックや,Rank機能,そしてPerkなど,さまざまな新要素が追加されたマルチプレイはInfinity Wardご自慢の出来。歩兵同士のシンプルな撃ち合いがメインとなるが,一つのマッチにかかる時間も短く,体が空いたときにちょっと入り,さんざん撃ち倒されてガックリするのにもってこいだ。戦車や飛行機といった乗り物の要素はないが,UAVや空爆といった支援の要求ができる |
サーバーには最大32人のプレイヤーが参加できるが,Infinity Wardによると,それぞれのプレイヤーの通信速度に応じ,それ以上の人数設定も可能とのこと。
Xbox 360版も発売されているが,クロスプラットフォーム対戦は実装されていない(ついでにいうと,Games for Windowsのロゴも未取得)。用意されている対戦マップはシングルプレイで登場したものを中心に16種類だ。
ゲームモードとしては,前作までの「Team Deathmatch」「Free-for-All」「Domination」「Search and Destroy」に,CoD4で新たに登場した「Headquarters」と「Sabotage」を加えて6種類になった。呼び名が独特だが,例えばFree-for-Allはいわゆるデスマッチ,Demonationはキャプチャー・ザ・フラッグとゲーム内容はおなじみのものだ。新モードのHeadquartersは,司令部(具体的にはノートPC)を確保した側がそれを死守できるかどうかを争うもの。またSabotageは,マップにある爆弾を確保し,それを敵の拠点に仕掛けたほうが勝ちになる。制限時間を超えると,リスポーンできないデスマッチに突入する。
CoD4では,マルチプレイを戦うことで経験値(XP)が得られ,XPを増やすことでレベルが上げられるのが大きな特徴になっている。レベルが上昇するにつれ武器がアンロックされ,また,選べるClass(いわゆる兵科)が増えたり,使用できるPerk(戦技のようなもの)が使えるようになったりするのだ。
兵科は5種類用意されているが,最初はそのうちのAssault,Spec Ops,Heavy Gunnerしか選べない。レベルが上がることでSniperとDemolitionsが使えるようになるわけだが,自由に武器やPerkを選んでカスタムクラスを作ることも可能。Perkには,「PRG-7を二つ装備する」「攻撃力が高くなる」「リロード時間が短くなる」といった戦場で役に立つ技能が多くあり,一度に三つまで装備(というのも変だが)できる。
さらにXPがごっそり獲得できる“Challenge”も用意されていて,これは例えば「レベル9で敵3人を倒しUAVを呼べば,ボーナスXPが50もらえる」といったもの。このあたりの情報はいずれCoD4の週刊連載でも詳しく紹介される予定なので,そちらを参照してほしいが,こうしたさまざまな要素が増え,前作以上に面白い内容に仕上がっている。
もっとも,こうしたアンロックシステムを採用したマルチプレイFPSの問題は,「長くプレイしている人ほど有利になってズルイ」というもの。それに対して「初心者専用サーバーを作る」などの対応策がパブリッシャからコメントされていたが,現在とくに何かが講じられてはいないように思える。ただ,ランクアップのスピードは早めで,1時間もプレイすればカスタムクラスの作成可能なレベル4ぐらいには到達するはずだ。
例によって,1マッチで数百点を叩き出す猛者どもでオンラインは溢れており,最初はシングルプレイで撃ちまくられたテロリストどもの悲哀を心ゆくまで堪能できるはずだ。私はもうたっぷり堪能したので,読者の皆様にもぜひ堪能していただきたい。
シングルプレイ同様,マルチプレイにもビークルの要素はなく,歩兵による白兵戦がメイン。それぞれのゲームモード/マップにはそれなりの戦略/戦術はあるだろうが,どちらかというと気軽にサーバーに入り,倒し倒され撃ち撃たれの白熱した時間を楽しむというタイプだと思う。もちろん,究めようと思えば奥は深いし,ランクアップやアンロック武器といった新しい仕掛けがモチベーションを高めてくれるのは言うまでもない。私もP90サブマシンガンだの,リロードが早くなるPerk,“Sleight of Hand”だのが欲しくて欲しくて,ついついプレイしてしまうのだ。
PC版として2年ぶりの新作となるCoD4は,前二作同様,Infinity Wardという手堅いプロの仕事をするデベロッパの手になる,そつのないタイトルである。ゲームシステムに大きな変化はないものの,シングルプレイ,マルチプレイとも面白く,この年末年始に何を買おうかと迷っている人に遠慮なくオススメしたい一本だ。
シングルプレイを一度クリアすると,時間内で敵を倒したスコアを競う“Arcade Mode”がアンロックされる |
マルチプレイのモードは6種類。個人的にはやはりTeam Deathmachが好きだが,ほかのもやっぱり面白い |
自分のやられぶりを見られる「キルカム」機能も健在。主人公にやられる雑魚キャラになった気分にたっぷり浸ろう |
- 関連タイトル:
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