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AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
最新世代のローエンドGPUに匹敵する3D性能
AMD 780GではHybrid Graphics対応&UVD搭載
AMD製のグラフィックス機能統合型チップセットが持つGPU機能には,「AMD 690G」以降,ATI Radeonファミリーの製品名が付記されることになっているが,AMD 780GとAMD 780Vでは,それぞれ下に示したブランドネームが与えられている。
- AMD 780G:ATI Radeon HD 3200
- AMD 780V:ATI Radeon 3100
ただし,ATI Radeon HDファミリーの単体GPUで3000番台の型番が与えられているものはDirectX 10.1対応。ATI Radeon HD 3200とATI Radeon 3100がDirectX 10“止まり”となる点には少々注意が必要かもしれない。
当然,ローエンドGPU並みのスペックを実現するにはチップ規模を大きくする必要があり,現にAMD 690Gで7200万だったトランジスタ数は,AMD 780Gで2億500万個へと,3倍弱にまで肥大化している。ただし,製造プロセスを従来の80nmから55nmへとシュリンクすることで,アイドル時の消費電力は1.40Wから0.95Wへと大きく引き下げられており,AMD 780GやAMD 780Vノースブリッジは,チップセットヒートシンクだけのファンレス動作を実現できると,森本氏は胸を張る。
Hybrid Graphicsの概要 |
主要ゲームタイトルの平均フレームレートを,今度はHybrid Graphicsでテストした結果。最大1.7倍のパフォーマンスを得られるという |
ところで,海外ではATI Radeon HD 2400シリーズとの組み合わせでもHybrid Graphicsが動いたというレポートが上がったりしているが,ATI Radeon HD 3600シリーズなど,ほかのGPUと組み合わせたときもCrossFire動作そのものはさせられてしまう可能性はあると森本氏。ただし,「CrossFireの仕様上,AMD 780Gの3D性能と極端に異なるGPUと組み合わせても効果はない」とのことで,ATI Radeon HD 2400シリーズに関してのみ,今後公式サポートされる可能性が示唆された。
また,専用コントロールパネル「ATI Catalyst Control Center」からCrossFireを無効化した場合は,AMD 780G側で2,グラフィックスカード側で2,最大4台のディスプレイを接続できるのも,Hybrid Graphicsの強みと森本氏は述べる。
ところで,GPUブランドネームに片方だけ「HD」の文字がない点だが,この違いは高解像度ビデオ再生機能「UVD」(Unified Video Decoder)をベースとしたビデオ再生支援機能「Avivo HD」サポートの有無に起因している。AMD 780Gでは,H.264/AVCをサポートする従来のUVDから一歩進み,MPEG-2 HDのハードウェア処理にも対応した「Enhanced UVD」(Enhanced UVD Block)を搭載する。一方のAMD 780VではこのEnhanced UVDが省かれているというわけだ。
最後に,ATI Technologies(以下,ATI)時代から弱点といわれていたサウスブリッジは,AMD 780で「SB700」が用意された。従来の「SB600」は機能面,性能面とも他社製品と比べると貧弱で,導入の障害となっていたが,SB700ではノースブリッジに合わせてPCI Express 2.0をサポートしたほか,最大のウィークポイントとされていたSerial ATA周りでも,転送速度の大幅な向上が図られた。SB600で4だった接続ポート数は6へ増え,eSATAにも対応し,少なくとも他社製と比較できるレベルに到達している。
お詫びと訂正:初出時にSB600のSerial ATAポート数を2としていましたが,正しくは4です。お詫びして訂正いたします。
ヘテロジニアス・マルチプロセッシングで
独自性を打ち出し,対抗するAMD
うがった見方をするなら,「チップセットを大々的に発表しつつ,CPUをひっそりとリリースする」というあたりは,AMDの置かれた現在の立ち位置を象徴しているといえなくもない。ご存じのように,AMDはエラッタ問題でケチのついたPhenomやOpteronのリファインに注力せざるを得ず,ミドルクラス以下のCPUに何かしらの革新を行う余裕はない。歩留まりなどに関していろいろ言われながらも,45nmプロセス製品を間違いなく出荷しているIntelに対して,CPU性能で追いつける状態にはないのだ。
しかし,PCの性能向上はCPUだけで達成されるわけではないという,当たり前の事実もある。4Gamerの不定期連載「PCゲームのお作法」GPU編やCPU編で説明しているように,3DゲームのパフォーマンスにおいてCPUの占める比率はさほど高くなく,CPUとGPUなら,後者を強化したほうがゲームパフォーマンスは向上しやすい。
仕様があまり明らかになっておらず,ゲーマーに向かない可能性のあるAMD 780Vはさておき,AMD 780GはローエンドのGPUを丸ごと統合してしまった製品と捉えて問題なく,Intelのグラフィックス機能統合型チップセットでは(少なくとも現時点では)逆立ちしても到達できない3Dパフォーマンスを持っている。Core 2ファミリーのCPUを使っているユーザーなら,グラフィックスカードを購入しなければ手に入れられない3D性能を,AMD 780ならマザーボード単体で実現できるのだ。
また,CPUにとって決して“軽い”処理ではない高解像度ビデオの再生処理をサポートするのも,AMD 780Gの強みだ。Enhanced UVDを持つGPU(=グラフィックス機能統合型チップセット)が処理を行えば,より高性能のCPUを搭載したシステムと同等のパフォーマンスが得られるといっても過言ではない。
これはまさにヘテロジニアス(=異種混合)マルチプロセッシングの方向で,CPU単体の性能が及ばないなら総合力でで勝負しようというわけだろう。それが以前お伝えした「プラットフォームの魅力」にも繋がるわけだ。
こうした方向転換が可能なのもAMDがATIを吸収したからで,あの合併がなければ,いまのAMDには為す術がなかったはずだ。もっとも(皮肉にも)その合併吸収コストがAMDにとって大きな負担となっているわけだが,ATIと合併した利を最大限生かそうとした戦略を,今のAMDが取ろうとしていることだけは間違いない。そしてこれはゲーマーにとっても,PCゲームプラットフォームの低価格化と,選択肢の拡大という意味で,大いに注目できる動きといえるだろう。
なお4Gamerでは,正式発表に合わせ,Hybrid Graphicsを含めたAMD 780Gの実力を別記事であらためて検証している。興味を持った人はぜひチェックしてほしい。
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AMD 7
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