インタビュー
レベル30まではプレイをやめさせないゲーム作り「ドラゴニカ」開発者インタビュー
1月6日開始のオープンβテスト以来,多くのプレイヤーに賑わいをみせており,めでたく昨日(1月20日)正式サービスが開始された。
今回は,オープンβテストに合わせて来日していた,Barunson Interactiveの開発スタッフに,本作の魅力や,今後のアップデート内容などについて話を聞くことができた。すでに同作の経験している人はもちろん,メイプルやアラドのプレイヤーもぜひ目を通してみてほしい。
細かい部分までこだわった丁寧な作り
本日はよろしくお願いします。
さっそくですが,Limさんは,ドラゴニカでどういったお仕事をされているのでしょうか。
Sang Woo,Lim氏(以下Lim氏):
2009年まではプロジェクトマネージャーとして,ドラゴニカに関する企画と開発関連のスタッフを束ねていました。先日からは同社の技術役員も兼任しています。
4Gamer:
Barunson Interactiveという会社は,これまでどういったタイトルを手がけていたのでしょうか。
Lim氏:
弊社は,かつて「Dragon Raja」を開発していたスタッフが中心になって設立した会社です。Barunsonとして初めて開発したタイトルは,「SoS Online」というカジュアルシューティングで,その次がドラゴニカです。
私自身の経歴としては,「Dragon Raja」のほか,「テイルズウィーバー」の海外技術支援に携わってきました。
4Gamer:
ドラゴニカですが,いよいよオープンβテストが始まりました。このタイトルの魅力を一言でいうと,どういった部分でしょうか?
Lim氏:
一番の魅力といえるのは,コンボシステムです。これを駆使して自分だけのコンボを作ったり,いかに格好よく,そして効率よくモンスターを倒していくのかを追求したりするのが面白いですね。
4Gamer:
個人的には,「メイプルストーリー」と「アラド戦記」の良さを,うまくミックスしたかのような印象を受けました。
Lim氏:
ええ,その指摘はよく受けます。我々としては最初からその方向性を目指していたわけではないのですが,結果的にそういった形になりました。
また,メイプルやアラドを合わせただけでなく,“+α”の要素がとても充実していると思いました。
Lim氏:
ドラゴニカにはシンプルで誰でも楽しめるシナリオや,インスタンスエリアでの“英雄モード”クエスト,業績システム,ランキング機能,プレゼントボックスなどなど,数多くのコンテンツがあります。一度ドラゴニカを経験した人が,「このゲームから離れたくない!」と感じてもらえたらいいな,と思いながら開発しました。
4Gamer:
ボリュームがあって盛りだくさんですよね。OBTのクライアントプログラムをダウンロードしたら,ファイルサイズが1.6GB以上あったのが意外でした。プリレンダリングのムービーも収録されていますが,それ以外にはどういったデータが占めているのでしょうか?,
Lim氏:
従来のタイトルと比べると,アバター関連のデータがとても大きいですね。ドラゴニカでは装備の部位ごとにグラフィックスが別々に表示され,同じアイテムでも性別や職業などによっても見た目が違ってきます。
4Gamer:
手袋とか靴とか,細かい部分まで反映されていますよね。
Lim氏:
ドラゴニカのキャラクターは頭身が小さく,腕や足はあまりよく見えないこともあるんですが,ここは開発がこだわった部分です。デザイナー達のスタッフもかなり頑張りました。しかし,今後新しい職業などを追加するときは,「これらのデザインを全部作り直すのか……」と,今から頭を抱えています(笑)。
外見の変化に影響を及ぼすアバターアイテムの数は,トータルでどれくらいの量なのでしょうか?
Lim氏:
現在は合計で約3000個です。実際には色違いのアイテムも別にあって,それを含めると膨大な数があります。ユニークなものとしては,カップルで着ると色や模様が変わったりするアイテムもありますが,こちらは今後実装予定となっています。
4Gamer:
アバター関連はいかにも日本人受けしやすそうだと思います。開発時にとくに気をつけた点はありますか?
キャラクターのデザインに関しては,2頭身から7頭身までのモデルをそれぞれ別に作って,1年近くかけてテストを行ってきました。頭身のバランスだけでなく,目や口の大きさといった顔のデザインも,相当手間を掛けています。また,これらのデザインを決めたあとも,エモートコマンドで動かすのが大変でしたね。
始澤 健太郎氏(以下始澤氏):
実は同じエモートコマンドでも,元のフェイスパターンによって動きが違っていたりします。こういった細かい部分にもぜひ注目してほしいですね。
日本版がベストバランス?
4Gamer:
ドラゴニカはワールドワイド展開がとても積極的だと聞きました。現在はどの地域でサービスを行っていますか?
Lim氏:
一番最初は中国で,2009年の2月からサービスを開始しています。続いて5月に台湾,6月に東南アジア(英語版/中国語版)とヨーロッパ諸国(英語版/フランス語版/ドイツ語版)。8月に北米,12月にタイとロシア,そして2010年1月に日本といった流れになります。
4Gamer:
かなりのスピード展開ですね。開発元である韓国でのサービス予定はありますか?
Lim氏:
順調に進めば,今年の4月〜6月にサービス開始予定です。
4Gamer:
最初に中国でサービスを始めてから,これまでの反響はいかがですか。
中国でのサービスイン当初は,トラブルの連続だったのが印象深いです。まず,思っていたよりインフラが整備されていなくて,通信関連の技術的な問題に悩まされました。
それともう一つ,ハッキングの多さにも参りましたね。例えば,不正マクロ対策のために,ゲーム内でミニクイズに回答させるシステムを導入したのですが,すると,ハッキングツールがその画面をスクリーンショット撮影して,別の場所であらかじめ待機している業者に送信して,さらにクイズの回答を送って入力してくれるというサービスが行われていたんですよ。あれにはびっくりしました。
4Gamer:
それがビジネスとして成立しているというところが凄いですね……。そういったトラブルは現在では解決されているのでしょうか?
Lim氏:
はい。日本でサービスするバージョンでは,かなりブラッシュアップされていますよ。
4Gamer:
ちなみに,サービスを行う国によって,ゲームバランスの調整は行っていますか?
ええ。レベリング時に必要な経験値量などの成長曲線を変えていますね。日本のバージョンでは,序盤は成長しやすく,徐々に成長速度が遅くなるよう調整されています。
Lim氏:
大きく分けて三つのバージョンがあり,最もやさしいのが日本で,逆に難しいのが中国です。それ以外の国のバージョンは,両国の中間のバランスになっています。
4Gamer:
中国の市場に対しては,どういった認識を持っていますか?
Lim氏:
全体的に見て,他国のプレイヤーと比べるとプレイ時間が長い傾向にあります。もう一つ大きいのは,ハッキングや不正マクロの取り締まりが厳しくないためか,かなり広く浸透していることですね。そういった状況を踏まえ,現地でのパブリッシャと意見交換しあった末に,現在のゲームバランスに調整しました。
4Gamer:
根本的な対処にはなっていないように思えますが,やはり難しい問題なのでしょうか。
Lim氏:
ハッキングツールは防ぐことができますが,不正マクロに関してはどうしても難しいですね。
4Gamer:
国によってバージョンを変えることについては,どのように考えていますか?
Lim氏:
プレイスタイルやニーズは国によって異なるので,そのこと自体は自然だと思います。現地のパブリッシャさんの意見をもとに最適化して,その結果遊びやすくなるのであればなによりです。もちろん,日本でのニーズについてはネクソンさんの情報を信頼しています。
ただ,個人的な意見を申し上げると,一番バランスが優れているのは日本バージョンだと思いますね。
レベル30まではやめさせない
具体的に,どういった部分でバランスが優れていると感じますか?
Lim氏:
キャラクターを作成してから,レベル30くらいまで進める流れをスムースにしています。新たなクエストが次から次へと登場し,途中で中だるみしないようになっているんですよ。
4Gamer:
そういえば,OBTで30分くらいプレイしただけでも,レベル5まで上がりました。この調子でレベル30くらいまで,トントン拍子に進んでいくのですか?
Lim氏:
レベル40を超えるあたりから,次第に難しくなってきますね。まぁ仮に,そこまでキャラクターを育てたうえで辞めてしまう人にとっては,おそらくドラゴニカが向いていなかったのだと思います。
でも,レベル5や10程度で辞めてしまう人がいるとしたら,とても悔しいですね。そう思っているくらい,ゲーム序盤の流れには自信を持っています。
楽しみ方はレベル30からさらに広がる
4Gamer:
新しく始める人は,とりあえずはレベル30までプレイしてみてほしい,ということですね。
Lim氏:
誤解のないように補足しますと,厳密にはレベル30よりも前にいくつものコンテンツが登場しますが,それらを存分に楽しむためには相応の資金が必要になります。そういった条件を現実的に満たせるようになるのがレベル30くらい,という意味です。お金を稼ぐのが上手な人にとっては,もう少し早いタイミングになるかもしれませんね。
4Gamer:
具体的にレベル30の前と後とで,プレイスタイルにどのような変化が生じますか?
レベルが30になるまでは,クエストを通じてのメインストーリーが,絶え間なく展開されていきます。ほかのコンテンツに目を向けなくても,どんどんレベルが上がっていくでしょう。
そしてレベルが30になると,新たなコンテンツに挑戦できるようになり,新しくドラゴニカを始めるような気分でプレイできます。
4Gamer:
具体的に,どういったコンテンツで遊べるようになのですか?
Lim氏:
数が多いので駆け足で紹介しますね。まず,「隠しマップ」や,そこで手に入れたアイテムが入場時に必要になる「カオスマップ」というものがあります。これらのマップでは特別な装備品や,アイテムを強化するための材料が得られます。
あとは,「PvPモード」や「ボス戦」などでしょうか。PvPモードは早い段階から遊べるのですが,醍醐味を存分に味わえるのは,キャラクターがある程度育ったレベル30くらいからになるでしょう。
4Gamer:
ボス戦というのは,“英雄モード”のミッションとは別なのですか?
Lim氏:
はい。ドラゴニカのストーリーは,悪いドラゴンをやっつけていくという内容なのですが,それとは別にストーリーの要所要所でボスが登場します。現在導入されているボスは,「バレル博士」と,彼が呼び出したという設定の「マグマドレイク」の2種類です。
今後の展開は?
4Gamer:
今後はどういったコンテンツを導入する予定ですか?
Lim氏:
主な要素としては,ハウジング,ペットシステム,PvPモード,ギルド戦争,結婚システム,大規模ダンジョンなどがあります。
4Gamer:
順番に伺っていきます。まずはハウジングについてですが,どういった内容でしょうか。
MMORPGのハウジングと似ています。プレイヤーはプライベートエリア内に“家”を所有でき,その中に購入した家具を自由に配置できます。メイドを雇ったり,倉庫にアイテムを保管したりできますよ。
ドラゴニカのハウジングで特徴的なのは,家具の数や種類に応じた補助効果(バフ)が掛ることです。そしてほかのプレイヤーの家に遊びにいったりすることで,そのバフを譲り受けることができます。
4Gamer:
それはユニークですね。家のエリアへは,どのようにして移動するのですか?
Lim氏:
マイホームを所持しているPCは,プレイ中のミニマップに常に表示されます。それをクリックすることで,どこにいても直接ワープできます。
友達の家エリアへ行く際は,村エリアにある“不動産屋”のNPCに話しかけることで移動できます。
4Gamer:
ハウジングは日本でも注目度が高そうですが,どういった条件で入手できるようになりますか?
Lim氏:
ほかのサービス国のバージョンでは,基本的に“競売”を通じて,ほかのプレイヤーと競り合う形で入手します。ですが日本のバージョンでは,より多くののプレイヤーがマイホームを所持できるようにする予定です。どういったシステムにするのかは現在検討中です。
4Gamer:
それは期待できますね。続いて,ペットシステムはどのような感じでしょうか。
Lim氏:
ぺットを購入して一緒に冒険することで,プレイヤーと共に成長していきます。ペット専用の育成システムがあり,レベルを上げることで,さまざまなスキルを習得します。そのほかにも,ドロップアイテムを自動的に拾ってくれるなど,冒険を手助けしてくれるような存在にもなります。
4Gamer:
ペットは何種類くらい用意されるのですか?
Lim氏:
すでに開発が終わっているのは,ライオン,パンダ,ブタ,そしてグリフォンの4種類です。今は国ごとのニーズを調査していて,日本では独自のペットを導入できればと考えています。
4Gamer:
続いてのPvPですが,コミカルな見た目のドラゴニカではどういった内容になるのでしょうか?
Lim氏:
PvPはほかの国では盛んですが,日本ではやる人はあまり多くないかもしれませんね。ですが報酬が魅力的で,ポイントを集めることで特別な装備品やアイテムが手に入ります。PvPが苦手でも思わずプレイしたくなるような内容になっています。
ハードルも決して高くなく,1回挑戦するだけでクリアできるものもあります。ですので気楽にPvPを楽しんでもらえたらと思います。
4Gamer:
次の結婚システムはどのような内容でしょうか。
Lim氏:
これはカップルシステムが発展したものです。二人のPCがカップル状態になって,一緒に長い間ログインし,“カップルクエスト”などの条件を満たすことで,めでたくゴールインできます。専用の結婚式場エリアも用意されていて,ほかのプレイヤーを招いたりできますよ。
4Gamer:
最後の大規模ダンジョンはどうでしょうか。
Lim氏:
これはまだ開発途中なのですが,ドラゴニカはジャンプや奥行きへの移動もできるので,これらを利用したアクションをふんだんに盛り込めれば,と考えています。単に敵を倒すだけでなく,マリオみたいなアクションも面白いかもしれませんね。
4Gamer:
そういえばドラゴニカって,ジャンプがとても高く飛び上がって気持ちいいですよね。“踏みつける”アクションはないのですか?
Lim氏:
実は,最初は踏みつけも作っていたのですが,開発中に,韓国でほかのタイトルに先を越されてしまったのでやめました(笑)。
そのほかには日本向けの要素として,現在桜が一面に広がるマップや,和服のコスチュームなどを予定しています。
4Gamer:
日本での近況についても伺います。先日からOBTが始まっていますが,現在の手ごたえはいかがでしょうか。
始澤氏:
全体的に見て,反響は非常にいいですね。弊社がサービスしているメイプルやアラドとはまた違った,アクション好きの客層を取り込めているな,と実感しています。
4Gamer:
話によるとコンテンツの消費速度が大分速そうですが,そのあたりは心配ありませんか?
始澤氏:
OBTでも,1日でレベル26に達してしまうようなコアプレイヤーがいましたね。確かに日本バージョンは他国と比べて序盤はやさしくなっていますが,中盤以降になると次第に手ごたえのあるゲームバランスになっていきます。また,アイテム強化や業績といったやり込み要素。ハウジングやギルド戦等のコンテンツも導入していきますので,長い目で見ればそう問題はないと考えています。
4Gamer:
最後に,4Gamerの読者向けにコメントをお願いします。
Lim氏:
先日,日本の家庭用ゲーム機の開発メーカーを尋ねたのですが,QA(品質管理)に8000もの項目があると聞いて驚きました。ゲームに求める目の鋭さという意味では,日本のゲーマーは世界で最も厳しいと思います。
それだけに,日本で満足できるタイトルを作るというのは,我々にとって大きな目標です。これからも頑張って開発していきますので,ぜひ期待していてください。
始澤氏:
ドラゴニカの軽快な動作やコンボは,アクション好きな人にはきっと受け入れられると信じています。さらにキャラクターがコミカルなので,間口も広いです。トータルで見て,ここまでのクオリティに達しているタイトルは,現状数少ないと思います。
普段コンシューマを中心に遊んでいる人でも楽しめるタイトルに仕上がっているので,興味を持ったらぜひ一度プレイしてみてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
インタビュー時点は,ドラゴニカはオープンβテストの最中だったが,その割に完成度がかなり高く,ゲームとしての欠点らしい欠点も見受けられなかった。個人的にはそれがちょっと不自然な印象すら抱いていたのだが,今回のインタビューを通じて,それらの理由が分かった気がする。
メイプルとアラドのエッセンスを詰め込んだ基本システムに,コミカルなアバター,そして遊びきれないほどの量のコンテンツ。しかも,日本向けにゲームバランスの再調整まで行っている。少々大袈裟かもしれないが,可愛い系のアクションRPGでほしい要素を軒並み詰め込んだみたタイトル,という感じだ。
ドラゴニカは見た目がコミカルなためか,人によっては「子供向け」かと思うかもしれない。しかし,実際にプレイしてみると良い意味で裏切られる代表のようなタイトルに仕上がっている。もし興味を持ったら,先行プレイレポートをはじめとした,4Gamer過去記事をチェックしてみてほしい。
- 関連タイトル:
ドラゴニカ
- この記事のURL:
Copyright (c) 2009 Barunson Interactive Co., Ltd. All Rights Reserved.
Copyright (c) 2009 NEXON Co., Ltd. All Rights Reserved.