連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第331回「正義は一つじゃない」
思えば,昔からRPGの設定に人類対魔王が多いのも,敵が絶対悪である必要があったからだと思うのね。世界を滅ぼすことが目的だなんて言われたら,そりゃまあ止めるしかないからね。
でも,時代は進んで,ゲイムも進んで,今やゲイムでもいろいろな表現ができるようになった。規制というものはあるけれども,単純にゲイム機が持つスペックが向上して,かつては想像すらできなかったような仮想世界を作り上げられるようになったわ。今後もまあ単純に考えたら,ゲイムの仮想世界はどんどん豊かになっていくんでしょう。それはいいのよ。楽しみでもあるし。
ただ,そうなるとゲイム側としては人類対魔王といったベーシックなもの以外の描き方もできるようになる。まあ,それは始まって久しいんだけどね。要は,仮想世界の“描き方”もゲイムの魅力の一つになっている時代なんでしょうね,今は。
さて,ブレイブリーセカンド。このゲイムは,ゲイム内で正義のあり方を多角的に描いている作品なのね。RPGとして普通に面白いのはもちろんなんだけど,私はこの作品のそういう“描き方”が好きっていう説明をしたく,今回取り上げさせていただくことにしました。あ,遅ればせながら私,ゲイレスラー男色ディーノ38歳無職です。
一作目の「BRAVELY DEFAULT」もそうだったんだけど,今回も同じくそこが売りなのね。凄くシンプルに面白い。でね。ゲイム内では,サブストーリーをこなすことで新しいジョブが手に入るのよ。ハイ! ここ! ここなんですよ! 今回私が注目したのは。
ブレイブリーセカンドは,サブストーリーに二つの選択肢が用意されているの。で,どちらかのジョブと戦わなければならない。勝てば,そのジョブを手に入れられるんだけど,戦わなかったほうのジョブはその場では手に入らないの。
その選択肢がまあエグイわけ。例えば,ある老人と孫が住んでいるオンボロな家があって,そこを地上げして街として再生させようとする人がいるの。プレイヤーは,老人&孫と地上げ,どちらに肩入れするかっていう選択を迫られる。これ,難しい問題なのよね。
当然,老人と孫のことだけを考えたらボロの家でも思い出の家を出たくない気持ちは分かる。ただ,一方で社会全体のことを考えたら,その地を再開発してより豊かな世の中を作ることもまた一つの正義。どちらも正しく,どちらも不幸は生まれるわけ。その選択をゲイムは迫るわけね。
ネタバレになるから本編のストーリーについては紹介しないけど,本編もゲイムが進んでいくにつれて,敵も絶対悪ではなく,敵なりの正義があることが発覚していくの。こういう描き方をするRPGは今までにもあったけれども,ここまで正義の選択をさせるRPGも珍しいと思ったわ。どちらを選ぶもプレイヤー次第。どっちも正義。
私個人はどちらかというと結果を重視するんだけども,かといって過程を大切にする人を否定はしないわ。なぜなら,過程が結果を生み出す部分も確かにあるから。とはいえ,連続して結果を出せない場合は,過程が間違ってるんじゃないかとは思うけどね。結果のための過程であるべきだ,というのが私の正義。これは“過程”を“努力”に置き換えてもいいんだけどね。努力を否定はしないけども,それは結果を出すためのものであるべき。いや,ほかの正義……要は価値観を否定はしませんけどね。
そして,ここからさらに突っ込みますと,世の中は“共感”で成り立っていると私は思うのです。共感を集めた人が強い。いや,厳密には日本は民主主義なんで,共感を集めたら強いのは昔からそのとおりではあるんだけど,共感が可視化できるようになった現在はとくにその傾向が顕著だと思うの。
SNSの功罪よね。SNSって「いいね!」とか「リツイート」だとかの形で,共感が数値化されやすいツールなの。で,その数値によって価値が判断されている節があるわ。それは悪いことだとは言わない。他人の価値観を知ることができる場でもあるからね。でも,世の中すべてがYESかNOかではない。数が多いから必ずしも正しいわけでもない。可視化された数値に流されずに,自分の正義を見つめられればいいと本当に思うわ。だってもともと,人の数だけ正義があるわけだから。絶対的な正義なんて世の中にはなかなかないわけで。
エンターテイメントもしかり。支持する人が多いエンターテイメントが,必ずしも一番優れているわけじゃない。もちろん,ビジネス的には優れてるんだけども。でも,エンターテイメントだったらとくに,一番シェアがある価値観だけしか存在しなかったら,面白くないとまでは言わないけど,幅が広がらないじゃない。
ちゃんとした戦いのプロレスだけじゃなく,男のケツを掘るプロレスがあることで男のケツを見たい層が従来の層に加わるわけ。こうやってマーケットは広がっていくのね。あくまで私はプロレスに広がりを持たせたいのよ。だから,仕方がなく対戦相手の唇を奪うし,インターネットラジオではイケメン声優さんの身体をまさぐる。すべて,仕方がなくやっているの。決して私利私欲じゃないことだけは覚えておいて。
ま,真面目な話,現在主流ではない価値観をもってマーケット外から顧客を連れてきて,結果的に業界内シェアを増やすというのがエンターテイメントの正しい成長のさせ方だと私は思っているわ。今ある100のシェアを奪い合っててもジャンルの成長はない。シェア60の大手に立ち向かうには,よそから20連れてきてこちらも40+20=60にする。こうすることでジャンルのパイが120になる。相手の正義も,否定するんじゃなくて,認めたうえでこちらの正義をブラッシュアップする。こうありたいもんだ……ってのが私の正義です。
ブレイブリーセカンドも,最終的にはサブストーリーに関してどちらの正義も尊重されているしね。良いゲイムだと思うわよ本当に。単純に面白いし。
というわけで,今週はゲイム性とはまた別の部分でブレイブリーセカンドの要素を取り上げさせていただきました。相変わらず情報もクソもあったもんじゃないけど,広いインターネットの海の中に,こういう毒にも薬にもならないゲイムの連載があってもいいんじゃないかなあ。「もうやめろ!」っていう共感を集めない限り,このまままったりとここにいようかと。ではまた来週。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「トロピコ 5」
PlayStation 3:特殊なDVD ※死亡確認→復活予定
PlayStation Vita:「剣の街の異邦人 〜黒の宮殿〜」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「ゼルダ無双」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「ブレイブリーセカンド エンドレイヤー」
Xbox 360:「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」
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- 関連タイトル:
ブレイブリーセカンド エンドレイヤー
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