連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第425回「いつから正統派?」
……と言いつつ少しだけ触れてみると,MHXXは前作の「モンスターハンタークロス」から,さらに強いモンスターが増えているし,プレイヤーもより強い武器や防具が手に入れられるようになっているってわけ。言ってしまえば順当にボリュームアップした新作なのね。面白くないわけがない。
ただこの面白さって,私のようなインディー系の変化球プロレスラーからしてみると,「これをヤられたらたまんねーな」って種類の面白みなのよね。あれ? こういうプロレスラー視点からのお話だったら,著名人が散々語り尽くしてきた「モンスターハンター」シリーズについて,今ここで語ってもいい気がしてきたわ。うん。なので,今回はちょっとだけと言わずまあまあ語ってみることに方針転換するわ。
まずね,前提として私はプロレス界において,まったくもって正統派ではないゲイレスラーなの。いわば望まれて産まれたわけではない鬼っ子。だからこそ,普通じゃないヤり口,具体的に言うと“もしプロレスの対戦相手が自分に恋心を抱いていたら”っていうシチュエーションコントみたいな状況を作りだすことで,見る人の興味を引き出しているのね。自分の性癖をさらけ出すことによって,本来のプロレスが持つ“どちらが強いのか”という興味を引くのとは,また違った面白みを提供しているわけ。
まあ,だから“どちらが強いのか”に興味を持っている人からは嫌われるわけだけれども。鬼っ子ですから。それはいいんです。私の言い分としては,“プロレスはそういう私の価値観をも表現できる場で,見ている人が面白がってくれればそれはもう一つの正解”なわけ。完全な正解なんてエンターテイメントの世界には存在しないからね。鬼っ子が得るのは一つの正解で充分ですよ。
で,モンハンの話。モンハンって,プロレスでいうところの正統派なのね。正統派ハンティングアクションゲイム。ここに疑問の余地はないと思う。じゃあ,問題はこの場合の“正統派”っていつからそうなるのかってところですよ。答えはね,売れたときからだと私は思っていて。
というのも,モンハンもシリーズ第一作が発売された時点では,まだ国民的なゲイムではなかったわけですよ。レベルという概念で主人公を強くするのではなく,狩りをして得た素材で武器や防具を作って強くなるという,それまでとはちょっと変わったアクションゲイム。これが今では,大人から子供まで楽しめる国民的なゲイムになった。そしてそれによって,このゲイムがハンティングゲイムの正統派となった。
要は,売れることでジャンルの基準になったわけね。これ,「ドラゴンクエスト」シリーズにも同じことが言えるわよ。最初はなじみの薄いRPGというジャンルの,ただの面白いゲイムだったんだけど,売れることで正統派RPGと呼ばれるようになった。これも,ドラゴンクエストが売れてRPGというジャンルが世に浸透したから,RPGの一つの基準にもなっていったわけ。
プロレスでもそうなんだけど,“正統派レスラー”って,主に変わったことをしないレスラーのことなのね。でも,これには二つの使い方があるの。取り立てて個性がない人を評するときと,取り立てて変わった見た目や癖を必要としないけれどもそれでもほかとの違いを生み出せる人を評するとき。そしてそれは,きっとゲイムでも同じ。気になったタイトルが“正統派RPG”と評されていたときに,どちらの意味なのか……。ここは注意が必要ですよ! ま,気になっているんだったら実際にプレイして確かめればいいんじゃ? って,私個人は思うけどね。
話が逸れました。要するに,売れさえすればそれが基準となって正統派として認知されるようになるってこと。どこからが“売れた”ことになるのかっていうのは,また別の議論が必要だけど。とはいえ,ミリオンを超えたタイトルは軒並み“正統派”と呼ばれている,もしくはそういうイメージを持たれているって事実は無視できないと私は思うけどね。
で,何が言いたいかというと。今回のMHXXは,やっぱり正統派だってこと。これは事実として,売れているから面白いって面もあるのよね。私のような怪奇派には耳が痛い話だけど。小学校の頃なんかにあったでしょ。クラスのみんなが見ているTV番組を見るっていう現象が。要は,そういうこと。話題を共有できる楽しさ。モンハンの場合は,離れていても一緒にプレイできる楽しさ。知らない人とでもプレイできる楽しさ。これって,売れてないと提供できない楽しさなのよ。
私は強がって“正統派にはできないことで勝負する”っていう形でエンターテイメントを提供しているんだけど,逆に言うとモンハンの楽しさって“怪奇派&個性派にはできない正統的な戦い”が展開されているってことなのよね。これをやられたら中小のエンターテイメント提供者としてはたまんない。手も足も出ない。
私なんかがその手の楽しさを提供するには,怪奇派のまま売れて正統的怪奇派になるしかないってケツ論に達するんだけど。細かく言えば,それはそれでたいへんなんだけどね。商品としての破綻を少なくしなくちゃいけないし,より多くのターゲットに向けて作らないといけないから,極力,角をとって丸く仕上げなければならない。ことエンターテイメントに関していえば,そのための技術も必要だし,ユーザビリティも必要になってくる。
私もそうだから思うんだけど,基本的に消費者って自分勝手だからね。自分の意にそぐわなければ不満を持つことになるわ。で,クレームを入れたり,今の時代だとSNSでその不満を表に出す人も出てくる。そのことが悪いって言ってるわけじゃないわよ。日本には言論の自由があるから,不満の表明自体は悪いことじゃない。私個人としては,全然関係のない人も見るであろうSNSに持っている不満をぶつけるのは苦手だなあと思ってはいるけども。
まあ,ネットワークにはいろんな価値観が渦巻いているってことですよ。望む望まないに関わらず,売れるということはいろんな価値観に触れることになる。いわゆる正統派と呼ばれるようになるには,それらを受け止める器が必要になってくる。で,モンハンにはそれがあるって話なのです。いや,厳密に言えば多少の不満はあるものの,それを含めて文句なく面白いのよ。それが,インディゲイレスラーの私としては恐ろしいわ。大手の戦いを見せつけられた感じがして。
とはいえ,私には私のできることがあるからね。それにすがって生きていくしかないではありませんか。幸い,生き方に正解も不正解もないからね。これもエンターテイメントと同じで,一つの正解にたどり着ければそれでいいのです。エンターテイメントは見ている人の満足がすべてで,自分の人生に関しては自分の満足がすべてっていう違いはあるけども。
まさか,MHXXをプレイしてこんな敗北感にまみれた気分になるとは思わなかったけど,それによって私も負けないように頑張れるのだとすれば,やはりエンターテイメントとしてモンハンは正解で偉大なのだなあ……と,これまた思い知らされる。そんなループを繰り返した今週のゲイムライフでした。
来週はほとんど試合が入っているので,ゲイムどうしたもんかなぁっていうのが目下の悩みだけども,それはそれとしてまた来週。ごきげんよう。
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「三國志13 with パワーアップキット」
PlayStation Vita:「レイジングループ」
Nintendo Switch:「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」
ニンテンドー3DS:「モンスターハンターダブルクロス」
iOS:「実況パワフルサッカー」
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