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男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第435回「私には友達がいない」
いや,いると言えばいるんだけども,それはだいたい仕事の友達というか,お互いのことを認め合って尊重し合えるような存在なのね。おかげさまで,そういう友達ならいっぱいいる。
ただ,いわゆる普段から遊んだり語らったりっていう意味での友達はいないのね。でも,それはもういいの。諦めたし,慣れた。ただね,友達は諦めたんだけども,もう一つのほうはまだ諦めきれないのよね。これすなわち,後輩から尊敬されるってやつ。
いやー私,尊敬されてないよねー。まあみんなトレーニングを重ねてリング上で命を賭けて戦っているのに,一方では鍛えもせずにリング上で性欲を開放して対戦相手の肉体を貪っているんだから。そりゃ尊敬もできないって話よ。
でも! もう言い回しとか回りくどい表現をせずにストレートに言ってしまうと,男ちゃん尊敬されたい。後輩から慕われたい。ほら,なんか後輩から慕われると面倒見がいいヤツって思われるじゃない。友達がいないなら,せめてそういう感じでチヤホヤされたい。
とはいえ現実はそうもいかず,上記のような状態なもんだから,尊敬はおろかむしろちょっと軽蔑されているフシすらあるわ。でも,諦めない。友達はできなきゃもうそれまでだけど,後輩は実際に存在するからね。あとは戦略を練って尊敬を勝ち取ればいいわけだから,友達よりもハードルは低いと思うのよ。で,そうやって機をうかがうこと数か月。ついに私が温めてきた作戦で尊敬を勝ち取るチャンスがやってきたわ。それが先週末の話。
まず,作戦の概要を説明いたしましょう。そもそもプロレスで尊敬されようとしても,ファイトスタイルが尊敬できないわけだから,それは無理なのよ。……うん,大丈夫。自分でもそこは自覚しているから。ホラ,敵を知り己を知れば百戦危うからずって言うじゃない。自分を冷静に捉える自己分析は大切よ。だから,プロレス以外で尊敬を集めなければならないわけ。それにはどうすればいいか。
そう,ゲイムですよ。私がほかのプロレスラーより優れているのは,ゲイムの知識なんです。で,私,最近注目してみました。バスでの移動時間という名の自由時間,最近の若い選手達が何をしているのか。なんと,Nintendo Switchをバスに持ち込んで,「マリオカート8 デラックス」なんかをワイワイ楽しんでいるんですよ。
このことに気付いたのが先週の話。私も当然Nintendo Switchは持っているけれども,バスには持ち込んだことはなかったのね。ポイントはここ。確かにここで一緒にNintendo Switchで遊んで,完膚なきまでに叩きのめすことは赤子の手をひねるが如し。でもね,それでは尊敬されない。大人げないオッサンという印象になってしまうだけなのね。
ではどうすればいいか。ゲイムの最先端にいますよ感。これですよ。ゲイムがうまいかどうかなんて,どうでもいいことなの。それよりも,“面白いゲイムを当然のようにサラッとプレイしている”。これさえ演出できれば,「最近面白いゲイムなんですか?」って聞いてくるのをきっかけに「へー! そんなゲイムあったんですか! さすがっすね!」になり,挙げ句の果てに「ゲイムのことは男さんに聞いておけば間違いないっすね! マジ尊敬っす! 自分,男さんのようになりたいっす!」ってことになるわけですよ。で,私も私でこう言ってやるの。「お前もこのゲイムのように誰からも好かれるような,そんなプロレスラーになるんだぞ」って。んー,聞こえるようだね。「パねえっす! 男さん最高っす!」って言う後輩達の尊敬に満ち溢れた声が。なので,ゲイムの最先端を走ってる感をどう出すかが尊敬への道のキモなわけです。
私としては,絶対に面白いであろうことは,もうなんとなく分かっていたわけですよ。任天堂がこの時期に発売するんだから,面白くないわけがない,と。Nintendo Switchを持っている人の多くはきっと,「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」を遊んで,マリオカード8 デラックスで楽しんで,それが一段落ついて「スプラトゥーン2」を待っている状態なんですよ現在。
そんなタイミングで,先輩である私が当然のようにバスの中でARMSをプレイしているわけね。ちょっと目立つように。すると,後輩達も気になって「何やってるんですか?」と聞いてくるじゃない。そこで,プレイを続けながらさらっと言ってやるの。「ああ,ARMS。駆け引きで戦うタイプの格闘ゲイムね。意外とプレイ感覚が斬新だよね。このタイトルは任天堂の新規IPなんだから,押さえておくのは当然でしょ。あれ? ひょっとしてノーマークだった?」って。結果,「やっぱゲイムは男さんだ。カッケー!」って流れになるんじゃないかしら。これが理想的な展開。
で,実際にバスでARMSをプレイしていたよね。もちろん,これ見よがしに。
……世の中,思いどおりにいかないもので,いっさいこっちを見ないよね,誰も。いや,そこは大げさに楽しそうにプレイしている先輩に注目してほしかったかなー。でも,無理は言いますまい。こちとら40年生きてんだ。すべてが理想どおりにいくとは思っちゃいない。
トイレ休憩のときに,逆に後輩の席に近付いて聞いてみたよね。「Nintendo Switchの何を……ヤっているのかな?」と。これには私の緻密な計算がはたらいていて,私が聞けば相手も社交辞令的に,私が何をプレイしているのかを聞いてくるでしょうよ。会話の流れとして。そのときでいいわ。当然のようにARMSって言って,あとはさっきの作戦の流れに……。
うん。聞き返してこないよね。ゼルダに夢中になっていて。どうやら最近プレイを始めたらしく。「何ヤってんの?」の問いに,「ゼルダは面白いっすね」の一点張り。何なら声かけんなオーラすら。いいのいいの。別の後輩もいるから。最終的に立っていたものが勝者なわけで。今ゼルダに夢中な後輩も,別の後輩からの口コミで「やっぱ男さんすげえよ」みたいな感じで伝播して尊敬してくれたって,何も悪くはない。
続いて別の後輩に聞いたよね。「今何してんの?」すると,まあまあビックリする答え返ってきたよね。「ARMSです」って。……うん,チェックしていたんだね。で,よくよく話聞くと私より全然強いよね。「自分,グランプリをレベル4でヤってるんですけどめちゃくちゃ強いっすね」だと。まあ,私も話合わせるというかちょっと上から目線でフカしたよね。「大事なのは間合いだよ。あとは,あえて動かないことも選択肢の一つ」的な。私はレベル2で勝てるかどうかってところなのに。もうね,その瞬間にとりあえず延期にしたよね。尊敬計画は。
尊敬って何なんだろうね。友達もいない,後輩から尊敬もされない。先輩から可愛がられることもない。それでも私は生きている。生きているから悲しいんだ。手のひらをお日様に透かして見たところ,頬を流れる僕の涙。ゲイレスラーだって,40歳独身だって,ぽっちゃり体形だって,みんなみんな生きているんだ。でも友達いないんだ。
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「ソルト アンド サンクチュアリ」
PlayStation Vita:「追放選挙」
Nintendo Switch:「ARMS」
ニンテンドー3DS:「アルケミックダンジョンズ」
iOS:「実況パワフルサッカー」
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