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[G★2008#20]ゲームを作って31年。ベテラン開発者Gordon Walton氏が語るMMOの重要性
講演では,MMOの元になったMUD(Multi-User Dungeon/テキスト形式のオンラインゲーム)などを紹介し,その歴史を振り返った。その中で氏は,オンラインゲームの基礎となっているインターネットの技術が,歴史の中でコミュニケーション方法を大きく変えてきたと指摘した。
オンラインだけでの知り合いというのも今や珍しいことではなく,オンラインで知り合って交流を深めたあと,実際に顔を合わせるようになることも少なくない。MMOは,そんな状況の変化に一役買ってきたというわけである。
1994年以降に生まれた人達は,インターネットがない世界を知らず,携帯電話も普通になっていることから,連絡がつかないという状況に慣れていない。基本的にはいつでも連絡がとれることが当たり前となっている。
Walton氏によれば,インターネットは,コミュニティとフレンドシップの定義を変えた存在なのだという。インターネットの普及前は,仮想のコミュニティなどといったものは机上の空論で,ほとんど実在していなかったが,今では世の中に数多くの仮想世界が溢れ,多様なコミュニティが誕生し続けている。
また,今後MMOの開発に携わりたいと思っているのであれば,ゲームそのものより,心理学や社会学を学ぶことが重要になるとも指摘。なぜなら,多くの人が集まったとき,彼らがどのような行動をとり,どのようなことから楽しみを得るのか考える必要があるからだという。
このことをおろそかにして開発されたゲームは,マップやアイテム,モンスターなどのコンテンツを作り続けることでプレイヤーをつなぎとめていくしかないし,それではビジネスとしてうまく回らなくなる。このままでは最終的に,MMOを作る会社がいなくなる事態を招いてしまうだろう。簡単にまとめると,以上が今回の講演におけるWalton氏の主張である。
Walton氏のいうことが必ずしも正しいというわけではないだろう。事実,ヒットを飛ばしているMMOの中にも,ひんぱんに新コンテンツを提供し続けているものは存在する。ただ,昨今のオンラインゲームがこぞってコミュニティ重視の傾向を持つことを視野に入れると,あんがい示唆に富んだ公演であったように思う。もし数年後,どのような形でMMOが生き残っているかを検証する機会があれば,そのときには結論を出せるのかもしれない。
最後にWalton氏は,「世界を創造しているという意識を決して忘れず,誇りを持ってゲーム開発を行ってほしい」と,会場に集まった開発者達にエールを贈り,講演を締めくくった。
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