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  • 発表日:2008/03/03
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TDP 4Wの超低消費電力CPU「Atom」で,どこまでゲームはプレイできるのか?
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印刷2008/07/10 11:30

テストレポート

TDP 4Wの超低消費電力CPU「Atom」で,どこまでゲームはプレイできるのか?

細長いダイレイアウトが採用されているAtomプロセッサ
画像集#003のサムネイル/TDP 4Wの超低消費電力CPU「Atom」で,どこまでゲームはプレイできるのか?
 Intelから登場した新しいブランドのCPU,「Atom」(アトム)。同CPUを搭載するマザーボードが,数社から発売された。
 Atomというと,ASUSTeK Computerの「Eee PC 901」などで採用されていることから,超小型ノートPC向けというイメージを抱くかもしれない。しかし今回取り上げるのは,Intelのいう「Nettop」(ネットトップ)向け,つまり,インターネットにアクセスして,Webブラウジングやメールのやりとりなどを行うための“デスクトップPC未満”な端末に向けたAtomである。初めから安価なインターネット端末に向けたCPUということもあり,決してゲーム向けではないのだが,小型PC好きの人達や,コストパフォーマンスを追求する人達からの注目度はかなり高いので,4Gamer読者のなかにも,気になっている人はいるかもしれない。
 というわけで,いつものハードウェアレビューやテストレポートとはちょっと違った視点で,超低消費電力CPUであるAtomが,どの程度ゲーマー向きかをレポートしてみたい。


Atom 230搭載のIntel製Mini-ITXボード

「D945GCLF」を試す


AtomをデスクトップPCで使用できるマザーボードIntel D945GCLF。1辺17cmと小型である
画像集#002のサムネイル/TDP 4Wの超低消費電力CPU「Atom」で,どこまでゲームはプレイできるのか?
 ところでAtomは,Core 2ファミリーのCPUとは違い,単体販売されていない。マザーボードに“取り付けられた”状態でのみ手に入れることができる。その一つが,Intel純正マザーボード「D945GCLF」だ。実勢価格は1万円以下(※2008年7月現在)で,CPUとマザーボードのセットということを考えれば,とにかく安い。マザーボードのサイズはわずか171×171mmで,VIA Technologiesの提唱する「Mini-ITX」フォームファクタ準拠となる。

 D945GCLFに搭載されているAtomは「Atom 230/1.60GHz」。45nm High-kプロセスで製造されるAtom 230が持つ最大の特徴は,消費電力の目安となるTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)がわずか4Wということだ。さらに,動作限界温度の目安となるT-Caseも85.2℃と,非常に余裕がある。
 誤解を恐れずにいえば,TDPは低いほど消費電力が低く,T-Caseは高いほど,冷却面にあまり気を配らなくてよくなる。デスクトップPC向けのCPU,例えば「Core 2 Duo E7200/2.53GHz」だと,TDP 65W,T-Case 74.1℃。それと比べると,Atom 230の消費電力がいかに低く,そして,いかに静音化しやすい(=冷却ファンのサイズや回転数を落とせる)か,ある程度イメージできるのではなかろうか。
 Eee PCなどの「Netbook」用とされるAtom(=Atom N270/1.60GHz)と比べると,省電力機能の「Enhanced Intel SpeedStep Technology」が省かれており,アイドル時に動作クロックが下がったり,コア電圧が低下したりはしない。

 このほか主なスペックを見ておくと,L2キャッシュ容量は512KBで,FSBクロック533MHz。シングルコアで,Hyper-Threadingテクノロジーをサポートする。対応するマルチメディア拡張命令セットはSSE,SSE2およびSSE3で,Intel 64もサポートされている。命令セットは最新のものまでサポートしているため,x86用のプログラムを支障なく実行できるものの,実行速度などは保証の限りではない。いろいろと縮小されたCPUなので,そのへんは割り引いて見ておく必要がある。

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「CPU-Z」(Version 1.45)でAtom 230のスペックをチェックしたところ
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Atom 230はマルチコアCPUではないが,Hyper-Threadingに対応しているため,見かけ上は2CPUとして振るまう

 続いては,Atom 230を実装するD945GCLFだが,搭載するチップセットは「Intel 945GC Express」。これは(Core 2ファミリーの下位モデルである)Pentium Dual-Core用にもともと用意されていた製品で,統合されるグラフィックス機能は「Intel Graphics Media Accelerator 950」(以下,GMA950)なので,頂点シェーダはCPUによるソフトウェアエミュレーションになるものの,一応はプログラマブルシェーダ2.0(Shader Model 2.0)対応ということになる。

左:Intel 82945GC。GMA950を内蔵している 右:ICH7(Intel 82801GB)
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メモリソケットは1本で,拡張スロットもPCIが1本のみ
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 対応メモリはPC2-5300/4200で,チップセットレベルではデュアルチャネルをサポートするが,D945GCLFはMini-ITXというサイズ的な制約からDIMMスロットを1本しか持たないため,シングルチャネルアクセスとなる点には注意したい。
 同様に,チップセットレベルではPCI Experss x16スロットなどもサポートされるのだが,同じくサイズ的な要因によってか,拡張スロットはPCI×1のみとなっている。

I/Oパネル部分では一般的なインタフェースが揃っているが,DVI端子もほしかったところ
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 とまあ,CPUのスペックもマザーボードのスペックも,決して一線級ではないため,これでPCゲームをプレイするというのはかなりハードルが高いことが予想されるが,逆にいえば,このスペックで動作するゲームをプレイする限り,超低消費電力かつ,超小型のPCを作ることができるわけである。電気代が大幅に上がる可能性のある昨今,最適な解決策となるかもしれない。
 そこで今回試すことにしたのは,比較的負荷の低そうなゲームタイトルをいくつかである。パフォーマンスをねちねちと計測しても詮ないので,「実際のところはどうなのか」をレポートしていきたいと思う。最後にまとめて,実際に動いているさまをムービーで収録したのでそちらも併せてご覧いただきたい。
 念のため記しておくと,テスト環境はのとおりだ。

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ベンチマークで見るAtom搭載PCのパフォーマンス


 というわけで一般的なベンチマークテストの結果である。結論からいうと,予想どおりというかなんというか,かなり残念なスコアになっている。

3DMark06 Build 1.1.0:93 3DMarks
3DMark05 Build 1.3.0:242 3DMarks
Vana'diel Bench 3(Version 1.0)- Low:1429
Vana'diel Bench 3(Version 1.0)- High:1020

 「3DMark06 Build 1.1.0」についていうと,「HDR/SM3.0」を実行できないのは織り込み済みだったとはいえ,「Game Test」だけで完走に30分近い時間がかかったのは,なかなか衝撃的だった。また,「3DMark05 Build 1.3.0」も見事に“紙芝居”。正直,動いただけ立派といったレベルで,(3DMarkのスコアは,ゲームパフォーマンスと直結しないとはいうものの)DirectX 9世代の3Dゲームをプレイするのは諦めたほうが賢明ではないかと思わせるスコアになっている。
(ムービー内:00:00〜00:28)

画像集#012のサムネイル/TDP 4Wの超低消費電力CPU「Atom」で,どこまでゲームはプレイできるのか? 画像集#013のサムネイル/TDP 4Wの超低消費電力CPU「Atom」で,どこまでゲームはプレイできるのか?

 「ファイナルファンタジーXI」のオフィシャルベンチマークテストとなる「Vana'diel Bench 3」も,予想どおりというかなんというか,厳しい値だ。


実際にAtom搭載PCでゲームをプレイすると?


 以上,メインの3Dゲーム用PCとして無理なことはよく分かったが,では,どのクラスのゲームならどれくらい動作するのだろうか? さまざまな種類のゲームを実際に試してみた。

オンラインRPG:シールオンライン

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 3DのオンラインRPGなので比較的メモリ食いではあるが,グラフィックス機能の要求はそれほど高くない「シールオンライン」。解像度1024×768ドットくらいまでなら十分快適にプレイ可能だ。ただし,ウインドウ表示ではかなり“重く”なるため,基本的にはフル画面モードでプレイすることになる。キャラクターが多い街での散策はやや重くカクつきが気になるものの,フィールドでの戦闘は十分こなせる。この系統のMMPORPGなら,ほとんど問題なくプレイできそうだ。
(ムービー内:00:29〜00:55)

オンラインアクション:モンスターハンター フロンティア オンライン

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 「モンスターハンター フロンティア オンライン」は,比較的低スペックのPCで動作するのがウリだが,プレイ感はSealOnlineと同様だ。キャラクターやオブジェクト(NPCを含む)が多い街での移動は,やや“もっさり”感が漂うものの,比較的閑散としているフィールドでの戦闘なら問題なく行える。こちらも解像度は1024×768ドットでのフル画面モードを推奨したい。

マップ探索型アドベンチャー:暁のアマネカと蒼い巨神

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 2Dゲームの「暁のアマネカと蒼い巨神」ではどうだろうか? アドベンチャーパートは,まったく問題なくサクサクと進んでいく。またシミュレーションパート(地下探索)やマップ移動なども快適だ。ウインドウモードでも快適さは失われず,2D主体のアドベンチャーゲームなどであれば,まず問題なくプレイできるといえる。
(ムービー内:00:56〜01:04)

歴史シム:シヴィライゼーション4

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 歴史シミュレーションゲームの代表「シヴィライゼーション4」。ムービーはアニメーションオプションをすべて有効にした状態のものだ。解像度は1024×768ドットで撮影しているが,マップスクロールはかなり重く,ストレスが溜まる。マウスの反応も鈍く,「プレイできない」ほどではないが快適でもない。アニメーションオプション類をすべてオフにして,解像度も800×600ドットほどにすれば,レスポンスが上がって,プレイできなくもないといった感じだ。ただし,ターンが進むとCPUの思考時間も長くなるため,大きなマップでのプレイは避けたほうがいいだろう。
(ムービー内:01:05〜01:36)

ストラテジー:ハーツ オブ アイアンIIドゥームズデイ アルマゲドン

画像集#018のサムネイル/TDP 4Wの超低消費電力CPU「Atom」で,どこまでゲームはプレイできるのか?
 4Gamerではなにかと話題になることも多い,第二次世界大戦をモチーフにした歴史シミュレーション「ハーツ オブ アイアンIIドゥームズデイ アルマゲドン」をプレイしてみた。こちらは2D表示になるが,プレイ感はシヴィライゼーション4と似た感じだ。マウスによるマップ移動はややまどろっこしく,快適とはいいがたい。外交メニューや生産メニューなどのウィンド表示もターンが進むにつれて遅くなっていくため,長めのキャンペーンなどをプレイにするには,ちょっとした忍耐を強いられるかもしれない。
(ムービー内:01:37〜02:07)

 以下に,動作画面直撮りで3DMark05および各種ゲームをプレイしている状態をムービーにしてみたので,その動きっぷりは各自で判断していただきたい。なお,都合により,モンスターハンター フロンティア オンラインの動画は割愛させていただいたのでご了承を。


ゲーマーにとってのAtomは?


 以上,D945GCLF(≒Atom 230とGMA 950)のパフォーマンスを見てきたわけだが,CPUパワー,あるいはグラフィックスパワーを要求されるものはやはり荷が重すぎる。FPSはもちろん,処理する情報量の多いシミュレーションなどで,快適なプレイは期待できない。

 しかし,ゲームタイトルを絞れば,十分ゲームになるという感覚も得られた。あるいは,比較的負荷の高いオンラインRPGでも,パフォーマンスの求められない作業,例えば生産などを行うときに,メインPCの脇でちょっと動かしておくようなときには,十分使えそうだ。
 CPUとマザーボードあわせて1万円を切る価格を考慮し,消費電力が低いという大きな利点とのトレードオフと考えれば十分納得できるレベルだろう。セカンドPCとして使ったとき,あまり電気代のことを考えなくていいのは魅力といえ,その点に価値を見いだせれば,自作派ゲーマーにとっても,なかなか面白い存在といえるのではなかろうか。
  • 関連タイトル:

    Atom

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