インタビュー
「TERA」ではこれからどのようなアップデートが予定されているのか。開発元のBluehole Studioに展望を聞いてみた
4Gamer:
お忙しい中,ありがとうございます。会場はもうご覧になりましたか?
キム・ガンソク氏(以下,キム氏):
実はまだなんです。このあと軽く見て回る予定ですが,TERAの開発ミーティングがあるのですぐに本社へ戻らなければなりません。
4Gamer:
去年のG-StarはTERA一色の光景だったのが,なんだか懐かしいですね。
ええ,私もです。会場内だけでなく,釜山駅の周辺や巡回バスなどでもTERAの垂れ幕やラッピングを見かけて,あのときはまるで自分が主人公になったかのような気分でした(笑)。
4Gamer:
そんなTERAも,日本では8月に正式サービスが開始し,ある程度時間が経ちました。現在の手ごたえはいかがでしょうか。
キム氏:
日本でも多くの皆さんがTERAをプレイして下さっていて,とても感謝しています。開発元の立場としては,韓国でアップデートされた内容が,日本へ素早くローカライズされてることにも満足しています。ワールドワイドで展開するにあたり,そこは最も大切にしている部分ですので。
4Gamer:
韓国で実装されてから,約1か月ほどで日本にも実装されていますからね。ローカライズの速さには驚かされます。
ところで,TERAのゲームバランスは基本的にワールドワイドで共通仕様となっていますよね。日本からのフィードバックを実際に受けてみて,それぞれの国のプレイスタイルの印象に変化などはありましたか?
キム氏:
やはり,日本と韓国ではフィードバックに違いがあります。韓国ではあまり問題にならなくても日本では大きな反応をいただいたり,日本で問題になっている部分が,韓国では何事もないかのようにスルーされていたりします。こういった地域ごとのニーズを把握してバランスよく反映させるのは,想像していた以上に大変です。
4Gamer:
具体的にどういった部分で,日韓プレイヤーの違いが顕著に表れていますか?
キム氏:
例えば,事前にある程度予想していたことですが,アイテムドロップに対する期待値などは違っていますね。それと,以前4Gamerさんのインタビューでも取り上げられましたが,ウォーリアーに求められる役割は,韓国と日本とでだいぶ違います。韓国ではアタッカーとしての役割を求められていますが,日本ではどちらかというとタンクとして期待されています。
4Gamer:
なるほど。たしかに,ウォーリアーがアタッカーとして調整されたときには「タンクとしての役割はどうなった」という声も多かった気がします。
ともあれ,そういった諸々の事情はあるとして,全体的に見ると,TERAの開発作業は順調と考えて良いのでしょうか。
キム氏:
はい。現在Bluehole Studioには約290名のスタッフが在籍していて,韓国でのアップデート作業はもちろん,日本などのローンチ国のニーズを汲み上げ,提供できるように頑張っています。また,これからサービスを迎える欧米のローンチに向けての準備が,現在正念場を迎えているところです。
今後のアップデートも着々と準備中
4Gamer:
TERAの今後について,大まかなビジョンなどをお聞かせいただければと思います。まずはTERAのキモであるPvEについてですが,今後はどういった展望を考えていますか。
キム氏:
インスタンスダンジョンの追加やフィールドエリアの拡大などを,これからも行っていく予定です。また,将来的にレベルキャップの開放なども検討していきます。
4Gamer:
TERAはレベル上げが手軽に行えることもあり,キャップに到達してからのエンドコンテンツが不足しているのでは,という声も聞かれますし,正直なところ私もそう思っています。この点については,どのように把握しており,どういった展望を考えていますか。
キム氏:
韓国のプレイヤーからも同じ要望が多いですが,日本ではPvEのニーズがとくに高いこともあり,その現状はしっかり受け止めています。
この点に関しては現在,社内のリソースを多く割いて,急ピッチで開発作業を進めているところです。ただ,TERAのシステムはフリーターゲティングということもあり,一般的なMMORPGのタイトルと比べて,どうしてもバランス調整や開発に時間が掛かってしまっています。熱心なプレイヤーの皆さんに対しては,お待たせしてしまって申しわけありませんという気持ちでいっぱいです。
4Gamer:
フリーターゲティングのパーティプレイはコアな人からも人気が高いですが,それだけに作る側にとっては大変なんですね,きっと。
キム氏:
ええ。ここはTERAの面白さの要だと思っており,サービス開始後も期待通りの良い反響をいただいています。ですので,ソロプレイよりもパーティプレイを重視したバランスは,今後も変えるつもりはありません。
この点に関しては,パーティプレイの魅力をもっと引き出すべく,フィールドエリアでのパーティ編成の人数をもう少し拡大できないものかと検討しています。
4Gamer:
それは気になる話ですね。何人に増えるのでしょうか。
キム氏:
まだ詳細を言える段階ではありません。仮にパーティ編成可能な人数を増やすとなると,それに見合う形でモンスターやインスタンスダンジョンなど,ゲーム全体のバランスを調整する必要が出てきます。また人数が増えるとなると,従来のコンテンツも簡単になってしまうので,そのあたりも含めて慎重に検討している段階です。
4Gamer:
なるほど。パーティプレイに関連して,今のタイミングでほかにお聞きできる内容はありますか。
キム氏:
あとは,インスタンスダンジョンでの攻略時に,何らかの形で目標が設定できるといいなと考えています。例えばの話ですが,より短い時間でクリアしたり,重要なモンスターを多く倒してクリアすることでランク付けされて,名声ポイントが得られたりとか。そういった結果に応じて,キャラクターの名前に称号が付けられたりすると面白いのではないでしょうか。
4Gamer:
クラスバランスに関してはどうでしょう?
キム氏:
韓国では2011年末から1月にかけて,大型のアップデートを予定しています。現在詳細を詰めている段階ですが,そのときは3クラス(※)に関してバランス調整が行われるでしょう。日本へのローカライズ作業も,今までどおり素早く行いたいと思っています。
※インタビュー時点では3クラスの詳細を教えてもらえなかったが,現在はスレイヤー,アーチャー,プリーストが「一定時間で敵に与えるダメージをクラス間で平均化」する方向で調整されることが明らかになっている。
4Gamer:
続いて,PvP(対人戦)についてです。最近のアップデートでPvPコンテンツが実装され始めています。韓国のTERAプレイヤーにとって,PvPのニーズは大きいのでしょうか。
必ずしもそうではないですが,MMORPGの遊び方の幅を広げるための一つとして,PvPの選択肢があったほうが望ましいと思っています。先ほども話に挙がりましたが,PvEのエンドコンテンツ開発に時間を要しているという現状もありますし。
4Gamer:
PvPに関して,今後どういったアップデートを行っていきたいとお考えですか。
キム氏:
これはまだ,私の構想レベルの話なのですが。プレイヤー同士が直接戦うだけでなく,その周辺環境を支えたりすることでも楽しめる方法はないかな,と検討しています。たとえば武器を作って供給したり,経済面からPvPを支えられたりすると,遊び方がもっと広がると思うんですよ。
4Gamer:
それは,対人戦の操作が苦手な人でも参加できそうですね。もしかすると“領”に関連したシステムでしょうか?
キム氏:
いえ。これに関しても,詳細は申し上げられなくてごめんなさい。現在ギルドバトルが実装されていますが,それよりもっと大きな規模でのPvPができないか,という方向で模索していますので,期待していてください。
4Gamer:
では,PvEやPvPとは違ったアプローチのコンテンツの計画についてはどうでしょう。ほかのタイトルでは,例えばハウジングや釣りなどが人気ですが。
キム氏:
そういった方向性で開発に着手しているコンテンツも,もちろんあります。しかし,私も言いたいのは山々なのですが,公の場で言うには時期尚早といったところですね。
今後は欧米に向けてローンチ
4Gamer:
では話を変えまして,ワールドワイド展開の現状についてお聞かせください。
キム氏:
先ほども少し申し上げましたが,2012年の春にアメリカとヨーロッパでローンチを行う予定で,そのために頑張っています。韓国での開発や,日本からのフィードバック吸収/反映と並行して行っているので,かなり大変です。
4Gamer:
日本と韓国のプレイヤーでニーズは違いますが,もしかするとそれ以上に,欧米のニーズは違っているかもしれませんね。
キム氏:
そうかもしれません。ただ,それでも地域ごとのカルチャライズに関しては,現在も行わない方針です。厳密に言うと,ローンチした国別にアップデートの導入順などを変えたりはしているのですが,基本的には同じ内容を実装していきます。
4Gamer:
ところで,既に発表されている情報によると,欧米向けにシナリオを重視するべく,著名なファンタジー小説家を招いてるとのことですね。
キム氏:
ええ。欧米では正統派ファンタジーの人気が根強く,Blueholeの支社を北米に設立するにあたり,そういったシナリオが書ける人を確保しました。日本でもご存知の方がいるかもしれませんが,たとえばディヴィッド・ヌナン(David Noonan)という作家や,映画“ロード・オブ・ザ・リング”を手がけた作家チームが,Blueholeの北米スタジオに参加しています。現在,彼らがTERAの世界設定やクエスト,イベントのスクリプトなどを手がけています。
4Gamer:
アップデート内容が世界共通ということは,そういった欧米発のシナリオも,今後ほかの国でもローカライズされるという認識で良いのでしょうか。
キム氏:
そうなるかもしれないですね。まだ欧米でのサービスが始まっていない段階なので,具体的なことは申し上げられませんが,TERAの世界にマッチしたシナリオを作ってくれているので,ぜひ期待していてください。
日本運営を行うNHN Japanとの関係は良好
4Gamer:
日本でのサービスはNHN Japanが行っていますが,一緒に仕事を行ってきて,手ごたえはいかがでしょうか。
キム氏:
非常に作業が行いやすく,我々も助かっています。何より,フィードバックを積極的に届けてくれるのが大きいですね。その結果,韓国でのアップデート内容が,それほど日数を置くことなく日本へローカライズできるのです。
例えば日本では,大型アップデート“進化”が11月22日に実施されますが(※),これは韓国で約1か月前に行われたものです。TERAのアップデートや,不正対策などの日常業務の規模を踏まえると,やはりNHN Japanと組んで良かったなと思います。
※現在,実装済み。インタビュー時点では実装されていなかった。
4Gamer:
私も日本のTERA運営チームと接する機会は多いですが,一般のプレイヤーから見えない部分も含めて,かなり頑張ってるように思えます。
キム氏:
韓国版のTERAでは,今年末から来年春にかけての予定がほぼ確定しています。そのときに,レベルキャップの開放やデイリークエストの追加,新しいインスタンスダンジョンの追加などが行われますが,それが日本でも早く反映できるよう,これからも頑張っていきたいですね。
4Gamer:
今後,TERAをほかの国でローンチすることもあると思いますが,海外のパブリッシャと一緒に仕事をするにあたり,どの部分を大切にしていますか。
キム氏:
私が一番強く求めるのは,現地で実際に遊んでいるプレイヤーさん達からの要望を,素早く我々に届けてくれることです。その意味において,NHN Japanのレスポンスは全体的に満足していますが,これからも引き続き,そしてより一層良好な関係を築いていければ幸いですね。
4Gamer:
日本のプレイヤーの生の声という意味では,プレイ料金に対する要望も多そうです。キムさんはどのように認識されていますか。
キム氏:
サービス開始後も,両者間で引き続きよりよいプランでお客様がプレイできるように話し合っています。ライトプランもそういったご意見を踏まえてリリースしたものです。
4Gamer:
なるほど,あれは両社の協議の結果,実施されていたのですね。
それでは最後に,日本のTERAプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
TERAを遊んでくださっている方に対しては,ありがとうございますという感謝の気持ちでいっぱいです。エンドコンテンツの不足などに関しては我々も重々承知しており,現在Blueholeの社員290名が一丸となって,TERAをもっと良くしようと努力しています。
日本のTERAに関しても,NHN Japanとの関係が良好で,スピーディなローカライズが実現できています。これからも要望を積極的に吸い上げ,検討していきますので,思うことがありましたら率直に意見を述べてください。よろしくお願いします。
4Gamer:
本日はお忙しい中,ありがとうございました。
なんとか新情報を聞こうとはしたものの,今回のタイミングではキム氏のガードは非常に堅く,はっきりしたアップデート内容などは話してもらえなかった。そんな中でも,韓国で今年末から来年春にかけて,レベルキャップの開放やインスタンスダンジョンの追加が行われる予定というのは,なかなか大きな情報ではないだろうか。とくに,現状の最高難度ダンジョン「ケルサイクの巣(上級)」はとんでもなく凶悪な難しさだが,レベルキャップが開放されれば少しは戦いやすくなるかもしれない。
キム氏が「まだ話せない」というさまざまなアップデートを含め,今後の展開に期待したいところである。
「TERA The Exiled Realm of Arborea」公式サイト
- 関連タイトル:
TERA :The Exiled Realm of Arborea
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