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セキュリティソフトでは守れない!? Windows XPサポート終了を控えてMicrosoftとセキュリティソフトベンダーが警告
2013年12月〜2014年1月にかけて4Gamerで開催した「2013年 冬の特大プレゼント」でのアンケート調査結果を見ると,4Gamer読者に占めるWindows XPユーザーの割合は約8.5%で,比率の上では決して多くない。だが,OS別に見ればWindows 7,Windows 8.x(32bit,64bit版の合計)に次ぐ第3位の数であり,まだまだ多くのユーザーがWindows XPを使い続けていることが分かる。
あるいは,自分自身は使っていないが,家族の使うPCがまだWindows XPだという人もいるはずだ。筆者も実家の老父母が使っているPCがWindows XPなので,どうしたものかと頭を悩ませている。
2014年2月13日,Microsoftの日本法人である日本マイクロソフトは,セキュリティソフトベンダーと共同で記者説明会を開催し,4月9日以降もWindows XPを使い続けることのリスクについて説明した。「1ゲーマーの自分には関係ないよ」と思う人もいるだろうが,決して他人事では済まされない話なので,説明会の内容をもとに,Windows XPを使い続けることのリスクと対策を説明しよう。
Windows XPサポート終了後のリスクについて説明した。日本マイクロソフト 最高技術責任者の加治佐俊一氏と,チーフセキュリティアドバイザーの高橋正和氏 |
サポートが切れるとWindows XPはどうなるのか?
そもそも「Windows XPのサポートが終了する」とは,どういうことなのだろうか? これにはいくつかの要素が含まれるのだが,一番重要な点は「Microsoftからセキュリティ更新プログラムが提供されなくなる」ことだ。今は毎月中旬頃に,
セキュリティ更新プログラムが提供されないということは,今後Windows XPに何かセキュリティ面での問題(セキュリティホール)が見つかったとしても,それを修正して穴埋めすることができなくなるのだ。
新しいセキュリティホールが見つかっても,それを穴埋めするセキュリティ更新プログラムが提供されないということは,その穴を利用してPCを攻撃しようとする攻撃者からPCを守ることが困難になることを意味する。
いうなれば,玄関の鍵が壊れているのに,修理する手段がないといったようなものだ。鍵が壊れても玄関の前か外で見張り番をしていれば,泥棒に侵入される可能性を低くできるだろう。だが,裏口や窓の鍵も壊れてしまえば,そこから侵入されるかもしれない。サポートの切れたOSというのは,こういう状況に似たようなものなのだ。
2001年に登場して以降,Windows XPには大量の更新プログラムが提供されており,多くのセキュリティホールが埋められた。それゆえ,「Windows XPは長年使い続けられた『枯れたOS』だから安心」などという意見を目にすることもある。しかし,Windows XPからこれ以上深刻なセキュリティホールが見つかることはないと,誰も保証などできないし,実際見つかっていないだけのセキュリティホールは,まだあるだろう。
攻撃する側もまた,Windows XPに新しいセキュリティホールが見つかれば,それを使って積極的に狙ってくるだろう。攻撃の成功率が高まるのだから当たり前だ。サポートの切れたWindows XPを使い続けるというのは,そうした危険を抱え続けることを意味するのである。
「うちのWindows XPマシンには,ウイルス対策ソフトやセキュリティソフトを入れてるから大丈夫でしょう」という考えの人もいるだろう。しかし,今回の説明会に登壇した多くのセキュリティソフトベンダーの担当者は,口を揃えて「セキュリティソフトだけでは守れない」「セキュリティソフトはパッチ(更新プログラム)にはかなわない」と述べている。もちろん,Microsoft主催のイベントだからそう発言したという面はあるだろうが,それが事実であることも確かだ。
現代のセキュリティソフトは多機能で優秀ではあるが,万能な防壁というわけではない。先に挙げた壊れた鍵と見張り番の例でいえば,玄関の内側にいる見張り番のようなものだろうか。有能な見張り番がいれば心強くはあるが,鍵が壊れているという問題を解消できていない以上,見張り番の盲点を突いてこられる可能性はある。攻撃の手段も多様化しているので,導入しているセキュリティソフトによっては,防ぎようのない場合もあるだろう。
「危険なサイトにはアクセスしない」「怪しいファイルやリンクはクリックしない」という対策を心がけている人は少なくないと思うが,そんな程度では足らないのが,現代のセキュリティリスクだ。信頼できる人物やサービスからのメールを装って危険なリンクやファイルを使わせるとか,信用のおけそうなWebサイトやサービスに罠をしかけておき,アクセスしただけでPCに不正なプログラムを埋め込むという手段は珍しくもない。すべてを「注意すること」だけで回避するのは無理というものだろう。
「うちには取られて困るような情報なんかないよ」「オンラインバンキングは使ってないから問題ない」と考えている人もいるだろう。しかし,オンラインゲームのログインIDとパスワードを盗まれて,ゲーム内資産が奪われるという事件を聞いたことがないだろうか。特定のゲームを狙ったハッキングプログラムも流通しており,ゲーマーにとっては現実的な悪夢だ。
攻撃の多様化を表したスライド。多種多様な攻撃手段が開発され,ユーザーは常に狙われ続けている |
PCへの攻撃は,今や金銭や重要な情報を盗むことに変化している。右下にオンラインゲームがあることに注目 |
あるいは,侵入してきた攻撃者によって自分のPCに不正なプログラムを仕込まれ,知らないうちに遠隔操作されて他人への攻撃に利用されるということもある。ちなみに,そうした不正プログラムを埋め込まれて遠隔操作可能にされたPCのことを,「ゾンビPC」や「ゾンビコンピュータ」と呼ぶこともあるのだが,自分のPCを他人の命令で動くゾンビにされたいと思うだろうか。
Windows XPを使い続けることの危険というのは,こうしたリスクから身を守れなくなっていくということなのだ。
根本的な対策はOSの更新しかない
最低でもWindows 7へアップグレードを
Windows XPのリスクについての話が長くなってしまったが,それではどういう対策を取れば,Windowsを使い続けながら危険から身を守れるのだろうか。答えは単純で,できる限り最新のWindowsにアップグレードすることだ。
Windowsは進化するごとに,さまざまなセキュリティ対策を取り込んできているし,セキュリティホールがあっても,まだサポート期間は十分残っている。最新のOS,つまり今ならWindows 8.1に移行するのが一番確実な対策である。
Windows XP自体のPCやインターネットと,現代のそれを比較したスライド(左)。PCの性能向上に合わせて,OS自体の防御機能も大幅に強化された。右のスライドは,Windows XPとWindows 8.1の不正プログラムに対する感染率を比較したグラフだ。両者を比べると21倍もの差があるという |
とはいえ,OSの見た目や操作感が変わることを嫌ったり,ゲームの動作保証がないことを懸念したりといった理由で,Windows 8.1にアップグレードすることをためらう人は少なくないだろう。そうした制約がある人なら,Windows 7に移行しておくことが,安全性を向上できるベターな選択肢となるはずだ。
ところでセキュリティとは異なるが,PCゲーマーにとって最新OSに移行すべき重要な理由はほかにもある。それは,今後のPCゲームでは,64bit OSでしか動作しないゲームが増えてくるという可能性だ。
PlayStation 4やXbox Oneは8GBのメモリを搭載しているので,最新のゲームではより多くのメモリを使うものが作られるようになった。つまり,これらを対象に作られたゲームのPC版もまた,必要になるメモリ量が増えてくる可能性が高い。最近の例では,PC版「Titanfall」の必要動作環境に,64bit OSが挙げられているというものがある(関連記事)。コンシューマ向けには事実上32bit版しかないWindows XPでは,これらのゲームを動かすことは不可能になっていくわけだ。
セキュリティ対策だけでなく,今後のゲームを快適に遊ぶためにも,新しいWindowsへの移行が必要になっている。もしまだWindows XPを使っているというなら,真剣に移行を検討してほしい。
Windows XPサポート終了に関する情報ページ
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