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[iPhone]IGDA日本のセミナーレポート。CRIの最新ミドルウェア「CLOUDIA」の詳細や,インベーダーシリーズ最新作の誕生秘話を公開
今回のセミナーでは,CRI・ミドルウェアが提供予定のマーケティング支援サービス「CLOUDIA」の詳細や,インベーダーシリーズ最新作「スペースインベーダー インフィニティジーン」の誕生秘話が公開された。
本稿では,iPhone/iPod touchゲーム/アプリの開発者を中心に100名以上の人が集まり,講演者の話に熱心に耳を傾けていた今回のセミナーの様子をレポートする。
なお4Gamerでは,同シリーズセミナーの第1回「App Storeの現状を考える」のレポート記事も掲載しているので,こちらも併せてご一読を。
本邦初公開! マーケティング支援サービス「CLOUDIA」とは
CRI・ミドルウェアは主に,その社名からも想像がつくように,「ミドルウェア」と呼ばれるソフトウェアの開発/販売を手がけている。ミドルウェアは,OSとアプリケーションのあいだに介在し,グラフィックスやサウンド,ネットワークなどに関するさまざまな機能を提供するソフトウェアのことだ。
デベロッパは,ミドルウェアを用いることで,アプリケーションの根幹的な機能に関する開発の手間を削減できる。コスト削減だけでなく,アプリケーションそのもののデザインに力を注げるというメリットがあるのだ。
今回のセミナーで幅氏は,ムービーの移動や拡大/縮小,回転といった操作を容易に行えるようにする「Sofdec for iPhone/iPod touch」や,音声の品質を保ちつつ,より小さいサイズに圧縮できる「CRI ADX for iPhone/iPod touch」を紹介したあと,あらゆる形式のファイルを圧縮することでロード時間を短縮できる「ファイルマジックPRO」のiPhone/iPod touch版を開発していることを明らかにした。
そしてここからが本題。以前レポート記事を掲載したセミナーで,幅氏が「クラウド対応型マーケティング支援ツール」とだけ紹介していた「CLOUDIA」というミドルウェアの概要が,初めて公開されたのである。
幅氏は,それに対する一つの答えとして,3月に開かれた「Game Developers Conference 2009」において,すでにApp Storeで大きな成功を収めている複数のパブリッシャがその重要性を説いていたという,「インアプリPR」というキーワードを紹介した。
インアプリPRは,自社アプリ内で自社のほかのアプリを積極的にPRすることだ。
幅氏は続いて,このインアプリPRの課題として,それ自体を魅力的なものにするのが難しいことや,新アプリをリリースするたびに,既存のアプリすべてをリビルドし,Appleに申請しなおす必要があること,広告追加のためだけのアップデートではクレームが寄せられる可能性があることを挙げた。
また,インアプリPRのシステムを,自社のすべてのアプリに実装するための汎用化作業にコストを回しづらいことや,ユーザーに飽きられないよう,新鮮な告知スタイルを追加していく必要があることも指摘した。
このような,インアプリPRにまつわるさまざまな課題を克服できるソリューションとして紹介されたのが,CLOUDIAというわけだ。
開発者は,“インアプリ告知機能エンジン”であるCLOUDIAをiPhone/iPod touchアプリに組み込むだけで,自社のほかのアプリの広告を画面内に表示させられるようになる。当初は,広告スタイルとして「カバーフロー」「カルーセル」「汎用バナー」の3種類が提供されるほか,今後新たなスタイルが追加予定だ。
右の写真のスライドで示されているように,CRI・ミドルウェアが運用する「CLOUDIAサーバ」を介し,それぞれのiPhone/iPod touch(上のアプリ)に対して広告を配信するイメージである。
ここで幅氏は,実際に広告の内容を設定/変更するデモンストレーションを行った。Webブラウザに表示された管理画面で,簡単に広告内容を変えられる様子は,開発者にとってかなり興味深いものだっただろう。
幅氏は,このCLOUDIAが単なる広告システムではなく,アプリのユーザーに自社アプリの最新情報を届けるための「クラウド対応PRエンジン」であると強調していた。
さらに,このCLOUDIAとは別に,ゲームのプレイヤーが,スコアや獲得したアチーブメントを競い合ったり,交流を深めたりできる「CLOUDIA NEO」(仮称)を提供する計画についても明らかにされた。iPhone/iPod touchのみならず,ほかの携帯電話や携帯ゲーム機へのマルチプラットフォーム展開も計画されているとのことで,ゲームファンにとって気になるニュースだ。
なお,CLOUDIAの提供に先がけ,“βテストパートナー”を募集する予定があるとのこと。募集開始時に連絡がもらえるそうなので,関心を持っているiPhone/iPod touchアプリ開発者は「iPhone@cri-mw.co.jp」宛てにメールを送ってみよう。
「スペースインベーダー インフィニティジーン」ができるまで
次に,タイトーの石田礼輔氏が登壇し,スペースインベーダー インフィニティジーン(以下,インフィニティジーン)の開発の経緯を紹介した。
石田氏は,2000年に同社に入社後,ビジュアル的にインフィニティジーンに通じるところがあるという「トランスピンボール」や,「スピカ★アドベンチャー」「ニジイロエンソク」といった,携帯電話用ゲームの開発を主に手がけてきたという。
そもそも,石田氏がインフィニティジーンの開発を担当することになったのは,今年,スペースインベーダーが誕生から30周年を迎えるということで,シリーズ最新作の制作を会社から打診されたのがきっかけとのことだ。
もともと石田氏は,上で述べた携帯電話用ゲームに,インベーダーや,アーケード筐体の側面に描かれたエイリアンを登場させるほどの「スペースインベーダー大好きっ子」だったそうで,「ぜひやらせてください」と返答し,開発に取り掛かったという。
続いて石田氏は,ゲームコンセプト,デザインコンセプト,ステージデザインコンセプトなどを示しながら,インフィニティジーンが今の形になるまでの過程を説明していった。
この中で石田氏は,分岐しながら進化していく方式を採用しなかったことについて,次のように説明した。
自動分岐型の場合,勝手に進化していくのでゲーム自体のテンポはよくなりますが,希望しない方向に進化してしまう可能性があります。好きな方向に進化するためにはどうしたらいいか考えるようになると,誰でもわかるというコンセプトから外れてしまうんです。
また選択分岐型の場合,好きな進化の方向を選べるメリットはありますが,テンポは悪くなります。それに,それぞれの進化について,どういう内容かプレイヤーに伝える必要がありますので,やはり分かりづらくなってしまいます」(石田氏)
このあと,タイトーのサウンドチーム「ZUNTATA」に所属し,今回インフィニティジーンのサウンドを担当した,小塩広和氏がステージに登場。制作途中のBGMや,当時それを聞いた石田氏から送られてきたメール/指示書の内容を紹介しながら,本作のBGMがどのような過程を経て出来上がっていったか説明した。
当初,フラットで無機質なサウンドを追及する石田氏のリクエストに戸惑いつつも,それに応えていった小塩氏は,ゲームのイメージ/世界観を理解したあとは,逆に石田氏に対してアドバイスを送ったこともあったそうだ。
マーケティングを支援するCLOUDIAの詳細と,大ヒット作インフィニティジーンの開発経緯について,2時間にわたって話が聞けた今回のセミナー。いずれの講演も,iPhone/iPod touchゲーム/アプリに取り組んでいる人にとって大いに有用で,参考になったのではないだろうか。
なお,iPhone/iPod Touch Game Devシリーズセミナーの第3回が,同じくApple Store, Ginzaで10月16日に開催される予定となっている(詳細は,IGDA日本 公式サイトの「イベント案内」コーナーで後日発表される予定)。iPhone/iPod touchゲーム/アプリ開発に関心を持っている人は,ぜひ会場に足を運んでみよう。
- 関連タイトル:
スペースインベーダー インフィニティジーン
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