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「ALIENWARE X51 R3」レビュー。割高感は否めないが,小型で静かなゲーム用PCを求めているなら価値がある
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印刷2016/01/29 00:00

レビュー

「ALIENWARE X51 R3」レビュー。割高感は否めないが,小型で静かなゲーム用PCを求めているなら価値がある

ALIENWARE x51 R3
メーカー:ALIENWARE(Dell)
問い合わせ先:問い合わせ先一覧ページ
BTO標準構成価格:23万7578円(税および配送料込み,2016年1月29日現在)
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 据え置き型ゲーム機を一回り大きくしたようなスリム筐体に,ミドルクラスのデスクトップGPUを搭載するという,当時としては画期的な仕様で,小型デスクトップPC「ALIENWARE X51」が日本市場にデビューしたのは,2012年1月のことだった。今回取り上げるのは,その第3世代モデルとして2015年晩秋に登場した「ALIENWARE X51 R3」(国内製品名:新型ALIENWARE X51ゲーム用デスクトップ)だ。

 据え置き型ゲーム機風の筐体はそのままに,スペックの引き上げと,CPU用に簡易液冷クーラーを搭載してきたのがトピックとなるわけだが(関連記事),新型は,非自作派のPCゲーマーを満足させるものになっているのだろうか。テストで検証してみよう。


コンパクトな筐体に簡易水冷ユニットを詰め込んだALIENWARE X51 R3


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 ALIENWARE X51 R3の基本仕様を,まずは確認しておきたい。
 Alienware製PC……というかDell製PCの常として,BTO標準構成の選択肢は複数ある。ベースモデルは「スタンダード」「プレミアム」「プラチナ」「スプレマシー」で,ここからカスタマイズをしていく格好だ。冒頭で紹介したCPU用の簡易液冷クーラーはプラチナとスプレマシーの上位2モデルのみ搭載,かつ光学ドライブと排他になるため,空冷クーラーを搭載する下位2モデルだけに光学ドライブ搭載ということになるが,PCゲーマーにとって,光学ドライブの重要性は下がり続けているので,ここは致命的な問題とはならないだろう。

 最新世代ということで,CPUはいずれもSkylake世代のCoreプロセッサ。GPUは第2世代Maxwellアーキテクチャを採用するデスクトップPC向けモデル「GeForce GTX 960」(以下,GTX 960)が標準だが,最下位のスタンダードだけは第1世代MaxwellアーキテクチャベースのOEM向けモデル「GeForce GTX 745」となる。ゲーマーが今からALIENWARE X51 R3を購入するとして,よほどの理由がない限りは,スタンダードは避けたほうが無難だろう。
 表1は2016年1月29日現在のBTO標準構成をまとめたものだが,「GeForce GTX 960搭載のALIENWARE X51 R3」の価格は,税および配送料込みで18万3578円からということになる。

※BTO標準構成は2016年1月29日現在
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縦置きだけでなく横置きにも対応し,置き方に合わせて本体前面にあるエイリアンの顔(ALIENHEAD)を回転させられるといった仕様は,従来製品どおりだ
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 今回4Gamerで入手したのはスプレマシーなので,メインメモリ容量は8GB×2,ストレージはPCI Express接続で容量256GBのSSDと,Serial ATA 6Gbps接続で容量2TBのHDDを搭載したモデルということになる。

 縦置き時の本体底面,横置き時の向かって左側面から吸気し,その反対側から排気する冷却仕様や,各種インタフェースが本体前面と背面に並ぶデザインといった基本的な部分は,初代から変わっていない。ALIENWARE独自の外付けグラフィックスボックス「ALIENWARE Graphics Amplifier」接続端子の追加がトピックといったところだろうか。

横置き時の向かって左側面(左)と右側面(右)。側面はいずれも「く」の字型にくびれており,縦置き時にも問題なく底面給気できるようになっている
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左:横置き時の右下部に3.5mmミニピンのマイク入力およびヘッドフォン出力端子とType-AのUSB 2.0端子が並ぶ。右端中央部はATX電源ボタンだ
右:背面右上にあるDisplayPort 1.2×3,HDMI 2.0(Type A)×1,Dual-Link DVI-I×1はGTX 960によるもの。本体側にはUSB 3.0(Type-A)×4,USB 2.0(Type-A)×2,1000BASE-T(RJ45)×2とライン入出力(3.5mmミニピン×3,1系統は4極対応),ALIENWARE Graphics Amplifier接続用×1という構成だ。マザーボード上にもHDMI 1.4端子はあるのだが,差し間違えないよう,蓋がされている
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 ALIENHEADと,縦置き時の本体左右側板部に埋め込まれた計3か所のLEDイルミネーションを「AlienFX」でカスタマイズできるのはこれまでどおりである。

ALIENHEAD(の目玉部)と本体側板には発光色のカスタマイズが可能なLEDを搭載。別途,白色LEDによる電源インジケータを電源ボタン部にも搭載している
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付属のACアダプターは定格330W仕様だった。接続端子は特殊なので,専用と考えるべきだろう
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 電源はACアダプター式である。19.5V,16.9A(出力約330W)という大出力タイプで,サイズは実測で200(W)×100(D)×43mm(H)と大型だ。Alienwareの製品情報ページには「Alienware 240ワットPSU(標準)」という表記もあるので,ひょっとすると下位モデルでは異なる仕様のACアダプターが付属するのかもしれないが,このあたりは何とも言えない。
 ちなみに,試用機ではアイドル状態におけるシステム全体の消費電力が実測約41Wだったこともあり,低負荷な状況におけるACアダプターの発熱はほとんどない。余裕のある電源容量と述べていいように思う。


簡易液冷ユニットとリファレンスデザインのGTX 960カードをコンパクトに収容


側板を開いたところ
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 Alienwareは,「弄った結果は保証外。元に戻せば保証する」として,ユーザーによる内部ハードウェアのカスタマイズを事実上認めており,Dellも内部構造へアクセスするための手法を英語版のサービスマニュアルでユーザーに提供している。
 サービスマニュアルに従って,背面のビス1本を外し,縦置き時の向かって左側板を,手前側に押しながら引くと,内部構造にアクセス可能だ。

側板を開いて,覗き込んだところ
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こちらはCorsairのHydro Series H5 SF。ファンの径が120mm角相当とされているなど,形状は明らかに異なるが,コンセプトはALIENWARE X51 R3の簡易液冷クーラーとよく似ている
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 ぱっと見て目を引くのは,ALIENHEADの刻印が入った簡易液冷ユニットだろう。液冷ヘッド兼ポンプユニットからホースがラジエータ部に延びており,ラジエータを山洋電気製の97mm角ブロワーファン「San Ace B97」で冷却するという仕様なのが分かる。
 ファンの径が異なるなど,微妙な差異はあるものの,コンセプト自体はCorsairのMini-ITXマザーボード対応簡易液冷ユニット「Hydro Series H5 SF」とよく似ているので,根拠があるわけではないものの,OEM元は同じではなかろうかと推測する次第だ。

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ALIENWARE X51 R3の簡易液冷クーラーを側面側から見たところ。ファンに覆われていて分かりにくいが,CPUを冷却するための液冷ヘッドからホースがラジエータに向かって伸びているのが見て取れよう
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こちらはALIENHEADの刻印が入ったカバーを外したところ。97mm角のブロワーファンによるエアフローでラジエータを冷却し,そのまま本体背面のグリッド部から熱を排気する仕様になっているわけだ

 やや話は前後するが,簡易液冷クーラーの仕様を確認すべく,横から覗き込むためには,縦置き時に本体下側に来るパネルを外す必要がある。そして,このパネル部には,グラフィックスカードとPCI Express接続のSSDが差さっており,さらに,その下には3.5インチHDD用がトレイに載っている。
 グラフィックスカードとSSDは,PCI Express x16とPCI Express x4を横に並べたようなカードエッジコネクタを持つ,ユニークな仕様のドーターカード経由でマザーボードにつながっていた。16レーンのほうがグラフィックスカード用,4レーンのほうがSSD用である。

パネルは写真右手前側に見える樹脂製のパーツで固定されており,そのパーツを外すことでパネルとともにグラフィックスカードやSSDの載ったドーターカードを取り出せる。ドーターカードとマザーボードのユニークなインタフェースは要注目だ
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特殊な拡張スロットに寄ったところ。PCI Expresss x16スロットの隣にPCI Express x4スロットがある。なお,マザーボードの基板にあるシルク印刷「MS-7985」を見る限り,マザーボードはMSIが製造を担当しているようだ
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SSDはSamsung Electronics製だった。ただ,調達の都合で切り替わるかもしれないので,あくまでも「今回入手した個体では」という話になる
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GTX 960カードを取り外したところ
 今回入手した個体だと,SSDはSamsung Electronicsの「MZVLV256HCHP」というモデルだ。同社がOEM向けに出荷しているM.2スロット対応製品「PM951」の1つで,物理インタフェースにPCI Express Gen3 x4,論理インタフェースにNVM Expressを採用する。容量は256GBだ。

 SSDの裏側にあるGTX 960カードは,極めて貴重なリファレンスデザイン採用モデルだ。NVIDIAは公式に「GTX 960のリファレンスカードは,一般ユーザー向け市場向けには存在しない」としているので,OEM専用のリファレンスモデルということになるだろう。
 補助電源コネクタは6ピン×1。面白いのは,ALIENWARE X51 R3側では6ピン×2に対応している点で,定格出力ACアダプターで賄え,かつ9.5インチ(約241.3mm)というGTX 960リファレンスカード以下の長さで収まる2スロット仕様のカードであれば,より高いスペックのグラフィックスカードへ自己責任で差し替えることも不可能ではない。

GTX 960カードはリファレンスカードそのもののようで,ALIENWARE X51 R3用カスタムモデル的な印象はない
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リファレンスデザインなので,カード長は約241.3mm。このサイズに収まるグラフィックスカードであれば物理的に差し替えられる
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GTX 960カードの補助電源コネクタは6ピン×1なのだが,ALIENWARE X51 R3自体は2系統の6ピン補助電源コネクタを持っている

 そのほかのパーツを確認しておくと,容量2TBのHDDは,入手した個体だとSeagate Technology製の「Desktop HDD」(型番:ST2000DM001)。オンボードのIEEE 802.11ac対応無線LANコントローラは,Intelの「Dual Band Wireless-AC 3165」だった。Alienwareの製品情報ページだと「Dual Band Wireless-AC 7265」を搭載することになっているのだが,なぜここだけ異なるのかはよく分からない。テスト用サンプルならではの仕様ということなのだろうか。
 ちなみに,Dual Band Wireless-AC 3165だとMIMOのアンテナ構成が1×1,Dual Band Wireless-AC 7265だと2×2という違いがある。つまり,前者は廉価版というわけだ。

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容量2TBのHDDを搭載。下位モデルはここに入るHDDの容量が下がるということなのだろう
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オンボードの無線LANモジュールは仕様と異なっていたが,Dellのテスト機ではよくあることだったりもする

 というわけで,欲をいえばGPUも簡易液冷化できるともっとよかったように思うが,ラジエータをどこに置くのかという問題が出てくるので,これはやむを得ないだろう。
 総合的に見れば,内部の構造は合理的で,パーツの固定の方法は,シンプルかつ,よく考えられているように見受けられる。第3世代モデルということで,熟成が進んだというのもあるだろうが,このあたりはPCゲーマーが「AlienwareのPCに望むもの」にうまく応えられている印象だ。

グラフィックスカードとHDDに外気を送るべく,筐体前面に吸気ファンを装備。また,基板上には電源部冷却用と思われるファンも備える
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CPUコアは+200MHzのワンクリックOCが可能。GTX 960搭載モデルらしい3D性能を発揮


 「Core i7-6700K」,そしてGTX 960についてはすでに4Gamerで評価をお伝え済みだ(関連記事1関連記事2)。なので本稿では,簡易液冷クーラーを搭載するゲームPCとしてのALIENWARE X51 R3が持つ価値を重点的にチェックしていきたいと思う。
 というわけでまず,内部構造の確認を経て明らかになったテスト機のスペックを表2にまとめてみたい。

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OCControlsからはシステム情報をチェックできるのだが,そこにはチップセットがH110とあった
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 上でIntel Z170に印を付けたのに気づいた人もいると思うが,これは,本当にIntel Z170を搭載しているか,確証がないためである。
 “疑惑”の根拠となっているのは,Alienware製ノートPCでお馴染みの統合ツール「ALIENWARE Command Center」に組み込まれたツール「OCControls」から確認できる「メインボード」のスペックに,チップセットが「H110」とある点。これが「Intel H110」チップセットのことだとすると,ここでもスペックは製品情報ページと異なっている。

 ただ,よく分からないのは,もしIntel H110チップセットだとすると,倍率ロックフリー版CPUの倍率変更をサポートしないはずなのに,そうなっていない点だ。定格だと1コアに負荷がかかったとき最大4.2GHzで,それ以上のコアに負荷がかかったときには定格より上がらないのに対し,OCControlsから「オーバークロック」を[オン]にすると,順に4.4GHz,4.2GHzといった具合で,,全体に+200MHzされるのである。なので,OCControls上の表記がそもそも間違っているか,あるいはIntel H110チップセットでも倍率変更を行えるよう,特別な処理を行っているか,どちらかということになりそうだ。
 もちろん,製品版では何の問題もなくIntel Z170チップセットを搭載しているという可能性もあるので,この点も,無線LANコントローラと同じく,よく分からない部分ということになるだろう。

OCControlsの右上にあるオーバークロック用スイッチボタンを[オン]にすると,「CPU比率」が44.0となった。確認したところ,最大44倍で動作するのは1コアに負荷がかかったときだけだったが,全体的に+200MHz設定されていた。OCControlsの設定がメーカー保証の範囲内なのかどうか,Dell,そして日本法人であるデルはいずれも明言していないが,シンプルに設定を変更できる点は評価していいように思う
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 また,同じくALIENWARE Command Centerにある「Thermal Controls」からは,ファンやポンプの動作状況および内部の温度確認と,本体前面でグラフィックスカードやHDDなどへ外気を送る吸気ファンの回転数制御を行える。制御できるのはあくまで吸気用ファンだけで,基本的には簡易液冷クーラーも含めて全自動となっているため,ここはどちらかというと,温度状況を確認するための項目ということになりそうだ。

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Thermal Controlsは「ファンの制御を行える項目」というより,「ファンやポンプと,システム各部の温度状況を確認できる項目」と紹介したほうが適切だろう
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「手動(ユーザーコントロール)」を選択すると,吸気ファンの回転数を,一定レベルで固定したり,分布曲線を使い,「Power Sensor」の温度に応じた可変にしたりできる

 機能的なところを確認したところで,ファン回転数制御を標準の「自動(Alienコントロール」で固定しつつ,CPUオーバークロックの効果を確認しておこう。
 CPUのみのオーバークロックはゲームのフレームレートに与える影響が小さいというのは4Gamerの記事でも何度も確認されてきたことだが,4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0に準拠するテスト方法で,「3DMark」(version 1.5.915)を実行してみた。グラフ1は「FireStrike」「FireStrike Extreme」「FireStrike Ultra」における総合スコアを定格設定と比較したもの,グラフ2はそこからCPUベンチマークとなる「Physics Score」を抜き出したものになる。

 結果はご覧のとおりで,スコア差はほとんど生じていないどころか,Fire Strike Extreme以上では総合スコアが低下してしまった。原因は不明だが,CPUオーバークロックがゲームプレイにもたらすメリットはほとんどないという理解でいいだろう。
 3DMarkのスコア自体は,GTX 960として妥当なところだといえる。4Gamerで以前実施したGTX 960のテストと比べると数字自体は低めだが,当時とはOSが異なっていたりするので,それが影響している可能性は大いにある。
 ただ,CPUベンチマークとなるPhysics Scoreでは,オーバークロック状態のほうが明らかにスコアは高かった。スコア差は約5%あり,CPU処理が必要がアプリケーションでは,オーバークロックの効果を期待できるわけだ。

※グラフ2でスコアが揃っているのは,Physics testの場合,テスト条件にかかわらず解像度が一定となるためです
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 描画負荷がやや高いテストとして,「Fallout 4」のテストも実施してみよう。Fallout 4はまだ4Gamerのベンチマークレギュレーションで採用されていないため,今回はグラフィックスカード28製品の横並びで比較した記事を参考にしつつ,「Corvega Assembly Plant」の入口から階段を登ったあたりまでの敵をあらかじめ倒し,会敵しない状態にしたうえで,Corvega Assembly Plantの入口から,階段を登ったあたりまでの経路を1分間かけて移動し,その模様を「Fraps」から取得するという方法をとった。テストは2回実施し,2回の平均をスコアとしている。

 テスト解像度は1920×1080ドットと1600×900ドットの2パターン。グラフィックス品質は「Ultra」プリセットとした。
 結果はグラフ3のとおりだが,非常に分かりやすいスコアだ。描画負荷の低い1600×900ドット時には定格時に対してオーバークロック時のフレームレートが約4.4%高くなっているのに対し,1920×1080ドット時はそれが同1.3%に縮まっている。“軽い”ほどCPU性能がスコアを左右しやすくなるという,教科書どおりの結果だ。
 先の記事で,GTX 960は「及第点」となる最小フレームレート4fpsを1920×1080ドットでクリアしているが,今回のテストにおいても,プレイしていて違和感はない。1600×900ドット設定なら,描画負荷が高めのMODもいくつか導入できそうだ。

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 描画負荷が比較的低く,少なくともFallout 4と比べればCPUの影響を受けやすいタイトルということで,今回はベンチマークレギュレーション17.0から「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」ベンチマーク(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)も実行してみた。GTX 960搭載機で「標準品質」を選択する人はいないだろうという判断から,今回は「最高品質」の解像度1920×1080ドットでテストを行っている。その結果がグラフ4だ。

 スクウェア・エニックスの示す指標に従うと,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチのスコアは,1920×1080ドット条件で2番めに高い「とても快適」,1600×900ドット条件では最も高い「非常に快適」だった。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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簡易液冷効果!? CPUが安定して高いクロックに入るALIENWARE X51 R3


 CPUのオーバークロック自体は,「うん,まあ,効果がないわけではないね」くらいに留まるわけだが,そもそも簡易液冷クーラー,というか冷却能力の高いクーラーが持つメリットとしては,「ブーストの効くプロセッサで,安定的に長い時間,高いクロックに入りやすい」というものがある。とくに,ALIENWARE X51 R3のような小型PCの場合,ちょっと冷却設計をミスするだけで,プロセッサは性能を十全に発揮できなくなってしまう。その点がどうなのかをチェックしてみよう。

 今回は,先ほど性能検証でも使ったFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを使って,「最高品質,解像度1920×1080ドット」条件における1時間のループ実行を行い,その間のCPUクロックと,CPUコア温度,CPUパッケージ温度を,「HWiNFO64」から追うこととした。
 なお,ここでいうCPUコア温度は,4基あるCPUの各コアが内蔵するサーマルダイオードによって報告される温度値の平均をとったものである。つまりCPUダイそのものの温度(の平均)だ。一方のCPUパッケージ温度はマザーボードが備えるサーマルセンサーの値をとったもので,CPUパッケージの表面温度と考えてもらえばいいと思う。

 グラフ5は4コアの平均クロック推移を,CPU定格動作時とオーバークロック設定時とで比較したものだ。4コアに負荷がかかるので,定格設定時における最大クロックは4GHz,オーバークロック設定時は4.2GHzとなるが,最大クロックでも,確かに200MHzの違いがあるとはっきり分かる。
 今回,比較対象の空冷機がないので分かりにくいが,少なくとも「最大クロックに入りにくい」という事態を迎えていないことも,グラフからは読み取れよう。

※グラフ画像をクリックすると,横に引き伸ばした拡大版を表示します
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 一方,CPUコア4基の平均温度と,CPUパッケージ温度の推移を示したのがグラフ6,7だ。
 グラフを見ると,CPUコア温度,CPUパッケージ温度はいずれも,オーバークロック設定時のほうが高めに振れているように見えるが,1時間を通しての温度平均を取ってみると,定格時とオーバークロック時とではほとんど違いがない。このグラフの正しい見方は,「オーバークロック時のほうが温度の上下ブレが大きくなっている」というものだ。オーバークロック時にはCPUの発熱量が増えるが,それに応じて液冷システムがアグレッシブに冷却を行っているということだろう。
 データの読み出しなど,CPU負荷が低くなる局面では,アグレッシブに冷却している分だけ,オーバークロック設定時のほうがCPU温度やCPUパッケージ温度が下がりやすくなり,結果,温度のブレが大きくなったというわけである。

※グラフ画像をクリックすると,横に引き伸ばした拡大版を表示します
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 このときの筐体温度はどうなっているだろうか。
 ALIENWARE X51 R3では横置き時の天板,縦置き時の左側面にあたる側の温度が上昇する。そこで今回は,チノー製サーモグラフ「TP-U0260ET」を用い,縦置きしたALIENWARE X51 R3の本体左側面温度を測定してみることにした。
 今回は,机上にあるディスプレイの左隣に,左側面をこちらに向けたALIENWARE X51 R3を置き,その向かって正面にサーモグラフを設置。その状態で,アイドル状態で30分放置した直後(以下,アイドル時)と,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの連続1時間連続実行直後のそれぞれに対し,チノー製サーモグラフ「TP-U0260ET」を用いて表面温度の測定を行った。このときの室内温度は24〜25℃である。

 下に示したのが,アイドル時におけるテスト結果だ。サーモグラム(=温度分布画像)は左右反転して出力されることから,サムネイルでは左右を反転し,実態に即したものとしているが,入れ替えた状態で中央付近にある塊がALIENWARE X51 R3である。右に見えるのはテストに用いている液晶ディスプレイ(の一部)で,ディスプレイ側に本体前面が向いている。
 というわけでアイドル時だと,最も高い温度になっているのは右上で見切れている液晶ディスプレイである。本体はせいぜい30℃台前半。ALIENWARE X51 R3の前面に近い側は室温とほとんど変わらない。

アイドル時のサーモグラム
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 FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを1時間実行した直後のサーモグラムが下で,ここでは本体後方やや下寄りが39.5℃を記録した。グラフィックスカードからの排熱が一番熱いというわけである。側板自体の平均温度は36℃前後といったところで,本体前方は依然として室温に近い。

FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ1時間連続実行直後のサーモグラム
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 最後は,オーバークロック設定を行った状態で,同じくFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを1時間実行した直後のサーモグラムである。
 高温になる部位は定格動作時と変わらない一方,最高温度のスコアが1℃下がっているが,これは,時間経過とともに室温が1℃下がったためだ。数時間にわたる長丁場のテストなので,室温の違いが影響したが,オーバークロック自体の影響はないと断言していいように思う。

FXIV蒼天のイシュガルド ベンチ1時間連続実行直後のサーモグラム(※オーバークロック設定時)
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 以上のテストから,定格動作時,オーバークロック動作時にかかわらず,CPU温度は適切に制御されており,十分に性能を発揮できる状態にあるといえる。もともとALIENWAREはプロセッサの熱制御に定評があるのだが(関連記事),簡易液冷クーラーを搭載することで,さらに磨きがかかったと述べていいのではなかろうか。


動作音もかなり低いALIENWARE X51 R3


 温度はオーバークロックに設定して問題になるほど上がらないということを確認したが,ファンの回転数が上がってしまってうるさいとなると,せっかくの小型PCも,机上から遠く離したりしなくてはならなくなる。その点が気になる人もいると思うので,先に結論から述べておくと,ALIENWARE X51 R3は,小型のPCとしてはかなり静かだ。

 ここでは,アイドル時と,定格設定でFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを1時間実行させた直後,そしてオーバークロック設定を行ってFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを1時間実行させた直後の3パターンで,縦置きした筐体正面0.5mのところにコルグ製ポータブルレコーダー「MR-2」を設置し,動作音の変化を録音した。「机の上でディスプレイの横にALIENWARE X51 R3を置き,その状態から椅子に座ったユーザーの耳があるあたり」のイメージでレコーダーをセットしている。

 その結果は下にまとめたので,聞いてみてほしい。非常に静かなため,ヘッドフォンを装着したうえで,音を大きくしてもらわないと聞き取れないと思うが,いずれにせよ,テスト条件を問わず,動作音は非常に低い。CPUもGPUも稼働してこの騒音レベルなのだから,文句なしに静かだと言っていいだろう。

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※再生できない場合は,アイドル時定格設定でのFFXIV蒼天のイシュガルド実行時オーバークロック設定でのFFXIV蒼天のイシュガルド実行時におけるWaveファイルをダウンロードのうえ,手元のメディアプレイヤーで再生してみてください。

 ちなみに,よく聞いてもらうと,かすかに「コー」というノイズを感じられると思うが,これは簡易液冷ユニットから出るポンプの音だ。Alienware X51 R3はファンの騒音よりポンプの騒音のほうが大きい。

 最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を使い,システム全体の消費電力も調べてみた結果を示しておこう。ディスプレイの電源がオフにならないよう設定したうえで,ここではアイドル時,3DMark実行時と,FFXIV蒼天のイシュガルドを使った性能検証時のそれぞれにおけるピーク消費電力をアプリケーション実行時としてまとめたものがグラフ8である。

 最も消費電力が高かったのはFallout 4実行時で,オーバークロック設定を行ったときには最大207Wに達した。Fallout 4は描画負荷の高いタイトルなので,GPUに連続的な負荷が生じたためだろうと推測している。
 定格設定時とオーバークロック時の違いは,どのテストでも8〜9W程度となった。フレームレートやスコアの伸びからすると,オーバークロックの“コストパフォーマンス”が高いとは言えない印象だが,クロックに応じて消費電力が変動しやすいSkylake世代のCPUを搭載するだけに,ここはやむを得ないところか。

 なお,ACアダプターのDC出力容量は定格330Wであり,Fallout 4実行時であっても,電源には十分な余裕があった。ACアダプターの発熱も問題になるほどではなかったので,オーバークロック設定で常用してしまっても,この結果を見る限りは問題なさそうだ。

画像集 No.046のサムネイル画像 / 「ALIENWARE X51 R3」レビュー。割高感は否めないが,小型で静かなゲーム用PCを求めているなら価値がある


割高感は否めないが,小型で静かなゲーム用PCを求めているなら価値がある


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 以上,簡易液冷CPUクーラーを採用する,小型のGTX 960搭載ゲームPCとして,ALIENWARE X51 R3スプレマシーの評価を行ってきた。
 テストに用いた本機のBTO構成価格は,税・送料込みで23万7578円(※2016年1月29日現在)だ。同じ予算でミドルタワーのゲームPCを買おうとすると,メモリ周りやストレージ周り,CPUクーラーをALIENWARE X51 R3と似たような感じにしても,GPUを「GeForce GTX 980」へアップグレードできるのが現実であり,絶対的な価格帯性能比で“GTX 960搭載デスクトップPC”として見た場合,ALIENWARE X51 R3が選択肢として浮上することはないはずだ。

 まとめると,ALIENWARE X51 R3スプレマシーは,「フルHD解像度を前提に,安定してバランスの取れた性能を長時間維持でき,しかも動作音は非常に静かで,机の上で無駄に場所を取らない」という点に,価格以上の価値を見出せる人のためのものということになるだろう。
 下手な“ハイクラスのゲームノートPC”を買うくらいなら,ALIENWARE X51 R3を選択したほうが,幸せになれる可能性は高い。小さくてプレミアムなゲームPCを探している人こそが購入を検討すべきマシンである。

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