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AMD,Bulldozerアーキテクチャ採用の新世代CPU「FX」を正式発表。発売は10月下旬以降に
開発コードネーム「Zambezi」(ザンベジ)として知られてきたAMD FXは,新世代マイクロアーキテクチャ「Bulldozer」(ブルドーザ)を採用する最初の製品だ。2003年のAthlon 64における「K8」以来――2007の「Phenom」で採用された「K10」はK8の拡張版と位置づけられる――久々のマイクロアーキテクチャ刷新となる。
「FX-8150」レビュー。ついに発進するBulldozer世代のCPU「Zambezi」はゲーマーの福音となるか
Bulldozer Moduleを採用する新世代アーキテクチャ
Bulldozerは,より低消費電力で,そしてより小さなダイサイズでCPUのマルチコア化を実現すべく,2基のx86整数演算ユニットを1つにまとめたクラスタ型アーキテクチャを採用。分岐予測や命令デコード,命令発行などを行なうフロントエンド部と,浮動小数点演算ユニット,L2キャッシュを,2基のx86整数演算ユニットが共有しているのが最大の特徴だ。
AMDはBulldozerアーキテクチャの根幹をなすこの構成を「Bulldozer Module」(以下,Bulldozerモジュール)と呼んでおり,以下のようにカウントしている。
8コアのAMD FXは,4基のBulldozerモジュールで構成され,1基のBulldozerモジュールは2スレッドを同時に実行できるようになっている,というわけである。
そのため,K8&K10では1コアが最大6つの内部命令(Micro OPerations,以下 μOPs)の処理が可能なのに対し,Bulldozerではこれが最大4μOPsとなって,Bulldozerモジュールでも最大8μOPsとなる。
もっともこれは必ずしもマイナス要因というわけではなく,パイプライン構成がシンプルになった分,Bulldozerアーキテクチャでは高クロック化が容易になるとされている。実際,8コア版のAMD FXで8.429GHzという世界最高の動作クロックを実現していたのは記憶に新しいところだ。
もう少し詳しくBulldozerモジュールを見ていこう。
2つの整数演算ユニットが共用するフロントエンド部は,容量64KBのL1命令キャッシュと4-wayの命令デコーダを備える。順に64KB,3-wayだったK10と比べると,命令デコーダが強化されているものの,コアあたりで見るとかなりスペックダウンしていることが分かる。
さらに,Bulldozerモジュールには容量2MBのL2キャッシュが搭載され,2基の整数演算ユニットからデータ共有が可能となっている。
CPUとチップセット間の接続には従来どおりHyperTransportが採用され,帯域幅は最大5.2GT/sを実現。なお,CPUのシリコンには4つのHyperTransportインタフェースが搭載されるものの,(1-way動作となる)デスクトップ向けCPUたるAMD FXでは3つが無効化されている。
ZambeziことAMD FXのダイ構成 |
プラットフォームにはSocekt AM3+を搭載するAMD 9シリーズマザーボードを採用。ダイ上に4つあるHyperTransportインタフェースのうち1つをCPUーチップセット間接続に利用し,残りは無効化されている |
組み合わされるプラットフォームがSocket AM3+環境になるのは既報のとおりで,AMD 9シリーズチップセット搭載マザーボードがサポート対象となる。
発表当初のラインナップは4製品
ちなみに,ダイそのものはAMDが「Orochi」(オロチ,開発コードネーム)と呼ぶ,4 Bulldozerモジュールのものなので,6コアモデルと4コアモデルは,8コアモデルから1ないしは2のBulldozerモジュールを無効化した格好となる。
- FX-8150
3.6GHz(3.9GHz,4.2GHz),L2 2MB×4,L3 8MB,DDR3-1866,125W,3万3800円(税込,液冷ユニット付き。北米市場向けには単体価格245ドルと示されている) - FX-8120
3.1GHz(3.4GHz,4.0GHz),L2 2MB×4,L3 8MB,DDR3-1866,125W,1万8800円(税込) - FX-6100
3.3GHz(3.6GHz,3.9GHz),L2 2MB×3,L3 8MB,DDR3-1866,95W,1万4980円(税込) - FX-4100
3.6GHz(3.7GHz,3.8GHz),L2 2MB×2,L3 8MB,DDR3-1866,95W,9980円(税込)
※製品名の下に並んでいるのは左から順に動作クロック(全コアターボ動作クロック,最大ターボ動作クロック),CPUコア数,L2キャッシュ容量,L3キャッシュ容量,メモリコントローラ,TDP,日本AMDによるメーカー推奨売価
上で動作クロックの表記が3つあることに気づいた人もいると思うが,AMDはAMD FXで第2世代の「AMD Turbo CORE Technology」(以下,Turbo CORE)を採用し,より高クロックでの動作を可能にしてきている。
AMDの第2世代Turbo CORE。すべてのコアが動作するときの最大クロックと,4コア以下で動作するときの最大クロック,2段階の設定がなされる |
Turbo COREのメリットをまとめたスライド。Max Turbo Coreは4コア以下での動作時,All Core Turboは8コアすべてが動作したときの性能を,定格動作クロック時と比較したものだ |
AMDは,新世代Turbo COREの効率を高めるべく,TDP値の設定に十分な余裕を持たせているとのことだ。
また,ここまでに説明してきたとおり,AMD FXでは高クロック化が容易になっており,同時に,全モデルで倍率ロックを外した,「Unlocked」仕様になっていることから,エンドユーザーは自己責任を覚悟すれば,より高い動作クロックを狙えるようになっている。
John Taylor氏(Director, Product Marketing, AMD) |
Bulldozerアーキテクチャには優れたオーバークロック耐性があるとされた |
「『AMD OverDrive』を使えば,難しいオーバークロック設定を気にすることなく,AMD FXのポテンシャルを引き出せる」(同氏)として,FX-8150を4.8GHzにオーバークロックした場合,「CINEBENCH R11.5」で30%以上のパフォーマンス向上を実現したというデータも示していた。
AMD OverDriveを使えば,オーバークロック設定になじみのないユーザーでもAMD FXのポテンシャルを引き出せるという |
オーバークロックにより,CINEBENCH R11.5で30%以上のパフォーマンスアップを実現できると謳うスライド |
価格対性能比を前面に押し出すAMD
市販のデスクトップPCシステムの価格は,2011年現在,699ドル未満が80%近くを占めるとAMD。AMD FXは,この価格帯で最高のシステムを構築できるCPUと位置づけられる |
AMDはAMD FXを,「Enthusiast Gaming」市場向けにデザインしたとする |
またAMDは,高解像度環境におけるゲーム性能では,Phenom II X6シリーズはもとより,「Core i7-980X Extreme Edition/3.33GHz」といった6コアCPUよりも優れた性能を発揮すると主張している。いわく「Core i7-980X Extreme Editionを使うより,800ドルも安く,最高のゲームプラットフォームを実現できる」(Taylor氏)とのことだ。
では,実際のところ,AMD FXはゲーム用途で「買い」なのか。そのあたりは同時に掲載したレビュー記事を参照してほしい。
FX-8150レビュー記事(前編)
- 関連タイトル:
AMD FX(Zambezi)
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