インタビュー
ギリギリ(?)まで突っ込んだ内容で「CLASH OF THE TITANS:タイタンの戦い」の魅力に迫る。ゲームリパブリックの岡本吉起氏と三輪賀一氏のインタビューを掲載
4月23日から全国ロードショーとなった映画「タイタンの戦い」は,ギリシャ神話をモチーフにした作品で,1981年に公開さた同名作品のリメイクである。
神と人間が共存していた神話の時代,人間の王が神に対して反乱を起こしたことに神々の王ゼウスは怒り,冥界の王ハデスを解き放つ。ゼウスの血を受けた半神半人の英雄ペルセウスは,滅亡の危機に瀕した人類を救うべく立ち上がる……というのが,物語の主な設定。なお,主演は映画「アバター」でも主演を務めたサム・ワーシントンさん,監督は映画「トランスポーター2」「インクレディブル・ハルク」などで知られるルイ・ルテリエさんだ。
映画「タイタンの戦い」公式サイト
トークイベント後,別室にて岡本吉起氏およびディレクターの三輪賀一氏に,メディア合同ではあるがインタビューする機会を得た。「CLASH OF THE TITANS:タイタンの戦い」についていろいろと話を聞くことができたので,今回はその模様をお届けしよう。
PS3/X360「CLASH OF THE TITANS:タイタンの戦い」公式サイト
――映画「タイタンの戦い」を観たとのことですが,3D対応の映画としてはいかがでしたか?
岡本氏:
あんなに字幕も飛び出すとは思わなかったですね(笑)。字幕があったら向こう側が見えづらいですから,3Dの奥行き感なんかを楽しむならたぶん吹替版がいいですよ。
映画の絵は飛び出すというよりは,凹むというか奥に入る感じですね。手前に出てくるやつもありますけど,やっぱり映画は奥行きがあるほうがいいと思います。奥に入ったほうがより立体的に見えるので,僕個人はその作りが正しいような気がしています。
――今後の話になるでしょうけど,3D対応のゲームを作るときに生かせそうですか?
岡本氏:
うーん,ゲームの場合はやっぱりある程度手前に出さなきゃだめでしょうね。手前に来るものがあるのが大事だと思うんですよ。映画は,奥行きが伸びるほうがいいような気がしますね。スピード感にしてもなんにしても。
――では,映画を観たあとに,ゲーム版で直したいと感じた点はありますか?
直したいのはありましたよ(笑)。
ゲームって妥協のたまものというか,最初はやりたいことがすごくいっぱいあるので大風呂敷を広げるんですけど,諸事情でちょっとずつ小さくなっていくものなんです。
映画では,僕らが事前に聞いていたエンディングと違っていたから,ちょっとヘコみました。できることなら,ゲームも映画のエンディングに合わせておきたかったですね。
ゲームのストーリーは完全に映画と違う形で完結していますから,映画の続編が作られることになったらゲーム版の続編はヤバいですね(笑)。
――ゲーム版の登場キャラクターは,映画に出演したキャストのCG化となっていますが,モーションは独自のものなんですよね?
トークイベントでも言いましたけど,写真だけもらって,それを見てどんな動きかを想像して実写映画と合わせるなんて,不可能に近いですよね。雰囲気が合っていたのは,たまたま同じだったというだけで,本当に奇跡ですよ。
――データのやり取りはなかったんですか?
岡本氏:
もちろん,データのやり取りはありましたよ。写真は大量にもらいましたけど,たいがいは,こちら側から提出して,先方からOKとかNOとかというものでしたね。
あと写真ですが,現地に見に行っています。持って帰れないと言われたので,出張に行って,目に焼き付けて帰ってくる。……あ,スケッチはできたかな?(笑)。
――それは大変でしたね……。あとトークイベントでは,ゲームに登場するクリーチャーの9割はオリジナルと話していましたが,映画側から登場モンスターのチェックはあったんですか?
岡本氏:
映画に出てくるものに関しては,全部出してOKをもらいました。けど,それだけじゃゲームにならないんですよ。
2時間弱で観る映画と,何十時間も遊ぶゲームで,キャラクターの数が一緒なんていうのは,ちょっとありえないですよね。細かい雑魚の設定からいっぱい作っていかなきゃいけないので,そのあたりは全部ゲームオリジナルですね。
でも,ギリシャ神話をちゃんと勉強したうえで,設定の背景とかも映画に合わせて作ったので,先方も「タイタンの戦い」に対する愛を感じてくれて,「じゃあOK」みたいな話になりましたね。
――映画の公開時期と近い時期にゲームを発売するという面では,どのような苦労がありましたか?
動いている絵が見られなかったことであるとか,先方に提出したデータが承認されて帰ってくるまでのタイムラグですね。
提出したときに「ほとんど大丈夫」って言われても,やっぱり「ほとんど」なんで,引っかかることもあるんですよ。そういったのは全部出戻りですね。
原因は僕達にあるんですけど,それを計算に入れずに後半はドタバタしていましたね。
あと,映画をもうちょっと早く見せてほしかったよね(笑)。もうちょっと早ければ……。
――エンディングも合わせられたのに,ですか?
岡本氏:
エンディングのシナリオチェンジは連絡をもらっていなかったので……。
でも,逆に言えば,ゲームのほうが結末はすっきりしていますよ。まったく同じじゃないから,ちょっとしたアナザーストーリーぐらいに受け取ってもらえればと。
――ゲームでは,ストーリーの根幹は映画と同じで,サイドストーリーなどで厚みを持たせている感じですか?
岡本氏:
そうですね。
――主人公が成長していくという部分は,映画とゲームで共通なんですか?
岡本氏:
ええ。ただ,ゲームのほうがどーんと上げ幅が大きいですけど。「いいの,こんなに成長して?」みたいな(笑)。
――トークイベントで上映されたゲームのトレイラーでは,主人公がいろんな技を使っていました。これらの技はすべて想像で作られたんですか?
岡本氏:
そうです。映画の中ではあんな無茶なことはしないです(笑)。
映画のイメージとゲームのイメージはだいたい合わせてありますけど,合わせることを主目的にはしていないです。
――あと,ゲーム内では武器に「アンバランスさ」を入れているとのことでしたが,そのあたりをもう少し具体的に教えてもらえませんか?
敵から奪った武器については,敵から吸い取った“ソウル”を消費して能力を発揮するんです。一回しか使えないくらいソウルを消費するんだけど,めちゃめちゃ強い武器があったりとか。
そんなことは普通のゲームではやらないんですけど,武器の種類がたくさんあるからできたんですよね。制作の後半でめちゃくちゃ増えたから,正確な数字は憶えていないんですけど,確か90種類以上かな。
――映画の中にはそんなに多くの武器は出てこないですよね。
岡本氏:
そうですね。それが90種類になるんだから,多少のウソもあるだろうって(笑)。
映画関係者が見たらたぶん腰を抜かしそうな,ぶっ飛んだことはしましたよ。さっきも言いましたけど,ゲームが面白いことが大事ですから。すごいムチャしていますから,楽しみにしてほしいですね(笑)。
――それは,ゲームが発売されたあとに怒られるんじゃないですか?
岡本氏:
その時は謝ります。全力で。
(三輪氏に向かって)……あ,オレ聞いていないのに,お前勝手にやったよね?
――その発言を記事に残して証拠にするつもりですか(笑)。
岡本氏:
ええ,そこはイキで。
三輪氏:
私が全力で謝るんですか(笑)。
すべてチェックしてもらっているから大丈夫ですよ。
――「CLASH OF THE TITANS:タイタンの戦い」は,映画のゲーム化作品ではありますが,テーマがギリシャ神話ということで,設定としてはすごく王道のファンタジーともいえますよね。キメラのようなモンスターなど,イメージが世間一般に浸透しているものもあると思いますが,デザイン面で意識した部分はありますか?
クリーチャーデザインは,ギリシャ神話と映画の世界観を壊さないことをもちろん意識しています。でも,あくまで「ゲームリパブリックオリジナルのクリーチャー」という意識で作りました。
ワーナー・ブラザーズさんにデータを提出したときも,ほとんどNGなしでしたね。
岡本氏:
すごい評判よかったよね。
三輪氏:
ええ。そこはけっこううまくいったかなと思っています。
岡本氏:
あんなにスムースにOKが出るとは思っていなかったね。
出戻りは意識していたんですけど,そういうのはなく「いい」って言ってもらえて。監督がゲームのことにずいぶんと理解があった,という印象ですね。
――ちなみに,お二人のお気に入りのモンスターはどれですか?
作った手前,「全部好き」なんですけどね(笑)。
デザイン的にはキメラですかね。岡本さんは骨のデカイヤツとか好きじゃないですか?
岡本氏:
そうね,骨の本数の多いヤツとかね(笑)。
あとサイクロプスもいいですよ。大きくて見ごたえあります。倒し方が分かっても,なかなか倒せないんですけどね。
多分,オレのときだけ意地悪しているんじゃないかなと(笑)。
三輪氏:
岡本さんだけ別調整って言われますよね(笑)。
――アクションゲームが得意でない人でも大丈夫ですか?
岡本氏:
基本は気持ちよく,「こんな技がボタン一個で出せる」みたいな感じを考えて作っているんで,初心者でも真面目にやればエンディングまで行けると思います。
自分には難易度が高いような気がしているところもありますけど。終わらせたら「ボリュームが少ない」とか言われるから,「オレだけ難しくされてたのか!」みたいな別調整なのかもしれません(笑)。
――ゲーム全体のボリュームは,プレイ時間でいうとどれくらいになるんでしょう?
三輪氏:
順当に遊んだら30時間ぐらいですかね。やり込んだら50時間くらいは遊べるんで,ボリュームは相当あるんじゃないでしょうか。
アクションゲームって割と手離れがいいというか,だいたい普通のゲームでは,うまくやれば週末を使えば終わるぐらいのボリュームなんですね。
それは相当「詰めて」の話ですから,ちょっと離れるとまた操作を思い出すのに時間がかかったりするもんなんで,けっこうな時間は遊べると思うんです。
――発売前にしては気が早い質問なのですが,発売後に追加ダウンロードコンテンツ提供の予定はありますか?
三輪氏:
予定はあります。
基本的にストーリーは作れなかったので,クエストを配信する形です。新規のクリーチャーと新規のマップ,新規のウェポン込みのセットで出そうかなと。
――なんと,クリーチャーも追加されるんですか。
三輪氏:
そうですね。大型のボスを予定しています。
――本作は全世界で展開されるとのことですが,日本と海外でのゲームにおける趣味嗜好の違いについては,どういったところを意識しましたか?
感情移入っていう意味で,西洋人の“本当の”動作とか空気感って,僕らには理解できません。
たとえば,西洋の会社が作っているゲームのキャラクターって,主人公はゴリラみたいな筋肉していたりするじゃないですか。その逆もしかりで,日本製ゲームの主人公って華奢な兄ちゃんだったりしますけど,あんなの海外では絶対に理解されないですもんね。
そういう意味では,僕らの落とし所としては,中間的なわりとリアリティのあるところで,「リアリティはあるけどリアルじゃない」「映画に忠実だけど映画まんまじゃない」みたいな,そういうぎりぎりのところに,ボールを落としているつもりではいます。
日本の市場のことを無視しているつもりも毛頭ないんで,日本でもちゃんと受け入れられてほしいし,ヨーロッパやアメリカでも受け入れられてほしいという思いがあるので,どっちにも受け入れられたらいいな,ぐらいの感じでやっています。
――映画,とくに洋画のゲーム化というと,日本市場では苦戦する傾向にあると個人的には感じているのですが,そのあたりについてはどう考えていますか?
岡本氏:
映画のストーリーや世界観だけを追っているもの,映画そのものをそのままゲームにしたものはよくあるんですけど,映画を「骨」にして「肉」を付けているゲームって,なかなかないと思うんですよ。
「タイタンの戦い」が好きなら,「本当はその裏にあったことがいっぱいあるんでしょ?」って思うじゃないですか。そこを,ギリシャ神話の勉強と,自分達の解釈と,映画制作者の理解と,全部入れたうえで,かなりの肉付けをしているんで。そこが,普通の映画のゲーム化とは違うところだと思っています。
「映画観たらもうゲームせんでええやん」とか「小説読んだらもうゲームいらんやん」とかいうのとはまた違って,別の世界がそこに広がっているんで,期待してもらっていいんじゃないかと思いますね。
――最後に,映画を見てからゲームに入る方,直接ゲームに入る方それぞれに,メッセージをお願いします。
三輪氏:
映画に負けないスタンスでかなりこだわって作って,ゲームだからこその面白さを追求してやってきました。
アクションゲームとしては,個人的によくできていると思っているんで,ぜひ手に取って映画も観て,ゲームを触っていただきたいな,と思っています。
よろしくお願いします。
一つ反省するところがあって,武器が形は変われども“振っている”系の攻撃が多くなってしまったんで,そこはもう一歩踏み込んで,違うものが持たせられたらよかったのかもしれないなと。
ちょっと反省はしつつも,元の映画と比べたら相当がんばって,想像できないほどとんでもない量の武器を,簡単に使いこなせるゲームになっていますので,そこは見てほしいですね。
クエストという形になっていますけど,一般のゲームでいうステージみたいなものなので,そこを何度も何度もトライできるゲームです。アクションが苦手な人は自分の武器を育てて強くしちゃえば,もっと楽にクリアできたりとか,親切設計になっていますんで,エンジョイしてもらえたらなと思っています。
――ありがとうございました。
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