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[E3 2010]開催直前情報。北米時間6月15日から開催されるElectronic Entertainment Expo 2010の見どころを探る
2010年は,プラットフォームホルダーが熱い
現地時間2010年6月15日〜17日,ロサンゼルスのコンベンションセンターにおいて,Electronic Entertainment Expo 2010(以下,E3 2010)が開催される。公式サイトによれば,一週間前(6月8日)の時点で参加する企業数は300社に達する勢い。200社に届かなかった昨2009年のE3を,大きく上回っている。規模を縮小した2007〜2008年の「E3 Media and Business Summit」から再び方向転換,メガショウに回帰した昨年だったが,模様眺めのメーカーが,成功裡に終わったE3 2009を確認したうえで今年は参加するという判断を下したのだろう。復帰2年目にして,早くも以前の活気を取り戻しつつある。
「E3 2010」公式サイト
「Electronic Entertainment Expo 2009」記事一覧
「E3 Media & Business Summit 2008」記事一覧
「E3 Media & Business Summit 2007」記事一覧
そんな2010年のE3の話題の中心といえば,3社のプラットフォームホルダー,つまり任天堂,ソニー,そしてマイクロソフトだろう。
2010年3月に任天堂が突然「ニンテンドー3DS」を発表し,「詳しくはE3で」として以来,同社のプレスカンファレンスに世界中の注目が集まることになった。2004年に発売され,世界累計の販売台数が現在まで1億3000万台を超えるという,“世界で最も売れた携帯用ゲーム機”であるニンテンドーDSシリーズ。その後継機となる,6年ぶりの完全新ハードが登場するのだから,注目の高さは当たり前だ。
もちろんニンテンドー3DS本体だけでなく,おそらく同時に公開されるであろう対応タイトルや,この機会を利用して発表されるはずの従来機向けタイトルへの関心もあるだろう。
こうした任天堂の動きに対し,残る2社がどのようなカウンターを打ってくるのかについては,さまざまな予想がある。
「携帯ハードには携帯ハードで」というわけで,PSPの後継機となるPSP2の発表をソニーに期待するメディアも多いが,実際問題,2009年にPSP goが登場したばかりでもあり,可能性は低いかもしれない。とはいえ,たとえ2010年内の発売はないとしても,後継機となる携帯ゲーム機のプランを公開する可能性はありそうだ。
また「KILLZONE 3」のような3D立体視に対応したタイトルや,「PlayStation Moveモーションコントローラ」対応ゲームなどの発表も期待できる。
もう一つのプラットフォームホルダー,Microsoftの目玉はもちろん「Project Natal」だ。昨年のMicrosoftのカンファレンスに登場したときには正直,海のものとも山のものともつかない雰囲気だったが,現在の姿がどうなっているのか興味深い。
Project Natalに対応したタイトルの情報は現在のところ少なく,Microsoft Game Studios傘下のLionhead Studiosが開発中の「Fable III」が“何らかの形で”Project Natalを応用するのではないか,という程度。果たして,どのようなラインナップが見られるのだろうか。
ニンテンドー3DSによって急に騒がしくなった感のある,E3のプラットフォームホルダーの動き。PlayStation 3とXbox 360,そしてWiiが揃って登場した2006年ほどではないにせよ,それなりにヒートアップしたものになりそうだ。ちなみに,2006年のE3は参加メーカー数,来場者数とも過去最高のスコアを記録しており,新しいハードウェアの持つ訴求力は大きい。
カジュアルからコアなゲームまで
期待のタイトルが続々登場
現在分かっている出展作品は,カジュアルゲームからコアゲーマー向けのタイトルまで,ジャンルも内容もバラエティに富んでいる。とはいえ,バイヤー向けのショウという側面も持つE3では,どうしてもパッケージタイトルがメインになり,仕方のないことだが基本料金無料のオンラインゲームや,市場に確実な地歩を築きつつあるブラウザゲームなどは目立ちにくい。また昨年同様,ロシア/東欧のゲーム企業は参加しないか,参加してもブース出展はなく,プライベートルームでの商談のみということになっていそうだ。
そういう観点からは,E3というイベントが欧米ゲーム市場のすべてを反映しているわけではないとも言えるが,それでも2010年後半から2011年にかけての欧米ゲーム業界の動向は見えてくるだろう。
例えば,飛ぶ鳥を落とす勢いだった音楽ゲームだが,昨年あたりから昨年あたりから販売本数にかげりが見えており,Guiter Heroシリーズを擁するActivision Blizzardと,Rock Bandシリーズを抱えるElectronic Artsはプレイヤー層の拡大を狙って,それなりの手を打ってくるはずだ。
また,Ubisoft Entertainmentの「Just Dance」のヒットにより,ダンスゲームが脚光を浴びる可能性もある。PlayStation MoveやProject Natalとも相性が良さそうであり,それとの絡みも十分に考えられる。ともあれ,フィットネスやスポーツものといったカジュアルなタイトルが,今年もE3会場を華やかに盛り上げるはずだ。
コアなゲームファンにとっては,大物タイトルの揃った迫力あるE3になりそうである。
その筆頭として挙げられるのは,やはり「Call of Duty: Black Ops」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)だろう。2009年のメガヒット「Call of Duty: Modern Warfare 2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)に続いて,2010年11月の出番を待つBlack Opsでは,時代設定を従来シリーズの第二次世界大戦から冷戦時代にスイッチし,ベトナム戦争を始めとした歴史的な戦いを,特殊部隊のメンバーとして体験することになる。
そんなCall of Duty: Black Opsの有力な対抗馬と目されるのが,こちらも現代の戦いに設定を変えたElectronic Artsの「Medal of Honor」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)。シングルプレイ部分をEAのLos Angelesスタジオが,またマルチプレイ部分をスウェーデンのEA DICEが担当するという豪華な布陣で,こちらは2010年10月の発売が予定されている。
舞台になるのは現代のアフガニスタンで,特殊部隊の隊員となったプレイヤーが敵地の奥深く潜入し,危険な任務を遂行する。「ミリタリーFPSの代表作」の座を長らくCall of Dutyシリーズに奪われていた,Medal of Honorの巻き返しはなるだろうか?
ここ数年,カジュアルゲームジャンルに力を入れていた感のあるElectronic Artsだが,Medal of Honorのほか,「Crysis 2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360),「Bulletstorm」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)そして「Dead Space 2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)と,今年のラインナップは過去に例を見ないほどコアゲーマー向け。
もちろん,EA SPORTSのタイトルも,代表格である「Madden NFL 11」のほか「Tiger Woods PGA Tour 11」「NBA LIVE 11」など,“11”ならびでズラリと揃っていて賑やかだ。とりわけEA SPORTSとしては初めての総合格闘技ものとなる「EA Sports MMA」が,不動のチャンピオンであるTHQのUFCシリーズにどのように挑むのかも楽しみだ。
ヨーロッパ勢としては,例年どおりUbisoft Entertaimentが多くの新作タイトルを発表する。とくに,このところ急な勢いで情報公開が進んでいるGhost Reconシリーズ最新作,「Tom Clancy's Ghost Recon: Future Soldier」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)がファンの注目を集めている。
また,Assassin's Creedシリーズの最新作としては,「Assassin's Creed Brotherhood」がすでに発表されているが,その詳細はもちろんとして,さらに時代を変えた完全新作にも期待が集まっている。そのほかにも,Far Cryシリーズの新作や,Rainbow Sixシリーズの新作といった話も挙がっており,2010年4月に発売されるや,たちまちセールスランキングのトップへ駆け上がった「Tom Clancy's Splinter Cell: Conviction」(PC/Xbox 360)のような勢いを,2010年後半にも維持したいはずだ。
意外な発表はあるか 2010年の新作タイトル
マルチプラットフォームタイトルが完全に定着し,「PC専用」の文字を見かけなくなった最近のE3だが,今年はPC専用タイトルとしていくつかのMMOが紹介される予定だ。
俎上に載っているのは,Lucas ArtsとBioWareが制作するスター・ウォーズMMORPG,「Star Wars: The Old Republic」と,Grand Theft Autoシリーズの世界観をオンラインゲームに持ち込んだクライムアクション「APB:All Points Bulletin」,そして,ノルウェーのFuncomが開発中のローファンタジー「The Secret World」の3本。これらのうち,どのタイトルが見られるのかははっきり言えないが,いずれにしろ,「World of Warcraft」が支配する欧米のMMORPG市場への食い込みを図り,各タイトルとも開発にしのぎを削っている。
そのWorld of Warcraftだが,残念ながらBlizzard Entertainmentは今年もE3への参加を予定しておらず,PCゲーマーが熱く期待している「Diablo III」や「StarCraft II: Wings of Liberty」の新情報については期待できない。例年,Blizzardはプライベートカンファレンスである「BlizzCon」で新情報を公開することが多く,10月22日〜23日が予定されている今年のBlizzConまではおあずけだろうか。
つい最近,ValveのCEOがその噂を全面否定したのだが,たぶん,発表会のキャンセルももともと決まっていたプロモーションだろうから,否定の言葉も真に受けていいのか分からない。メディアとファンの心理を巧みに突いて,Valveの存在感が高まっている。ちょっと迷惑な気がするが,さすがと言えるかもしれない。
とはいえ,Half-Life 2のEpisode 3については,本編と二つのエピソードで何が起きたのかキレイさっぱり忘れている人も多そう(少なくとも私はすっかり忘れている)なだけに,そろそろ出さないとまずいんじゃないかしら。
「The Elder Scrolls IV: Oblivion」「Fallout 3」で成功を収め,トップメーカーの一つに駆け上がったBethesda Softworksは,Fallout 3の世界観を引き継いだ「Fallout:New Vegas」(PC/PlayStation 3/Xbox 360),さらに傘下のid Softwareが長期間にわたって開発を続けている「Rage」そしてCo-opメインのダークファンタジー「Hunted: The Demon's Forge」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)といったタイトルを送り込んでくる。すべてトリプルAクラスの作品だが,気になるのは,いずれもBethesda自身が制作している作品ではないということで,もしかすると,そのへんの情報公開が行われるかもしれない。
「Hunted: The Demon's Forge」 |
「Mafia II」 |
Take-Two Interactiveも,Rockstar Gamesこそ不参加だが,もう一つの柱である2K Gamesが「Mafia II」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)のほか,「Spec Ops: The Line」「XCOM」,そして9月の発売が決まった「Sid Meier's Civilization V」などを紹介するという。また,「F.E.A.R. 3」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)のリリースを控えるWarner Bros.Interactiveや,ベテランクリエイターを招聘して新作「Bodycount」(PlayStation 3/Xbox 360)を開発中のCodemasters,そしてUFC/WWEシリーズの最新作のほか,MMO版のWarhammer 40,000といった話題が豊富なTHQなど,うっかり取材し忘れることが許されないメーカーの有力タイトルが並び,いくぶん物忘れがひどくなってきた私も緊張してくるほどだ。
再びメガショウに戻って2年目を迎えたE3。昨年はまだ様子見という雰囲気が残っていたが,冒頭にも書いたように参加メーカーも確実に増え,各社ともE3に向かって力が入っている雰囲気が強い。
5月後半から現在まで,例年になく新タイトルの発表が相次いだが,その最後には決まって「詳しくはE3で」という一言がついていた。今年も4Gamerは,オールラウンドプレイヤーとして,プラットフォームに関わらず「詳しいこと」を遠慮会釈なく取材する予定なので,読者の皆さんもゲーム業界で最も重要な三日間をぜひ楽しみにしてほしい。
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