GIGABYTEのプライベートブースは今年も台北101に用意された
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COMPUTEX TAIPEIの期間中,台北市内の超高層ビル,台北101の36階にプライベートブースを展開するのが恒例となっているGIGA-BYTE
TECH
NO
LO
GY(以下,GIGA
BYTE)は,
今年も新製品をズラりと並べていた。
その中で要注目といえそうなのが,デザインが変わって,ずいぶんと垢抜けた印象になった,ゲーマー向けブランド「
G1 Gaming」の新作マザーボードだ。
GA-Z170X Gaming G1
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Hunter Lee氏(Product Manager, Product Planning Division, Innovation & Creative Value Center, Motherboard Business Unit, GIGA-BYTE TECHNOLOGY)
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今回4Gamerでは,GIGABYTEでマザーボードのプロダクトマネージャーを務めるHunter Lee氏から,最上位モデルである「
GA-Z170X Gaming G1」に関する話題を中心に話を聞くことができた。Skylake世代におけるGIGABYTEのゲーマー向けマザーボードがどういった特徴を持つのか,その概要をここにまとめてみたい。
ゲーマー向けモデルはThunderbolt 3対応
Lee氏が「GIGABYTEのIntel 100シリーズマザーボードが持つ特徴」を語るにあたって,最も長い時間を割いていたのが,「
Thunderbolt 3」(開発コードネーム「Alpine Ridge」)のサポートについてだ。
G1 GamingのIntel 100シリーズ対応マザーボードに搭載されるUSB Type-C端子(写真の赤丸内)。従来のUSBのような「上下」(もしくは「表裏」)がないため,接続しやすい。これが,G1 Gamingの上位マザーボードではThunderbolt 3対応になるわけだ |
ちなみに,これがIntel製のThunderbolt 3コントローラ |
PCゲーマーだと,「ThunderboltってMac向けのインタフェースでしょ? サポートしているPCもあるけど,誰も使ってないよ」と思うかもしれない。正直,筆者もそう思っていたのだが,COMPUTEX TAIPEI 2015のタイミングでIntelから発表されたThunderbolt 3は,これまでのThunderboltとは異なり,ゲーマーをはじめとするPCユーザーにとっても意味のあるものになっていた。というのも,Thunderbolt 3は,物理インタフェースにUSB Type-Cを採用し,USB 3.1の機能も持つようになったらからだ。
もともとDisplayPortやPCI Expressのプロトコルに対応していたThunderboltが,物理的にUSB Type-C,プロトコル面ではUSB 3.1をサポートしたことで,「USBの上に,それ以外のプロトコルも載せて運べるインタフェース」になった。帯域幅もUSB 3.1の10Gbps,「Thunderbolt 2」の20Gbpsをも上回る40Gbpsとなり,専門的な言い回しをあえてするなら,USB 3.1のスーパーセットになったのである。
「DisplayPortで8Gbps,それ以外で32Gbps。これだけの帯域幅がある以上,使わない理由はない。GIGABYTEはThunderbolt 3でいく」(Lee氏)とのことで,上位モデルでは“USB 3.1ポート”として,USB Type-CのThunderbolt 3を積極的に採用するという。
マザーボードレベルでサウンド出力S/N比120dBを実現
GA-Z170X Gaming G1のアナログサウンド段。オンボードサウンドでS/N比120dBを実現しているという |
アナログサウンド入出力インタフェースは当然のように金メッキ済み |
続いて重要なポイントとされたのが,
Creative Technology(以下,
Cr
ea
ti
ve)のサウンド品質認証プログラム
「
Sound Blaster ZxRi 120dB+ SNR」に,GA-
Z170X
Gam
ing
G1が準拠していることだ。
Lee氏によれば,これは,Creativeが最近始めたもので,「Sound Core3D」プロセッサと外部D/Aコンバータ,相応のアナログ段を持ち,システムレベルで120dB以上のS/N比が実現されたマザー
ボードを,Creativeが検証および認証するプログラムとのこと。
GA-Z170X Gaming G1では,Texas
Instruments(Burr- Brown)製で24bit・192kHz対応のD/Aコンバータ「PCM 1794」を搭載し,その先ではステレオを2系統のモノラルに分け,新日本無線製OPAMP(オペアンプ)「NJM2114」やオーディオグレードのWIMA,ニチコン製コンデンサを組み合わせることで,Creativeのテストをパスしているという。
なお,GA-Z170X Gaming G1以外の上位モデルでは,Creativeによる認証は取れていないがSound Core3Dを搭載。下位モデルではGIGABYTE独自の「
AMP-UP Audio」仕様となる。なお,マザーボード基板の本体からアナログサウンド回路部分を分離しているラインにはLEDが埋め込まれており,7色から好きな色を選んで光らせられるとのことだ。
GIGABYTEが電源フェーズ数戦争再開の狼煙を上げる!?
本体背面
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Skylake世代のCPUで,一部のユーザーにとって重要な変更となるのが,
Haswellでオンチップ実装された電圧レギュレータ(Voltage Regulator)が,再びCPUの外に出ることだとLee氏は言う。
それまでのマザーボードでは,CPUコア電圧以外にも,さまざまな電源電圧を外部から共有する必要があり,それゆえに,昇圧を伴うオーバークロックに対応するマザーボードでは,多段の電源フェーズ構成を採る必要があった……というのを覚えている人も多いだろう。数十フェーズ,などというのも,Ivy Bridge時代までは珍しくなかった。
これがHaswellでは,電圧レギュレータがCPUコアごとに用意されたため,CPUコア単位での消費電力制御を行えるようになり,いきおい,消費電力の低減につながっていたのだが,実のところ,ここには落とし穴があった。昇圧を伴うオーバークロックを行おうとすると,CPU側の電圧レギュレータがボトルネックになってしまうのだ。これにはコアなオーバークロッカーから不満が集まっていたそうで,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)はその対策として独自の「OC Socket」を投入したりもしていたが(
関連記事)が,Lee氏いわく,「Skylake世代のデスクトップCPUでは,これが元に戻る」とのことである。
そのため,マザーボード,とくにハイエンドマザーボードは多段フェーズ競争に向かうことが容易に想像でき,実際,GA-Z170X Gaming G1ではCPU用が16,それ以外が4の,計20フェーズ構成になっている。「きっとまた30とか40フェーズといったマザーボードが出てくるだろう(笑)」(Lee氏)。
GA-Z170X Gaming G1は,International Rectifier製の第4世代デジタルPCMコントローラと第3世代MOSFETドライバを搭載し,16+4フェーズを実現
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Turbo B-Clock(のカバー)。この下にチップが実装されている
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なお,GIGABYTEは,それに合わせて,「Turbo B-Clock」というチップもGA-Z170X Gaming G1に実装している。これは,100MHzと125MHz,167MHzの3段階しか用意されず,その周辺で少し弄れるだけになって久しいIntel製CPUのベースクロック(BCLK)を,
90〜200MHzの範囲でリニアに変更できるようにするものとのことだ。ゲーマーがオーバークロックで常用するときは,今後も動作倍率変更のほうが主流であり続けると思われるため,GA-Z170X Gaming G1で搭載しなくてもよかったのではないか,という気がしないでもないが,オーバークロッカーにとっては,この機能が提供されることが重要であるとのこと。
巨大で重いグラフィックスカードからPCIeスロットを守る金属カバー
GA-Z170X Gaming G1をはじめとしたハイエンド市場向けマザーボードでは,PCIe x16スロットが金属で覆われている
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GIGABYTEでは長年,PC自作の経験に長けたハイエンドユーザー向けのマザーボードに限って,PCI Express(以下,PCIe)x16スロットの破損や故障が多いという問題に悩まされていたという。そして,最近になって,その理由が,
GeForceやRadeonの上位モデルが搭載するGPUクーラーなどの重さによってスロットがたわんだり曲がったりすることであると突き止め,抜本的な対策に乗り出した。その結果が,金属でシールドされたスロット「Ultra Durable Metal Shielding PCIex16 Slots」だ。
この機構の採用で,スロットの耐久性は飛躍的に高まったとのこと。嬉しい副産物として,EMIシールド効果が得られるようになったともLee氏は語っていた。
Killer DoubleShot Pro X3やHDMI 2.0サポートなども
必要とするユーザーがどれだけいるかは疑問だとLee氏も笑っていたが,Skylake世代のマザーボードでは,最大3ポートのSATA Express対応インタフェースも用意される |
GA-Z170X Gaming G1はPCIe 3.0 x4接続のM.2スロットを2系統用意していた |
これは非ゲーマー向けモデルの一部に標準でバンドルされる「GC-M2-MINI-SAS」。SFF-8639インタフェースを採用したSSDとの接続用だ |
G1 GamingのIntel 100シリーズチップセット搭載モデルではこのほか,上位モデルを中心に,Rivet Networks製有線LANコントローラ「Killer E2201」2基と,
IEEE 802.11ac&Bluetooth 4.1対応の無線LANコントローラ「Killer E1535」のトリプルコントローラを併用することで,
パケットの自動最適化を行う「Killer DoubleShot Pro X3」や,
オンボードのグラフィックス出力におけるHDMI 2.0対応も果たすことになる。
また,筆者がざっとチェックした限り,
G1 GamingシリーズはPCIe 3.0 x4接続のM.2スロットを最大で2基搭載していたが,
Lee氏によると,
一部には3基搭載し,
さらに,
無線LANコントローラなどに向けてもう1基を搭載するモデルすら準備中とのことだ。
なお,ATX電源やリセット,HDD LEDを束ねられるGIGABYTE独自のアダプター
も,
この世代から登場するとLee氏。
それはASUSがすでに実現しているのではないかと聞いたところ,
「GIGABYTEのアダプターでは,
ASUSのそれよりも,
接続したときの背が低くなっており,
何かの拍子にピンが折れ曲がったりしにくい」という答えが返ってきた。
以上,駆け足気味で紹介してきたが,チップセットの機能を語らずとも,盛りだくさんといったところだ。ASUSやMSIがCOMPUTEXで手の内を明かさないなか,新要素をこれでもかとアピールしてきたGIGABYTEの戦略が目立つ感じになったとはいえるだろう。
お世辞でも,別にGIGABYTEからお金をもらっているからでもなく,率直な感想として,今年のCOMPUTEXにおけるマザーボード取材で一番わくわくしたのは,少なくとも今のところGIGABYTEプライベートブースである
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最後は,展示されていたG1 Gamingのマザーボード,ミニ写真集で本稿を結びたい。
GA-Z170X-Gaming GT PCIeスロット構成が変わり,サウンド周りが「Creative未認証」のSound Core3Dに,LANコントローラが「Killer+Intel」になっている。電源フェーズ数もGA-Z170X-Gaming G1よりは少ない |
GA-Z170X-Gaming 7 GA-Z170X-Gaming GTと機能的にはほとんど同じとされているが,CPU周りの電源フェーズがさらに少なくなるなど,基板レベルでの簡略化が若干入っている。非OCユーザー向けの上位モデル的な感じと理解するのが正解かも |
GA-Z170X-Gaming 5 上位モデルで白く映えていた本体カバーが黒系に変わり,Sound Core3DからAMP-UP Audioに,デュアルLANからKillerのシングルLANにも変更されている |
GA-Z170X-Gaming 3 GA-Z170X Gaming 5とあまり変わらない……と思いきや,CPU電源周りは規模だけでなく,採用される部品レベルでも差別化が行われていた |
GA-H170-Gaming 3 PCIeスロット構成が変わって,マルチGPU構成は2-wayまでのサポートになった。Turbo B-Clockが省かれているのも目を引く |
ゲーマー向けモデルではないが,オマケ気味にMini-ITXモデル,GA-Z170N-WIFI。デュアルIntel製LANコントローラ仕様で,基板背面側にPCIe 3.0 x4接続のM.2スロットを搭載する |