Qualcomm，ゲーム用途重視の新型SoC「Snapdragon 730G」など3製品を発表。搭載端末の登場時期は2019年中頃に

　北米時間2019年4月9日，Qualcommは，ミドルクラス市場向けの新型SoC（System-on-a-Chip）として，「Snapdragon 730G Mobile Platform」（以下，Snapdragon 730G）と「Snapdragon 730 Mobile Platform」（以下，Snapdragon 730），および「Snapdragon 665 Mobile Platform」（以下，Snapdragon 665）の3製品を発表した。
　これらの中でも注目すべきはSnapdragon 730Gで，ゲーム用途向けに機能を強化したSoCであるとQualcommはアピールしている。搭載端末はいずれも2019年中頃に登場する予定とのことだ。

Qualcommが公開した新型SoCのチップ写真

Snapdragon 730G，730

　まずはSnapdragon 730Gと730について見ていこう。
　両製品とも，CPUコアに「Kryo 470」，GPUコアに「Adreno 618」を採用しており，統合型モデムやDSP（Digital Signal Processor），ISP（Image Signal Processor）といった構成要素も，まったく同一である。Qualcommが公開している型番（Part Number）も，ベースモデルであるSnapdragon 730が「SM7150-AA」であるのに対して，Snapdragon 730Gは「SM7150-AB」となっており，仕様面での差異が少ないことが窺えよう。

　では，Snapdragon 730Gの何がゲーム用途向けに特化しているのかというと，Qualcommが「Snapdragon elite gaming features」と称する機能群にあるという。
　ちなみにQualcommは，ハイエンド向けSoCの現行最上位モデルである「Snapdragon 855 Mobile Platform」から，Snapdragon elite gamingというマーケティング名を使い始めており，ゲーム用途に向けた機能を備えることをアピールしている。

　そのほかにもSnapdragon elite gaming featuresでは，ゲームにおけるHDR表示の対応や，OS側のUI表示が遅いことによって，ゲームのフレームレートが低下するのを防ぐ「Jank Reducer」，外部プログラムを使ったゲームへのチート行為を防ぐ「Anti-Cheating Extensions」，ゲームのロード時間短縮や無線LAN使用時の遅延を短縮する機能などを備えているという。
　加えて，「世界で人気のスマートフォン向けゲームがSnapdragon 730Gに最適化されている」と，Qualcommがアピールしている点もポイントだ。

　Snapdragon 730GのGPUコアについて，Qualcommはいつもどおり詳細を明らかにしていない。ただ，グラフィックス性能はSnapdragon 730比で最大15％，1世代前の「Snapdragon 710 Mobile Platform」（以下，Snapdragon 710）との比較では最大25％も優れているという。
　同じGPUコアでこれだけの性能差があるのは，単純に考えると最大動作クロックを大幅に引き上げる動作モードがあるということなのだろうか。


　ゲーム関連以外の特徴では，AI処理による画像認識「Computer Vision」に対応するISPの搭載，第4世代のエッジAI処理機能「Qualcomm AI Engine」への対応，新世代の無線LAN規格である「Wi-Fi 6」ことIEEE 802.11axへの対応といった要素が挙げられている。

　Snapdragon 730Gと730，およびSnapdragon 712の主な仕様を表1にまとめてみよう。
　ハイエンド市場向けスマートフォンに使われるSnapdragon 800シリーズと比較して，ゲームにおいてどの程度の性能を発揮できるかは未知数であるが，ミドルクラス市場向けスマートフォンのゲームにおける性能を引き上げるプロセッサとして，期待が持てそうな新製品ではないだろうか。

表1　Snapdragon 730G，730，および712の主なスペック

	Snapdragon 730G	Snapdragon 730	Snapdragon 712
型番	SM7150-AB	SM7150-AA	SDM712
製造プロセス	8nm	8nm	10nm
CPUコア	Kryo 470	Kryo 470	Kryo 360
物理コア数	8	8	8
最大動作クロック	2.2GHz	2.2GHz	2.3GHz
GPUコア	Adreno 618	Adreno 618	Adreno 616
ISP	Spectra 350	Spectra 350	Spectra 250
カメラ	4800万画素（シングル），2200万画素（デュアル）	4800万画素（シングル），2200万画素（デュアル）	3200万画素（シングル），2000万画素（デュアル）
統合型DSP	Hexagon 688	Hexagon 688	Hexagon 685
APIサポート	DirectX 12，OpenGL ES 3.2，Vulkan 1.1	DirectX 12，OpenGL ES 3.2，Vulkan 1.1	DirectX 12，OpenGL ES 3.2，Vulkan 1.1
メモリコントローラ	LPDDR4 1866MHz，最大容量8GB	LPDDR4 1866MHz，最大容量8GB	LPDDR4X 1866MHz，最大容量8GB
統合型モデム	Snapdragon X15 LTE	Snapdragon X15 LTE	Snapdragon X15 LTE
通信仕様	LTE Cat 15，下り最大800Mbps	LTE Cat 15，下り最大800Mbps	LTE Cat 15，下り最大800Mbps

Snapdragon 665

　Snapdragon 600シリーズの新製品であるSnapdragon 665は，Qualcommが公開した仕様を見る限り，「Snapdragon 660 Mobile Platform」（以下，Snapdragon 660）を置き換えるSoCといった位置付けのようだ。
　目につく仕様面での違いには，

• Snapdragon 660の14nmプロセスから，Snapdragon 665では11nmプロセスに変更
• GPUコアがAdreno 512から，Adreno 610に変更され，Vulkan 1.1に対応
• DSPがHexagon 680からHexagon 686に変更され，エッジAI処理性能が2倍に向上

といった要素が挙げられる。一方，Snapdragon 600シリーズの上位モデルである「Snapdragon 670 Mobile Platform」（以下，Snapdragon 670）とは，CPUコアやGPUコア，ISPで差別化されており，性能面でもSnapdragon 660よりやや上だが，Snapdragon 670には及ばないというあたりになりそうだ。

　Snapdragon 665と既存SoCのスペックを表2にまとめておこう。

表2　Snapdragon 665と670，および660の主なスペック

	Snapdragon 665	Snapdragon 670	Snapdragon 660
型番	SM6125	SDM670	SDM660
製造プロセス	11nm	10nm	14nm
CPUコア	Kryo 260	Kryo 360	Kryo 260
物理コア数	8	8	8
最大動作クロック	2.2GHz	2GHz	2.2GHz
GPUコア	Adreno 610	Adreno 615	Adreno 512
ISP	Spectra 165	Spectra 250	Spectra 165
カメラ	2500万画素（シングル），1600万画素（デュアル）	2500万画素（シングル），1600万画素（デュアル）	2500万画素（シングル），1600万画素（デュアル）
統合型DSP	Hexagon 686	Hexagon 685	Hexagon 680
APIサポート	DirectX 12，OpenGL ES 3.2，Vulkan 1.1	DirectX 12，OpenGL ES 3.2，Vulkan	DirectX 12，OpenGL ES 3.2，Vulkan
メモリコントローラ	LPDDR4X/LPDDR3 1866MHz，最大容量8GB	LPDDR4X 1866MHz，最大容量8GB	LPDDR4X 1866MHz，最大容量8GB
統合型モデム	Snapdragon X12 LTE	Snapdragon X12 LTE	Snapdragon X12 LTE
通信仕様	LTE Cat 12，下り最大600Mbps	LTE Cat 12，下り最大600Mbps	LTE Cat 12，下り最大600Mbps

Qualcommによる当該プレスリリース（英語）