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ハイエンド向け新型SoC「Snapdragon 888」の詳細が公開。Snapdragon 865比でグラフィックス性能が最大35%向上
5nmプロセスで製造するSnapdragon 888は,CPUコア「Kryo 680」や「Adreno 660」などを集積したプロセッサとなる。前世代の「Snapdragon 865 Mobile Platform」(以下,Snapdragon 865)では,外付けモデムで5Gに対応する形だった。一方のSnapdragon 888は,5G対応モデム「Snapdragon X60 5G Modem-RF System」(以下,Snapdragon X60 5G)を内蔵したのが特徴だ。
Snapdragon 888とSnapdragon 865のスペック比較は,以下の表のとおり
Snapdragon 888 | Snapdragon 865 | |
---|---|---|
製造プロセス | 5nm | 7nm(N7P) |
CPUコア | Kryo 680 | Kryo 585 |
CPU物理コア数 | 8 | 8 |
CPU最大 |
2.84GHz | 2.84GHz |
GPUコア | Adreno 660 | Adreno 650 |
ISP | Spectra 580 | Spectra 480 |
カメラ | 8400万画素(シングル), |
6400万画素(シングル), |
統合型DSP | Hexagon 780 | Hexagon 698 |
APIサポート | OpenGL |
OpenGL |
メモリコントローラ | LPDDR5 3200MHz |
LPDDR5 2750MHz/LPDDR4x 2133MHz, |
統合型モデム | Snapdragon X60 5G | 非搭載(外付けでSnapdragon X55 5Gに対応) |
通信仕様 | 5G,下り最大7.5Gbps | 5G,下り最大7.5Gbps |
長時間駆動でも性能が低下しにくいSnapdragon 888
ゲーム用途においてとくに重要な要素であるGPUコアは,Adreno 660に変更となった。例によってQualcommは詳細を明らかにしていないのだが,Snapdragon 888は,Snapdragon 865と比べて,レンダリング性能が35%も高速化したそうだ。加えて,電力効率も20%改善したという。
Snapdragon 888において,Qualcommは「長時間の駆動でも安定した性能を発揮できる」と主張する。Qualcommが検証したデータによると,競合製品は連続して動作したときに,性能に波が生じたり,低下したりするという。一方,Snapdragon 888の場合は安定した性能を維持できるとのこと。
また,Qualcommが紹介した調査では,モバイルゲーマーが週に6時間以上ゲームをプレイしてるという結果が出たという。とくに若い世代のゲーマーは,1日1時間以上プレイしており,長時間にわたって安定した性能が求められているとして,Snapdragon 888の優位性をアピールした。
一方,CPUコアのKryo 680は,現行のSnapdragonシリーズと同様に,4基の高性能コア(big側)と,4基の低消費電力コア(LITTLE側)を組み合わせたbig.LITTLE構成を採用する。Kryo 680では,big側の高性能コアのアーキテクチャを刷新したのが見どころと言えよう。4基のうち,とくに高い周波数で動作する1基の「Prime Core」がArm製のCPU IPコア「Cortex-X1」に,そのほかの3基がArm製の「Cortex-A78」へと変更になっている。これにより,性能が25%向上し,電力効率も25%改善したという。
ゲーム向け機能群「Elite Gaming features」に操作遅延軽減機能やVRSを実装
また,Snapdragonシリーズの上位モデルに搭載するゲーム向け機能群「Snapdragon Elite Gaming features」には,新たにタッチ操作の遅延を軽減する「Qualcomm Game Quick Touch」(以下,Game Quick Touch)と,「Variable Rate Shading」(VRS ,可変レートシェーディング)に対応したのが見どころだ。
Game Quick Touchは,ディスプレイにおける垂直同期のタイミングやフレーム送信のタイミングなどの原因による操作遅延を軽減するというものだ。Qualcommによると,画面をタッチした結果が画面に表示されるまでの処理を最適化することによって,操作遅延が最大で20%軽減できるという。
また,VRSはPC向けのGPUやゲーム機において,すでに実装されている機能である。詳細については,西川善司氏によるGeForce RTX 20シリーズの解説記事(関連記事)を参照してほしいのだが,簡単に説明すると,簡単に説明すると,シェーダで計算するピクセルの解像度を必要に応じて変更しながら描画することで,画像処理の負荷を軽減するものだ。
QualcommによるとVRSの実装により,最大30%の性能向上を実現できるそうだ。
5GモデムをSoCに統合
SoCに統合したSnapdragon X60 5Gは,Qualcommとしては第3世代となる5Gモデムでは,ミリ波とsub-6の両方に対応する。また,FDDおよびTDDでの5Gキャリアアグリゲーションをサポートしており,下り最大7.5Gbps,上り最大3Gbps(いずれも理論値)という高速通信を実現するという。加えて,無線通信用チップ「Fa
イベントでは,Qualcommの本社キャンパスにレース場を作り,ラジコンカーで対戦するというビデオが披露された。5Gのミリ波を使って,ラジコンに搭載したカメラの映像をリアルタイムにストリーミングし,遠隔から操作するというもので,5Gならではの高速・低遅延を発揮したデモンストレーションとなっていた。
AI処理や画像処理性能も強化
第6世代となったAIエンジンも強力で,新設計のDSP(Digital Signal Processor)「Hexagon 780」が中核となっている。ScalarとVector,Tensorという3つのアクセラレータを改良したほか,3つのアクセラレータが共有するメモリ容量を従来の16倍とすることで,AI推論性能はSnapdragon 865の15TOPSから26TOPSまで向上したとのことだ。
そのほかにも,画像処理を担うImage Signal Processor(以下,ISP)が「Spectra 580」へと変更された。従来製品では,ISPが2つだったが,Spectra 580では3つとなったのがポイントだ。
昨今のスマートフォンは,3眼式カメラを搭載する製品が多い。ISPが3つになったことで,それぞれのカメラで撮影した画像を同時に処理できるようになった。たとえば,広角と標準,望遠という構成の3眼式カメラを搭載したスマートフォンにおいて,最大2800万画素の写真を3つのカメラで同時に撮影できる。加えて,3つのカメラで,同時に4K解像度の動画を撮影することも可能だという。
また,これまで広角カメラから望遠カメラに切り替える場合,まずは広角カメラをオフにした後に,望遠カメラが起動するという処理になっていた。これもISPの数が増えることで,広角カメラと望遠カメラを同時に動かすことが可能で,カメラの切り替えがこれまでよりもスムーズになるという。
Snapdragon 888搭載スマートフォンは2021年第1四半期から登場
Snapdragon 888を搭載したスマートフォンは,ASUS
例年だと,2月にスペインで開催される展示会MWC Barcelonaに合わせて,各社から新Snapdragon搭載スマートフォンが登場するが,2021年は新型コロナウイルスの影響で,MWC Barcelonaの開催が6月下旬に延期された。それでも,従来のMWC Barcelonaの開催期間である2月下旬には,各社からさまざまな製品が発表となる見込みだ。
QualcommのSnapdragon 888製品情報ページ
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