インタビュー
北米で高い評価を受ける理由とは? 日本版の発売が決定した「洞窟物語3D」の魅力をNIS Americaのプロデューサー,二井田ジャック氏に聞いた
国内では現在ニンテンドーDSiウェア版がリリースされているが,パッケージソフトとして洞窟物語がリリースされるのは,今回が初めてのこと。もともと2Dのドット絵だったグラフィックスを3Dへと変更し,さまざまな新要素を追加して,洞窟物語がどのように進化したのか。今回は,本作の移植を担当したNIS Americaのプロデューサー二井田ジャック氏に話を聞いた。
幅広いユーザーに触れてもらうための3Dアレンジ
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
「洞窟物語」がPC向けに公開されてから約8年。これまでもDSiウェアに移植されるなど,ちょっとした歴史のある作品になっていますよね。
そうですね。もともとは,原作者の天谷大輔さんが一人で制作した作品でした。2D横スクロールタイプで謎解き要素のある,たとえるならファミコンの「メトロイド」のような内容のアクションゲームで,可愛い見た目とは裏腹に,ちょっとダークなストーリーが用意されているのが大きな魅力でしたね。
4Gamer:
これをお一人で制作されたのは本当にすごいと思います。2D横スクロールの作品はたくさん出ていますが,中でも洞窟物語はゲームの完成度が高く,隠れた名作として知られているくらいですし。
二井田氏:
そういう作品を世の中にもっと広めたいというのが,今回ニンテンドー3DS版を制作するに至った一因でもありますよ。
4Gamer:
でも世の中に広めるという意味なら,DSiウェアで果たしているような気がするんですが,あえて3DS版を制作しようと思われた理由があるんですか?
二井田氏:
先にリリースされたDSiウェア版は,PC版をほぼそのまま移植したものなんです。ですから内容はもちろん面白いんですけど,オリジナルのドット絵ということもあって,欧米の新規プレイヤーや子供には,ちょっと古く見えてしまいます。洞窟物語は,見た目だけで判断されてしまうのはもったいないソフトじゃないですか。なので,今回は現代のユーザーにアピールできるようなグラフィックスにアレンジしてみようと企画したことから始まったのが,この3DS版というわけです。
4Gamer:
原作のPC版やDSi版と比較して,3DS版はどのような違いがあるんでしょうか。
二井田氏:
一番違うのは,やはり3D画面ですね。立体視対応で,グラフィックスがよりリッチになっています。ゲームの基本部分は同じですが,ステージの一部が延長されていたり,隠しアイテムが増えていたりと,原作を遊んだことがある人でも,新しいフィーチャーを探す楽しみがあると思います。
また,ゲームバランスも調整してより遊びやすくしました。ただ日本のプレイヤーは横スクロールのゲームに比較的慣れていますので,北米版よりは少し難しくしています。
4Gamer:
なんとなく,ゲームは北米のプレイヤーのほうがうまい印象があるんですが……日本版のほうが難しいというのは珍しいですね。
二井田氏:
そうなんですよ。3Dのゲームでは,北米版のほうが難しい場合も多いんですが,本作にかぎっては逆ですね。日本には,オリジナルを知っているコアなプレイヤーが多くいらっしゃいますから,そのような方にも楽しんでチャレンジしていただくために,バランス調整は天谷さんを交えてやらせていただきました。
4Gamer:
ライセンスを受けてただ移植するだけでなく,原作者の天谷さんの監修も受けているんですね。
二井田氏:
はい,天谷さんにはゲーム全般の監修をしていただきました。グラフィックスやサウンド,難度の調整など,お互いに協力して行っています。とくにグラフィックスに関しては,PC版のドット絵から3Dポリゴンにするにあたり,天谷さんのイメージする世界観を再構築した形になっています。
4Gamer:
3D化ということで,より細かい描写が必要になってきますよね。その再構築はうまくいったと考えていいんでしょうか。
二井田氏:
最終的にはプレイヤーの評価に委ねることになりますけれど,できる限りのことはしました。ちなみに,背景は3Dのままキャラクターだけドット絵で遊べるモードも用意していますので,ちょっと不思議な雰囲気でも楽しめると思います。
北米で高く評価され,多くのプレイヤーが熱中
4Gamer:
この「洞窟物語」は北米での評価がとくに高いですよね。実際,3DS版も先に北米でリリースされて,今回はそれを逆輸入するような形になっていますし。
二井田氏:
おっしゃるとおり,北米での評価は非常に高いです。たった一人でも,これだけ面白いゲームを作り上げられる……そういうお手本として,コアなファンに認められていますね。
4Gamer:
具体的には,ゲームのどのあたりが評価されているんでしょうか。
二井田氏:
昔のゲームのグラフィックスは,今のものと比べれば当然落ちるんですが,シンプルだからこそ面白いものがたくさんありましたよね。この洞窟物語もその一つだと思うんです。昔ながらのアクションゲームだけど,冒険していく感覚やストーリーの面白さ,さらにゲームの操作性の良さなどで総合的に評価されているんだと思います。時代が変わっても,面白いものは評価されるという,ゲームの理想的な例ですね。
4Gamer:
ちなみに,二井田さんはいつ頃この作品に出会ったんですか?
二井田氏:
僕は2010年に北米のみで配信されたWiiウェア版からですので,比較的最近です。感想はまさに先ほどお話ししたとおりで,昔のゲームの良さがすべて入っているという印象でした。
そのWiiウェア版を作っている開発スタジオがたまたま知り合いの会社で,「こんな良いゲームがあるのならもっとたくさんの人に触ってもらうために,パッケージソフトで出さないか」と相談したんです。
4Gamer:
そこで3DSというプラットフォームを選んだ理由はどこにあったんでしょう。
二井田氏:
PSPや据置きのゲーム機など,候補はいくつかありましたが,相談をしていたのがちょうど3DSが発表された当時だったんですよ。そこで仕様を見て,立体画面と洞窟のグラフィックスがうまくかみ合うのではないかと考え,新たなプラットフォームへのチャレンジの意味も込めて3DSで制作することになりました。
開発はWiiウェア版とDSiウェア版を手掛けた北米のNicalisという開発スタジオなんですけど,天谷さんとも交流があったので制作はとても順調でしたね。
4Gamer:
リメイクするのも,勝手知ったる開発陣なら安心できますよね。
二井田氏:
コアなファンの多い作品ですからね。何も知らない開発会社が手掛けるのとでは,受ける印象もずいぶん変わると思うんです。おかげさまで先行してリリースした北米では,この3DS版も非常に高い評価をいただいて,ホッとしている次第です(笑)。
4Gamer:
それは期待できそうですね。
ちなみに,北米ではどういった方々が本作をプレイしているんでしょうか。
二井田氏:
もともとの原作を知っている方と,新規の方が半分ずつぐらいですね。年齢層もそれに沿っていて,原作を知っているのは20歳代後半以降の方,新規の方はティーン層でした。横スクロールアクションというジャンルが3DSに少ないことも幸いして,新規プレイヤーが増えたように感じています。
日本版だけの追加要素も見どころ
4Gamer:
では,ずばり今回の3DS版のアピールポイントはどのあたりでしょうか。
初めて遊ぶプレイヤーさんにも親しみやすいよう現代風にアレンジされたグラフィックスのほか,リミックスされたサウンドなども用意しています。また,操作感やアクション性なども今風に調整されていますから,PC版よりも遊びやすくなっていると思います。原作ファンの方には,手触りの違いなども楽しんでいただきたいですね。
4Gamer:
国内でのパッケージ展開は初めてですし,北米同様に初めて触れる人も増えるんじゃないでしょうか。
二井田氏:
そうだといいですね。配信ではどうしてもお客様の目に止まる機会が少ないので,今回のパッケージ版の発売で,いろいろな方に触れていただけることを,僕たちも期待しています。
4Gamer:
パッケージと言えば絵柄も印象的ですね。もっとダークなイメージかと思っていましたが,すごく可愛いです。
二井田氏:
日本版のパッケージは,シノノコさんという洞窟物語にも造詣の深いイラストレーターの方に描いていただきました。見てのとおり,“ジャケ買い”してしまうような可愛いものに仕上がっています。シノノコさんのイラストは,海外でも有名なんですよ。Nicalisの開発陣も,日本版パッケージがシノノコさんになったことをすごく喜んでいましたね。
4Gamer:
聞くところによると,今回の日本版は海外版にはない要素もあるそうですね。
二井田氏:
はい,新しい要素もいくつか用意しています。一つ例を挙げると,とあるレトロゲームとコラボレーションしていて,懐かしいキャラクターが本作に登場する予定です。
4Gamer:
ズバリ,そのキャラクターは誰なんですか?
二井田氏:
それはまだナイショです(笑)。情報は追ってお知らせしますが,見た目もかなり面白いものになっていますよ。この日本版の開発もNicalisが行っていますが,僕も実際に見て大笑いしましたね。
4Gamer:
楽しみですね……!
そういえば,ゲームの総プレイ時間は,目安としてどのぐらいなんでしょう。
二井田氏:
アクションゲームに慣れた方なら10時間ぐらいでしょうか。探索をしながらRPGのように特定の場所を行き来できますし,先ほどお話をしたように,日本版は難度が少し高めに設定されているので,それなりの時間は必要だと思います。さらにマルチエンディングで,クリア後のやり込み要素もありますので,何度も遊んでいただけると思いますよ。
4Gamer:
クリアするだけならともかく,徹底的に遊ぼうと思うと大変そうですね。
二井田氏:
大変ですが,きっと長い時間遊べる作品だと思いますよ。
4Gamer:
わかりました。
それでは7月の発売に向けてコメントをお願いします。
二井田氏:
今回の3DS版は北米で制作していますが,原作者の天谷さんのご協力も得て,日本の方にもアピールできるものになっていると思います。3DSでアクションゲームをプレイしたいと思っている方は,その選択肢としてこの洞窟物語3Dにもチャンスをいただければ嬉しいです。
4Gamer:
発売を楽しみにしています。ありがとうございました。
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洞窟物語3D
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(c)2012 Nippon Ichi Software, Inc. (c)2012 NIS America, Inc. (c)2012 Nicalis, Inc./Daisuke Amaya.