インタビュー
二人二色の声優人生。「アイドルマスター シンデレラガールズ」の双葉 杏,諸星きらりなどで活躍する声優,五十嵐裕美さんと松嵜 麗さんにインタビュー
ただ今回は,あえてキャラクターや作品にこだわらず,どうして声優を目指したのか,というきっかけから,仕事への取り組み方まで,いろいろなことを聞いてみることにした。
近年,キャラクターに声を吹き込むだけでなく,さまざまな形でメディアに露出する機会が増えている声優という職業は,傍から見ているときらびやかな印象を受ける。ただそれは,幅広い視野を持ちつつ,細かく思慮をめぐらせて,小さな仕事を積み重ねていくという,地道な努力が実を結んだ結果の1つであることが,二人の話からは覗える。
アニラジに救われた松嵜さん
超絶オタクから始まった五十嵐さん
4Gamer:
まず,お二人がなぜ声優業界を目指されたのか,というところからお話を聞いていこうと思います。松嵜さんは,どのような経緯で声優になられたんですか?
松嵜さん:
えっと……。その話,暗いんですけどいいですか?
4Gamer:
えっ。
松嵜さん:
中学1年生のときに,自分の周りからお友達がいなくなってしまったんです。昨日までお友達だった人が,突然口もきいてくれない状態になってしまって。
4Gamer:
本当に暗い……。
五十嵐さん:
しょうがないよ……中学生の頃は(笑)。
松嵜さん:
すみません(笑)。でも,そんなときに私の近くに座っていた子達が話しかけてくれたんです。その子達は,そのまま仲良くもしてくれたので,「この子達とはずっと仲良しでいたいな」と思いました。実は,そうやって話しかけてくれた子達がアニメ・漫画部に入っていたんですよ。
4Gamer:
なるほど。それでアニメや漫画に興味を持ち始めたわけですか。
松嵜さん:
アニメとか漫画自体はもともと好きだったんですけど,「中学生になったら卒業しなくちゃ」という気持ちがどこかにあって。でも,そのことがあってからまた興味が沸いてきたので,とりあえずアニメイトさんに行ってみたんですよね。そうしたらそこに「きゃらびぃ」という冊子があって。
五十嵐さん:
今もありますね。
4Gamer:
アニメイトさんが独自で出されている情報冊子ですね。
松嵜さん:
ええ。気になったので手にとってみたら,特集が「人気アニラジランキング」で,その1位が林原めぐみさんの番組でした。それからその番組を聞くようになるのですが,聞き逃さないように30分くらい前からラジオをつけていたんです。林原めぐみさんの1つ前の番組では,小森まなみさんがパーソナリティをしていたんですよ。
4Gamer:
声優に興味のある方なら誰もが知っているようなベテランのお二人です。
松嵜さん:
そうですよね。お二人のラジオを聞いて,すごく人間的にしっかりしていて,前向きで,芯を持っている方だなって思ったんです。そこで勇気づけられたり,元気づけられたりすることがすごく多くて,「私もいつかこういう人になりたいな」と思うようになりました。それから声優という職業をを意識し始めて,すぐに放送部に入ったんです。
4Gamer:
それは中学生のとき,でいいんですよね。
松嵜さん:
中学2年生くらいですね。実を言うと,それまでは学芸会とかも大嫌いで,人前で話すのなんて練習ですら恥ずかしいと思っていたんですけど,なぜか放送部は楽しめたんです。朗読とかアナウンスをやりながら,NHK杯の創作ラジオドラマ部門とかに出てみたり。
五十嵐さん:
私も出てた!
松嵜さん:
だよね! そういう活動の中で,演技をしたりとか声を入れたりするのがとても楽しかった。アニメも歌も割と好きなほうだったので,将来こういう職業につけたらいいなと思いましたね。そのあとは,NHK杯の全国大会で東京に行くのを利用して養成所を見学したりもしました。私,福岡出身なので。
4Gamer:
声優を意識してからは,かなり計画的に動きましたね……。
松嵜さん:
そうなんです。でも,とりあえず親を説得しなくちゃいけなかったんですよ。今でも,たまに「いつ帰ってくるの?」って言われちゃうくらいで。ただ,キャラクターソングCDを出してから,若干対応も変わりました。
4Gamer:
1つ形になったということで,安心したんでしょうね。
松嵜さん:
そうかもしれません。ただ,そうやって反対されてたこともあって,夜間でしたが,大学には行くことにしたんですよ。お昼はバイトをして,養成所の日はそこに通って,夜は大学で勉強して。
4Gamer:
それは過酷というか,とても忙しそうですが。
松嵜さん:
忙しかったですね。そのほかにも児童劇団とかで勉強させてもらっていましたから。そのあとは,オーディションを何度か受けて,「Aniplex presents Super Voice Audition 2006」に合格して事務所に入り,「天元突破グレンラガン」でデビューできました。今,所属しているマウスプロモーションに移籍するのは,それから1年後くらいのことですね。
4Gamer:
なるほど。元々のきっかけはちょっとつらい出来事だったんですね。
松嵜さん:
そうですね。でも,林原さんや小森さんの番組を聞いて,自分も変わることができました。自分のこういうところが,友達に嫌われちゃった原因だったのかもしれない,というところにも気づけたので,あのときは辛かったけど,振り返ってみると本当にありがたかったなと思います。
4Gamer:
では,五十嵐さんはどのような経緯で声優業界に入られたんでしょうか。
五十嵐さん:
私の場合は,進路を決めるときにやりたいことがなかった,というのが発端ですね。順番に話すと,私は小学生の頃から“ギャルゲー”をやっているような,超絶オタクだったんです。いわゆる“厨二病”もしっかり発症して,高校でもどっぷり2次元に浸かって(笑)。
4Gamer:
私も片目を隠したり,左腕をぷるぷるさせて右腕で押さえつけたりしていましたので,よく分かります。
五十嵐さん:
あはは(笑)。実を言うと,絵が描けたらアニメを“作る”側に行きたかったんです。制作側のインタビューや画集は大好きでしたし,一人でライブも行きました。そうなると当然,周りにもオタクっぽい子が多くなるので,自然とアニメには触れていましたね。それで,私も高校で放送部に入っていて。
松嵜さん:
一緒だ。
五十嵐さん:
でも,私も人前で話すのだけはどうしてもだめだったんです。例えば,小学校って何をするのも挙手制じゃないですか。そういうときは絶対に手を挙げなかったし,先生と目を合わせないようにしていました。発表なんて大嫌いだったので,感想文の朗読なんて,最後まで残されるようなタイプでしたね。
4Gamer:
それを克服するきっかけがあったのでしょうか。
五十嵐さん:
どうしても,“2次元”の仕事に関わりたい,でも,特別な技術はない。そう考えたときに,身一つでできるお仕事の声優に行き着いたんです。だから「これは自分でなんとかするしかない」と思って,クラス委員を始めたり,総会議長をやってみたり,できるだけ人前で話す“きっかけ”を作って,慣れるように努力していましたね。
4Gamer:
五十嵐さんも,声優を目指すと決めてからは前向きに動かれていますね。お二人に言えることですが,自分を変える努力というのは,誰にでもできることではないと思います。
五十嵐さん:
ただ,私の場合は両親が「面白そうだからやれば」という感じでしたので,麗ちゃんよりは楽だったかもしれません。声優を目指す条件として,大学を出てくれとお願いはされましたけど,これも好きなことをやればいいと言われたので,とりあえず東京の大学に通いました。それに並行して週1の養成所に通って,マウスプロモーションの養成所に受かって,運良く1年目からお仕事をいただいて,そして今に至ります。
4Gamer:
なるほど。お二人とも「人前で話せない」という自分を克服されているようですが,お互いの性格が似ているな,と思ったりは?
五十嵐さん:
それはあまりないですね。実は私も,小学生の頃に友達といきなり仲が悪くなってしまったことがありました。でも,私は「先生,あの人達が無視してくるので,しばらく口をききません。よろしくお願いします!」みたいなことを平気で言う子でしたからね。
4Gamer:
ズバッといきますね。
五十嵐さん:
言っちゃうタイプでしたね。ただ,私にも「こっちにきなよ」って言ってくれる友達がいましたから。そのあとの中,高は女子校だったんですけど,そこでも集団行動をせず一人で自由に動いているタイプで……。
4Gamer:
私も高校の頃は授業をサボって,一人でぼーっとしているようなタイプでしたので,気持ちは分かります。
五十嵐さん:
でも,そうやって生きてくると社会に出て苦労しますよね。
4Gamer:
しました。というか,しています(笑)。
五十嵐さん:
私もそうでした。デビュー当時は本当にひどい状態で,人と会話ができませんでしたよ。今は,自分が先輩になることで周りが見えてきて「あ,もうちょっとフラットで良かったんだ。気を張りすぎていたんだな」と思えます。
4Gamer:
松嵜さんにもそういう時期はあったんでしょうか。
松嵜さん:
うーん。背伸びとはちょっと違うんですけど,初めの頃は変に気を回していて,例えば五十嵐さんとかに対して「私のこと,きっと嫌いなんだろうな」って思っていました。
五十嵐さん:
初めて一緒に仕事をしたときに,「五十嵐さんのこと怖くって」というようなことを言われたんですよ。
松嵜さん:
「(五十嵐さんは)絶対,私のこと嫌いだと思っていて……」という話はしましたね。
五十嵐さん:
でも,それを聞いた私は「うん,知ってた。だからめっちゃ話かけてた」って。すごく怖がられているのは分かっていたので「あっ,松嵜さーん♪」って軽い感じで話しかけましたね。
4Gamer:
傍から見ていると,とても仲が良さそうなので想像できませんが……。
五十嵐さん:
こういう関係になったのは最近なんですよ。「リスアニ!TV」とか「アイドルマスター シンデレラガールズ」とか,「マウスディーバ」とかをやらせてもらうようになってからです。
松嵜さん:
言われてみると,最近はよく一緒になるね。
五十嵐さん:
セットとまではいかないけど,とても気軽になってきたね。
松嵜さん:
ちょっと話が逸れちゃいましたけど,背伸びということで言えば,私も人とすぐには溶け込めないタイプだったので,携帯ショップのキャンペーンガールとかをやってみて,とりあえず気楽に話せる人になろうとがんばっていたんです。そういう努力をしようと考えたこと自体が,少し気を張りすぎていた結果なのかもしれませんね。
五十嵐さん:
何かを変えなくちゃって焦っちゃう。今振り返ると,そんなに考えることでもなかったのにね。
代表作を通じて,演技への取り組み方も変化する
4Gamer:
マウスプロモーションでは,お芝居や歌を含めていろいろとお仕事をされていますが,お二人がこれまで演じてきて,ご自身に影響したな,と思うキャラクターは何かあるんでしょうか。
五十嵐さん:
私はやっぱり「パパのいうことを聞きなさい!」ですね。
4Gamer:
ひなだお!
五十嵐さん:
ひなだお!!
4Gamer:
ありがとうございます(笑)。
五十嵐さん:
いえいえ(笑)。あの作品は,現場から本当に良いものにしたいという気持ちが伝わってくる場所でした。監督さん,プロデューサーさん,原作の松 智洋先生,なかじまゆか先生,関係者の方。皆さんが,本当に作品や私達のことを大事にしてくれた。それまでは,名前のあるキャラクターでも物語の中で数回しかでないとか,1話から出て来ないとか,「生徒1」という役とかをやっていることが多かったので。
4Gamer:
そういう一時的な役を演じるのをつらいと思われたりは?
五十嵐さん:
それはありません。毎回すごく楽しくやっているんですが,みんなで1つのものを作るという感じではないんです。その輪っかの中に入るのが,私のやりたかったことですから。
4Gamer:
ということは,一時的な役を演じていると作品の外側にいる感覚を覚える場合もある。
松嵜さん:
そういう感覚はあるかもしれませんね。
五十嵐さん:
エキストラに近い感じですからね。そういう意味で,ひなちゃんは大きいです。キャスト陣も仲が良くて,温かい家族みたいなものができあがっていて。またそういう作品に,参加できたらいいのですけど……。
松嵜さん:
作品に,真ん中で関わるのって,本当に大変なんです。
4Gamer:
そういう作品というのは,自分で探してお願いするものなんでしょうか。それとも,マネージャーさんなりから,向いているキャラクターを押してもらえるのか。
五十嵐さん:
基本的には,制作側からオーディションの情報が各事務所に降りていって,そこから担当のマネージャーが,自分の事務所からは「この子を出そう」と決めて,私達に「行ってきなさい」という形になることが多いと思います。
4Gamer:
仕事の割り振りというのは,基本的にマネージャーさんが決めているわけですね。
松嵜さん:
そうですね。でも,そういうパターンでないこともあります。私の転機になったのは「ジュエルペット サンシャイン」の水城花音という役だったんですが,当初,マネージャーさんは「松嵜はこちらがいい」と,ヒナタというぽわんとした子で押してくださったんです。でも実際は,逆に制作の方が「松嵜は花音のほうがいい」と言ってくださったらしく,私はその役を受けて,最終的に花音役で選んでいただきました。
4Gamer:
なるほど。そういう経緯で選ばれることもあるんですか。
松嵜さん:
ええ。あの作品は私のことを皆さんに知っていただけるきっかけになったんじゃないかなと思います。スタッフや役者の方々のモチベーションが常に高くて,本当に皆さん楽しそうにお仕事をされていました。そういう素晴らしい環境で,1年間いろいろなことを勉強させていただきましたね。
五十嵐さん:
自分達で「こっちのキャラクターのオーディションはないんですか」って聞いてみることもありますよ。「想い出受験でいいので,やらせてください!」とか(笑)。
松嵜さん:
あるある! スタジオで「テストだけでもお願いできませんか!」ってね。
4Gamer:
ちょっと失礼ですが,それは数打てば当たるという気持ちもどこかにあって?
五十嵐さん:
そういう考えもないわけではありませんが,自分の持っているものを聞いてほしいという気持ちのほうが強いです。
4Gamer:
なるほど。そういうアグレッシブさがお仕事につながっているんでしょうね。ちなみに,お二人はお互いのことをどう思っているんですか? 例えば私は,仮に自分が声優だったとしたら,「同じ事務所でも隣の子には負けられない」という気持ちになっちゃうタイプなんですよ。
五十嵐さん:
基本的には仲良しですけど,そういうところもありますよ。
松嵜さん:
そうだね。
ただ,麗ちゃんに関していえば,お芝居をすごく楽しそうにやるし,何よりすごく吹っ切った演技をするので,とても尊敬しています。
松嵜さん:
な,なんだそれ。
五十嵐さん:
私はすごく器用にお芝居をするタイプなんですよ。
4Gamer:
器用に,ですか。
五十嵐さん:
こういうキャラクターがいて,こういう設定がある。それなら,求めているのはここだろう,というのを出します。だからやっぱり,「まぁ,そうだよね」と言われる。事務所の方からすると,私を出して失敗することはないけど,それ以上のものはないって思われることもあるでしょうね。
4Gamer:
求められるものを狙って出せる,というのも大切だと思いますが……。
五十嵐さん:
そう言ってくださる方もいます。でも,麗ちゃんはそういうタイプではない。私にはできないことを,やっているなと思います。
4Gamer:
五十嵐さんからみると,松嵜さんは挑戦しているように見えると。
五十嵐さん:
挑戦している,というよりは勇気がありますよね。そもそも,発想するところから始めるので,すごく考えているなって。キャラクターを自分のものにしようとしている,という感じです。麗ちゃんを見ていると「あーそうくるんだ……マジか」と思うことはあります。
松嵜さん:
照れるね(笑)。
4Gamer:
そんな松嵜さんは,五十嵐さんのことをどう思ってらっしゃるんですか?
松嵜さん:
うーん,難しいですね。先に自分のことを言うと,元々は私もいろいろとやれちゃうタイプだったんです。マネージャーさんには事務所に入った頃から「松嵜のお芝居が早くできるといいよね」と言われていて,私は声に特徴があるわけではないし「どうすればいいんだろう」って悩みながら演じてきました。最初の頃は,単体で見れば良い芝居ができているかもしれないけど,ほかと比べると耳にとまるお芝居ではない,という状態が続いていたんですよ。
4Gamer:
もともとは松嵜さんも,いわゆる器用なタイプだったんですか。
松嵜さん:
どちらかといえばそうだったと思います。それで,そこから脱却するにはどうしたらいいんだろうと考えながら臨んだのが,ちょうど水城花音のオーディションだったんです。こうしたら面白いかもというのを,ちょっと振り切ってやってみた。例えば笑い方を普通の「あっはっは」というところから,もっと心臓が動くようなところまで高めてみるとか,歯を食いしばったまましゃべってみたら音はどうなるんだろうとか,いろいろ試してみました。
4Gamer:
その結果,自分の中にどのような変化があったんでしょうか。
松嵜さん:
これはどう言ったら伝わるかわからないんですが,「今まで見せたことのない私を見せるのは恥ずかしいけど,でもこのお芝居を早く聴いてほしい,感想を早く知りたい!」っていう,いい緊張感,高揚感があって,初めて自分の芝居を自分で「面白いかも♪」ってワクワクできたんです。そうやってお芝居するのが,とても楽しいということに気付いたんですよね。
4Gamer:
なるほど。そしてそういう挑戦を繰り返して生まれたのが,水城花音だったと。
松嵜さん:
ええ。そうやってみて分かったのは,自分には失う物が何もないということです。まだまだ人気があるわけでも,知名度があるわけでもないので,例えば誰かに見られながら演技をしたとしても,そこですごく変な表情になったって,いいじゃないかと。私が面白い,楽しいって思えるようにやろうと。それからは,現場で先輩に遠慮もしなくなって。
4Gamer:
先輩に遠慮はしない,というのは。
松嵜さん:
マイクの前では,新人もベテランも関係ないと思うんです。例えば,ジュエルペット サンシャインの収録は,全キャラクターが濃過ぎる上に,ベテランの役者さんも全力でお芝居されるんです。なので新人だからって少しでも遠慮したり,VTRチェックする時間がなかったとか,体調が悪かったとか,そういう妥協した部分があると,当たり前のようにキャラクターが喰われるんですよ。
私は,新人に許されることがあるとすれば,それはたぶん冒険だと思うんです。もちろん,ミスをしないようにちゃんとやらなくちゃいけないんですけど,そのために抑えたりしないで,思い切りやることが許されている,だったら私は,ケガをするくらいに攻めていこうかな! って(笑)。
4Gamer:
そういうことを考え始めてから,ご自身の演技が変わっていったんですね。
松嵜さん:
はい。それに,そういう方向で少しずつ皆さんに評価をいただけるようになってきたので,私の向いている方向が徐々に分かってきた,という感じですね。あ,でもそうやって悩んで,子供の芝居を研究していたときには,五十嵐さんのボイスサンプルを聞いたりしたんですよ。
4Gamer:
お互いのボイスサンプルを聞き合うこともあるんですか。
五十嵐さん:
聞きますね。新しく入ってきた方のは全部聞きます。キャラとか声がかぶらないか,しっかりチェックします(笑)。
松嵜さん:
五十嵐さんは本当に子供を演じるのがうまいんですよ。何度かマネもしてみたんですけど,全然うまくいかない。「いいな,羨ましいなぁ……悔しいな」って思ったりもしていました。でも今は,お互いができることをやるしかないし,最終的にどれだけ求められる人になれるか,ということなのかなと思っています。少なくとも,今の私には五十嵐さんのような子供はできない。むしろ五十嵐さんにしかできないひなちゃんだから,みんなに愛されるんでしょうね。アニーちゃん(リスアニ!TV)をやっているのを見ていても,あの声や表現は,私にはできないから。
五十嵐さん:
お互いあれは苦労してるけどね。
松嵜さん:
そうだね(笑)。
五十嵐さん:
麗ちゃんは普段やらない男の子(リス役)だし,私もかなり声を作ってやっています。台本をもらって,初見で尺に合わせるのも大変です。普段は,家で予習してからというのが多いので。
松嵜さん:
結局,誰もが見えないところで刺激しあっている。アフレコの現場に行けば,違う事務所の方や,お話をしたことのない方がたくさんいますけど,そういう方々のお芝居とか振る舞いを見て,学んでいるところもありますし。
五十嵐さん:
どこかで周りを見る余裕ができる瞬間もあるんだと思いますよ。それができないうちは,本当に独り相撲していたなと後悔しちゃいます。
4Gamer:
でも,自分をとりまく環境自体はそこまで大きく変わっていないはずなんですよね。
五十嵐さん:
単純に,自分の中の何かが変化するんでしょうね。実は,私は今,お友達を増やそうと思っています。お友達が増えて,現場で会えば,ちょっと心にゆとりができる。そうすると周りも見えるようになる。お友達計画,推進中です。
4Gamer:
なるほど。どうでしょう,私と友達に。
五十嵐さん:
ごめんなさい。
4Gamer:
……。ちなみに,現場ではどんな方と主にお友達に?
五十嵐さん:
やっぱり年の近い子とか,同じような役の子とは,仲良くしやすいですね。
4Gamer:
ライバルであり,友達でもあるという関係は理想ですね。
五十嵐さん:
だからこそ,話をしていると「あ,そんな努力をしてるんだ」って思えるんでしょうね。ここでもお互いが,いい感じに刺激しあっているんだと思います。
未来への展望も二人二色
「重厚な芝居への挑戦」「ずっと声優として生きていく」
4Gamer:
お二人は,将来こんな仕事をしてみたい,という夢みたいなものはあるんでしょうか。
五十嵐さん:
アニメではあまり求められないところですけど,私は元々の地声が低めなので,そういう自分の個性を鍛えて,重厚な芝居をできるようになりたいです。「CIS」とか「Xファイル」のような海外のサスペンスドラマも好きなので,吹き替えにも挑戦したいと思っています。
4Gamer:
海外ドラマもお好きなんですね。
五十嵐さん:
ええ。あとはやっぱりゲームが好きなので,お堅いアドベンチャーゲームに出てみたいです。今だと「タイムトラベラーズ」や「ROBOTICS;NOTES」のような。ただ,あれだけボリュームのあるお話を演じきるには,お芝居の土台がしっかりしていないといけませんから,まずはそこからです。
4Gamer:
ギャルゲーをやる! と,さきほどおっしゃっていましたが,比較的お固めのもいけるとは。
五十嵐さん:
大好きです。ちょっと前には「『かまいたちの夜』に声がつくだとぉ!?」という事件がありました。最初は「絶対オフにしてやるぜ……!」と思っていたんですけど,実際にやってみたら「あ,いい。むしろボイスありだな」って(笑)。ただ,そういう重厚なタイトルに出るためには,やっぱり実力と人気が必要ですから,今はいろんな方に私のことを知ってもらいたいなって思います。ゆくゆくは,そういう方面にもチャレンジできるように,もっと努力しなくちゃいけませんね。
4Gamer:
では,松嵜さんはいかがでしょう。
松嵜さん:
私はギャグものが大好きで,「フルハウス」のような海外ドラマも好きなので,そういう作品の中で演じられたら楽しそうだなぁって思います。あとはやっぱり「セーラームーン」世代なので,小さい子向けのアニメにはもっと出てみたいです。アニメも吹き替えも,ジャンルは問わずもっとやりたいですね! そうやってこれからもいろいろな役を演じてみたいんですけど,ただ,それ以上にずっとこのお仕事をやり続けたい。いずれ,「この役はやっぱり松嵜さんじゃなきゃだめでしょう」と言われるくらいの役者になりたい。
五十嵐さん:
キャラクターのキャストを選ぶときに,真っ先に名前を挙げてもらえるようになりたいよね。
松嵜さん:
そうだね。「ここは松嵜さんがやったらもっと面白くなる」と言われるようになるくらい,がんばりたいなって。
五十嵐さん:
私の中には,そういう感覚あるよ。「こっちの役は,麗ちゃんでしょ!」という。ただ,これは身内びいきなのかもしれませんね。やっぱりほかの方よりも麗ちゃんの実力を知っているから。
4Gamer:
自分の力をオーディションで発揮できるかというのは,また違う問題でしょうからね。
五十嵐さん:
そうなんですよね。
松嵜さん:
オーディションも,マネージャーに振ってもらって受けるんじゃなくて,指名してもらえるようになれたらいいですよね。
五十嵐さん:
それでいて,実力も申し分ないよって言われる,そういう人になりたいよね。
松嵜さん:
そうですね。そのためにも,今は1つ1つの仕事に愛をもってやる!
4Gamer:
本当にそれは理想的だなと思います。
さて,割と真面目なお話をしていただきましたが……。
松嵜さん:
本当ですね。(笑)で済む話がほとんどありませんでした。
4Gamer:
では最後は少しゆるい雰囲気で,五十嵐さんと松嵜さんがご一緒に出演されているアニメについて教えていただけますか。
五十嵐さん:
「はいたい七葉」という,10月6日からQAB琉球朝日放送で始まった沖縄限定のショートアニメです。麗ちゃんはニーナという役を演じているんですけど,これはきっと麗ちゃんがやりたかったキャラクターだよね。
松嵜さん:
大好物(笑)。ギャグっぽいキャラクターで,どれだけキャラの幅が出せるか,毎回挑戦しています。
4Gamer:
ギャグというのは,要するにボケということなんですか?
五十嵐さん:
ブラックジョークというんでしょうか。ざっくりと言えば,ちびまる子ちゃんとか,デ・ジ・キャラットみたいなタイプです。セリフに合わせて,表情も面白おかしく変わるタイプのキャラクターですね。
松嵜さん:
私は,キャラクターを観ている方に,身近で活き活きしているように感じてもらいたいんです。そういう演技をしたい。ニーナは表情がころころ変わるし,それが出しやすい,出しがいのあるキャラクターですね。それを見て,みんなが楽しくなってくれたらいいなと思って演じています。そういう気持ちが伝わると嬉しいですね。
五十嵐さん:
私は,そのニーナにライバル心を持っているイーナというキャラクターを演じています。イーナは「因縁の対決だー!」って意気込んで突っかかっていくんですけど,ニーナは「へっ,あんた誰?」みたいな感じで……。
4Gamer:
さらっとあしらわれちゃうんですね(笑)。
五十嵐さん:
そうなんです。イーナはニーナに対する好きという気持ちが強いんですけど,そうやってあしらわれちゃうので「かまってもらえないから余計ムカつく!」という感じなんですね。……イーナって私とはまったく違う性格なんですけど,ニーナの才能に憧れても敵わない感じというか,そういう関係は,私と麗ちゃんの関係にちょっと似ているような気がしますね。
松嵜さん:
なんだそれ。もう1回言うけど,なんだそれ!?(笑)
五十嵐さん:
麗ちゃんの出すニーナに勝てない私のイーナ,これは演じていてすごく悔しかった。「私,こんなにがんばっているのになんで勝てないの!?」って。
松嵜さん:
でも言われてみると,私は演じながら,ほとんどイーナのセリフを聞いていないかも。……ニーナを演じているからだよ? そういうシーンだったからだよ?(笑)
五十嵐さん:
こんなに一生懸命やっているんだから,もっと私のことを見てよ!
松嵜さん:
はいはい。
五十嵐さん:
っていうキャラで(笑)。こうやってイーナがひととおり騒いだあとに,「終わった〜?」って言ってくるようなタイプだよね,ニーナは。
松嵜さん:
「なげーよ」とか言いそうな感じだね。
五十嵐さん:
でも,そんな関係がすごく好き。イーナがニーナが越えることは,多分ないと思う。
松嵜さん:
何をしてもなんか空回りという感じはあるけど,でもそこが可愛いんだよね。
五十嵐さん:
そういうところも,見てほしいなと思います。
松嵜さん:
どっちも好きになってもらえるキャラクターだと思います。ニーナも面白くて可愛いと思うし,イーナもわあわあ言っててほっとけないタイプです。
五十嵐さん:
5分の短い番組なんですけど,これだけキャラクターを出せるのはすごいなって思います。沖縄在住の方はぜひ観てくださいね!
4Gamer:
番宣もバッチリです(笑)。本日は,ありがとうございました。
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