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「ソラノヴァ」の開発方針や今後の展開,そして中国のブラウザゲーム市場のことまで,開発元のFuncityに聞いてみた
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印刷2013/01/11 20:00

インタビュー

「ソラノヴァ」の開発方針や今後の展開,そして中国のブラウザゲーム市場のことまで,開発元のFuncityに聞いてみた

 ベクターは,ブラウザゲーム「ソラノヴァ」の正式サービスを2012年12月13日に開始した。本作はブラウザゲームでありながらフルHDに対応するなど,クライアント型ゲームも顔負けのグラフィックスを誇るMMORPGだ。今回,4Gamerでは,「ソラノヴァ」の開発元であるHangZhou Funcity Technology(以下,Funcity)のFounder & CEOであるAndy Chan氏と,BD Directorを務めるClaire Chen氏に,同社のことや中国のブラウザゲーム市場,そして今後の「ソラノヴァ」の展開について話を聞いた。

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HangZhou Funcity Technology BD Director Claire Chen氏
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HangZhou Funcity Technology Founder & CEO Andy Chan氏


納得できるクオリティに達したゲームだけを送り出す


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは,Funcityがどのような会社なのか,教えてもらえますか。

Andy Chan氏:
 Funcityは,2006年8月,私が大学生だったときに中国で設立した会社です。当時は仲間だけの集まりでしたが,現在では全社で300人前後,そのうち200人ほどが開発者という組織になっています。

4Gamer:
 現在は主に,ブラウザゲームを開発しているんですよね?

Andy Chan氏:
 そうです。私が起業した当初はそれほど盛り上がっていませんでしたが,今やブラウザゲームはタイトル数も増え,技術力も上がり,クライアント型のオンラインゲームと遜色ないものも見受けられるようになっています。
 そうした状況の中,Funcityでは,二つの大きなポイントに注力してゲーム開発に取り組んでいます。一つは,ゲーム自体の面白さで,ゲームバランスとシステムの豊富さにこだわっています。そしてもう一つが,グラフィックスや音楽などの演出面についてです。この二つが融合することで,優れたゲームに仕上がると考えています。

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4Gamer:
 グラフィックスや音楽も,自社で制作しているのでしょうか。

Andy Chan氏:
 そこは外注です。
 また,オンラインゲームではコミュニティの形成も重要です。そこでFuncityでは,コミュニケーションを活性化するコンテンツ作りにも配慮しています。

4Gamer:
 それでは,Funcityを取り巻く中国市場について教えてください。

Andy Chan氏:
 ブラウザゲームに限定すると,約90億元,日本円にして1000億円強の市場規模になっています。ここ数年,毎年40〜50%の成長を続けていますね。

4Gamer:
 プレイヤー層の内訳はどうなっていますか。

Andy Chan氏:
 年齢層は,15歳くらいから40代までと,大きなバラつきがあります。そのうちメインとなるのは20代後半から30代前半ですね。
 売上に関しては,全体の約80%をおよそ5%のプレイヤーがまかなうという感じですね。

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4Gamer:
 なるほど。しかしライバルとなるタイトル数も多く,ターゲット層もバラバラという市場で戦うのは難しいのではないでしょうか。

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Andy Chan氏:
 そうですね。生き残っていくためには,やはりクオリティの高いゲームを提供し続けるしかないでしょう。
 ……あまり名言したくないのですが,中国市場に多くのタイトルがあると言っても,その中で一定以上のクオリティを持っているのはほんの一握りで,それ以外,90%以上のタイトルは出来があまり良くはなく,開発費を回収できないまま終わっています。現在,中国には100社以上のブラウザゲームデベロッパがありますが,数年後まで生き残れるのは10数社というところではないでしょうか。

4Gamer:
 では,差し支えのない範囲で,Funcityが取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。

Andy Chan氏:
 サービス中のものも含めて,5タイトルの開発に取り組んでいます。そのほか,モバイル端末向けタイトルの試作も行っています。
 Funcityには,自分達が納得できるゲームに仕上がるまでサービスを提供しないというポリシーがありますから,一つ一つのタイトルに掛ける開発期間はどうしても長めになりますね。

4Gamer:
 モバイルゲームも開発中とのことですが,それはスマートフォン向けと捉えていいですか。

Andy Chan氏:
 そうです。中国のモバイルゲーム市場は,まだブラウザゲーム市場の10分の1程度ですが,スマートフォンの急速な普及に伴って,加速度的に成長を遂げています。

4Gamer:
 たとえばFuncityのブラウザゲームとモバイルゲームとで,データを共有することなどは考えていますか。

Andy Chan氏:
 もちろん,考えています。

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Funcityの海外展開に大きく貢献した「まじかるブラゲ学院」のサービス


4Gamer:
 それでは,日本のゲーム市場について,思うところなどを教えてください。

Andy Chan氏:
 非常に成熟した市場ですね。またゲームに対するプレイヤーの忠誠度が高く,残留率,ARPU(Average Revenue Per User)ともに高いと思っています。
 日本で開発されたブラウザゲームに関して言うと,グラフィックスや音楽のクオリティがとくに高いです。中国も技術レベルではかなりの水準に達しているのですが,アート的な側面に関してはまだ日本に及びません。したがってFuncityでも,日本のアーティストの起用を視野に入れています。

4Gamer:
 ほかに,日本と中国との違いを感じたことはありますか。

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Andy Chan氏:
 プロモーションの手法ですね。中国では,ゲームが好きかどうかに関わらず,多くの人に向けたプロモーションを行います。そのため,一気に多くのプレイヤーを獲得できるのですが,残留率は極めて低くなります。
 その一方で,日本では,ゲームが好きな人に向けて,効果的なプロモーションを展開しますから,残留率が高いのです。

4Gamer:
 「まじかるブラゲ学院」,そして「ソラノヴァ」と日本でサービスを展開する中で感じた,日本人プレイヤーの印象を教えてください。

Andy Chan氏:
 日本のプレイヤーは,ゲームに対してとにかく真面目ですよね。バグや不具合を発見したら,きちんと報告してくれますし,こうすればもっとゲームがよくなるという提案も多いです。これは世界各国を見回してもあまり見られない例だと思います。

4Gamer:
 ベクターやプレイヤーからのリクエストに沿って,日本向けに開発したイベントやアイテムなどもありますよね?

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Claire Chen氏:
 日本で展開しているイベントの大半は,日本の暦に合わせて,個別に開発,調整しています。また日本向けに,オート移動中,敵との戦闘が発生しない機能を追加しています。

Andy Chan氏:
 季節や行事に合わせたイベントは,非常に反響がよく,私達としてもうれしい限りです。日本で行ったケースを参考に,その後,中国で提供したイベントもありますよ。

4Gamer:
 「日本人ならではだな」と感じるリクエストはありましたか。

Claire Chen氏:
 少し意外でしたが,チャットの文字色に関する要望ですね。中国では赤などカラフルな文字でチャットをするのが普通なんですが,日本だと赤い文字は警告やエラー表示に使われることが多いというので。日本では文字色を落ち着いた色に変更しています。

4Gamer:
 なるほど。それでは,日本も含めて世界展開を考えた場合に,開発上で最も意識していることはなんでしょうか。

Andy Chan氏:
 世界観やキャラクターの設定やデザインを,ファンタジーなものにすることです。各国で文化が違いますから,リアルに寄せ過ぎると,プレイしたときに違和感が大きくなってしまう可能性があります。そこで,世界観などを架空のものにして,違和感が生じにくくするのです。

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4Gamer:
 では,各国のパブリッシャに判断を任せる部分を教えてください。

Andy Chan氏:
 ストーリーに登場する固有名詞や単語などですね。これは直訳ではなく,各国の文化に合うものに変更してもらっています。アイテムも同様で,各国の文化に合わせられるよう,全面的に協力します。またシステム的な部分も,プレイヤーの傾向に合わせて調整できるようにしています。

Claire Chen氏:
 とくに,そのときそのときにはやっている言葉やアイテムを取り入れてほしいというのが,私達の願いです。そうすることで,プレイヤーに「このゲームは,流行にも気を配っている」と思ってもらえたりしますから。

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「ソラノヴァ」は2年半に及ぶ開発期間の中で,全面改修されていた


4Gamer:
 それでは,2012年12月に日本でサービスインしたばかりの「ソラノヴァ」について教えてください。開発期間はどのくらいだったのでしょうか。

Andy Chan氏:
 2年半くらいです。

4Gamer:
 ブラウザゲームとしては,かなり長い開発期間ですよね。それは,Funcityが納得できるクオリティに仕上げるために必要だったということですか。

Andy Chan氏:
 そのとおりです。「ソラノヴァ」は1年以上前に,社内テストを実施するところまで完成していました。しかしテストの結果に納得できなかったのです。そのあと,改善とテストを繰り返し,結果として最初にテストしたバージョンから80%以上を差し替えました。
 ……実はソラノヴァ以外にもう一つ,2年以上開発しているタイトルがあって,そちらは5回以上,グラフィックスを差し替えています。いい雰囲気にするのがなかなか難しくて。

4Gamer:
 グラフィックスと言えば,「ソラノヴァ」は自社開発の「FUN2.0エンジン」を使って描画しているとのことですが。

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Andy Chan氏:
 FUN2.0エンジンは,描画というよりも,ゲーム全般の基盤であり,通信,グラフィックス,音楽など,ゲームに必要な機能を統括するものです。たとえば何かのデータを書き込む場合,直接データをデータベースに送るのではなく,一度エンジンを通すという,管理ツールとしての側面も持っています。一般的なクライアント型のタイトルで使うものとは,機能的に違うものなんですよ。

4Gamer:
 ということは,「ソラノヴァ」だとフルHDグラフィックスに対応していますけれども,別のタイトルでは対応しないということもあるわけですか。

Andy Chan氏:
 そうです。それは各タイトルのコンセプトなどによって変わります。

4Gamer:
 分かりました。それでは,今後の「ソラノヴァ」の展開について教えてください。

Claire Chen氏:
 まずはペットとアバターアイテム,そしてレベル40になると入手できる「翼」を,強化できるシステムを導入します。
 コミュニティシステムとしては,現在,異性のプレイヤーに対する「告白」機能がありますが,その上位機能として「婚約」「結婚」を追加していきます。

4Gamer:
 結婚と言えば,「まじかるブラゲ学院」にも,パートナーシステムがありましたよね。これはFuncityのこだわりですか。

Claire Chen氏:
 パートナーシステムは,コミュニティを活性化するコンテンツの一つとして,中国では主流になっています。中国ではゲーム好きな人はインドア派が多く,異性と出会う機会が少ないんですよ。そこで,オンラインゲームが出会いの場として利用されている側面もあるんです。

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4Gamer:
 なるほど。アップデートのスパンは,どのくらいを予定していますか。

Claire Chen氏:
 実は中国では,月1回,大型アップデートを実施しているんです。現在の日本のバージョンは,中国の2012年8月のものと同じです。日本でのアップデートは,中国の4か月分をまとめた内容になる予定です。

4Gamer:
 それでは,「ソラノヴァ」の中長期的な展開について教えてください。

Andy Chan氏:
 新マップや新ダンジョン,新モンスターなどを大型のアップデートとは別に随時追加していきます。またコミュニティの強化を図るために,ギルドにソーシャルゲーム的な要素を追加しようと考えています。さらに中国ですでに実装している,サーバー間PvPシステムの導入も計画しています。

4Gamer:
 ブラウザゲームでサーバー間PvPというのは珍しいですね。

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Claire Chen氏:
 そうですね。あと,このシステムは,バージョンが同じなら,他国のプレイヤーとも対戦できる仕様になっているんです。まだ本格稼動させるには課題が多いのですが,他国のプレイヤーがどんな装備をしているのか,どんな戦術を使うのか,研究してもらうと面白いのではないでしょうか。

4Gamer:
 国をまたいでの対戦となると,盛り上がると思いますので,実装されることを期待しています。それでは最後に,「ソラノヴァ」のプレイヤーに向けて,メッセージをお願いします。

Claire Chen氏:
 今後,アップデートで未知の大陸をどんどん追加します。ぜひ冒険と恋愛を楽しんでください。

Andy Chan氏:
 私は会社の代表という立場ですが,「ソラノヴァ」の企画にも参加しています。ご要望があれば,どんどんお寄せください。Funcityがさらなる成長を遂げるためにも,皆さんの声が必要です。よろしくお願いします。

4Gamer:
 ありがとうございました,

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 インタビューをしてみて,とくに興味深く感じたのは,Andy Chan氏がグラフィックスや音楽といった演出面が中国タイトルの弱点だと認識しており,それを克服しようとしている点だ。「ソラノヴァ」のフルHDグラフィックス対応も,そうした弱点を克服するべく導入した要素の一つなのだろう。
 近い将来,「ソラノヴァ」並みのクオリティがブラウザゲームのスタンダードになっていくことは想像に難くないが,そのとき,Funcityがその上をいく,どんな演出を施したタイトルを世間に披露するのかも,非常に楽しみである。

「ソラノヴァ」公式サイト

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