インタビュー
「イナズマイレブン オンライン」に,ストーリー強化&対戦のハードルを下げる新コンテンツが追加。その概要と今後の展望を運営開発のキーパーソンに聞いた
今回4Gamerでは,同タイトルのプロジェクトリーダーを務めるNHN PlayArtの吉野貴雄氏と,プランナーであるレベルファイブの安澤祟大氏に,これら3つのコンテンツの概要と実装の意図を聞くとともに,サービスイン以降の動向や今後の展望について語ってもらった。
クリアすれば「イナズマイレブン」の主要選手がそろう「ストーリーロード」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「イナズマイレブン オンライン」は,8月27日と9月3日の2回に分けてアップデートを実施し,3つのコンテンツを追加しました。これらについて,それぞれの概要や狙いなどを教えてください。
吉野貴雄氏(以下,吉野氏):
安澤祟大氏(以下,安澤氏):
バトルロードでは,キャラクターの持ち味が生かされておらず,選手達が記号的だったんですよね。
吉野氏:
そこでストーリーロードでは,試合前に選手達が掛け合いをする演出を入れ,各選手の人となりが分かるようにしました。
安澤氏:
「イナズマイレブン」に登場する選手達は,サッカーに対して情熱を抱いていますし,それぞれ個性的ですから,ファンの皆さんはもちろんのこと,このゲームで初めて世界観に触れるという方にも親しみやすくなったのではないでしょうか。
4Gamer:
ストーリーロードは,どのような形で進行するのでしょう。
吉野氏:
まず今回は,5つのストーリーを実装しました。それぞれのストーリーに主軸となる選手が登場し,試合前の演出で,その選手に関する会話が示されます。そして試合では,その選手がボスとして登場し,プレイヤーが勝てば仲間にできます。
安澤氏:
吉野氏:
プレイヤーの皆さんには,入手した選手を育成していただきたいんです。しかし,選手に対する思い入れがないと,育成が作業になりがちです。ストーリーロードの実装で,それぞれの選手に愛着を持っていただけるとうれしいですね。
4Gamer:
今後も,ストーリーロードのストーリーは増えていくのでしょうか。
吉野氏:
最低でも月に1本は追加していこうと考えています。もちろん内容的にも,これまで培ってきた「イナズマイレブン」の世界観を壊さないよう,レベルファイブさんと検討しています。
4Gamer:
「イナズマイレブン」ファンからすると,お気に入りの選手のストーリーがいつ実装されるかが気になるところですけれども。
吉野氏:
これまでサービスを続けてきた中で,どの選手が人気なのかはある程度把握できていますので,当面は,それを参考に実装の優先順位を決めています。
また,どの選手のストーリーをプレイしてみたいかといった形で人気投票を行って,皆さんと一緒にストーリーロードを作っていくことも検討しています。
4Gamer:
ストーリーロードが実装されて,まだ日が浅いですが,どんな反響がありましたか。
吉野氏:
実装のアナウンスをした段階で,さまざまなコミュニティサイトから「早く遊んでみたい」という声をいただいていました。実装後も,積極的に攻略してくださる方が多くて,大きな手応えを感じています。
もともとストーリーロードは新規の方をターゲットに考えていたんですけれども,そのあたりの反応を見ると,既存プレイヤーの皆さんにも振り返りという形で楽しんでいただけているようです。
対戦のハードルを下げる「ランキングバトル」と「勝つまでサポート」
4Gamer:
それでは「ランキングバトル」について教えてください。
吉野氏:
安澤氏:
ランキングと聞くと,強いチームを作らないと上位に上がれないというイメージがありますけれど,今回は初心者の方でも楽しめるよう,マッチングにこだわりました。このコンテンツでは,長くプレイするほど高くなっていくチームレベルをチェックするのではなく,参加プレイヤー各自のデッキを数値化してマッチングしているんです。
4Gamer:
その理由を教えてもらえますか。
安澤氏:
「イナズマイレブン」ファンの皆さんは,強い選手で固めたデッキを作りたい方だけじゃなく、自分のお気に入りの選手で戦いたい方も多いと思うんです。そこで皆さんのお気に入りのデッキが活躍できる状態にするには,どうすればいいかを考えました。それがうまくハマって,現状のランキングの順位ではチームレベルがかなり高いプレイヤーと,始めたばかりと思われるプレイヤーが入り交じっている状態です。
吉野氏:
また対戦というと,どうしてもハードルが高くなってしまうのですが,このコンテンツでは,負けた場合にも,勝ったときよりは少なめですがポイントが与えられます。ポイントが一定に到達すると,報酬がもらえるというシステムもあるので,ぜひ何度も挑戦して,長く楽しんでいただきたいです。現状では,このシステムが功を奏して,かなり遊んでいただけていますね。
4Gamer:
なるほど。こだわった部分が,きちんとプレイヤーにも評価されていると。
安澤氏:
その一方では,不正を行って稼ぐプレイヤーが出てくるのではないかと予想していました。実際,本実装前のプレオープンでは,2つのアカウントを使ってポイントを稼ぐプレイヤーがいたのですが,あらかじめ対策を用意しておいたので,迅速に対応できました。
吉野氏:
また現状は,1週間でポイントを競い合うという形式を取っていますが,ご要望によっては期間を変更することも検討します。個人的には,3日間など短い期間で競うのも面白いんじゃないかと思っています。
4Gamer:
それでは9月3日に実装された「勝つまでサポート」について教えてください。
吉野氏:
こちらは「公式リーグ」の改革を目指したコンテンツで,ランキングバトル同様,対戦をより多くの方に楽しんでいただこうと企画し,実装しました。
公式リーグは対戦コンテンツですから,当然勝って上位に上がっていくプレイヤーもいれば,負けるプレイヤーもいます。ただ,こうした対戦ゲームでは,負けてしまうとガッカリして,それっきりプレイしなくなってしまう人も少なくありません。
そこで負けたプレイヤーに勝てる資源を与え,かつ「イナズマイレブン」のキャラクターが丁寧に解説してくれるというのが,このコンテンツです。
4Gamer:
具体的には,どんなサポートが行われるのでしょうか。
吉野氏:
対戦に負ける要因は,チームレベルが低かったり,選手のレベルが低かったり,強い選手がそろっていなかったりとさまざまです。そこで選手育成のポイントや選手を入手するためのガチャ用ポイントを与えて,実際に選手を入手して育成するところまで誘導します。たとえ対戦で負けても,そこで投げ出してしまうのではなく,きちんと次につなげてプレイサイクルを構築できるようなサポートをしています。
4Gamer:
プレイヤーが対戦に初めて勝った時点で,サポートが終了するのでしょうか。
吉野氏:
今のところ,サポートは最大3回までとしています。
4Gamer:
3回……それだけで初心者が勝てるようになるものでしょうか。
吉野氏:
実は今回,公式リーグにCPU戦を用意したんです。
安澤氏:
吉野氏:
プレイヤーのレベルに応じてCPUの強さが変わりますので,初心者の方であっても,まあ勝てないということはないでしょう。まず「対戦に勝つ」ということを体験していただけるのではないかと。
安澤氏:
また,公式リーグには,試合後に,報酬の入った宝箱を開けられる仕様を追加しました。試合に勝てば3つ,引き分けだったり負けたりしても1つの宝箱を開けられます。このように,負けても何かが得られる,成長できるという内容にしています。
吉野氏:
そのほか,公式リーグでは,それ以外にも対戦回数に応じた累積報酬を用意しましたので,これまでずっとプレイしていた方も引き続き楽しんでいただけると考えています。
サービスインから3か月。プレイヤーの動向と,その対応はどうなっているのか
4Gamer:
それでは,「イナズマイレブン オンライン」の現状についても教えてください。サービスインから3か月が経過しましたけれど。
吉野氏:
4Gamer:
プレイヤー層は,やはり「イナズマイレブン」ファンが多いのでしょうか。
吉野氏:
そうですね。サービスイン当初は,とくに「イナズマイレブン」ファンの皆さんが多かった印象です。正確に分析したわけではないのですが,「イナズマイレブン オンライン」のサービスイン前後にハンゲームの新規登録が増加したという事実もありました。そのあと,ハンゲーム内外で露出を高めた結果,オンラインゲームプレイヤーの皆さんに認知が高まったという流れです。
安澤氏:
年齢的には,一般的なハンゲーム各タイトルの平均よりも低めで,10代後半から20代前半がボリュームゾーンになっています。10代前半の方も少なからずいらっしゃるので,新規のオンラインゲームプレイヤーを開拓できているのかなとも思っています。
学生の頃に,コンシューマゲームの「イナズマイレブン」シリーズを遊んでいた方が,成長して「イナズマイレブン オンライン」を楽しんでいるという印象ですね。
4Gamer:
男女比はどうでしょう。「イナズマイレブン」というと,女性ファンも多いという印象がありますけれども。
吉野氏:
プレイヤーの4人に一人が女性ですね。
安澤氏:
ネットを見ていると,女性ファンの方が画像をアップしていたりしますね。ストーリーロードへの反応も非常に速く,発表時点でお気に入りのキャラの名前を挙げている例が見られました。
吉野氏:
ただ「イナズマイレブン オンライン」は,ブラウザゲームとは違って,3Dグラフィックスを使ったリッチなゲームなんですね。そのためプレイするにはある程度のマシンスペックや,DirectXのインストールなどPCに関する知識が少しだけ必要となります。
4Gamer:
いままでのハンゲームとは少し客層が違うでしょうね。
吉野氏:
現在は,そういった知識があまりない方に向けて,公式サイトに動画を使ったガイダンスを用意するなど,サポートを充実させているところです。また公式掲示板でも,公式アカウントを使ってテクニカルサポートを行うといった展開を行っています。
そもそも,オンラインゲームが初めてで,何かあったらサポートに問い合わせるといったことすら知らないという方もいらっしゃいますから,そうした部分にどうお応えしていくのかというのが今後のサービスの課題になります。
4Gamer:
分かりました。
それでは,プレイヤーが「イナズマイレブン オンライン」をどのように楽しんでいるかを教えてください。
吉野氏:
一人で遊べるストーリーモードが人気です。私達としても,そういった遊び方をプッシュするべく,期間限定のストーリーを配信して,そこでしか手に入らない選手を提供するということをやってきましたし,今後も継続していきます。
その一方で,せっかくオンラインゲームなのですから,ほかのプレイヤーと関わったり,対戦したりという楽しみ方を知っていただきたいという思いがあります。
安澤氏:
もちろん,私達もそういった遊び方を意識して選手をリリースしていくので,期待してください。
4Gamer:
そのほか,これまでの「イナズマイレブン オンライン」の開発に関して,これはというエピソードはありますか。
安澤氏:
サービスイン当初,あまりスペックの高くないPCだと,非常にローディングが長くなってしまっていたのですが,これは想定外でした。現在ではすでに対策を講じています。
吉野氏:
もっと早い段階で対策できれば,よかったんですけれどね。やはりサービスインした6月の時点では,情報が少なく,皆さんにはご迷惑をおかけしてしまいました。
安澤氏:
その一方でレベルファイブとしては,初めてのPC向けオンラインゲーム開発ですので,毎週何かしら新しい要素を投入すると,リアルタイムで反応をいただけるのがうれしいですね。非常に刺激的です。
吉野氏:
ご自分のプレイを配信している方もいて,それを観ている人達も含めて盛り上がっているのを見ていると,「やってよかったな」と思いますね。もちろん厳しいご意見もいただくのですが,それは「イナズマイレブン オンライン」に対する愛あってのことだと真摯に受け止めています。
現在は,各選手へのディフェンス指示や,非同期対戦モードを企画開発中
4Gamer:
それでは,今後の展開についても教えてください。
安澤氏:
現在,具体的に進めているものとしては,試合中の操作性改善が挙げられます。たとえば今だと,ディフェンス時には,3つのボタンで大まかな指示を出し,簡単に遊べるようになっていますが,さらに選手各自に指示を出せるような機能の開発を進めています。こちらはそう遠くない将来に実装できる予定です。
吉野氏:
またリアルタイムの対戦だけでなく,デッキを組んでエントリーすれば自動的に対戦が進行して,あとから結果だけを確認できる新モードを,今まさに企画しているところです。リアルタイム対戦だと,マウスによるアクションがシビアになってしまう部分もあるのですが,非同期対戦ならその心配がありません。
安澤氏:
やはり「イナズマイレブン オンライン」を,できるかぎり多くの方に楽しんでいただきたいですからね。また深夜しかプレイできない方だと,どうしても昼間に遊んでいる方と接触する機会がないですから,非同期対戦の導入でそういった部分を解消していきたいと。
4Gamer:
新しい選手の追加はどうでしょう。
吉野氏:
今は月2回のペースで選手を追加しています。また,強い選手はスペシャルガチャということになっていますが,今後は入手できるチャンスを増やしていくことも検討していきます。ぜひ強い選手を入手して,皆さんのプレイの幅を広げ,よりオンライン対戦を盛り上げていただきたいです。
安澤氏:
選手のチョイスに関しては,今のところ「イナズマイレブン」の「1」から「3」までの,いわゆる円堂編のキャラクターを順次追加している状況ですね。
4Gamer:
サービスイン前の発表会では,新シリーズの「イナズマイレブンGO」の選手の追加も前向きに検討しているという話でしたが。
安澤氏:
はい。そのとおりです。
吉野氏:
4Gamer:
分かりました。
それではゲーム全般について,プレイヤーからどんなリクエストが寄せられていますか。
安澤氏:
やはり選手の追加に関するものが多いですね。「あの選手はまだか」と。
あとは選手のレアリティによって所持する技が違うので,「早くこの技を持つ選手を出してほしい」というリクエストも多いです。
4Gamer:
今,ゲーム内で人気の選手は誰なんでしょう。
安澤氏:
半面,皆が使っているので,アフロディに対抗するデッキを作るという流れも見られます。
4Gamer:
よろしければ,お二人のお気に入りの選手を教えてもらえますか。
吉野氏:
私は,選手よりも「ザ・バース」という,基山ヒロトと吹雪士郎の合体技が好きなんです。この技は見た目が格好いいだけでなく,風属性なので,山属性の円堂 守に強いんですね。円堂を使っているプレイヤーは多いので,非常に使い勝手がいいんですよ。
安澤氏:
4Gamer:
安澤さんの好きな選手はどうでしょう。
安澤氏:
私は染岡という選手が好きなんです。選手として優れているのですが,「見返してやるぞ!」みたいな頑張り屋でキャラクター的にも魅力があるんです。そして見た目的にも色黒で,ちょっと親近感があります(笑)。
4Gamer:
「イナズマイレブン オンライン」は,レベルファイブとNHN PlayArtの協業プロジェクトですけれども,その点について思うところがあればぜひ。
安澤氏:
当初はレベルファイブは品川のオフィス,NHN PlayArtさんは渋谷のオフィスと分かれて作業していたんですよね。でもそれでは,今一つ連携がよくなかったんです。
吉野氏:
レベルファイブさんにとって,初のPC向けオンラインゲーム開発だったこともあって,我々の意図するところが伝わりづらい点もありました。それなら,一緒にやりましょうと。
安澤氏:
そこで2013年の夏に,レベルファイブの開発陣一同がNHN PlayArtさんのところに引っ越してきたというわけです。一緒に作業するようになってからは,いろいろ早く進むようになりました。
吉野氏:
合流してから1年経ちますけれど,ゲームの内容が今とは全然違いますね。当時は選手の技をどう見せるかというところにこだわり,劇を観ているかのようなゲームだったんです。
そこから,やはりオンライン対戦があるので,プレイヤーが思うように選手を動かせたほうがいいだろうという話になったのですが,今度は逆に操作できる範囲が多くなりすぎて試合の展開スピードに追いつけないということにもなりました。そんなことを繰り返して,現在のベースになる形が出来上がっていったんです。
結果として,クライアントサーバー型のオンラインゲームとしては,ハンゲームでも珍しいくらいネットワークトラブルの少ない安定したサービスを提供できているタイトルとなっています。
4Gamer:
それでは最後に,今後の「イナズマイレブン オンライン」の展開に期待する人に向けてメッセージをお願いします。
吉野氏:
ハンゲームの掲示板に書き込んでくださる方や,プレイ動画を配信してくださる方が多く,非常にありがたく思っています。私達としても,日々,ゲーム内の動向をチェックして,皆さんと一緒によりよいゲームを作っていこうと考えています。ぜひ忌憚のないご意見をお聞かせください。またレベルファイブさんと一緒に,サービスをもっと盛り上げる企画を考えていますので,ぜひサプライズにも期待してください。
安澤氏:
「イナズマイレブン オンライン」は,これからも進化していくゲームです。できるだけ多くの方に楽しんでいただけるよう,日々注力しており,お話ししてきたように今はちょっとした時間に遊べるコンテンツを企画しています。よりゲームをよくしていきたいと考えていますので,気づいた点がありましたらどしどしご意見をお寄せください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「イナズマイレブン オンライン」公式サイト
- 関連タイトル:
イナズマイレブン オンライン
- この記事のURL:
Published by NHN PlayArt Corp.
Copyright (C) LEVEL-5 Inc. All rights reserved.