インタビュー
PS Vita版「モンスターハンター フロンティアG」の正式サービス開始が迫る。初となる携帯ゲーム機展開について杉浦一徳氏と木本龍己氏に聞いた
今回4Gamerでは,MHF-Gのプロデューサーを務めるカプコンの杉浦一徳氏と,同じくディレクターの木本龍己氏にインタビューを実施し,7月に実施されたPS Vita向けのCBTの結果や,サービスイン後の運営開発方針などについて話を聞いてきた。
PlayStation Vita版「モンスターハンター フロンティアG」
公式プロモーションサイト
PS Vita版「モンスターハンター フロンティアG」のタイトルページ
(SEN オンラインストア/PlayStation Store)
初の携帯ゲーム機展開となるPS Vita版
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは,MHF-GをPS Vitaで展開することにした経緯を教えてください。
杉浦一徳氏(以下,杉浦氏):
PlayStation 3版は2013年11月に正式サービスを開始したのですが,その開発初期段階には,すでにPS Vitaでの展開を計画していました。と言うのも,PS3版を完成させてからPS Vita版に移行すると,開発面の効率がいいんです。また,安定したWi-Fi環境が一般的に整ってきたことも大きな理由でした。
あとは「携帯ゲーム機でオンライン専用タイトルを軌道に乗せる」というチャレンジをしてみたかったからですね。
4Gamer:
なるほど。ちょっと気の早い話ですが,MHF-Gで培ったノウハウを活かして,今後COG(カプコンオンラインゲームズ)からPS Vita向けの新作が展開される可能性はありますか。
杉浦氏:
ええ,積極的に展開したいと考えているタイトルはあります。ただ,やろうと思っても,すぐ実現できることではありませんから,まずは段階を踏んできちんと経験を積んでいこうかなと。
PS Vita向けにサービスを開始することは,東京ゲームショウ 2013の会場で発表されました。それから約11か月でサービスインとなったわけですが,予定どおりだったのでしょうか。
杉浦氏:
当初の予定より,少し早いくらいですね。実は10月頃のサービスインを見込んでいたのですが,開発チームにはだいぶ無理を言って前倒しすることにしました。
4Gamer:
MHF-Gとしては初の携帯ゲーム機展開となるPS Vita版ですが,他機種版にはないメリットとは何でしょうか。
杉浦氏:
やはり携帯性に尽きますね。オフ会に皆でハードを持ち寄ったり,外出先でもWi-Fi環境があればプレイできたりするわけですから。私は家族旅行の際も,宿泊先で隙間の時間にゲームができないとイライラしてしまうタイプなので,Wi-Fi環境の有無は絶対チェックするんです(笑)。
4Gamer:
就寝前に「あと1回だけクエストに行こうかな」というときにも便利ですよね。
そういった意味では,Wii U版をWii U GamePadのみでプレイするケースに近いかもしれません。PS3用のテレビを家族に取られたお父さんも,PS Vitaなら思う存分,遊べるというわけです(笑)。
4Gamer:
それでは,7月に実施されたCBTに参加したプレイヤーの反応はいかがでしたか。
杉浦氏:
アンケートの結果では,「満足度」について8割以上のハンターの皆さんが「満足」「やや満足」と回答されており,おおむねご期待に応えられるものを,ちゃんと提供できたのではないかと思っています。とくにアイテムショートカット機能や,定型文を使ったチャット機能が好評だったようです。
他機種版と遜色なくスムーズに狩りを楽しめたという意見をいただいていますが,ランスの突進や狩猟笛の一部操作などでは画面に表示されるアイコンをタッチすることになるので,操作に不安を感じたプレイヤーも少なからずいらっしゃいました。
木本龍己氏(以下,木本氏):
PS Vita版は他機種版よりもボタンの数が少ないので,どうしても操作感覚が変わります。その点に対して,プレイヤーの皆さんからどのような反応があるのか不安でしたが,フタを開けてみれば予想以上に受け入れていただいた印象ですね。だからと言って,これで十分ということではなく,今後も改善を続けていきますが。
杉浦氏:
PS Vita版のCBTに関しては,サービス面も含めて「ここが悪い」といったような反響はありませんでした。最初のPC版から数えて5回めのローンチですから,スタッフも成長した感がありますね。
しかし,PS Vita本体が自動でスタンバイモードに入るとネットワーク接続が切断されてしまうという意見は,多く寄せられました。ただ,これはすでに対応済みで,オープンβテスト開始時には切断されないようになっています。パーティメンバーを募集して待機することが多いMHF-Gにおいて,長時間操作しなくても接続状態を維持することは重要だろうという判断です。
4Gamer:
そのほかにCBTの結果を受けて,改善される部分はありますか。
たとえば,ゲームの操作性については「左スティックを操作中,意図せずにチャットウィンドウが立ち上がってしまう」といった意見が寄せられました。左スティックを倒したときに親指が画面に触れてしまうということなんですが,複数の人間でテストプレイを繰り返し,タッチ操作の判定エリアを調整しています。左スティックは最も多く使用する操作ですから,この使い勝手を向上することは最優先事項だと考えました。
4Gamer:
PS Vita独自のタッチ操作はいかがでしょうか。
杉浦氏:
「マップの拡大・縮小」と「サイン発信」のタッチ操作に関する要望が多かったですね。それぞれの操作を誤りやすいというものでしたが,チーム内で検討した結果,「マップの拡大・縮小」をマップ部分の“タッチ”に,「サイン発信」をマップ部分の“長押しタッチ”に変更することにしました。
4Gamer:
チャットに対する反応はどうでしょうか。
杉浦氏:
ソフトウェアキーボードによるチャット機能は,他社さんのPS Vita向けタイトルでも採用されている仕様ですから,ほとんど違和感はなかったようですね。もちろん定型文も使えますので,コミュニケーション周りで困ることはあまりないと思います。
このほかにもさまざまな要望をいただいていますが,すぐに対応が難しいものでも継続的に検討して,ハンターの皆さんが快適に遊んでもらえる環境を構築していきます。
4Gamer:
ちなみにCBTの応募状況はいかがでしたか。
杉浦氏:
応募人数はPS3版のβテストと同程度で,想定を超えていました。会員登録から始める新規ハンターさんも多かったようですが,それでもスムーズに遊んでいただけました。
4Gamer:
プレイヤーの年齢層については,どのような印象ですか。
杉浦氏:
PS Vita版は学生や若い社会人のハンターさんも多く,若干低めでしょうか。従来のMHF-Gが前提としていた層とどこまでマッチするのかは未知数ですね。ただ,若いハンターの皆さんは厳しい目を持っておられるので,サービスのクオリティを上げなければならないと気を引き締めています。MHF-G自体は8年めに突入しているタイトルですから,平均の年齢層を下げるという意味でも若い社会人の方はメインターゲットと言えるでしょう。
4Gamer:
どの武器種の使用率が高かったのでしょうか。
杉浦氏:
武器種の使用率は,1位が「太刀」で44%,2位が「大剣」で28%,3位が「双剣」で24%と続いています。太刀の人気が最も高い理由は,初心者にも扱いやすいからでしょうね。「穿龍棍」はG級昇格が使用条件になっているため,さすがに使用率は低かったものの,CBT中にHR(ハンターランク)1からG級まで到達されたハンターさんもいらっしゃいました。
PS Vitaへの移植はどのようになされたのか
4Gamer:
今回の移植において工夫した点を教えてください。
杉浦氏:
最初にPS3版をそのままPS Vita上で動かせるようにしてみたんですが,操作の割り当てが違っていたり,文字が潰れて読めなかったりして,これは全面的に手を入れないといけないなと思いました。その結果,PS Vita版では文字を大きくして,独自の操作には説明文を表示するようにしました。とにかく画面が小さいわけですから,見やすく,分かりやすくという部分には注意しましたね。
ただ,PS Vita版の表示自体は綺麗で,その点はCBTに参加されたハンターの皆さんにも好評でした。アンケートの結果も「良い」「やや良い」という回答が9割以上を占める形になりました。
4Gamer:
先ほど,PS Vita版はボタン数が少なく操作感覚が変わるという話をされましたが,具体的にはどのように変更されているのでしょうか。
杉浦氏:
当然ですが,MHF-GはもともとPS Vita向けに設計されたゲームではないので,移植にはどうしても限界が生じます。それでも,できるだけ快適に遊べる環境を提供するために,タッチパネルで定型文のメーセッジを送ったり,消費アイテムを使用したりできるようにしたというわけです。
他機種版だと操作が複雑な特殊攻撃に関しても,画面にタッチするだけで発動できるようになっています。ボタンが足りない部分をタッチ操作で補う形にして,かつプレイスタイルに合わせて画面上のボタン配置をカスタマイズできるようにしました。
4Gamer:
タッチ操作になったことで使いやすくなった特殊攻撃はありますか。
木本氏:
たとえば,大剣の「不動」がそうですね。右手のボタン操作で力を溜めつつ,左手のタッチ操作で発動できるので,パッドより操作しやすくなったと思います。攻撃ではありませんが,消費アイテムも配置を覚えてしまえば即座に使えるようになりました。
4Gamer:
背面タッチパネルによる操作を採用しなかったのはどうしてでしょうか。
木本氏:
一番の理由は,誤操作を防ぐためです。慣れれば背面タッチパネルのほうが使いやすいという人もいらっしゃるでしょうが,デフォルトの操作として採用するのは難しいですね。
4Gamer:
それでは,PS Vitaへの移植でとくに苦労した点を教えてください。
杉浦氏:
ローディング処理の改善ですね。初期の段階ではエリアを移動するたびに30秒以上もかかっていたんです。これを改善できなければ,サービスを断念せざるを得ないと思っていましたが,最終的には大幅に短縮することができました。
木本氏:
そのためには,プログラムの最適化に努めるしかないのですが,ボトルネックになっている部分を1か所改善したからといって,大幅に短縮できるわけではありません。いくつもの原因を丹念に探し出し,ソースコードを一つ一つ書き換えるなどして,ちょっとずつの成果を地道に積み重ねていきました。
杉浦氏:
振り返ってみると,操作とローディング処理は非常に高いハードルでしたが,逆に言えばそれらをクリアできれば,あとは大きな問題ではありませんでした。
PS Vita版の強みとして,PS3版とのデータ連動が挙げられます。ただ,そのほかのハードのプレイヤーでも共通のキャラクターでPS Vita版を遊びたいという人もいると思います。
杉浦氏:
単純に技術的な部分だけで言えば,実現できると思います。ただ,プラットフォームをまたぐと,決済関係の処理が難しくなるんですね。そのほかにもさまざまな事情があって,現状難しいです。
4Gamer:
ただ,PS Vita版とPS3版,そしてPC版の3機種は同じワールドでプレイすることが可能ですね。
杉浦氏:
そうです。あらためて説明しますと,これは強制的に異なる機種のハンターさんを一緒にするということではなく,PS Vita版のハンターさんのみが集まれるワールドも用意することにしました。PS Vita版のローンチからプレイを始めたハンターさん同士で情報交換をしたり,一緒に公式狩猟試験を受けたりできたほうが,コミュニケーションの活性化につながると考えたからです。
4Gamer:
なるほど。それでは,最後にPS Vita版MHF-Gのアピールをお願いします。
杉浦氏:
PS Vita版は画面が綺麗で,リアルの友人と集まってプレイできると,βテストでも手応えのある評価をいただきました。8月20日にはさっそく「G5.1」アップデートが実装され,モンスターやコンテンツの追加が行われます。まさに「アップデートで進化する」という部分を体験していただけるはずです。
今回のサービスインに合わせて,PS Vita版の「ビギナーズパッケージ」をご用意しました。性能的に優れ,かつG級になってからも長く使える特典武具がセットになっていますので,スタートダッシュをしたい方はぜひチェックしてみてください。
木本氏:
サービスイン以降も,継続的に大型アップデートを実施しますので,携帯機でも進化する「モンスターハンター」を試していただければと思います。
4Gamer:
どうもありがとうございました。
PlayStation Vita版「モンスターハンター フロンティアG」
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