テストレポート
虹彩認証が売りの「arrows NX」や安価なタフネススマホ「Galaxy Active neo」の実力は? NTTドコモ2015〜16年冬春モデルテストレポート後編
これらの製品は,実際にはどれくらいの性能を持っていて,ゲーム用途ではどれくらい使える製品なのだろうか。前編と合わせてチェックしてほしい。
Xperia Z5三兄弟や「Nexus 5X」の性能と発熱を「デレステ」で検証。NTTドコモ2015〜16年冬春モデルテストレポート前編
虹彩認証搭載の5.4インチスマートフォン
arrows NX F-02H
まずはarrows NX F-02H(以下,arrows NX)から見ていこう。
本機は,富士通モバイルコミュニケーションズ(以下,富士通)製のスマートフォンで,同社が得意とする生体認証技術から,目の虹彩を読み取る虹彩認証機能「Iris Passport」を採用した製品だ。虹彩認証機能は,2015年夏モデルで登場した「ARROWS NX F-04G」(以下,F-04G)で採用された技術で,arrows NXは2代目に当たる。
今回のarrows NXは,F-04Gで採用されたソリッドなデザインコンセプトを継承しつつ,エッジに丸みを持たせたデザインを採用してきた。シリーズを通してデザインコンセプトをある程度統一することで,パッと見でarrowsと分かるようにと,デザインの方針を変更したのではないだろうか。
形状自体はほぼフラットな板状なのだが,エッジ部分は深い丸みを帯びており,いわゆるラウンドフォルムになっている。また,表面には耐傷性に優れた表面加工を施しているそうで,ケースやジャケットに入れない状態で普段使いできるようになっているそうだ。5インチクラスのスマートフォンに,傷を防ぐ目的でケースやジャケットを装着している人は多いと思うが,arrows NXなら,そうした手間を省けるといったところだろうか。
この虹彩認証機能は,スマートフォンのロック解除だけでなく,NTTドコモが提供するサービスでのパスワード入力や,パスワードマネージャーを利用して一般的なWebサイトでのID・パスワード入力にも利用できる。いちいちセンサーを触らなければならない指紋よりも手軽なのは確かで,生体認証機能を使ってみたいというユーザーには,検討の対象になるだろう。店頭の展示機でもテストできるとのことなので,ぜひ1度は試してみてほしい。
余談だが,arrows NXの虹彩認証は,瞳を赤外線で照らす仕組みなので,目の写真をかざして突破することはまずあり得ないそうだ。
搭載する液晶パネルは,5.4インチサイズのIPS液晶パネルで,解像度1440×2560ドットという高精細なものとなっている。メインメモリ容量は3GBで,内蔵ストレージ容量は32GBと,2015年のハイエンドスマートフォンとしては平均的なスペックといったところか。
スペック面で注目すべき点は,搭載SoC(System-on-a-Chip)がQualcomm製の「Snapdragon 808」である点だろう。これは前編でテストした「Nexus 5X」でも採用されていたSoCで,前モデルのF-04Gが搭載していた「Snapdragon 810」の下位にあたるものだ。
つまり,SoC自体はスペックダウンしたことになるわけだが,Snapdragon 810搭載スマートフォンが発熱の大きさに悩まされていたことや,Nexus 5Xで検証したベンチマークテストでの性能を考慮すると,「スペックダウンしたからゲームには向かない端末」と断じるようなものではないだろう。
ではベンチマークテストで性能をチェックしてみよう。なお,前編では「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(iOS / Android)を使ってゲームの動作を検証したのだが,アプリのインストールからテストまで,けっこうな時間がかかるゲームであるため,発表会場では必要なだけのテスト時間が取れなかったこともあり,後編で扱う2製品では実施できなかったことをお断りしておきたい。
ただし,飽和のタイミングは少し気になるもので,10タップめに長い飽和があった。飽和の時間がどれくらいかというと,反応がない間に5タップもできてしまうほどで,ゲームをプレイ中にこれだけ長い飽和が起きると,やっかいなことになりかねない。
これまでの計測パターンでは,妙に長い飽和がある場合,何か別の処理と被っている場合がある。そこで,念のために2回繰り返してみたが,2回とも10タップめに同じ飽和が起きていたので,偶然とは考えにくい。隣で見ていた説明員も深刻そうな表情で見守っていたので,製品版の発売までに改善されることを願うばかりである。このタップの問題が解決されれば,ゲーム用途に使っても不満のない製品となるだろう。
●arrows NX F-02Hの主なスペック
- メーカー:富士通モバイルコミュニケーションズ
- OS:Android 5.1(Lollipop)
- ディスプレイパネル:5.4インチTFT液晶(IPS-NEO),解像度1440×2560ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 808 MSM8992」(2+4 CPUコア 最大CPU動作クロック1.8GHz,Adreno 418 GPUコア)
- メインメモリ容量:3GB
- ストレージ:内蔵(容量32GB)+microSDXC(最大200GB)
- アウトカメラ:有効画素数約2150万画素
- インカメラ:有効画素数約240万画素
- バッテリー容量:3390mAh
- 3G待受時間/LTE待受時間:未定
- 3G連続通話/LTE連続通話:未定
- LTE通信周波数帯:2GHz,1.7GHz,1.5GHz,800MHz
- LTE-Advanced対応:あり
- 無線LAN対応:IEEE 802.11n/ac
- Bluetooth対応:4.1
- 本体サイズ:75(W)×154(D)×7.9(H)mm
- 本体重量:約167g
- 本体カラー:Iris Green,Black,White
- 主な対応サービス&機能:spモード,ドコモメール,GPS,dマーケット,フルセグ,ワンセグ,ハイレゾオーディオ,おサイフケータイ(NFC),WORLD WING(クラス5),防水(IPX5,8),防塵(IP6X)
2万円台後半で手に入るタフネススマートフォン
Galaxy Active neo SC-01H
筆者は,普段使いのAndroidスマートフォンとして,2014年冬モデルで登場した「GALAXY S5 ACTIVE SC-02G」(以下,GALAXY S5 ACTIVE)を愛用しているのだが,選択の理由は「なるべく頑丈であること」だった。ただ,GALAXY S5 ACTIVEはハイエンドスマートフォンのスペックに,耐衝撃や耐振動といった堅牢性を加えたこともあって価格も高めであったため,魅力は感じるが,結局別の製品を選ぶという人も少なくなかったそうだ。
そういう事情もあって,新しい堅牢性重視スマートフォンは,手頃な価格を目指した製品になったと,説明員は述べていた。
全体的なデザインは,GALAXY S5 ACTIVEのそれを継承しており,金属製の素材がバンパーのように側面を覆っている点も変わっていない。堅牢性重視スマートフォンではお約束ともいえる,米国防総省の軍事規格「MIL-STD-810G」に定められた21項目に準拠しているほか,メーカー独自の試験として,1.5mの高さからコンクリート面へ落下させるテストや,2トンの面荷重に耐えるテストなどもクリアしているという。
タッチパネル面には,耐衝撃性が向上した「Gorilla Glass 4」を採用しており,全方向で堅牢だとアピールされている。ただ,タッチパネルの周囲を覆うベゼル部分の高さが低いので,ディスプレイ側から落下した場合,その先にごく小さい石があるだけでアウト,ということになりかねない。その点では,KDDIの製品であるが,ベゼル部分の高さが高い京セラ製スマートフォン,URBANOシリーズのほうが優れているのではないだろうか。
製造元であるSamsung Electronicsでも,落下時にそうした問題が起こることは認識していたようで,Galaxy Active neoでは,バックパネルのパッキンやツメの向きを変更することで,外れにくくなるように改良したそうだ。こうした工夫もあって,GALAXY S5 ACTIVEよりも低価格でありながら,堅牢性は向上しているという。
発表会場では,約1.35mの高さから,コンクリートの床に落とすデモが披露されていた。ハイスピード撮影した動画を下に掲載したが,これを見ると分かるとおり,コンクリートの破片が飛ぶほどの衝撃を受けても,そのまま問題なく動き続けており,バックパネルが外れることもない。堅牢性に優れるのは確かなようで,筆者としては,少し気になる存在になってしまった。
スペックにも目を向けてみよう。搭載SoCは,Qualcommが低価格スマートフォン向けSoCに位置付ける「Snapdragon 410」だ。CPUコアは,Snapdragon 810・808のLITTLE側に使われているのと同じ,Cortex-A53を4基搭載。CPU最大動作クロックは1.2GHzとなっている。GPUコアはDirectX 9.3世代の「Adreno 306」であるから,2Dグラフィックスのゲームならいいが,3Dグラフィックスを多用するタイトルは荷が重いといったところか。メインメモリ容量は2GBで,内蔵ストレージ容量は16GBとなっている。
搭載OSがAndroid 5.1になっているためか,Android 4.x時代に触ったことのあるSnapdragon 410搭載スマートフォンに比べると,動作は快適に感じた。
スペック面で残念なのはディスプレイだ。4.5インチサイズで解像度480×800ドットの有機ELディスプレイパネルを採用しているのだが,今となっては,このサイズと解像度は厳しいというのが正直なところだ。発色は悪くないのだが,すっかり720pや1080pに慣れてしまった目からすると,この解像度はきつい。2D,3D問わず,ゲームのグラフィックスを楽しむには非力であると言わざるを得ないだろう。
ベンチマークテストも計測してみたが,やはりスペック相応の結果しかでない。Ice Storm Unlimitedプリセットのスコアは5000を下回るほどで,A1 SD Benchで計測したメモリやストレージの性能も低い。Android自体の操作にストレスを感じるほどではないものの,ゲーム向きではないだろう。
安価な堅牢性重視スマートフォンという点に惹かれるところはあるものの,ゲーム用途を考慮するなら本機は見送って,高性能なGalaxy S6 Activeの国内販売に期待したほうが良さそうだ。
●Galaxy Active neo SC-01Hの主なスペック
- メーカー:Samsung Electronics
- OS:Android 5.1(Lollipop)
- ディスプレイパネル:4.5インチTFT液晶(IPS-NEO),解像度480×800ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 410 MSM8916」(クアッドCPUコア 最大CPU動作クロック1.2GHz,Adreno 306 GPUコア)
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ:内蔵(容量16GB)+microSDXC(最大128GB)
- アウトカメラ:有効画素数約800万画素
- インカメラ:有効画素数約200万画素
- バッテリー容量:2200mAh
- 3G待受時間/LTE待受時間:約580時間/約490時間
- 3G連続通話/LTE連続通話:約730分/約740分
- LTE通信周波数帯:2GHz,1.7GHz,800MHz
- LTE-Advanced対応:なし
- 無線LAN対応:IEEE 802.11n
- Bluetooth対応:4.1
- 本体サイズ:70(W)×133(D)×10.1(H)mm
- 本体重量:約154g
- 本体カラー:Camo White,Solid Black
- 主な対応サービス&機能:spモード,ドコモメール,GPS,dマーケット,ワンセグ,おサイフケータイ(NFC),WORLD WING(クラス5),防水(IPX5,7),防塵(IP6X)
「Xperia Z5」シリーズ3製品に「Nexus 5X」も。ドコモ,2015〜16年冬春モデルのスマートフォン10製品を発表
NTTドコモ 2015〜16冬春モデル 特設ページ
- 関連タイトル:
arrows(旧称:ARROWS)
- 関連タイトル:
Galaxy
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