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AMD,新型の組み込み向けGPU「Radeon E8950MXM」など3製品を発表。4K時代を見据えてハイエンドな組み込みGPUを拡充へ
2014年2月に同社は,組み込み機器向けでは初の「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャ搭載GPU「Radeon E8860」を発表しているが,今回の新製品は,既存製品よりもさらに高性能を狙ったGPUでラインナップを拡充しているのがポイントである。
いずれもゲーマーが直接買うような製品ではないのだが,簡単に新製品の概要を紹介してみたい。
ハイエンドGPUは医療機器や業務用フライトシム,ローエンドGPUは多画面の監視システムなどをターゲットに
今回発表された製品のうち,Radeon E8950MXMとRadeon E8870は,GCNアーキテクチャを採用して28nmプロセスで製造される組み込み向けGPUで,前者はウルトラハイエンドのセグメントを置き換える製品として,後者は既存のRadeon E8860よりも高い性能を要求する用途を想定した製品とされている。
一方のRadeon E6465は,GCN以前のアーキテクチャを採用した40nmプロセスで製造される製品で,高いグラフィックス性能は要求しないが,低消費電力で最大4画面までのマルチディスプレイ環境に対応するものとなっている。
ちなみに,これらの組み込み機器向けGPUは,デスクトップPC向けGPUよりも長期間の供給とサポートが保証されているのが常で,Radeon E8870とRadeon E8860は2021年まで,Radeon E6465のサポートが2020年までとなっていた。ただ,Radeon E8950MXMだけは,サポート期間が2018年までと,他のGPUより短く設定されている。その理由についてAMDは,「Ultra-High Perfomranceセグメントでは,より高性能を求めるニーズが強いため,2〜3年おきに新製品を投入する計画だからだ」と述べていた。
Radeon E8950MXM
それでは,新製品それぞれの概要を説明していこう。
ウルトラハイエンドに属するRadeon E8950MXMは,4Kコンテンツのデコードやエンコード,GPGPU用途への応用を重視して開発された製品であるという。前述したとおり,GPUコアは28nmプロセスで製造されており,95WのTDPに対応可能な,「Type B」と呼ばれるMXM(Mobile pci-eXpress Module)として提供されるという。製品は,105×82mmの小型カード上に,GPUと8GBのグラフィックスメモリが搭載されている形だ。
AMDが公表したスペックによると,Radeon E8950MXMは32基の「Compute Unit」を集積しており,単精度浮動小数点演算性能は3TFLOPSに達するとのこと。GCNアーキテクチャでは,1基のCompute Unitに64基のシェーダプロセッサが集積されているので,シェーダプロセッサ数でいうと2048基ということになる。
これは,デスクトップPC用のRadeonでいえば,「Radeon R9 280X」と同じスペックであり,本製品の置き換え対象となる組み込み機器向け「Radeon HD 7850」が16 Compute Unitだったので,2倍の規模に引き上げられたわけだ。
Radeon E8870
続いてのRadeon E8870は,Radeon E8950MXMと同じMXM Type Bの「Ra
Compute Unit数は12基とのことなので,シェーダプロセッサ数は768基となり,これは「Radeon R7 360」と同じスペックだ。グラフィックスメモリは4GBを搭載し,TDPは75W。最大で6台のディスプレイに映像を出力できるマルチディスプレイ対応も特徴とされている。
AMDによると,Radeon E8870はとくに消費電力あたりの性能に注力して開発した製品とのことで,既存のRadeon E8860と比べて,約2倍の性能を実現しているということだった
Radeon E6465
最後のRadeon E6465は,82×70mmサイズのMXM Type Aモジュールを使う「Ra
主な用途としては,多数のディスプレイが接続される工場やビルのモニターシステムや,KIOSK端末のようなシンクライアント機器での利用を想定しているそうだ。
なお,Radeon E6465は製造プロセスが40nmであることと,6000番台のモデルナンバーが与えられていることからも分かるとおり,2011年に発売されたRadeon HD 6400シリーズ(コードネーム Turks)と同じ,「TeraScale 2」(VLIW5)世代のアーキテクチャを採用している。
AMDの資料には,Radeon E6465のスペックに「2 Compute Units」という記述があるのだが,これは「2 SIMD Engine」という意味であるとのこと。1ユニットのシェーダプロセッサ数は80基,総数は160基なので,このスペックは,デスクトップPC向けの「Radeon HD 6450」と同等である。
しかし,街中で見かけるデジタルサイネージはもちろんのこと,パチンコやパチスロ,あるいはメダルゲーム機といった業務用ゲーム機も,現在ではなんらかのGPUによってグラフィックスを表示しているものが珍しくない。そうした機器では,AMDのGPUやAPUが採用されている事例も多く,そもそも今回の発表自体,北米時間2015年9月29日からラスベガスで開催されるカジノ産業の展示会「2015 Global Gaming Expo」に合わせて行われたものだ。
街角で見かけるディスプレイに,以前には見られなかったリッチなグラフィックスが表示されている裏では,こうした組み込み向けGPUが動いていると思うと,なんとなくそれらの機器が身近に感じられるのではないだろうか。
AMDの組み込み向けGPU製品情報ページ(英語)
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