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VRとデジタル配信が,インディーズゲーム開発者に大きなチャンスをもたらす。「BitSummit 4th」水口哲也氏&西 健一氏講演レポート
PlayStation VRと同時発売される「Rez Infinite」の開発も佳境だという水口氏。現在は,VRを前提とした新ステージを作るのが楽しくて仕方ないのだという。VR酔いなどはあってはならないと考えているものの,開発のうえでは自分で酔いを体感しないといけないこともあり,これが身体の負担になると開発秘話を明かした。
一方,西氏はスマートフォン用に開発中の新作「ルナたん〜巨人ルナと地底探検〜」(iOS/Android)について,「穴掘りアクションパズルとでも言うべき作品で,まだ開発途中ではあるものの,ベテランが真面目に作った仕上がりとなっているので遊んでみてほしい」とアピールした。
時代の流れと共にハードウェア事情も激しく変化していくが,水口氏は,シリーズ第1作となる「Rez」を開発していたとき,すでにVR的なもののイメージを持っていたそうだ。そして,VRが実用化されたときには,必ず一番に名乗りを上げて新たな「Rez」を作ろうと考えており,この積年の願いが叶ったのが「Rez Infinite」だという。「Rez」の権利を持つセガが許可を出してくれたなど,多方面の協力があっての作品であり,とても感謝していると語った。
同作は,水口氏がアメリカで立ち上げたenhance gamesが開発を進めているが,これは,当時の日本にVRコンテンツを手がけている人がほとんど存在しなかったからで,ほかにも資金の調達がしやすいといった事情があったのだという。これからのインディーズゲーム制作者は,モノ作りだけでなく,資金調達や権利関係の知識も学んでいかなければならないのではないか,と水口氏は語る。氏は「Rez Infinite」を作るにあたって,こうした点を勉強したと述べ,それを受けて西氏は「得られた知識を若年層に伝える機会が必要なのではないか」と提案した。
「Rez Infinite」ではenhance games自身がパブリッシングを務めるが,これはダウンロード販売などのデジタル配信が一般化した現在だからこそできるチャレンジなのだという。CDやDVDといった物理メディアでゲームを販売し,売れなければ在庫を抱えるリスクもあった10年前には,インディーズメーカーがパブリッシングをするなど,とても考えられなかったというわけだ。ゲームを作成したらすぐに世界へ配信できる今の状況は,インディーズゲーム開発者にとって大きなチャンス。また,VRという新たなプラットフォームでは,先輩もシガラミもなく,今から取り組めば一人ひとりのインディーズゲーム開発者がパイオニアになれると水口氏は語る。
VRによってインディーズゲームシーンは加速するのではないか,というのが水口氏の体感だ。安定した利益を出さなければならない大手のパブリッシャやゲームメーカーは,リスクを恐れてなかなか参入できない状態だが,インティーズならそうした心配は無用。今のうちにVRに参入しておけば,今後の10年間で大きな主流を築いていける可能性は高いと,水口氏はVRに参入するメリットを強調した。
新作「ルナたん〜巨人ルナと地底探検〜」は
ゲーマーもしっかり遊べる“あったか系掘りゲー”
講演のあと,新作「ルナたん〜巨人ルナと地底探検〜」について,西氏に短い時間ながら話を聞くことができたので,その様子をお伝えして本稿の締めくくりとしよう。
よろしくお願いします。まずは今年のBitSummitをご覧になった感想をお願いできますか?
西 健一氏(以下,西氏):
BitSummitに来るのは初めてなんですが,すごく面白くて感動しています。外国人の方も話に聞いていたより多いですし,ベテランから若手まで,そして,ある程度の規模がある企業から個人でやっているところまで,バラエティに富んでいるのが健全で面白いですね。出展されている作品もクオリティが高いですし,システムとして面白いものや世界観がすごいもの,そしてVRまでといろいろなものが出ていますね。
4Gamer:
それでは,先ほどの講演で発表された新作「ルナたん〜巨人ルナと地底探検〜」について聞かせてください。アクションパズルゲームとのことですが,どんなゲームなのでしょうか。
西氏:
プレイヤーが,古代人の末裔「ヨナ」となって地面に穴を掘り,埋もれた古代文明を再生させていくゲームです。古代の巨人「ルナ」は地上から魔法の力で援護してくれます。ヨナの行く手に堅いブロックがあった場合に魔法をかけてくれたり……といった具合ですね。
4Gamer:
てっきり巨人のほうが穴を掘るのだと思っていましたが,そうではないんですね。
古代文明を再生させるとは,具体的にどういうことなんでしょうか。
西氏:
古代の動植物が入ったカプセルを掘り出すと,荒れ地だった地上に木々や動物が戻ってきたり……といった感じですね。また,バラバラになった古代文明のパーツを手に入れ,それを集めて修復したりもします。
4Gamer:
地面に潜って遺跡を探査する……と言うより,地上に古代文明を復興・再生させると。
西氏:
ええ。イラストは,かつて一緒に「moon」というゲームを作った倉島一幸さんが描いてくれた,温かいタッチのものになっていて,地面を掘ると可愛いモノが増えていくというイメージです。いわば“あったかい系掘りゲー”ですね。殺伐としたものではないので,女性やお子さんにも遊んでいただけたらと思います。
4Gamer:
今回はNTTぷららからのリリースですね。
西氏:
はい。スマートフォンだけでも遊べますが,NTTぷららさんの「ひかりTVゲーム」というサービスを連動させれば,より楽しさが広がります。これはセットトップボックスでゲームを配信するサービスなんですが,地上の復興をTVの大画面で楽しめるという新しい試みをしているんです。
4Gamer:
外出先ではスマートフォンで遊び,家ではセットトップボックス+TVでも楽しめるということでしょうか。
西氏:
スマートフォンと,セットトップボックスで遊べる内容は同一ではないんです。スマートフォンでは,「地面を掘る」「発掘したパーツやカプセルで地上を復興させる」といった要素が楽しめます。セットトップボックスの場合,地面を掘ることはできないんですが,地上を復興させる部分を大画面で楽しむことができます。
4Gamer:
なるほど。「ひかりTVゲーム」のセットトップボックスがあれば,プラスαの要素として,復興パートを家庭にあるTVでも遊べるようになると。
西氏:
ええ。ほかにも,たとえばお父さんが外出先でスマートフォンを使って地面を掘り,お子さんは家のセットトップボックスで地上を整備する。そして,地上からの収穫物は,お父さんのスマートフォンへ転送される……といった連動要素もあるんです。
4Gamer:
それは面白い仕組みですね。
セットトップボックスで遊ぶ場合,操作はどうなるんでしょうか。
西氏:
セットトップボックス付属のリモコンや,専用のゲームパッドなどを使います。
4Gamer:
基本プレイは無料とのことですが,課金要素はどういったものが予定されていますか?
西氏:
スタミナ回復や,発掘で失敗したときのコンティニューなどですね。ガチャはやらないビジネスモデルになっています。
4Gamer:
では最後に,本作を楽しみにしている人にメッセージをお願いします。
西氏:
あったかくて面白い世界観で,簡単だけど奥深い,戦略性のあるルールになっています。基本的にはカジュアルなゲームですが,ゲームとしての深みとハードな側面もあり,4Gamerの読者さんのようなゴリゴリのゲーマーでも楽しんでいただける作りです。プレイフィールや操作感なども丁寧に作り込んでいますので,皆さんぜひ遊んでみてください。
4Gamer:
ありがとうございました。配信を楽しみにしています。
enhance games公式サイト
「ルナたん 〜巨人ルナと地底探検〜」公式サイト
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