レビュー
日米クリエイターが送る新作アクションゲーム
ReCore
いきなり結論めいたことを書いてしまうと,「ReCore」は面白い。
ゲームバランスが巧みに練られたアクションゲームであり,バトルも探索もカスタマイズもそれぞれが絶妙なバランスで融合している。もしスクリーンショットや映像だけで「よくあるTPSでしょ?」くらいに思っているのなら,それはいい意味で裏切られるだろう。クリエイターの職人芸を堪能できる1本と言っていい。
実は,筆者も「よくあるTPS」と勝手に決めつけていたクチなので,本当に恥ずかしいと思っている。もちろん,不満に感じた箇所がないわけではないのだが,そのあたりも含めて「ReCore」をレビューしてみたい。
なお,本作はPC(Windows 10)かXbox Oneのどちらかをダウンロード購入すれば,もう一方のプラットフォームでも同じゲームを遊べる「Xbox Play Anywhere」対応タイトルだが,今回はXbox One版をプレイしている。
「ReCore」公式サイト
この絶妙なレベルデザインは「まさに職人芸」だ
地球から遠く離れた惑星ファーエデンが,「ReCore」の舞台だ。人類は外宇宙に出て,移住できるほどの文明になっており,人類が住めるようにファーエデンのテラフォーミング(惑星改造)を行っていた。しかし,その途中で何らかのトラブルが発生。わずかに残った人類の1人,ジュール・アダムスはテラフォーミング中に何が起きたのか,その謎を解き明かしてくことになる。
ゲームの基本的な流れは,広いフィールドを探索しながらダンジョン(洞窟)に入り,そこでクエストをこなすというもの。そして,次の目標地点へと向かっていく。
ダンジョンの入口を開けるには,「プリズムコア」と呼ばれるキラキラした水晶のようなアイテムが一定数必要な場合があるので,これを見つけていくのも目的の1つになっている。
クエストの目的はさまざまだが,ダンジョンの奥で装置を起動したり,アイテムを見つけたりといったものが多い。ダンジョンは複雑な迷路というわけではなく,画面上には緑色の目的地マーカーも表示されているので,道に迷ってしまうことはないはずだ。
「おつかいクエスト」と言ってしまえばそれまでだが,「あの場所に行くためには,どうすればいいのか?」といったように,マップを見渡しつつアクションを駆使して移動するだけでも楽しいので,決して単調には感じない。
「目的地に向かうだけなら,やっぱり単調じゃないの?」と思われるかもしれないが,これがそうでもない。ダンジョンで寄り道をすればするほど,いろいろな発見があるからだ。
ゲームを進めるにつれて,「こっちに行くと何かありそう」「ここは登れそう」といったように,何かに気づくポイントがある。それまでもそこにあったのに,あるタイミングから見え方が変わるというわけだ。こうした「気づき」がどんどん増えていくと,普通にクリアするだけでは物足りなくなるのは間違いない。この絶妙なレベルデザインは「まさに職人芸」だ。
これまでにない,個性的なバトルシーン
戦闘時の操作方法は,右トリガーでエネルギーライフルを撃つのが基本となる。右スティックでエイミングしながら撃つより,左トリガーでロックオンしたほうが楽だ。これなら,シューターが苦手な人でも楽しめるだろう。
ただし,与えられるダメージはさほど大きくない。敵のコアボットが多数出現する場面では,ちょっとでも気を抜くとすぐにやられてしまう。
それでも,うまく敵を倒していくコツはある。
まず,[RB]ボタンを押し続けるとエネルギーライフルの溜め攻撃「チャージショット」が可能だ。連射はできないが,“カタイ敵”に対しては効果的な攻撃となる。
戦闘に夢中になると忘れがちだが,相棒のコアボットによる攻撃も重要だ。相棒は自動的に敵を攻撃してくれるが,[Y]ボタンで強力な「リーサル攻撃」を行える。一度使うとチャージが必要になるが,チャージショットとリーサル攻撃をうまく組み合わせると敵の体力を一気に奪える。
本作の戦闘において,大きな特徴となっているのが「カラーブラインドサポート」だ。
敵のコアボットには,明確なカラーバリエーションがある。基本は「赤/青/黄」の3色で,それぞれに合わせてショットのカラーを切り替えると(方向パッドで切り替え可能),より大きなダメージを与えられる。
ショットのカラーによって効果も異なるが,基本的には敵と同じカラーを選ぶというのが重要だ。ちなみにカラーの切り替えが可能になるのは,ある程度までゲームを進めてからになるので,操作において戸惑うことはないだろう。
敵のコアボットは,銃撃以外の倒し方も可能だ。それは単に破壊するのではなく,中央にあるコアそのものを引っこ抜いてしまうというもの。
敵の体力ゲージを一定値まで減らすと,コアを取り出せるチャンスタイムとなる。右スティックを押し込むと,ケーブルの先にクロー状の装置が付いた「抽出器」が発射されので,これで敵のコアボットを再起不能に追い込める。抽出器はフィールド上のゲートを開けるときに使うものだが,戦闘でも活躍するのだ。
それでは,戦闘の流れを追ってみよう。
敵のコアボットが2体現れた。色は青と赤。青色はレーザー攻撃が強力なので,先に倒したいところ。まずはエネルギーライフルを青に変えて,チャージショットで体力を奪っていく。体力がある程度まで減り,もう1体にジャマされそうになければ,抽出器でコアを引っこ抜きたいが……といった感じだ。
しかも,抽出器でコアを引っこ抜くにも,ケーブルが赤くなるとクローが外れてしまうので,一度ケーブルを緩めて(右スティックを中央に戻す)様子を見る。弱ってきたら再び引っ張る,という一連の流れが「釣り」のようで,なかなかスリリングだ。
戦闘中は,主人公の位置取りや立ち回り,ショットのカラーの切り替え,相棒の攻撃,敵を倒してく順番など,考えるべきことが多く,脳みそフル回転ですごく面白い。これまでにない,個性的なバトルシーンと言っていい。
ダンジョンにはボスが待ち構えていることもあり,これがまた手強い。ボスの攻撃パターンを見極めつつ,そのほかの敵にも対処しなくてはならない。初見で倒すことは極めて困難だ。
ただ,決して不条理な強さではなく,倒し方は分かっているのに,自分がうまく操作できないばかりにやられてしまうことがほとんど。やられたからといって,やる気が削がれるわけではないのもポイントだ。
相棒となるコアボットは,最初は犬型のK-9だけだが,徐々にクモ型,ゴリラ型……と増えていく。それぞれに特殊能力が違い,どれを連れていくのかも攻略において重要になる。
また,コアボットはカスタマイズや強化が可能だ。
コアは性格を司る部分で,コアボットの基本性能を担っている。ゲーム中に入手した敵のコアを使って,強化していくことになる。
一方,その周囲にあるフレームは,頭部や脚部といった4つのパーツがあり,より性能の高いものを作ることで,コアボットを強化できるという仕組みだ。新しいパーツを作るにはブループリント(設計図)と素材が必要で,あちこちに隠れているブループリントを探すのも楽しみとなっている。
ストーリーの説明やチュートリアルは,昨今のゲームからすれば決して丁寧ではない。だが,それが適度に探究心を満たしてくれる。未知の領域を探検していく,その雰囲気がゲーム全体に染み渡っているから,つい深いところまで探して見つけたくなるゲームバランスも絶妙だ。
もちろん,本作のクリエイター陣が過去に関わったタイトルを彷彿させるテイストも随所に見られる。こうしたファンの期待にも応える1本であることは間違いない。
とはいえ,不満もある。すでにさまざまなところで触れられているが,やはりロード時間の長さは見過せないものがあった。先日のタイトルアップデートで改善されたため,掲載時点ではクローラー(シェルター)から出るシーンで40秒程度となっているが,以前は分単位で待たされた。
とくに「ツライ」と感じたのが,ロード明けの戦闘でやられてしまった場面だ。戦闘でやられた後,ロード時間が長いので,しばらくスマホを見ていたら,いつの間にかロードが明けて戦闘に突入。あわててコントローラを握るも,またやられてロード……。
これは本当に心が折れそうなった。せめて「ロードが完了しました」というワンクッションがあって,何らかのボタンを押さないとゲームが再開しないといった配慮があればよかったのに。
なお,PC(Windows 10)版のロード時間はまったく気にならない。たとえば,クローラーから出るシーンは20秒もかからない。
コリジョン抜け(壁抜け)などのバグも気になる。これもアップデートで改善されるだろうが,一度だけダンジョンの壁を抜けてしまい,あやうく戻れなくなることもあった(また隙間から戻ったが)。
「相棒のコアボットは同時に2体までしか連れていけない」という点も,個人的には不満な点として挙げたい。ゲームデザイン上の制限として,ある程度の不自由さは理解できるつもりだが,ものすごく時間をかけて目的地に到達したのに,そこのギミックを解くために必要なコアボットを連れていなかったときのガッカリ感,そして再び同じ行程を繰り返さなくてはならない徒労感。思い出しただけで,ふて寝したくなるほどだ。
といったように不満を書き連ねたが,それでもずっと遊び続けられるのだから,「ReCore」は面白い。それは間違いない。近年,なかなか味わえなかった歯ごたえのあるゲームとして,君の記憶に残るゲームとなるだろう。