プレイレポート
来たるべきポストアポカリプスに備えよう! 最新ゾンビの傾向をゲームでチェックしてみた
その設定もさまざまで,ゾンビがアイドルになって地方を救ったり,共同生活したり,妹やペット,さらには主人公がそもそもゾンビだったりと,もはやホラーという枠を飛び越えている。「ゾンビ」という一大ジャンルを築き上げつつあるのだ。
ゲームではアクションやシューターなどのジャンルによく登場するゾンビだが,この調子だと,どんなゲームにどんなゾンビが登場しても,まったくおかしくない。
ということで,そのときに備え,ここ1年ほどの間に発売されたゾンビ(っぽいキャラ)が登場するタイトルをプレイし,“今どきゾンビ”のスタンダードを探ってみた。ぜひ今後の参考(?)にしてほしい。
なお,記事中にはグロテスクな画像やムービーがあるので,苦手な人はそれを了承したうえで読み進めてほしい。
力こそパワー! どこか憎めない「METAL GEAR SURVIVE」の脳筋ゾンビ
「メタルギアにゾンビ?」
初めてそんな話を聞いたとき,ダンボール箱がゾンビの横をすり抜けていく安直な絵面を一瞬想像したのは自分だけではないと信じたい。
「METAL GEAR SURVIVE」(PC / PS4 / Xbox One)の主人公である「キャプテン」が単身乗り込むのは,突如出現したワームホールの先にある荒廃した世界,「ディーテ」(地獄)。転生こそしていないものの,異世界モノとゾンビの夢のコラボと呼べるかもしれない。
そんな世界で幅を利かせているのが,本作のゾンビ的な位置付けにある「ワンダラー」(放浪するもの)という存在だ。どうやら人間がディーテ世界にいる謎の生物に寄生されると,かなりアバンギャルドな姿に変異してしまうらしい。
ただこのワンダラー,序盤では家畜のヒツジと同じくらいの防御力しかない一方で,攻撃力はとても高い。一般的なゾンビゲームの感覚で侮っていると,ワンパン,ツーパンでキャプテンが死んでしまうことになる。
視覚と聴覚があることは確認されているというワンダラー。なので,戦うにしても避けるにしても,見つからないように音を立てず,しゃがみや匍匐移動を活用するのが,戦いを有利に進めるためのポイントとなる。
プレイ中,たくさんのワンダラーに追いかけられそうなポイントを見つけたので,階段の上にある細い通路に誘い込んで,タイマンで戦おうとしてみた。
何回か試してみたものの,すぐ横に階段があるにもかかわらず,しばらく待っても登って来ようとしない(たまに登ってくる個体もいたが)。うーん,頭は光っているけど,どうやら視力はあまりよくないのか? ここは暗いし,よく見えなかったのだろう。きっとそうに違いない。
さて,本作には,食料や武器・防具,さまざまな便利ユニットなどを,集めた素材から製作するというプロセスがある。
序盤で作成できる「ノーマルフェンス」は,その名前通りの金網だ。プレイ前に少し調べてみたところ,これはワンダラーの攻撃を防げる一方,こちらの槍による攻撃は通してくれるので,安定して勝利をつかめる優れものらしい。さっそく使ってみたところ……。
晴れた屋外でも,フェンスを避けてこちらに向かってくることもなく,律儀に正面から攻撃し続けるワンダラーさん……。もしかすると,ちょっと残念な子なのかもしれない。
敵とはいえその将来を心配しつつ,筆者はディーテ世界を後にしたのだった。
「METAL GEAR SURVIVE」のワンダラー |
スピード | ★★ |
攻撃力 | ★★★★★ |
防御力 | ★ |
怖さ | ★ |
脳筋度 | ★★★★ |
見た目・硬さ・行動と三拍子揃った
「バイオハザード RE:2」のハイスペックゾンビ
近年の「バイオハザード」シリーズでは,どうも雑魚的な扱いをされることが多かったゾンビ。しかし,オリジナル版の発売から約20年を経てのリメイクとなった「バイオハザード RE:2」(PC / PS4 / Xbox One。以下,RE:2)には,ゾンビ1体1体の重みと恐怖が当時のまま受け継がれていた。というか困ったことに,むしろパワーアップしていた。当時ですらプレイしていて胃が痛くなったのに……。
パワーアップの要因となっているのが,「バイオハザード7 レジデント イービル」でも採用されたゲームエンジン「RE ENGINE」だ。ラクーンシティの街並みや,かつては美術館だったという警察署の内部,レオンやクレアの造形が作り込まれて美麗になるのは大歓迎だが,それは諸刃の剣。ゾンビそのものやベッタリとした血のり,開いた傷口などがさらにグロテスクとなり,リアリティを伴って画面に映し出されるのだ! 筆者にとって,本作における“諸悪の根源”は,アンブレラでもウェスカーでもなく「RE ENGINE」のように思える。
……ほんと怖い。
さらに,RE:2のゾンビたちは非常にタフである。ハンドガンを2,3発撃ちこんだくらいでは,ひるんだり歩みを止めたりすることはないし,たとえヘッドショットが決まっても,必ず死ぬわけではない(まぁ,ゾンビなのですでに死んでいるんですが)。ゾンビを見かけただけで方向転換してしまう筆者とはえらい違いだ。
……ほんといやらしい強さ。
加えて迷惑なのはその出現・行動パターンだ。
……ほんと心臓に悪い。
その行動には,単にびっくりさせられるだけでなく,ゾッとするようなことを想像させる余地がある。妙なことを考えがちなビビリにとっては,天敵のようなゾンビなのだ。
彼らと仲良くやっていける日は来ない。絶対にだ!(泣)
「バイオハザード RE:2」のゾンビ |
スピード | ★★★ |
攻撃力 | ★★★ |
防御力 | ★★★★ |
怖さ | ★★★★★ |
サプライズ度 | ★★★★ |
“音”が視覚以上の恐怖を生む
「OVERKILL's The Walking Dead」のウォーカー
世界的に大ヒットしている人気ドラマ「ウォーキング・デッド」の世界を舞台とした「OVERKILL's The Walking Dead」(PC / PS4 / Xbox One。以下,OTWD)。
4人でのマルチプレイCo-opキャンペーンがメインとなるゲームだ。
今回プレイしたのはSteamで購入したPC版なのだが,開発スタジオの親会社であるStarbreezeが経営破綻したことにより,記事の制作中に販売が中止となってしまった。一部のSteamキー販売サイトなどではまだ購入できるようなので,手に入れたい人はそちらを探してみてほしい。
なお,国内向けのPS4版はスパイク・チュンソフトからリリース予定だったが,こちらも同様の理由から発売が無期延期となっている。
本作に登場するゾンビは,ドラマ同様に「ウォーカー」と呼ばれている。
リックやダリルたちなら難なく仕留められるウォーカーだが,本作においてはかなりの強敵。プレイヤーのレベルが影響するものの,基本的にヘッドショット以外の攻撃はあまり意味がない。
本作で鍵を握るのは「音」である。
健常な人間が発するものとは明らかに異なるウォーカーのうめき声はドラマと遜色なく,耳にしたならばギョッとして思わず身体が強張る。
また,彼らはには聴覚がしっかり残っている。銃声やブービートラップ,車のクラクションなどを無神経に響かせていると,「ノイズメーター」が上がって,ウォーカーがワラワラとその場所に集まってきてしまうのだ。
1体だけであれば,自分のような一般人でも何とかできそうなウォーカーだが,大群になるととてつもない脅威となり,絶望感すら生まれてくる。
割と真面目にここまで書いてきてしまったが,それも本作が持つシリアスな雰囲気に,すっかり飲み込まれてしまったからだろう。淀んでいて殺伐とした原作の世界観とウォーカーの姿が忠実に再現されており,気分はすっかりドラマの登場人物だ。
今回紹介したタイトルの中だと,本作は相対的に少し地味に映るかもしれないし,派手な銃撃戦を望んでいるなら物足りなさを感じてしまうかもしれない。だが,プレイを進めるうち,「音」という見えないものが本作の核となっていることが分かってくるはず。見た目の派手さはないが,怖さとともに“渋さ”を感じられるタイトルだ。
「OTWD」のウォーカー |
スピード | ★★★ |
攻撃力 | ★★ |
防御力 | ★★★ |
怖さ | ★★★★ |
地獄耳度 | ★★★★★ |
「Far Cry 5 DEAD LIVING ZOMBIES」&
「Call of Duty: Black Ops 4」のアスリートゾンビ
「早い」「安い」「質はそこそこ」とは,映画「カメラを止めるな!」の登場人物による印象的なセリフだが,「Far Cry 5」(PC / PS4 / Xbox One)のDLC「DEAD LIVING ZOMBIES」と,「Call of Duty: Black Ops 4」(PC / PS4 / Xbox One。以下,BO4)のゾンビモードを表現するなら,「速い」「多い」「怖さはそこそこ」になるだろう。
どちらも洋ゲーで,本編やメインとなるモードではないという共通点があるためか,そのテイストには似ているところも多い。セットで見ていくことにしよう。
●とにかく速い
まずゾンビを探して,見つけてからどう倒すか考えよう。というプレイでは痛い目を見ることになる。ゾンビたちがプレイヤーを見つけたとたん猛ダッシュで突撃してくるからだ。その肉は腐り崩れ落ちているのではなく,逆に強化筋肉が備わったくらいの勝手な脳内設定を追加しておいたほうがいい。同じところに長く留まらないように心がけよう。
●とにかく多い
常にゾンビがそこら中に溢れかえっていて,いない場所を探すほうが難しい。ゾンビの数が少なくなると,こちらが心配になってくるレベルだ。ほぼ全方位から攻撃されるためかなり忙しく,各ウェーブや,リポップするまでの合間が束の間の休憩タイムとなる。
●あまり怖くない
最初こそ迫力に気圧されるが,ここまでゾンビがインフレしていると,プレイ時間が長くなるほど怖れは薄れていく。
DEAD LIVING ZOMBIESは完全にバカゲーのノリだし,BO4には多少シリアスな謎解き要素が用意されているが,どちらのゾンビも大抵数発の攻撃で倒せるので,基本的に両作品からはプレイヤーを怖がらせようという意識はあまり感じられない。
両作品のゾンビには,もちろんそれぞれの個性もある。
DEAD LIVING ZOMBIESに出てくるゾンビの特徴は,強さ……というか「弱さ」だ。ほかの作品だと,ゾンビは平均して3〜4回の攻撃でプレイヤーを死に至らしめていたのだが,DEAD LIVING ZOMBIESのゾンビは,プレイヤーを倒すまで約30パンチほどが必要。驚きの腕力(のなさ)である。どうやら強化された筋肉は,すべて脚力にまわってしまった模様だ。
BO4のゾンビの場合は「臭い」である。本作ではかなり優秀で頼もしいNPCをお供にゾンビモードをプレイできるのだが,彼らがほんとによくしゃべる(これも怖くならない理由のひとつ)。そんな強者揃いのNPCたちが口々に「とても臭い」と言うのだ。。
「腐ったキャベツか,放置した魚みたい!」「下水道の臭いのほうがマシ」「臭すぎて味まで感じる」「涙が出てきて前が見えない」などなど。これらの台詞は一部にすぎず,多彩な表現で必死に臭さを訴えてくるのだが,そうなるともうゾンビの怖さよりも,臭いのほうが気になって気になってしようがない。
というわけで,DEAD LIVING ZOMBIESとBO4なら,怖がり屋さんでも気軽にゾンビと戯れることができるはずだ。
「DEAD LIVING ZOMBIES」のゾンビ |
スピード | ★★★★★ |
攻撃力 | ★ |
防御力 | ★★ |
怖さ | ★★ |
おバカさ | ★★★★★ |
「CoD:BO4」のゾンビ |
スピード | ★★★★ |
攻撃力 | ★★ |
防御力 | ★★ |
怖さ | ★★ |
臭さ | ★★★★★ |
これからのゾンビトレンドは“もっとワラワラ”だ!
ここまで読んでくれた人なら,一口にゾンビと言っても,速かったり,硬かったり,あまり怖くなかったりと,さまざまなタイプがいることが分かったと思う。強いて共通点を挙げるとするなら,当たり前だが「集団で襲いかかってこられると怖い」ということだろうか。
そして,この傾向は今後さらに強くなりそうだ。年内にリリースが予定されている「Days Gone」「World War Z」(PC / PS4 / Xbox One)「The Black Masses」といったゾンビゲームは,DEAD LIVING ZOMBIESやBO4を軽く上回る数のゾンビが出てくる。特に「The Black Masses」などは数万というレベルのゾンビが相手になるというから驚きだ。
やはりゾンビは,集団になってワラワラと溢れ出てきたときにこそ,その魅力がひと際輝くものなのだろう。トテモタノシミデス……。
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