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  • 発売日:2017/09/14
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自分達の実力だけで成功したわけじゃない。だからいまのうちにもっと会社を強くしないと――アズールレーン,アークナイツ……立て続けにヒットを飛ばすパブリッシャ「Yostar」の若き社長は語る
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印刷2019/09/17 12:00

インタビュー

自分達の実力だけで成功したわけじゃない。だからいまのうちにもっと会社を強くしないと――アズールレーン,アークナイツ……立て続けにヒットを飛ばすパブリッシャ「Yostar」の若き社長は語る

Yostarの受付……なのだけれど,中国のイケてる企業特有の乱雑さがここにもちゃんと息づいている。こんなに小ぎれいなのに,チラリと写っている写真の左側は,あけて散らかしたダンボールが山積みだ(笑)
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 Yostar(ヨースター)という会社がある。

 日本ではスマホゲーム「アズールレーン」の運営会社として知られる,中国の「上海悠星網絡科技有限公司」という会社だ。アズレンの運営で名を馳せた会社ではあるが,「雀魂」「Epic Seven」などそのほかの展開も抜かりなく,今後はグローバルで大人気作「アークナイツ」の運営を予定している。
 パブリッシャとして相当な結果を出している会社ではあるのだが,その代表は表に姿を現すことはほぼなく,インタビュー記事など皆無といってもよい(日本法人には李 衡達氏という名物社長がいるが,ここで言う代表は本国のCEOのことを指す)。

 このご時世,名前がちょっと売れればWebのどこかにその情報が書き込まれ,その人の雰囲気なり考え方なりの片鱗が分かるものなのだが,Yostarだけはどこにも見当たらない。一体どんな人が,どんな心持ちで運営しているのか知りたいとずっと思っていたが,先のChinaJoy2019の取材で上海を訪れたときに,ようやくその願いを叶えられた。

 与えられた時間は短かったが,Yostar本家の社長に会っていろいろな話を聞くことができた。成功者特有の,ちょっとだけ横柄なイケてる感じを想像していたのだが,実際は驚くほど腰が低く控えめで,何かをしゃべる前にちょっと考えてから言葉に出す,そういうタイプの人であった。

 限られた時間で,Yostarを率いる若き社長がどんな人なのかを出来る限り聞いてみたので,その模様を以下にお届けしよう。

Yostar公式サイト(日本)


「アズールレーン」公式サイト

「アークナイツ」公式サイト

「Epic Seven」公式サイト

「雀魂 -じゃんたま-」公式サイト


Yostar CEO 姚蒙(Yao Meng)
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4Gamer:
 本日はお時間をいただきありがとうございます。メディアの前に姿を現すことはほとんどないはずなのに,短い時間とはいえ今回のインタビューを受けていただき,本当に嬉しく思います。

Yostar CEO 姚蒙(Yao Meng)氏(以下,Yao氏):
 いえいえ。でもさすがに緊張します(笑)。

4Gamer:
 目利きにとても優れていて,手がけるものが立て続けにヒットしている会社なので,ぜひ一度お会いしたいとは思ってました。
 そんなYostarという会社は,日本ではアズールレーンの運営会社として有名ですが,いつ,どういうきっかけで作られ,どんなことを目指してるのか……といった,基本的なところから教えていただけますか。

Yao氏:
 大学時代にすでに同人ゲームの制作を始めていましたが,当時はただの同人サークルを拡大してゲームスタジオを立ち上げたような感じでした。でもちょっと自分達の制作はうまくいかず,商業化という意味で最初に目をつけたゲームは「少女前線」(邦題:ドールズフロントライン)です。

4Gamer:
 そうでしたね。

Yao氏:
 でもそれは,ご存じかと思いますがトラブルで話がなかったことになってしまい,その後のパブリッシングタイトルとして「アズールレーン」(アズレン)に取り掛かりました。
 アズレンの関係者は,自分と話が合う友達感覚で相性がとても良かったんです。Manjuuも,当時は10人ほどのベンチャー企業で,うちと同じ規模でしたし。

4Gamer:
 つまり,ヤオさんが目をつけたタイトルは,「少女前線」「アズールレーン」「アークナイツ」と,全部大ヒットしてるわけなんです。目利きのパワーが半端ないというか。
 でもアズレンの成功の理由は何だったとお考えですか?

Yao氏:
 実は……深く考えたことはありません(笑)。なにせ成功自体がすごく予想外だったので。

根強い人気を誇る「アズールレーン」。登場当初は艦これのパクリか?と言われていたが,最初のネガティブな評価をモノともせずにハネのけ,いまなお健在だ
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4Gamer:
 まぁ,そういうものかもしれませんね……。しかし,経歴だけ聞いていると,いろいろやってるようですが,確かまだお若いんですよね。

Yao氏:
 今年31歳です。

4Gamer:
 若い! いやちょっと待ってください。ええとつまり,その同人サークルを作ってたのは?

Yao氏:
 高2の頃です。

4Gamer:
 高2……。ヤオさんの同人サークルといえば,Studio GameMaster?

Yao氏:
 いえ,それは2007年ぐらいなので高2のときよりあとです。Yostarのもう一人の社長と一緒に共同で立ち上げました。

4Gamer:
 なるほど。Yostarという会社は,基本的には開発会社ですよね。それがどういういきさつでパブリッシュもすることになったんですか?

Yao氏:
 さっきも述べたように最初は同人ゲームの制作から始まったんですけど,2014年当時はいわゆるソシャゲアプリも今ほどは流行っていない時期で,そのときにYostarとして初めてのゲームをリリースしたんですが,結果はあまりよくなくて,ちょっと挫折を味わいました。

4Gamer:
 「異世界からのノノ」ですね。

Yao氏:
 はい。
 まぁ,そんな自分の失敗はさておいて,その当時はちょうど,同人ゲーム時代の仲間達も同じタイミングで一斉に商業化に向かって進んでいったんですが,当時の中国パブリッシャは,我々が作ったようなサブカルのゲームを理解してないことも多々あったんです。

異世界からのノノ。Yostarの日本進出第一作だ
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4Gamer:
 2014年当時でもまだダメでした?

Yao氏:
 はい,まだでした。
 自分は開発者として,ゲームのターゲット層やそのほか色々なサブカルのことがしっかり分かっていたつもりだし,仲間達もみんな困っていたようだったので,この知識を強みとしてやってみるか! ……というノリでパブリッシャを始めたんです。

4Gamer:
 思ったより軽いスタートでした(笑)。

Yao氏:
 そうですね(笑)。もちろんパブリッシングの経験はまったくありません。でもそれをきっかけにして,Yostarがパブリッシング事業を始めることになりました。

4Gamer:
 パブリッシャをやったことはなかったけど,みんな周りも商業化しているし,仲間達を助けるためにも,ゲームのことをちゃんと分かってる俺が頑張ってみようかなと思ってパブリッシングを始めてみたら,めちゃ当たった,みたいな? 表現はちょっと悪いですが。

Yao氏:
 いえ,まったくおっしゃる通りです(笑)。本当に,ただ運が良かっただけなんです。

4Gamer:
 仮にそうだったとしても,運も実力のうちですから。

これも中国イケてるベンチャーの七不思議だが,どこの会社も必ずクリスマスツリーが飾ってある。真夏だったのに。「ただの派手な飾り物ですよ」と言われてなるほどと納得
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自分達は運がいいだけ。運がないときでもちゃんと会社が進めるように,いまのうちに色々な経験を積んでおきたい


4Gamer:
 でもこのあとはどうするんでしょうか。パブリッシャとしてどんどん手を広げていくのか,もしくは元々ヤオさんのやりたかった開発方面にシフトしていくのか。

Yao氏:
 最近では,おっしゃるようにパブリッシャとしてのイメージが凄く強いので,今後もそれをちょっと頑張っていこうと思ってます。日本に軸を置いて,グローバルパブリッシングを行う予定です。

4Gamer:
 おお,グローバル?

Yao氏:
 はい。自分達が好きなゲームが中心ですが,そういう作品をもっと出せたらいいなあと思ってます。もちろん開発のほうも進んでますよ! アズレンの初期に,ユーザーさんから多大なご支持をいただいて,会社はある程度の体力をつけることができました。そのおかげで,現在は自社タイトルの開発につながっています。

4Gamer:
 先ほど「運がいい」とおっしゃってましたが,それにしても良い方向に進んでるんですね。

Yao氏:
 それは否定しません。支えてくれているユーザーの皆さんのおかげです。

4Gamer:
 ところで今さりげなく「日本に軸足を置いてグローバルに」と言いましたけど,それは中国で作ったものを日本に持ってくるだけではなくて,もしかして日本のものを中国に……とか,もしくは日本のものをグローバルにとか,そういう広い意味での話ですか?

Yao氏:
 はい。

4Gamer:
 運営会社で仕事をしたことはないんですが,きっとゲームの運営って,国によってやることがずいぶん違うと思うんです。アズレンの運営で,日本と中国とアメリカをすでに見てらっしゃるので,そのノウハウを使えばワールドワイドに出ていけるのでは,と思ってたんですが,やはりそういう方向を考えているわけですね。

Yao氏:
 そうですね。最近はゲームのグローバル化が進んでますし,違う地域で運営するときには,もちろんローカライズやカルチャライズを一番大事にします。その部分は,その場しのぎのようなことはしないで,ちゃんと自分達なりのルールを作って,ワールドワイドのコモンセンスを基に,各地域でそれなりの個性を出して運営しているつもりです。

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4Gamer:
 パブリッシャ業務は思いつきで始めたと先ほど聞きましたが,やってることは,完全にワールドワイドのパブリッシャですね。

Yao氏:
 いえ,そんな大層なものじゃないです。繰り返しですけど自分達は運がいいと思ってるんですが,運は常に味方してくれるわけじゃないんですよね。

4Gamer:
 おっしゃるとおりです。

Yao氏:
 なので,今の段階でちゃんとした実力を身につけて,運に恵まれないときがきてもちゃんと会社が前に進んで運営できて,長くやっていけるように。今のこの勢いがあるうちにいろいろな経験を積む必要があって……。なので,パブリッシングと開発を両方頑張るつもりです。

4Gamer:
 いまのうちにもっとちゃんと「会社の強化」をはかりたい,ということですか?

Yao氏:
 はい。ちゃんと現状に見合った実力を身につけて,もっと戦えるようになりたいですね。

4Gamer:
 僕は15年ぐらいずっとChinaJoyに来てまして,とくに最近は中国で成功した人達とこうやってお話しさせてもらう機会も多くなりましたけど,皆さん凄く控えめですよね。
 成功したら偉そうになるっていうのは,日本でも普通に見かけますし,実際に成功してるのだからまぁ理解できないことでもないんですが,中国で成功した人って,なんでそんなに控えめなんですか?

Yao氏:
 昔からの中国の教えで,「満は損を招き、謙は益を受く、これ乃ち天の道なり」という言葉がありまして。

4Gamer:
 すごく中国的です……。

※調べてみたら書経の一節だった。「満招損、謙受益、時乃天道。」 驕りは損失を招き,謙虚さ(を持つ者)は利益を授かる,これが天の道理である。

Yao氏:
 中国社会の現状は複雑ですし,会社が成功するのは必ずしも自分の実力ではなく,タイミングがいいとか,業界の盛り上がりに引っ張られているだけとか,そういう影響がすごく大きいのです。当然,マーケットそのものの景気に左右されることもとても多いですし,単に時代が味方することだってあります。どうであれ,必ずしも自分の実力だけで成功するわけではないのです。

4Gamer:
 「意識高い系の人達」に向けて,ぜひトークショウとかお願いします……。
 それはさておき,日本のゲーム業界において「アズレンのYostar」といえば,かなり有名だと思います。

Yao氏:
 いや,まだまだ全然足りてないですよ。

これはどこなのかというと,Yostarの会議室の壁だ
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4Gamer:
 いえいえ(笑)。それで,先ほどグローバルの話を聞いたのはその「アズレンのYostar」というイメージがちょっと絡んでいて,もしかして,日本のゲームが中国に出ていくときに,上海Yostarのほうで何かヘルプしてくれたりするんですか?

Yao氏:
 実は,すでにそういった事業は展開してます。

4Gamer:
 すでに?

Yao氏:
 ええ。弊社のゲーム以外のパブリッシングや制作に,ずっと手を貸してます。

4Gamer:
 それは事業として,ですよね?

Yao氏:
 そうですね。でも表には出てないですよ。

4Gamer:
 あぁやっぱりそうですよね。記事に書いてもいいですか?

Yao氏:
 ええ。タイトル名や会社名なんかは出せませんが,そういった事業をしていることについては書いてくださってOKですし,困っている人がいたらぜひ連絡をください。実動というよりは,ちょっとコンサル的な要素が強いですけど。

4Gamer:
 逆もやるんですか? 中国のタイトルが日本に行きたいとき。

Yao氏:
 はい,やってます。

4Gamer:
 それは……強そうです。
 比較的年齢が高めの日本のゲーム業界の人は,中国っていう国がまだ心のどこかで怖いんですよね。かつての中国は,コピーに次ぐコピー,パクリに次ぐパクリの温床だった国なので。なので日本の会社は,自分達の作品を信用して預けられる中国の会社を探していることが多いので,結構喜ばれる気がします。

YostarもManjuuも,オフィスの真ん中に巨大な猫ルーム。しかも出入り自由なやつまでいて,右のやつにいたってはYao社長のインタビュー中にずっと筆者の足元にいた。たまらん
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「アークナイツ」の日本版はもうちょっとあと。足りないコンテンツを補強して,万全の体制で日本ローンチをしたい


Yao氏:
 でもやっぱり,そもそも中国においても,21世紀の今になってもゲームというものはみんなに嫌われるイメージが強くて……。

4Gamer:
 あれ,中国でもそうなんですか? こんなにみんながスマホでゲームしてるのに。

Yao氏:
 実はそうなんです。だから,ほかのゲーム会社とは競争関係でもあり,助け合う仲間でもあります。Yostarは,割とみんなと一緒に仲良くやりたい会社だと思います。

4Gamer:
 そう思っている人はほかにもいるかもしれませんが,パブリックな場所で言う人ってあまりいませんよ。

Yao氏:
 そうなんですか? 起業初期の自分達はもちろん全然経験がなくて,何も分からなくて,そのときすでに成功していた先輩達が丁寧にいろいろなことを教えてくれました。だから今があるんです。しかもその見返りなんて一切求められていませんでした。
 それを深く感謝していますし,自分達が教える側になった今でも,そういうことを続けられたらいいなと思っています。

左から順に,アズレン開発元Manjuuの専務取締役社長である林書茵(リン・シュイイン)氏,YostarのCEOである姚蒙(ヤオ・モン)氏,アークナイツ開発元Hypergryphのプロデューサー海猫氏,同じくHypergryphのアートディレクター唯氏。会社は3つに分かれているが,彼らは同じビルの同じフロアで同じように仕事をしている。一定の役職以上であれば,お互いのオフィスを行き来できてほとんどサークルのノリだが,実際に大変仲がよい
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4Gamer:
 素晴らしいです。でもその「全然経験がなかったとき」って,どんな感じで起業したんですか?

Yao氏:
 初期は,僕ともう一人で自分達のお金を出して立ち上げました。ちょうど知人が中国のゲーム会社を紹介してくれて,そこから120万元(約2000万円)程度の投資を受けることができましたが,最初期はそんな感じです。

4Gamer:
 そのときは全部で何人でした?

Yao氏:
 7人でしたね。

4Gamer:
 今は?

Yao氏:
 日本のスタッフを入れると150人です。

4Gamer:
 7人から150人! ほんの短期間で7人から150人まで育て上げて,実際にヒットを出しているのに,とても控えめですよね。

Yao氏:
 (微笑みながら)自慢できるものは何もないですから。

4Gamer:
 ええと……じゃあ逆に,どんなことなら自慢できます?(笑)

Yao氏:
 うーん,難しいですね……。(筆者の名刺を見ながら)あなたは社長でもあるようなのでお分かりいただけると思うんですが,やっぱり会社が大きくなればなるほど僕の機嫌は悪くなっていきますね。あんまり嬉しいことはありません(笑)。

4Gamer:
 あぁ,分かります(笑)。
 4Gamerも本当の最初は,20年前にDiabloで知り合った知人と僕の2人でスタートしたものです。今は会社全体で50人くらいがいるんですが,人が増えれば増えるほど,“やりたかった仕事ではない面倒なこと”ばかりが増えて……。会社そのものの経営はうまくいっていても,組織が大きくなることそのものには,そんなに喜びを感じられません。

Yao氏:
 そうです! そうです,本当にそうです。凄く分かります(笑)。
 まず会社の経営状況を心配しなければいけないですよね。Yostarは現状で150人いるわけですが,それぞれの社員の生活もかかってますし,そこも考えないといけないんです。それに,中国は政策が与える影響がすごく大きい国で,それにも毎回悩まされます。ちっとも楽しくないです。……やっぱり,会社経営者の人であれば共感してもらえますよね(笑)。

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4Gamer:
 ええそれはもう。50人の社員がいて,それぞれに家族がいて,もしかしたらご両親の生活も……とか考えると,100人以上の生活を支えてるわけで,ときたま本当にイヤになります。

Yao氏:
 そうなんですよね。起業初期は夢がたくさんあって,それを見て前に進めますけど,社員が増えれば増えるほど現実と向き合う時間が増えてくるわけで,そこがとても難しいです。

4Gamer:
 あんまり楽しい話じゃないけど,みんな同じでよかったです(笑)。でもその若さでそれを経験してるのはなかなかすごいですよね。

Yao氏:
 そうですね……本当に色々経験しました。

4Gamer:
 でも「ゲーム」を自分の仕事にしようって思ったのはいつ頃なんですか。

Yao氏:
 さっきのサークルの話のちょっとあとで,大学の時ですね。

4Gamer:
 あれ,意外と最近ですね。まぁ中国ゲーム業界は全般的にそんな感じかもしれませんが。

Yao氏:
 確かに中国ゲーム業界は全体的に若いです。

4Gamer:
 本当にみんな若いですけど,それだけ若いと,やりたいことと現実の狭間で,たまにちょっとモチベーションが下がったりしないんですか?

Yao氏:
 あんまり……いやほとんどないですね。もちろん,たまにはツラいことも嫌なこともありますし,周りに愚痴も言いますが,自分がやりたいことはまだたくさん残っているので,それを考えるとモチベーションが上がります。

4Gamer:
 じゃあ今一番やりたいことってなんですか?

Yao氏:
 「アークナイツ」の日本版をリリースすることです!(笑)

日本ローンチが待たれる「アークナイツ」。インタビューではこう言っているが,そう遠くない将来に何か楽しげな話が聞こえてくるような気がしないでもない
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4Gamer:
 それはもう多くの人が待ってますから(笑)。今冬だと言われてますが,いつなんですか?

Yao氏:
 辛抱強く準備を進めてます。

4Gamer:
 まだ中国語版しかないし,僕自身は遊べてないので詳しいことは分からないんですが,どんなことで時間がかかってる感じでしょうか。

Yao氏:
 全体的にコンテンツの内容が不足しているので,日本版をリリースするタイミングでは,もっとコンテンツ周りが充実されているようにがんばってます。

4Gamer:
 的外れな質問だったら申し訳ないんですが,「コンテンツが足りない」というのは,例えば単純にステージ数が足りないのか,それともゲームシステム面を含めて機能が足りないのか,どっちの意味ですか?

Yao氏:
 いろんなところが全部足りてない状況なんです。ステージ数も,フィーチャーも。
 現状はおかげさまですごく評価されていますし,日本で期待してくれている人が多いのも知っているんですが,コンテンツ不足というのはとても現実的な問題なので,雰囲気に流されず,ノリだけで決めず,ちゃんと理想と現実のバランスを取っていきたいと思ってます。

4Gamer:
 冷静かつ控えめですね。

Yao氏:
 うちは全体的に冷静で控えめ……だと思います。勢いだけで何かをやろうとすると,やらかす可能性ばかりが大きくなると思うので,常に冷静でいないと。

4Gamer:
 ほんとに,日本で講演会か何かしたほうがいいですよ。
 でもそもそも,中国でも日本でもメディアにはほとんど姿を現しませんけどね。

Yao氏:
 そうですね。基本は出ないです。

4Gamer:
 これほどまでの実績を収めた会社なので,講演やインタビューなど引く手あまたでしょう。

Yao氏:
 表に出るのは好きじゃないんです。経験上,パブリックな場所で多くしゃべると言い間違いや勘違いの発言が増えるだけだし,それを避けたくて,なるべくパブリックな場所で発言しないことにしています。

4Gamer:
 分かります……。

オシャレなアークナイツのホーム画面。可及的速やかに持ってきてくれることに期待しています
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大事なのは「新しい食材」を見つけることではなく,同じメニューで「自分の味」を創り出すこと


4Gamer:
 そんな控えめなYostarから見て,日本のコンテンツってどうですか?

Yao氏:
 日本のコンテンツに対する印象という話ですか?

4Gamer:
 ええ。日本以上に日本らしいゲームを作っている会社は,日本のコンテンツのことをどう思っているのかな,という好奇心です。

Yao氏:
 我々は,ただ一部のプレイヤーに熱狂的に愛されているだけで,知名度や実績は本当にそこまでじゃないんですが,それでも長く日本のコンテンツを見て来ましたし,思うところはあります。
 日本のゲーム業界や日本のコンテンツは,ちょっとマンネリ化が進んでいる感じがしていて,たぶんこれは日本の業界の中でも議論されているんじゃないでしょうか。新しいゲームのアイデアとかが出てくるのは,ちょっと厳しそうだな……という印象です。

4Gamer:
 なかなかドライに見ていますね。

Yao氏:
 これは中国でもよくある話ですが,グラフィックスやゲームシステムなどの部分だけを模倣しても,それより前に成功したゲームを絶対に超えられないと思うんです。

4Gamer:
 でも最近の中国は,たぶんアズレンもそうですけど,凄く日本をリスペクトしてくれていて,リスペクトの度合いがすごくて,実はもう日本を抜いちゃってたりしない? とかいう気になります。さっきちょっと言った「日本より日本らしい」というやつです。

Yao氏:
 おっしゃることは分かります。うちで言うなら,開発のManjuuとYongshi,あとYostarの運営スタッフは,みんな日本のアニメやゲームが好きで好きで本当に好きで,長い間愛していて,キャラ作りの時も自分の好みをゲーム要素にこっそり入れてたりするんです。そういうところが,ユーザー受けした原因なのかもしれません。
 でもそういった行為は,結局のところ諸刃の剣で,いつか自分が傷つくことになると思います。なのでゲームとしては,やっぱりオリジナリティが大事だと思いますし,現状のようなリスペクト路線は長く続けていかない方がいいと思っています。

今回のChinaJoyで,中国ゲーム業界の人達はみんな「ファイアーエムブレム 風花雪月」を遊んでいると言ってたが,本当に誰しも遊んでる。仕事中なのに
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4Gamer:
 ヤオさんらしいすごく冷静な意見ですし主張として同意もできますが,現実問題として「オリジナリティがあるゲーム」……ってそんなにたくさん世の中にないですよね?

Yao氏:
 はい。完全にオリジナルなゲームを作り出すのは,非常に難しいことです。
 現状,うちを含むたいていの会社が作っているゲームは,既存の何かしらの作品に自分達なりのアイデアを加えてアレンジした作品だろうと思います。

4Gamer:
 そうですね。多くのゲームは「何か」の呪縛からは逃れられません。そして別にそれは悪いことじゃないですし。

Yao氏:
 あと重要なのは,「完全にオリジナルなゲーム」が面白いとは限らないということです。自分達なりのオリジナリティを考えつつ,既存の作品からも良いアイデアを得ながらもっと面白いと思えるゲームを作っていく方が,ユーザーも楽しめる作品が出来上がると思っています。

4Gamer:
 おっしゃるとおりですね。

Yao氏:
 料理で言うなら,世の中に食材は限られているわけです。同じ材料で同じ料理を作っても人それぞれの味になるわけで,大事なことは新しい食材を見つけることではなく,同じメニューでどうやって自分の美味しい味を創り出すのか,だと思うんです。

4Gamer:
 なるほど。ここ数年,中国の人はパクりに対してメチャクチャ厳しいので,ヤオさんはどう思ってるのかなと思ったんです。「そんなに厳しくなくてもいいんじゃないの?」って言いたくなるくらい厳しいですよね,最近の中国。

Yao氏:
 最近はまた,パクりが増えてますよね。ご存じのように,パクりが凄く多かった時期があるので,ゲームがちゃんと好きな人はそういうのをまったく許容できないんです。歴史の流れの中での産物,みたいなものでしょうか。

4Gamer:
 ええ,そういう事情は理解しているつもりなんですが,ちょっと魔女狩りみたいになっているところもあって心配になります。逆に新しいものが生まれづらい土壌が出来ちゃうんじゃないか,とか。

Yao氏:
 確かにそうかもしれません。単純なパクりではなくて,良いものから知見を得て自分なりのものを作り出すのが一番だと思います。

4Gamer:
 そんなヤオさんが今開発しているゲームはどんなものなんですか?

Yao氏:
 サラリと聞かれましたが(笑),いま3DのRPGを作ってます。

4Gamer:
 お? スマホですか?

Yao氏:
 はい。

4Gamer:
 いつ頃完成予定ですか。

Yao氏:
 来年の年末ですね。でもこれ以上は言えません!(笑)

4Gamer:
 まだまだ先ですね(笑)。では何か出せる情報が出来たら,そのときはぜひお願いします!
 ……残念ながらここでお時間のようです。短い時間ではありましたが,本日はありがとうございました。

―――2019年7月31日収録
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