レビュー
PC版とスマホ版の2つの「TERA」が揃い踏み。2作品の魅力を紐解きながら,それぞれがどんな人向きのゲームなのかを探ってみた
MMORPGに造詣の深い4Gamer読者ならばすでにご存じだろうが,「TERA ORIGIN」は,ゲームオンがサービスを提供しているPC向けMMORPG「TERA :The Exiled Realm of Arborea」(以下,PC版)と同じ世界観を持つゲームだ。
昨今,PCでリリースされたMMORPGがスマホに移植されることは珍しくなく,PCでのプレイ感を損なわないよう,スマホやタブレットでプレイしやすく調整が加えられているタイトルが多い。スマホ版もその例に漏れず,システムはスマホ向けに調整されているのだが,PC版の約1000年ほど前の時代が描かれており,同じ「TERA」でありながらPC版とはまったく違うストーリーを楽しむことができる。
それを知ってしまうとどう違うのか試したくなるのが人情だが,MMORPGを2つ同時にプレイする時間を確保するのはキツいという人もいるだろう。手軽に遊べるスマホ向けのMMORPGはいくつもあるが,やはりMMORPGのプレイにかかるカロリーは結構なものなのだ。
そこで本稿では,PC版とスマホ版の違いを紐解きつつ,それぞれがどんなプレイヤー向けなのかを紹介してきたい。
「TERA :The Exiled Realm of Arborea」公式サイト
「TERA ORIGIN」公式サイト
「TERA ORIGIN」ダウンロードページ
「TERA ORIGIN」ダウンロードページ
まずは「TERA」というゲームをおさらい
2つの作品の違いを解説する前に,そもそも「TERA」とはどういうゲームなのかをPC版を元にあらためて紹介しよう。
「TERA」は,ノンターゲティングバトルを採用したMMORPGで,様々なロール(役割)をもつクラスでパーティを組み,ダンジョンや巨大なレイドボスなどを攻略していく。アクション性の高いゲームではあるが,スキルの連携によって簡単に強力なコンボを繰り出せる。
また,アイテムなどの製作や素材の採集,釣りといった,バトルとは少し離れたMMORPGらしい遊びを楽しめるのだ。
同じようでまったく違う,2つの「TERA」を徹底検証
PC版とスマホ版は同じ「TERA」であり,ゲームシステムは比較的似通っているところがある。もちろん,PC版のコンテンツがそのまま収録されているわけではなく,スマホで遊びやすいように調整されている。この調整の具合が,双方の違いであり,特徴というわけだ。その一方で,元が同じタイトルだとは思えないという部分もある。
PC版とスマホ版はどこが同じで,どこが違うのか。ここからは,PC版をベースにスマホ版との違いを,いくつかの項目に分けて説明していこう。
●世界観とストーリー
PC版とスマホ版のもっとも大きな違いが,ストーリーだ。
「TERA」の世界は,太古神であるアルンとシャラが,アルボレアに神々を生んだことから始まる。神々はアルボレアに文明をもたらし,そして数々の種族を創造した。しかし,神々が互いに争う「神々の戦争」が勃発し,その影響でアルボレアにモンスターが出現するようになる。長きにわたる戦争が終焉を迎えたころ,アルボレアは未知の種族・アルゴンの襲来を受けてしまう。アルゴンに対抗すべく,アルボレアの国と種族はヴァルキオン連合を発足させ,不完全ながらも勝利を収めることに成功する。しかし,この勝利は次なる争乱の幕開けにすぎなかった……というのがPC版のバックグラウンドだ。
これについてはPC版の公式サイトで詳細が読めるので,興味のある読者は一読してほしい。PC版はこのストーリーのあとに,守護者としてこの世界に降り立ち,やがてヴァルキオン連合軍の一員として世界を巡ることになる。
一方,スマホ版はPC版の約1000年前の世界,PC版のバックグラウンドでいうところの「神々の戦争」の時代が舞台となっている。それによれば,巨人の神であるティタスは,世界の王になるという野望を満たすため,神界を超えて他の種族が住む世界に手を伸ばした。これに対抗する神々と種族と,ティタスによる戦いが「神々の戦争」なのだという。この戦争に勝利したティタスと,ティタスにより生み出された種族「巨人」はアルボレアを征服して神聖帝国を建国。その後,神聖帝国の支配は数百年におよぶが,それに反旗を翻した「独立軍」の一員として,プレイヤーは神聖帝国と戦う道を歩むことになる。
このように,同じ「TERA」でありながら,PC版とスマホ版とでは紡がれるストーリーがまったく異なるため,“スマホ版はPC版の移植”という単純な話ではないことが分かってもらえたと思う。PC版もスマホ版もそれぞれ違う魅力を持っている。
●サーバー構成とキャラクターメイキング
PC版は,9月にサーバー統合が実施され,現在はエリーンサーバー1つにすべてのプレイヤーが集う環境となっている。「1つしかないの!」と思うかもしれないが,週末はもとよりイベントなどでは多くのプレイヤーが一堂に会するので,なかなかに壮観だ。PC版はアカウント共通の倉庫があり,倉庫を介してアイテムや装備品などを受け渡しもできる。
スマホ版は現在5つのサーバーがあり,どれも活況を呈している。キャラクターはサーバーごとに作成でき,成長したキャラクターで別のサーバーにログインはできない。サーバー内にアカウント共通倉庫はなく,キャラクター間で装備を受け渡せないのがちょっともったいない。
キャラクターメイクについては,PC版は性別と7種族13クラスを自由に組み合わせられる。一方のスマホ版は種族と性別固定の6クラスとなっている。PC版のクラスの多さを考えれば,キャラメイクの自由度はPC版が圧倒しているが,スマホ版にはPC版にはない「アルケミスト」というクラスがある点に注目したい。
PC版にはNPCの錬金術師がいるし,製作で“練金”もあるため錬金術が廃れたというわけではないのに,なぜ1000年前にあったアルケミストというクラスが消えたのか……なんて設定に思いを馳せるのもMMORPGらしい楽しみ方ではないだろうか。
●フィールドマップと移動手段
PC版は各エリアごとに分かれているとはいえ,MMORPGらしい広大なフィールドが広がっている。移動は,ゲーム開始当初こそ徒歩だが,やがて馬などの乗り物から,ドラゴンやペガサスといった飛行系の乗り物へとグレードアップしていく。飛行系の乗り物はフィールドの高低差を容易に乗り越え,移動時間を大きく短縮してくれる。大陸ごとの移動には移動呪文書といったアイテムや,公共の乗り物としてのペガサスなどを用いる。
スマホ版もほぼ同様で,拠点からつながるフィールドの移動の際には公共のペガサスを使う。通常フィールドの移動は,徒歩のほかに「幻獣」を装備して,乗れるようになっている。「幻獣」は移動の利便性を上げるだけでなく,キャラクターをパワーアップさせるという効果もある。PC版と同じく移動呪文書も存在するが,なかなかにレアなアイテムなので,スマホ版は通常移動とペガサスによる移動が主となる。
●バトル
どちらのタイトルも,ノンターゲティングタイプのバトルを楽しめるが,スキルの数やインタフェースの違いでプレイ感はまったく異なる。
PC版はキーボードとマウス(正式なサポートは行われていないが,ゲームパッドでもプレイ可)により,ダイレクトな操作で自在にアクションを楽しめる。スキルは画面下のショートカットにセットして使用するほか,スキルとスキルを「連携」させることで,起点となるスキルを使用したあとは,スペースキーをテンポ良く押すだけで,手軽に爽快なスキルコンボを繰り出せるのだ。戦闘に関わるシステムとして,10月9日のアップデートで装備やスキル,そしてモンスターに“物理”と“魔法”というステータスが追加され,弱点を突くことでダメージアップも図れるようになった。
スマホ版はバーチャルパッドとスキルボタンで操作できるほか,スマホらしくオートバトルも搭載されている。PC版ほど爽快感はないが,オートバトルの楽さは一度覚えると手放しがたい魅力がある。とはいえ,万能というほど頼れるものでもないので,「討伐隊」などのボス戦では要所で介入してクリアを目指したい。
スマホ版のバトルに大きく関わる要素として「レイヴン」と「属性」がある。属性は火,水,木,光,闇の5種類があり,それぞれ有利不利の相性が設定されている。敵モンスターにはすべて属性が設定されており,その弱点となる属性で攻撃すると1.5倍のダメージを与えられる。その属性をプレイヤーにもたらすものこそ「レイヴン」なのだ。レイヴンにも5つの属性があり,レイヴンを装備することで,その属性をキャラクターのものにできるのだ。レイヴンを使いこなし,常に有利な状況で戦うという戦略的なプレイこそスマホ版のバトルの特徴といえるだろう。
PvPについては,PC版もスマホ版も個人戦からチーム戦と,さまざまなコンテンツが揃っている。そのなかでもスマホ版は,最大50vs.50のギルド戦が楽しめる「神話の戦場」や,参加時にレベルが最大値に統一される3vs.3の「カイアの戦場」が実装されており,PC版以上にPvPに力が入っている。
●生活系コンテンツ
MMORPGといえばバトルコンテンツに目が行きがちだが,のんびりと遊ぶ生活系コンテンツも見逃せない要素だ。TERAの生活系コンテンツは,フィールドなどで素材を集める「採集」,素材を使った「製作」,そして「釣り」の3つがある。この中でもプレイに大きく影響がするのは,装備などの強化素材を作る「製作」だろう。PC版は,強化素材で装備を強化,さらに昇級させてパワーアップを繰り返していく。
スマホ版は,残念ながら製作系のコンテンツはない。強化についてはPC版と仕様が異なるものの,装備品のほかにレイヴン,幻獣などを強化/成長させられ,それによってキャラクターをどんどん強くできる。また,プレイを進めることで達成した「レコード」によって「称号」を得られ,それをセットしてキャラクターをパワーアップできるといったPC版同様の強化要素もある。
PC版とスマホ版の「TERAらしい」部分にスポットを当てて紹介してみたが,同じ「TERA」でありながら,似ている部分は意外と少ない。同じなのはノンターゲティングバトルと,公共の乗り物がペガサスということぐらいで,まったく別のゲームであることが分かるのではないだろうか。それを踏まえて,それぞれのタイトルがどんな人向けなのかを考察してみたので,ご一読頂きたい。
さまざまなクラスでアクションを楽しみたいならPC版がお勧め
TERAといえば,アクションだ。ノンターゲティングバトルをいかに楽しむかという視点で見ると,ダイレクトに操作できるPC版に軍配が上がる。やはりアクションという面では,スマホ版のバーチャルパッドは入力精度的にもどかしいところがある。加えて13のクラスと7つの種族を組み合わせることで,自分好みのキャラクターを作り,思いのままに動かせるのもMMORPG的に大きなポイントと言えるだろう。
加えてPC版のアドバンテージとなるのがグラフィックスの美しさだろう。雪に囲まれた渓谷や砂漠地帯,神秘的な森とお城など,美麗なグラフィックスで目を楽しませてくれるのも,PC版ならではだ。さらに,飛行できる乗り物に乗ることで,それらを上空から眺められる。
いつでもどこでも手軽に遊べるスマホ版は可愛らしくて頼りになるレイヴンもいる
スマホ版のもっとも大きな特徴は,やはり場所を問わずにプレイできることだ。バッテリーさえあれば,会社の休み時間や電車の中だって遊べる。それを手厚くサポートしてくれるのが,クエストのオート進行機能やオートバトルだ。ボス戦やダンジョンの攻略,クエストの会話シーンなど手動で介入する必要もあるが,それら以外は勝手にゲームを進めてくれる便利さは手放しがたい。ただしオートバトルは万能ではなく,とくにPvPでは圧倒的に不利(というか弱い)なので,使い分ける必要がある。
スマホ版オンリーの面白さとしては,レイヴンの存在が挙げられる。美麗なイラストと可愛らしい&カッコイイ3Dモデル,そしてバトルには欠かせないシステムとして,なくてはならない存在だ。より能力の高いレイヴンの入手先がガチャなどに限られるのが少々残念だが,ダンジョンで手に入れたアイテムを使って成長させ,成長が限界に至ってもそれを突破させることで,さらに強力なパートナーとして一緒に戦ってくれる。レイヴンは,スマホ版の要(かなめ)となるシステムと言っていいだろう。
時間と場所に左右されず,いつでもどこでも楽しめるのがスマホ版の最大の魅力。MMORPGでネックになるパーティプレイも,オートマッチングですぐにメンバーが集まるので,短い時間でもサクッとプレイが楽しめる。気楽かつ手軽にMMORPGを楽しみたいなら,スマホ版を試してみよう。
両方遊べばより「TERA」の世界を歴史を満喫できる
PC向けMMORPGタイトルがスマホゲームになる場合,PC版の要素をスマホにうまく落とし込む形になっているものが多いと思う。しかし,「TERA」のスマホ版はバトルシステムこそ踏襲しているが,ストーリーを筆頭にまったく別のタイトルと言っていい。先行してリリースされたPC版を「本編」とするならば,スマホ版は「外伝」的な位置づけといったところだろうか。
となると,どちらを選ぶかという話ではなく,どちらが好みなのかという基準で選ぶしかなくなってくる。プレイできる環境を整えるのに少しハードルがあるが,ガッツリと骨太なアクションを楽しみたいという人には,間違いなくPC版をオススメする。
場所を選ばずプレイでき,クエストもバトルもオートでサクサク進められる手軽さならスマホ版だ。個人的にはPC版を遊んでいるプレイヤーにこそスマホ版を触ってみてもらいたいと考えている。同じ世界の過去と現在を見比べられる楽しさは,シリーズもの(PC版とスマホ版はそういう関係ではないのだが,ニュアンス的には近いだろう)のだいご味だ。同様にスマホ版をプレイし,PC版の世界に興味を持つこともあるだろう。
情けない話ではあるが,万言費やしたところで実際にプレイした感覚には到底敵わない。これを読んだ人のプレイ環境は千差万別だろうが,本稿を読んでどこか引っかかるところがあったなら,PCまたはスマホの「TERA」をプレイしてほしい。
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