プレイレポート
英雄なき戦場を生き抜く,シビアなサバイバルアクション。「LEFT ALIVE」プレイレポート
本作の舞台となるのは,近未来の地球。黒海の近くにある「ルテニア共和国」は,突如として隣国「ガルモーニヤ共和国」に攻め込まれてしまう。ルテニアの防衛部隊はたちまち壊滅。焦土と化した街には武装した敵兵士が徘徊し,民間人も虐殺される地獄絵図が繰り広げられる。そんな中,ルテニアの新米パイロット・ミハイルと,元ガルモーニヤ兵士の警察官・オリガ,そして無実の罪を着せられたレオニードは,生き残るために行動を始める。この3人が,本作の主人公だ。
世界設定としては,「フロントミッション」シリーズの流れを汲んでいる。ただ,フロントミッションが人型機動兵器「ヴァンツァー」を主体としたシミュレーションであるのに対し,本作は主に生身の人間がサバイバルするアクションで,ストーリー的にも独立しているため,内容的にはまったくの別物と言える。
もちろん,シリーズを知っていれば,より楽しめるシーンもある。一時的にヴァンツァーに乗り込んで戦うこともあるし,「街の小悪党が,身寄りのない女性を悪徳医師に斡旋している」といった,トラウマものの“例のデバイス”を思い起こさせるシチュエーションも登場する。また,ゲーム中で閲覧できるデータベースには,知識があればニヤリとできる項目が用意されているので,いろいろとチェックしてみるといいだろう。
ブロック化した地域が終わりなき紛争を続ける「フロントミッション」の世界。南に「O.C.U.」,東に「U.S.N.」といった,ファンにはお馴染みの国旗が見える |
本作の舞台は,黒海の近くにある「ルテニア共和国」と「ガルモーニヤ共和国」。北にある「ザーフトラ共和国」の「ドミトーリ公社」が作ったヴァンツァーが使用されている |
無数の死を繰り返す,サバイバルアクション
占領されてしまったルテニアの街には敵兵が徘徊しているうえ,要所にはヴァンツァーまで置かれており,警備体制は万全だ。真正面から攻撃しようものなら一瞬でやられてしまうため,敵兵を避け,隠れて行動することがメインとなる。いわゆるステルスアクションに近いゲーム性なのだが,本作の主人公達は隠密行動の達人では“ない”のがポイントだ。
多くのステルスアクションでは“敵の背後から近づき,無音で葬り去る一撃必殺技”が用意されているが,本作の主人公達はそうした技を会得していないため,行動には危険が伴うことになる。加えて,敵兵が密に配置されているだけでなく,相手の武器の火力と連射性能が高いため,見つかろうものならすぐにハチの巣にされてしまう。とくにヴァンツァーが絡んでいる場合が悲惨で,「高火力の機銃がかすってサックリとあの世行き」なんてことが当たり前に起こる。
これに加えて,アイテムが有限であることが難度の上昇に拍車を掛けている。回復アイテムはやや貴重だし,自然回復も制限付き(体力ゲージが5つのブロックに区切られており,ブロックを越えて回復はしない)だ。1つのステージに数か所,全回復させてくれる機械があるが,それも3回しか使えない。
もちろん,銃弾や爆薬も有限だ。敵兵を倒したり,街にあるアイテムボックスを漁ったりすれば補充はできるが数は少なめで,これらが尽きた時の心細さといったらない。「金属パイプ」や「シャベル」といった近接攻撃武器を使えば,ダッシュ攻撃と追い討ちで比較的安全に攻撃できるが,それも敵が複数いると難しい。近接攻撃武器の耐久力も有限で,壊れるとダメージが激減してしまうし,代わりの品もそうそう手に入らない。主人公が持てるアイテムの重量にも制限があるので,予備を持ち歩くのも難しい。いつ敵の増援が来るかと怯えつつ,壊れたスコップを振るって必死に敵を殴り続けるようなことも起こるのだ。
街にはヴァンツァーが置かれていることもあり,乗り込むことが可能だ。機銃一発で敵兵を吹っ飛ばし,逃げた者はローラーダッシュで轢き潰す……と暴れまわれるが,ヴァンツァーの武器にも弾数制限があるうえ,敵もヴァンツァーで迎撃してくるので,油断は禁物である。
ここまで書けばピンときている人もいるかもしれないが,本作はかなりの“死にゲー”だ。敵の配置を覚え,しっかりと物資を集め,最適な行動を取って,絶望的な状況を生き延びていかなければならない。
クラフトでガジェットを作り出し生き抜け
厳しい戦場で生き抜くには,街に落ちている素材アイテムを「クラフト」で組み合わせ,「ガジェット」を作り出すのが重要だ。ガジェットは敵に投げつける「投擲」,体力を回復し状態異常を治す「治療」,地面に仕掛けて敵を陥れる「罠」の3系列が存在し,プレイヤーを助けてくれる。
例えば,頻繁に手に入る「ウォッカ」は「布」とクラフトすれば「火炎瓶」になり,敵を倒すのに役立つ。ただし,同じ組み合わせで,体力が減り続ける「出血」を治す「止血パッチ」も作れる。攻撃に回すか,それとも回復に使うかなど,限られた素材アイテムをどのように活用するかのマネジメントが重要なのだ。
また,日常生活ならゴミ箱へ捨てるだけの「空き缶」も,本作では重要なアイテムである。そのまま投げれば敵兵を音で釣り出すことができ,罠へ誘い込む際などに重宝する。「爆薬」とクラフトすれば簡易手榴弾の「爆発缶」になるし,「発煙筒」があればもうもうと煙を噴く「発煙瓶」に早変わり。また,爆薬と「信管」「携帯端末」をあわせれば,無線で任意に起爆できる「リモート地雷」となる。当たり前の日用品が不正規戦の装備に早変わりする,リアルな設定がたまらない。
ちなみに,爆発缶や発煙瓶は「フラググレネード」や「スモークグレネード」と同様の効果を持つが,敵兵の反応が異なっている。グレネードだと敵兵は警戒態勢に入ってしまうが,缶だと武器に見えないためか,そのまま巻き込まれてくれるようだ。なかなかに芸が細かくて面白い。
ただでさえ主人公は不利な状況なので,生き残るには,ガジェットの効果的な活用が不可欠だ。マップの中には警戒が厳重な区域が存在しているので,そういったところではガジェットを惜しみなく投入しよう。空き缶や空き瓶を放って音で注意を惹いた隙に横をすり抜けたり,敵兵が群れているところに火炎瓶を投げ込んで逃げたりと,敵を倒すのではなく,自分が生き延びるための戦い方を徹底するのだ。
また,イベントで敵兵の出現位置が分かっている場合は,予め地雷を敷き詰めておいたり,トラップのワイヤーを張り巡らせたりして戦力を削ることができる。やられてしまっても,得られた知識を次のプレイに活かし,戦いを有利に運ぼう。
現在の目的をしっかり把握しておくのも重要になる。敵兵を全滅させなければならない場合は,弾薬やガジェットを使い切る勢いで激しく戦うしかない。しかし,“特定の場所へたどり着ければいい”時はその限りではない。極端な話,発煙瓶を炊いて敵兵の視界を遮った後,煙の中を走り抜けてしまってもいい。後ろから撃たれたり,煙の中で方向を見失ったりするなど,華麗なステルスとはかけ離れた泥臭いプレイになるだろうが,それでも目的さえ達してしまえば勝ちなのである。
シビアであるが故に,心が揺さぶられる
本作をプレイして印象的だったのが,難度がシビアであるが故に感情を揺さぶられるという点だ。ゴミ箱に入って身を隠していたら,敵兵に見つかって引きずり出されたり,センサーを光らせつつ飛ぶドローンが間近に迫ってきたりと,行動は常にスリルを伴う。NPCとの会話も一筋縄ではいかず,こちらの対応によって運命が変化するのが恐ろしい。マズイ返答をして機嫌を損ね,アイテムを奪われるくらいは序の口。中には自棄を起こして自決してしまう者もいて,戦場のシビアさが心に染みる。
マップには民間人がいる場合もあり,シェルターまでうまく誘導してあげなければならない。民間人は無力で,戦闘したり隠れたりするのは不可能なため,予め経路上の敵を排除しておく必要がある。もちろん,敵兵に見つかると攻撃されてしまい,体力が無くなると死んでしまうのだ。できれば出会った全員を助けてやりたいが,物資や体力に余裕がない場合もある。そんな時は,民間人を見捨てて自分だけが脱出するしかない。実に後味が悪いが「生き残るために仕方なかったんだ!」と自分の行動を正当化できてしまうのも,難度が高いがこその体験といえるだろう。
ステージの終了時には,NPCへの対応や民間人の救出といったプレイ内容を評価される。初見でベストクリアするのは難しいため,腕を磨いて再挑戦だ。
本作は,高い難度とシビアなゲーム内容から,人を選ぶ作品であるのは確かだ。ヴァンツァーを指揮して戦うようなこともないので,フロントミッションやロボットモノといった期待を高めてプレイすると「あれ? 思っていたのと違う?」となるかもしれない。
そうした点はいったん置いたうえで,あくまで本作は「生存を第一に戦い抜く,高難度の新作サバイバルアクション」と考えて挑むのがオススメだ。試行錯誤を繰り返して,より良いプレイを目指していくことにやりがいを感じるゲーマーは,ぜひ絶望的な戦いに身を投じてみてほしい。極限の状態から生き延びたときや,苦しい中で民間人を救えたときに得られる達成感や安堵感が,本作の大きな魅力であることが分かるはずだ。
「LEFT ALIVE」公式サイト
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(C)2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: YOJI SHINKAWA (KOJIMA PRODUCTIONS Co., Ltd.)
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