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【Role&Roll連動企画】マフィア梶田と遊ぶ「シャドウラン 5th Edition」。前日譚となるシナリオ「運命の輪は回らない」のリプレイ本編をお届け
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印刷2019/04/27 10:00

プレイレポート

【Role&Roll連動企画】マフィア梶田と遊ぶ「シャドウラン 5th Edition」。前日譚となるシナリオ「運命の輪は回らない」のリプレイ本編をお届け

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 2019年4月15日に掲載した「予告編」に続き,テーブルトークRPG「シャドウラン 5th Edition」リプレイ企画の本編をお届けする。
 マフィア梶田のTweetから始まったこのリプレイ企画。前回キャラクター紹介までを済ませた参加者の面々だが,ここで改めて,登場するプレイヤーキャラクター(と中の人)を紹介しておきたい。

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マフィア梶田役・マフィア梶田
4Gamerでお馴染みのフリーライター。テーブルトークRPG初級者で,「シャドウラン」はもちろん初プレイ。サイバーパンクのイメージは「ブレードランナー」「攻殻機動隊」,そして「電脳コイル」。あと「FFVII」はサイバーパンクに入りますか?
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ライトニング役・金子彰史氏
ゲームデザイナー/アニメ脚本家。代表作に「ワイルドアームズ」「戦姫絶唱シンフォギア」など。「D&D」赤箱時代からのテーブルトークRPGプレイヤーだが,ここ20年くらいはブランクがあったとか。「シャドウラン」は初プレイで,サイバーパンクのイメージは「サイレントメビウス」
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MG役・蝸牛くも氏
ライトノベル作家。代表作に「ゴブリンスレイヤー」など。テーブルトークRPG歴15年のベテランで,シャドウランは大好物だそうだ。サイバーパンクのイメージは? と聞かれ,あえて「ガンヘッド」を挙げる強者。ほんとに20代ですか?
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シスター役・カナイセイジ氏
アナログゲームデザイナー。代表作に「ラブレター」など。テーブルトークRPG歴は20年ぐらいで,シャドウランは富士見書房版(第二版)をがっつり遊んでいたという。5th Editionは今回が2度目のプレイ。サイバーパンクのボドゲといえば,やっぱり「アンドロイド:ネットランナー」かな
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教授(プロフェッサー)役・西上 柾氏
「シャドウラン」翻訳チームの一人で,システムデザイン/データチェック/翻訳などを広く担当。シャドウラン歴は長いが,一番遊んだのは未訳の第三版だとか。サイバーパンクなら「JM」で決まり
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朱鷺田祐介(GM)
テーブルトークRPGデザイナー/ゲーム翻訳/フリーライター。「シャドウラン 5th Edition」翻訳監修。テーブルトークRPG歴36年。サイバーパンクは「ニューロマンサー」から「アリータ」(銃夢)まで,幅広く捉えたい(※画像は「Role&Roll Vol.171」掲載のレポートコミック「スピタのコピタの!」より)

 詳しいキャラクターの背景などは予告編で参加者達が詳しく語っているが,本稿の3ページ目にも,今回使用したプレイヤーキャラクターのデータを掲載している。本作のルールブックを持っていないと読み解くのは難しいかも知れないが,参考にしてもらいたい。いずれにせよ,本稿は予告編を読んでいることが前提となっているので,そちらを未読の人は回れ右して,以下のリンクから読んでおくのがオススメだ。

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 シャドウランに興味津々なマフィア梶田を助けるため,5人のランナーが立ち上がった。TRPG専門書籍「Role&Roll」とのコラボによる本稿は,2018年9月に発売された「シャドウラン 5th Edition」を紹介する誌上リプレイだ。本稿はその予告編として,キャラクター紹介までを掲載している。オークのサイボーグ戦士となったマフィア梶田の運命やいかに?

[2019/04/15 10:00]
 また本記事はテーブルトークRPG専門書籍「Role&Roll」とのコラボ企画であり,現在発売中の「Role&Roll Vol.175」には,今回プレイしたシナリオ「運命の輪は回らない」の後日譚シナリオが掲載されている。テーブルトークRPGファンは,こちらもぜひチェックしてほしい。

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オープニング:運命の輪は回らない


朱鷺田:
 かくして,物語が幕をあけます。「シャドウラン」ではたいていの場合,フィクサーと呼ばれる仕事の元締めから仕事を持ちかけられるところから話が始まります。

以後,発言は以下のとおりキャラクター名で表記します。

マフィア梶田→マフィア梶田
金子彰史氏→ライトニング
蝸牛くも氏→MG
カナイセイジ氏→シスター
西上 柾氏→教授(プロフェッサー)
朱鷺田→GM

ルールブックより,中華系エルフのフィクサー
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GM:
 君達は,中華系エルフのフィクサー「三枚舌のヤン」に呼ばれ,夜がふけてから集まってきたフリーランスのランナーだ。彼は表の職業として中華料理店を経営しており,「飯を食いに来なよ」という呼びかけが仕事の依頼の符丁になっている。店の奥にある個室が毎回打ち合わせに使われるが,今回通された個室には大型の中華テーブルが二つあって,君達は手前側の席に座らされる。
 ヤンが「まあ,まずは飯を食え」というと,君達の前に次々と料理が置かれていく。「装備は持ってきたな?」

MG:
 ちょっとドヤ顔でクロームの片腕を見せながら,天然物を選んで食べましょう。

ライトニング:
 拳を構えて見せる。

マフィア梶田:
 ショットガンを指さした後,「なんでエルフ(ライトニングのこと)が来ているんだ?」と不機嫌そうにつぶやきます。

シスター:
 お祈りしてます。

教授(プロフェッサー):
 サイバーデッキをARでいじっていますから,言葉もいらないでしょう。

GM:
 奥のテーブルには,アラブ風の衣装を着たダークエルフが座っている。タロットカードをめくりながら占いをしているようだ。その手前には背の高いアジア風の女性が。武器は持ってないが,恐らくボディガードだろう。

シスター:
 この世界の占いって当たるんですか?

GM:
 高位の魔法使い,いわゆるイニシエイトになると,啓示術門の上位魔法でおぼろげな未来のヒントを得ることはできるね。

シスター:
 なるほど。ちょっと彼女を〈霊視〉してみましょう。

GM:
 では,〈霊視〉技能+【直観力】の数だけダイスを振ってください。5と6の目が多いほど成功の度合いは高くなります。

 〈霊視〉は,オーラを見ることで相手の情報を読み取ることのできる魔法使いの技能だ。技能の判定(本作ではテストと呼ぶ)には,使用する〈技能〉+【能力値】の合計値(ダイス・プール=DPと呼ぶ)の数だけダイスを振り,5と6の目が出たダイスの数(これをヒット数という)を数える。このヒット数が目標値以上ならば成功,下回っていれば失敗となる仕組みだ。

マフィア梶田:
 あ,出目を合計するわけじゃないんだ。分かりやすい。

シスター:
 〈霊視〉技能が4,【直観力】が5なので9個振ります。(コロコロ)3ヒットですね。

GM:
 まずボディガードを見ると,ヒトに馬のオーラが重なって見える。この人物は一見ヒューマンに見えるが,実際には馬のシェイプシフター,人間に変身できる知性的な動物であることが見てとれた。さらにアデプト(魔法による身体強化能力者)でもあるので,格闘の達人かもしれない。

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マフィア梶田:
 ああ,ウマ娘。あるいはフレンズですね。

GM:
 エルフの占い師は,マンデイン(魔法が使えない一般人)のように見えるが,繰っているタロットカードが微かに魔力を帯びているので,そんなハズはない,ということがあなたには分かる。

シスター:
 えっ,オーラの偽装ができるほどのガチな魔法使い? 3ヒットで見通せないということは最低でも第四階梯(イニシエーションの第4段階)かあ。この人が依頼人ですか?

GM:
 そのようだよ。ヤンが女に声をかけます。「お望みどおり,火力と魔法だ」。ヤンがそう言うと,エルフの女は微笑んで,「もうすぐ,運命が動くわ」とつぶやいた。と同時に,ヤンのコムリンク(通信端末,スマホのようなもの)が震えだした。

マフィア梶田:
 なんだなんだ。

GM:
 ヤンが,コムリンクで話す声が聞こえる。「どうした? ……おいおい。分かった,こっちでなんとかする」。そして女をちらりと見てから,君達を振り返ってこう告げた。「……別件で動いていたチームがドジ踏みやがった」

MG:
 ドジ? まさか全滅じゃないよね?

GM:
「そのまさかだ。悪いがこっちの案件を先にさせてもらう。救助対象者がグールにさらわれた。奪還に向かってほしい」

マフィア梶田:
 グール!?

GM:
 ヤンが事情を説明してくれる。失敗した別チームの任務は,アレス重工から五行公司に移籍するナノテク技術者を保護する,よくある抽出任務――つまり企業のヘッドハントのサポートでした。ヘッドハントと言っても,この世界の大企業は国家よりも強大なので,どちらかというと亡命に近い行為です。ちなみにアレス重工はアメリカ系の世界的な重工業企業で,ゼネラル・モータースやNASAなどを吸収して大きくなった会社だね。

マフィア梶田:
 あ,俺そこの武器使ってますわ。

GM:
 社長が元ランナーという噂もあって,アレス重工は君達の御用達メーカーでもある。そもそもシアトルの警察組織であるPMSCのナイト・エラント自体,アレス傘下の会社だしね。一方,五行公司は香港の海運事業から発展した中国系企業だが,金融や貿易に加えて魔法にまで通じ,昨今さまざまな分野へと手を伸ばしつつある。

MG:
 ミツハマは絡んでないのよね? 資質「対人ストレス」があるから,ミツハマ関係者には会いたくないのだけど。

GM:
 今のところ,ミツハマは関係ないようだよ。で,ヘッドハントした技術者自身はさらに別のチームが抽出し,すでに港へ向かって移動中となったものの,彼の妻と娘が狙われてしまった。ダウンタウンで買い物をしている女性二人を連れて車に乗せるだけの簡単なお仕事だったはずが,通った路地裏がグールの狩場だったようだ。

ライトニング:
 それを自分達に奪還してほしいってことね。そいつの名前は?

GM:
 技術者の名前はリチャード・アダムズ。妻はイザベラ(31),娘はシャロン(9)だそうだ。「ナイト・エラントにはグール退治業者の駆除作戦ってことで話を通しておくから,多少のドンパチは問題ない。現場は近くだが,対象者の輸送のためにも車で行ってくれ」

マフィア梶田:
 ……幼女か,救わねば。ところで,そのグールってのはなんなんすか。

GM:
 シャドウラン世界のグールは,ヒト吸血鬼化ウイルス(HMHVV / Human Meta-Human Vampiric Virus)に感染し,ヒトから怪物になってしまった存在です。病気の一種なのである意味被害者ですが,ヒトを襲って食べてしまうので,ここUCASでは人権が認められていません。

教授(プロフェッサー):
 対象者がもうディナーになっていたら?

GM:
「夜明けまでならば,大丈夫」。占い師の女性がカードを手繰りながら口を開く。「失礼。ダイアン&AOS・フォーチュン・テラー・サービスのセミラミス・イグニスです」

マフィア梶田:
 ……なんかアサシンっぽい予感がしますねえ。

GM:
 ヤンが割り込んで念を押します。「彼女の話は後だ。オレの依頼はさらわれた二人の奪還。グールは皆殺しでいい。成功報酬で各自に1万新円」。そこでヤンは後ろを振り返り,セミラミスが話し始める。「そのついでに,一つお願いがあります」。

ライトニング:
 なんだなんだ?

GM:
「あなたがたが向かう先に,小さな箱がひとつあるはず。契約の箱(アーク)に似た小さな箱よ。箱と中身を持ち帰ってくれたら,1人あたり追加で5000新円支払うわ」


レッグワーク(情報収集)


 俺,マフィア梶田には仕事に関する哲学がある。
 仕事は断らないが,自分を安くも売らない。
 俺の命を的にして仕事を受けるのだから,金もしっかりもらう。

 そして,ストリートの警句を忘れない。

 ドラゴンには絶対関わるな。
 そして,エルフを信用するな。
 情報は命だ。

 仕事の内容が決まったら,突入前に情報収集するのが「シャドウラン」の基本だ。最初にやるべきことはネットワークであるマトリックスの検索。情報が足りないと思ったら,コンタクト(いわゆるコネ)に連絡をして情報をもらうこともできる。ただ場合によってはお金を取られることもあるし,もちろん裏切られる可能性もある。

マフィア梶田:
 世知辛い。

シスター:
 ええと契約の箱,ですって?

GM:
「ええ。中には1枚のカードが入っているはずです」。セミラミスがそう言うと,皆さんの目の前にARで写真が表示されます。映画の「レイダース/失われたアーク」に出てきたものによく似ている。同時に彼女の電子名刺も公開され,モロッコにある魔法企業のサイト情報がマトリックス経由で流れてくる。

ライトニング:
 箱は開けてしまっても構わない?

GM(セミラミス):
「開けても構わないわ。ただ,カードには触れない方がいいかもしれないわね。とくに覚醒者(魔法使いやアデプト)は」

シスター:
 名刺に書かれている名前や社名で何か分かるかな。ダイアン&AOS・フォーチュン・テラー・サービスでしたっけ。〈アルカナ〉技能で判定してみます。(コロコロ)よし,3ヒット。

GM:
 まず社名のダイアン・フォーチュンというのは現実世界でも有名な魔女の名前だね。魔術結社「黄金の夜明け」出身で,占いの達人だったそうだ。AOSはおそらくオースティン・オスマン・スペアで,魔王アレイスター・クロウリーの弟子として知られている。混沌魔術の始祖で,こちらも20世紀のアメリカ魔術界の大物だ。……ということをシスターは知っていた。

マフィア梶田:
 セミラミスって,バビロンの空中庭園を作ったんですよね。俺は詳しいんだ。

GM:
 そうだね。セミラミスは古代アッシリアの伝説上の人物で,夫を毒殺し女王として君臨したという逸話がある。

シスター:
 イグニスはラテン語で「火」。つまり,自分で「炎の毒婦」を名乗ってるってわけだ!

教授(プロフェッサー):
 ふむ。じゃあこっち(マトリックス)でも調べてみるか。まずは普通に〈コンピュータ〉で(コロコロ)。3ヒット。

GM:
 コーポレートサイトがあるね。魔法による未来予測技術を研究し,経済マーケティングコンサルタントとしてビジネス化しようとしている,モロッコの小規模な企業のようだ……という情報が皆さんのコムリンクに流れてくる。

MG:
 コムリンクってスマホみたいなものですよね。「教授,すごーい」って女の子っぽいスタンプを貼っておこう。

マフィア梶田:
 ……既読スルーだな。

GM:
 あと,この世界のWikipediaによると,セミラミスはプラハ大学魔法学部の卒業生という経歴です。恩師にあたる教授はグレート・ドラゴンのシュワルツコフ。この教授は,どうも運命に介入する研究をしている人物(?)のようだ。

シスター:
 Wikipediaに項目があるような人なんだ。

ライトニング:
 その情報は信用して良いのか?(苦笑)

GM:
 教授の名前からさらに情報を漁っていくと,いくつかの事実が引っかかってくる。
 最近ヨーロッパの魔法学会で,占いの精度向上技術が話題になっているらしいこと。教え子のセミラミスは,未来予知技術に関連する企業をいち早く立ち上げた人物として有名であること。そしてモロッコの魔術界の誰かが,最近魔力を持ったタロットを開発した噂があること。

シスター:
 それ,企業が興味を示しませんか?

GM:
 いいところに気がついたね。当然,魔法関係に熱心な企業が注目しています。具体的には,ミツハマの魔法事業部開発部,ドイツのゼーダー・クルップ重工,それからアズテクノロジーあたり。

マフィア梶田:
 出た,ミツハマヤクザ。

GM:
 ゼーダー・クルップ重工は十大企業の筆頭,すなわち世界最強の企業だね。ちなみにここの会長もグレート・ドラゴンで,ドジを踏んだ社員なんかは「社長のランチに招待される」という噂がある。アズテクノロジーは中南米の安い労働力を利用して,コンビニにあるような食品のほとんどを独占しているメガコーポだけど,背後にはアステカの流血魔法教団があると噂されている。

ゼーダー・クルップ重工のロフヴィル会長。画像は人間形態だが,もちろんドラゴン形態にもなれる(未訳サプリメント「Stolen Souls」より)
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教授(プロフェッサー):
 現物が手近なところにあるのが分かれば,そりゃヤツらだって血眼になるさ。

マフィア梶田:
 つまり早いもの勝ちってわけだ。襲ってきたグールどもの情報は何かないのか?

GM:
 それについてはヤンが教えてくれる。「やつらはダウンタウンの地下,アンダーグラウンドに隠れ住むグールギャングだ。名前は“デス・ロード”。臓器密売組織“タマナス”と付き合いのある連中で,多少の知恵は回るようだ。おそらく入口にマグロック(電子錠)ぐらいかけてるだろうよ」

ライトニング:
 「マッド・マックス」みたいな名前ね。

マフィア梶田:
 俺のマスターキー(ショットガンのこと)が火を吹くぜ。

MG:
「いざとなったら,この手榴弾で」。そしてチャンキー・サルサ効果で……。

※閉鎖空間で爆発物を扱った場合に適用される本作の特殊ルール。爆発のエネルギーが累積し,破壊力(ダメージ)が非常に大きくなる。

教授(プロフェッサー):
「やめろ!」 救助対象まで吹っ飛ぶわ(笑)。

GM(ヤン):
「リーダーはオルカスといって,トロールがグール化した奴だな。身長2m50cmぐらいで,コンバット・アックスを振り回すらしい」

MG:
 ドジったチームについては? 何か知らないの?

GM:
 ギャングに毛の生えたような連中だったみたい。一応,サムライっぽいのが2人と,呪文使いが1人。

シスター:
 なんか「ゴブリンスレイヤー」で全滅したパーティを思い出しますね。

教授(プロフェッサー):
 とか言ってる間に,〈コンピュータ〉の継続テストを。(コロコロ)よし,5ヒット。マトリックスに放ったエージェントプログラムが情報を手に入れてきた。

GM:
 継続テストに30分要したことにして,「デス・ロード」の根城の位置が確定できました。地下のバスターミナルの廃車置場が奴らの住処のようです。教授(プロフェッサー)がセキュリティカメラなどをハックしたので,内部の状況も確認できます。

「アンダーグラウンド」は,シアトルに実在する地下都市のこと。100年前の街並が残るこの空間は,1889年のシアトル大火の被害を受けたダウンタウンを再建するにあたり,地面をかさ上げしたことによって生まれたという。今は観光地化されているが,シャドウラン世界においては,差別されたオーク達がここに逃げ込んだ結果,オーク・アンダーグラウンドと呼ばれる危険区域になっている(シナリオ集「Sprawl Wilds」より)
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シスター:
 公式サイトとかないんですかね。かわいいグールがマスコットキャラになっていて「あなたは111111人目の来訪者です」みたいな。

GM:
 ああ,それ面白いね。じゃあ,このメンバーにはグール化したドワーフのハッカーがいて,サイトを運用してるってことで。名目上は「グールの人権運動団体」。

ライトニング:
 じ,人権運動?

GM:
 グールはウイルスで変化してしまった元人間だからね。かつては「病気に過ぎないのだから人権を守ろう!」という運動があり,救済のための法案が出たりもしましたが,結局廃案になって今は駆除対象です。

マフィア梶田:
 グールってそんな知性あるんだ。

GM:
 たいていのグールは獣のようになるけど,中には理性を維持している者もいる。公式NPCにも,ハンニベルというグールでハッカーのお姉さんがいるくらいだし。「デス・ロード」には,ギズモという名前のデッカーがいる。ちょっと能力値が下がってるけど,ギリギリ頑張っている。

マフィア梶田:
 だからサイトのデザインがダサいのか?

MG:
 ストリート・ドク(闇医者)のコンタクト(人脈)があるので,少し話を聞いておきたいですねえ。

GM:
 じゃあテスト(判定)してみよう。結果次第では裏切ることも……(コロコロ)ふむ。「ああ,嫌な噂を聞いたことがある。グールの中にもセレブな連中がいて,そいつらは女性の踊り食いを好むんだが……デス・ロードは最近,そいつらと取引してヒューマンの女性を生け捕っているそうだ」という情報が聞けた。

MG:
 こんな話が来ましたよと,コムリンクにペタリ。

ライトニング:
 嫌な話だけど,これで救助対象者が生きている可能性は上がったね。

教授(プロフェッサー):
 では急いで向かおう。俺のGMCブルドッグに乗り込んでくれ。6人乗りのバンだ。

マフィア梶田:
 俺は自前のハーレー・ダビッドソンでいくぜ。


突入,アンダーグラウンド


 俺はマフィア梶田。
 アンダーグラウンドに埋もれた廃車置き場は,懐かしさすら感じる場所だ。この薄暗さも,低光量視野を持つ俺達オークにとっちゃ気にならない。
 旧式のガソリンエンジン車両が混じっているのか,少し油臭い。
「左右に3人ずつ,奥にデカブツ,バスの陰にデッカー」
 教授の偵察ドローンが仕入れた映像情報が網膜に投射され,コムリンクのトロード経由で脳内に直接入ってくる。
 ショットガン「エンフィールド AS-7」を構えると,自動的に射線と着弾ポイント,残弾数,銃器のデータが網膜に表示される。スマートガン・リンク。兵士に欠かせないデータリンクだ。Wi-Fi経由で,温度や湿度など大気の情報まで手に取るように分かる。
 トリガーに指をかけると,散弾の着弾範囲がオーバーレイ。発射も神経信号でできるが,俺は引き金を引く方が好きだ。
 こいつは俺の相棒なんだからな。

※電極と超音波発信器を組み合わせた神経インタフェース。装着することで,専用の端子を埋め込まずとも脳とコンピュータとの直結が可能となる。

GM:
 バンとバイクに分かれて目的に辿り着いた皆さんは,「デス・ロード」の根城になっているバスターミナルの入口に立っています。扉はレーティング3のマグロックで閉ざされていますが……。

教授(プロフェッサー):
 ハッキングして開けました(過去形)。内部に偵察ドローンを送り込みます。

GM:
 ……という訳で,内部の状況が見えます。両側の通路に3人ずつグールがいます。皮のジャケットを着ている以外は,通常のデータです。奥まったあたりに,捕らえた獲物を保存するための医療用カプセルが数本,その手前でだらけている巨大なトロールがオルカスでしょう。バスの残骸を挟んだ反対側の奥でうずくまっているのがドワーフのデッカー,ギズモかな。

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シスター:
 サイト更新中なんだろうな。突入前に,強化の魔法をかけておきたいけれど,《完全透明化》と《反射増強》,どっちがいいかな?

教授(プロフェッサー):
 グールは二元生物だからオーラが見えるし,嗅覚も強化されている。残念ながら《完全透明化》は効果が薄いだろう。

※物理界とアストラル界(いわゆる精神世界)の両方を知覚できる生物のこと。

シスター:
 了解。《反射増強》をかけます(コロコロ)。4ヒット。【イニシアティブ】+4のイニシアティブダイス+2個になりました。

マフィア梶田:
 〈忍び歩き〉で少しでも奥に踏み込みたいですね。

GM:
 では〈忍び歩き〉でテストしてみよう。ヒット数次第でどこまで気付かれずに進めるか決まるということで。

 全員がダイスを振った結果,マップの4マス目までは気づかれずに進めることになった。さらに〈忍び歩き〉を「都市」に専門化しているライトニングは,壁に沿ってグールの近くまで侵入することに成功する。

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MG:
 私は回避能力が高いので,梶田さんと一緒にグールを引きつけます。

シスター:
 ライトニングの背後から射線を維持しつつ進む感じで。

教授(プロフェッサー):
 念のため,カメレオン・スーツ(光学迷彩服)を着て後に続きます。

GM:
 グール達は嗅覚が鋭いので,不意打ちまではいきませんでした。では,ここから戦闘ターン進行になります。皆さん,イニシアティブを振ってください。


 シャドウランの戦闘は,1ターンあたり3秒で進行する。
 まず全員がイニシアティブダイスの数だけダイスを振り,合計値(イニシアティブ・スコア)が高い順に行動。その後イニシアティブ・スコアから10を引き,まだプラスであるキャラクターのみ2回目の行動が行える。その後さらに10を引き……と繰り返し,出目次第では最大4回動くことも不可能ではない。

【イニシアティブ・スコアの結果】
ライトニング:22 / MG:21 /オルカス:21 / シスター:17 / マフィア梶田:17 / 教授(プロフェッサー):14 / グール(1〜6号):12 / ギズモ:11

教授(プロフェッサー):
 教授とかシスターとかマフィアとか,職業が名前のキャラクターが多いね。

マフィア梶田:
 ライトニングのことは,「カンフー」とか呼んでそう。

MG:
 じゃあ,私はゴーストと呼んで!

マフィア梶田:
 あんたは「お嬢」だな。


必殺の拳


 自分の名前はライトニング。もちろん通称。
 師匠がつけてくれた名前はあるけれど,一人前になるまでは,その名前は使わない。
 今はただ,この拳の一撃に命をかけるだけ。

GM:
 自分の手番では,単純動作2回もしくは複雑動作1回が行えます。うち攻撃は1回のみです。格闘などの近接攻撃は複雑動作,射撃はモードによって単純か複雑になります。
 ではスコアが22のカンフーことライトニングから。

ライトニング:
 4番のグールに突撃。拳で殴る!

 ライトニングは魔法で身体能力を強化した武芸の達人,アデプトである。
 通常のパンチは精神ダメージ(Sダメージ)しか与えられないが,彼女の拳による攻撃はアデプトパワー《殺戮の手》の効果により身体ダメージ(Pダメージ)となる。さらに《能力値ブースト【筋力】》を戦闘開始直前に使用したので,3ターンの間【筋力】が5から8に上昇。
 その拳のダメージは,ライト・ピストルを上回る。

GM:
 強化した【敏捷力】が8,拳に専門化した〈素手格闘〉技能が8,突撃で+2。薄暗がりですが,エルフであるライトニングは低光量視野を持つためペナルティはなし。ダイスを18個振ってください。

シスター:
 すごいシンフォギア感!

マフィア梶田:
 低光量視野なら,オークの俺も持ってる。

GM:
 種族の能力だね。エルフとオークは低光量視野を持ち,トロールとドワーフは赤外線を見ることができる。グールは視覚が劣化しますが,嗅覚が鋭いうえに二元生物なのでオーラも見える。

教授(プロフェッサー):
 ヒューマンですが,ヘルメットに低光量補正,赤外線補正,超音波センサーを入れています。

MG:
 素人のお嬢様なので,そんなところには気が回ってないという。

 かくしてダイスを振るも,ちょっと1の出目が多い。判定(テスト)では5と6をヒットとして数えるが,それと同時に振ったダイスの半数を超える1の目が出てしまうと,グリッチといって大変なことが起きる。いわゆるファンブル(大失敗)である。

ライトニング:
 グリッチまではいきませんでした。ヒットは合計7つ。

GM:
 ヒットには上限(リミット)がありますが,ライトニングの身体リミットは7なので全部とおります。グールの防御ダイス・プールは9個ですが……(コロコロ)3ヒットしか出ない。この差分の4がダメージに加算されます。「能力値ブースト」で【筋力】8になっているので,ダメージ値の8Pに4を足して12P。そのまま食らうと,コンディション・モニターを12マス埋めてしまう大ダメージです。

ライトニング:
 これ,自分で受けたら死ぬなあ(汗)。

コンディション・モニターは,いわゆるヒットポイントに相当する。身体へのダメージ(P)と精神へのダメージ(S)は別管理となっており,身体が0になると瀕死,精神が0になると気絶として扱われる
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GM:
 ダメージは装甲値+【強靭力】でテストを行い,ヒットの数だけ減らせます。「デス・ロード」のグールはちょっと賢くて革ジャンを着ているので,もともとの皮膚と合わせて装甲値は5。【強靭力】7なので12個振って(ジャラジャラ)……あれ1ヒットのみ!?

ライトニング:
 よし!

GM:
 11Pのダメージ……危ない。残り1マス。身体リミットを超えるダメージを食らったので,グール4号は転倒しました。ふう,いきなり撲殺されるところだった。ブーストしたアデプトの拳はシャレにならんわ。

 
  • 関連タイトル:

    シャドウラン 5th Edition

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