2020年3月26日,フィラデルフィア在住のゲーム開発者・Thomas Moon Kang氏が手掛ける新作ローグライクアクション
「One Step From Eden」 (
PC /
Switch )が,Humble Bundleから配信開始となった。
ゲームのプレイ画面を見る人が見れば察しがつくと思うが,本作は
「バトルネットワーク ロックマンエグゼ」 や
「Nuclear Throne」「Slay the Spire」 にインスパイアを受けて制作されたタイトルだ(
公式ブログ で公言されている)。
上記のタイトルはいずれも強烈な個性を持った作品だが,驚くべきことにその合体は功を奏し,β版でのプレイフィールは非常に良好であった。果たして正式リリース版で本作はいかなる進化を遂げたのか,本稿ではゲーム内容を改めて紹介しつつ,プレイレポートをお届けしよう。
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2019/09/17 21:22
立ちふさがる7人のライバルを撃破し,最後の希望“エデン”への到達を目指す
One Step From Edenの舞台となるのは,文明が崩壊した未来世界だ。プレイヤーは9人のキャラクターから1人を選んで,世界に残された最後の希望
“エデン” に向かって,7つのステージを踏破していくことになる。
各ステージは最大3ラインのルート分岐がある複数のエリアで構成されていて,最後にはボスが待ち構えている。
β版で2人だったプレイアブルキャラクターは9人に増加。それぞれ異なる初期デッキと武器,そして特別なパッシブ効果を持つアーティファクトを1つ所持している。最初はスタンダードな性能を持つキャラクター「サフロン」しか選べないが,ゲームを進めていくとキャラクターが開放されていく
同じキャラクターであっても,デッキやアーティファクトの構成が違うバージョンも存在する
各エリアで発生する出来事は,マップに書かれたアイコンから推測できる。最後に出現するボスの名前も表示されているので,到達するまでに準備を整えておこう。エリアの種類は以下の表のとおり。
バトル
敵対勢力との戦闘が発生。敵が多く出現するので,経験値を溜められる。
救難信号
バトルエリアに比べると敵の数も多くないので攻略しやすい。救助に成功すると,本作では貴重な回復手段やアーティファクトがもらえる。ただ,得られる経験値は少なめなので,どちらを優先するかは検討する必要がある。また,敵が強くなる後半では,体力温存のために,あえて救助を諦めて先に進むという手段もアリだ。
ハザード
敵の数が多く,民間人が混じっている場合もある。リスクが高い代わりに経験値も多く入手しやすい。
キャンプ
回復ができる。
ショップ
スペルやアーティファクトの購入,デッキ内にあるスペルの強化と削除ができる。クレジット(お金)が必要なので,しっかり貯めてから訪れよう。
トレジャー
敵対勢力として宝箱が出現する。規定時間内に宝箱を破壊すれば,アーティファクトなどが入手できる。
ミニボス
強力な敵対勢力が出現する。撃破に成功すればアーティファクトなどが入手できる。
赤く表示されているエリアでは強力な敵が出現する。自信がなければ回避して進もう
移動先を決定してエリアに侵入し,そこに敵対するユニットが存在していた場合はバトルが始まる。エリア内はそれぞれ4×4のタイルに区切られた自陣と敵陣が向かい合う形で構成されており,キャラクターが持つ
「武器」 と
「スペル」 を駆使して敵の一掃を目指すことになる。
武器はキャラクターごとに常に規定のものが使用できるが,スペルは2つのスロットにセットされている状況でしか発動できず,使用したら自動でスロットから外れてしまう。もう一度同じスペルを使うためには,デッキを使い切る(もしくは手動でリシャッフルを行う)ことで再構築しなくてはならない。
画面左下にある枠がスペルのスロット。カードゲームにおける手札のようなものだ
また,ほとんどのスペルは発動コストとして
マナ を必要とする。マナは時間経過とともに回復する仕組みなので,大技を発動するためにはそれなりの時間が掛かる。
リシャッフルにはそれなりの時間が掛かるが,その間にもマナは回復する。リシャッフル直前に強力なスペルを発動し,完了と同時に動き出すのが理想的な動き方だ
敵を撃破すると経験値が入り,レベルが上がると3つのアーティファクトから1つを選択して獲得できる。戦闘をこなすだけでも十分に価値があるので,残り体力と相談して,突破できそうなバトルエリアは可能な限り通過したい
エリアをひとつクリアすると,3つのスペルの中から1つを選んでデッキに加えられる……のだが,本作のキャラクターが持っている初期デッキはけっこう完成度が高く,考えなしにスペルをデッキに投入すると機能不全に陥ってしまう。β版の時点よりもスペルの種類が大幅に増えているため,「報酬をスキップする」という選択肢も常に頭の中に入れておこう。
デッキからスペルを削除するためには,保有している削除可能数を消費する必要がある。ゲーム開始時に1回分のストックがあるが,以降はショップで回数を購入しなければいけない。削除できる機会は限られているので,採用理由をよく考えながらカードを選ぼう
ショップではスペルの強化も行える。こちらも削除と同様に強化回数を購入する仕組みなので,事前に強化回数を買っておいて後から入手したスペルに適用することも可能だ
とはいえ,膨大なプールから必要なスペルをピンポイントで入手するまで粘るというのも建設的とは言い難い。そんなときは「フォーカス」を活用しよう。すべてのスペルには効果の傾向で,「ブランド」というものが設定されているのだが,必要な効果を持つブランドをフォーカスに設定することで指定分野のスペルが出現しやすくなるのだ。
以下にブランドごとの方向性とプレイの指針を簡単に掲載しておくので,これからプレイする人は参考にしてほしい。
ブランド
効果
Anima
3回ヒットするごとに100の固定ダメージを与える“凍傷”や,命中したタイルに持続ダメージを付与する“炎上”の2種類が持ち味。素直な性能のスペルが多く,同じタイプのスペルを集めればそれだけで強力なデッキが組み上がる。初心者にオススメのブランド。
Convergence
発動時に“トリニティ”と呼ばれる特殊なバフを自身に付与し,トリニティが2つ付与された状態で発動すると強力な追加効果を発揮するスペルを多く持つ。やや軌道が特殊なスペルが多いので,扱いには慣れが必要。そのほか,マナ回復やクレジットを参照するスペルもConvergenceの得意技だ。
Doublelife
リシャッフル時に特殊効果を発揮したり,スペルをコピーしたり,ノイズスペル「ジャム」を逆利用したりと,絡め手の多いブランド。組み合わせを前提に成り立つので,採用は計画的に。
Glimmer
ビームと光を象徴するブランド。斜めに飛んで壁で跳ね返ったり,ジグザグに進んだりと,威力が高いかわりにクセのある軌道を持つスペルが多い。ヒットさせれば強烈なダメージを叩き込めるので,移動不能系のスペルと併用するのがオススメ。
Hearth
発動時に“フロー”と呼ばれる特殊なバフをスタックさせ,スタックしたフローを使って強力な追加効果を発動できるスペルが多く組み込まれている。タイルを破壊して移動を制限したり,ヒット時に相手を移動不能にしたり,といったアクションはHearthのお家芸だ。
Hexawan
自動攻撃型のタレットや建築物の配置,既に設置されている建築物の利用を得意とするブランド。基本的に攻撃は敵味方の区別なくヒットするので,設置物を使用する時は射線に注意しよう。
Kinesys
相手を押しのけたり,移動させたりするスペルを多く保有している。Hexawanのスペルで配置した設置物も動かせるほか,炎上状態になったタイルに敵を放り込むなど使い道は様々。単体では機能しないことも多いので,序盤の採用は1〜2枚に抑えたい。
Miseri
受けるダメージを増やす状態異常“虚弱”や,一定時間ごとにダメージを与える“毒”を象徴するブランド。毒は重ねがけ可能なので,毒系スペルを揃えての持久戦も得意。
Phalanx
数値分のダメージを軽減するシールド(バトルが終了すると消滅する)をプレイヤーに付与したり,防御力を高めたりするのを得意とする。気軽にシールドを付与できるカードをデッキに1〜2枚ほど投入しておくと生存率がグッと上がるので,Animaと合わせて初心者にオススメのブランドだ。
Slashfik
単純ながら威力が高く,相手が“虚弱”状態の時に追加効果が発動するスペルを多く所持する。0マナで40ダメージを与える強力なスペル「クナイ」(使用後に廃棄)をデッキに加えられるスペルも多く,手数で圧倒する戦い方も得意。真正面からのガチバトルを楽しみたい人向けだ。
よく分からないうちは,とりあえず直接攻撃スペルが多いブランド「Anima」と,シールド系のスペルが中心となる「Phalanx」,攻撃を当てることに集中できる「Slashfik」などをフォーカスに設定しておくのをオススメする
各ステージの最後には,ショップキーパーを除くプレイアブルキャラクター8人のうち,プレイヤーが選ばなかった7人がボスとして出現する。撃破時に“トドメを刺すか否か”の選択を迫られ,これによって最終的に何が変わるのかは……ぜひ実際にプレイして確かめてみてほしい。
ボスはステージを2つクリアするごとに強化され,最大ランク4まで成長する。ランクが変われば,同じ行動であっても攻撃回数や効果が変化するので,攻略したことがある相手でも油断せずに戦おう
撃破後に見逃す選択をした場合,かつてのボスが以降の旅路を支援してくれる。かつて倒した敵が仲間として戦ってくれる,という胸熱展開が楽しめるというわけだ
Kickstarterのストレッチゴール(外部リンク )達成報酬として登場した9人目のプレイアブルキャラクター「ショップキーパー」は,フィールド内で彼女に戦いを挑んで勝利しなければ開放されない。ぶっちゃけめちゃくちゃ強いので,挑む時は覚悟して戦おう
高速かつ重厚な攻撃をくぐり抜ける快感と,トライアル&エラーの中で生まれる“気付き”
正式リリース版をしばらくプレイしてみた感触は,もともとの持ち味であったゲームスピードはそのままに,UI等のプレイアビリティに関わる部分が大幅に改善されているな,ということ。手に馴染むまでが大変なタイプのゲームだけに,足回りの強化によって“馴染むまでの時間”が短縮されているのは嬉しいポイントだ。
入手するスペルを選択する際には,そのスペルを使用した場合のプレビューが表示されるようになった。カードゲームのテキストを読むのに慣れていない人も安心だ
日本語訳の品質も良好。効果テキストは簡潔で分かりやすく,フレーバーテキストのジョークは日本人にも意味が汲み取れるよう,丁寧に訳されている
敵についても種類と組み合わせが増え,それに伴ってゲーム全体の難度も増したが,プレイしていて理不尽さを感じる事はなかった。というのも,本作の敵は素早く高密度な攻撃を仕掛けてくるものの,その攻撃パターンは割と明確に決まっている場合が多く,何度も挑戦するうちに突破口が見えてくるからだ。
例えば“死神型の敵は攻撃範囲が広いが,敵陣に戻る時にスキを見せるので攻撃中は無理に反撃しない”とか“槍持ち兵士の攻撃は上下に1歩動くだけで避けられる”とか,そういったノウハウを蓄積させることで,少しずつ被弾を抑えられるようになる。
各ステージのボスとして出現するキャラクター達も同様で,何度も挑戦を繰り返す中で攻撃パターンが身に染み付いてくる。今まで突破できなかった場面を無傷で乗り越えた瞬間の爽快感はなかなかのものだ。
敵の攻撃パターンの組み合わせ方も絶妙で,ほとんどの状況に被弾を回避する手段が用意されている。一見すると隙間のない攻撃に見えてもどこかに回避のヒントが隠されているので,何度も挑戦してそれを探し出すのだ
正式リリースで最も遊びの厚みが増した部分と言えば,やはり9人のプレイアブルキャラクターと,大量に追加されたスペルによる戦略の広がりだろう。β版の段階では基本的な攻撃スペルがほとんどだったのだが,正式リリースからは基礎性能の異なるキャラクターが多数登場したこともあり,さまざまな“絡め手”が有効に作用するようになった。
例えば,攻撃力が0でヒットした敵をプレイヤーキャラクターの前方4タイル目にテレポートさせる「アライン」は単体では使い道がない。しかし,特定の位置を攻撃し続けるスペルや,3回ヒットさせることで固定ダメージを与えられる“凍傷”を持つスペルと組み合わせることで,こういったスペルも高い威力を発揮してくれる。
相手のフィールドに地雷を敷き詰め,強制移動させるスペルを使って無理やり踏ませるなど,設置型・移動系の技にはさまざまな使い道が隠されている
キャラクターごとに初期デッキと武器,アーティファクトが異なる関係で,有効な戦略も変化する。そうなると採用するスペルの基準も変わるので,色々なキャラクターを使用することで,自然と今まで選ばなかったスペルの使い道が浮かんでくるのだ。プレイするたびに「この使い方ができるならあのキャラでも……」という“気付き”が無限に湧いて出てくるので,プレイの手がなかなか止まらない。
筆者は射線を合わせるのが苦手なので,毒や炎上に地雷といった狙わなくていいタイプのスペルをばら撒いて祈りながら回避に専念するスタイルが好み。アクションが苦手でも,こういった逃げ道が用意されているのはありがたい
自分の目の前にある設置物にシールドを付与する武器を持つヘーゼルは,タレット配置や強制移動系のスペルを駆使して戦うキャラクターだ。うまく立ち回れば,ガッチガチに強化した設置物の城に隠れながら戦うこともできる
もちろん,1ゲーム内でスペルやアーティファクトを入手する機会は限られているため,強いビルドを思いついたからといって確実にそれを組めるとは限らない。
ただ,先述の通り敵の攻撃パターンを覚えておけば初期デッキでも結構頑張れるので,もし「強い組み合わせが出るまで粘る!」と決意した場合であっても根性で突破するのも不可能ではない。限られたスペルの削除回数を温存するために,初期デッキで我慢しつつ強力なスペルを求めて先に進むか,とりあえず目の前に提示されたスペルをデッキに組み込んで急場を凌ぐかはプレイヤーの判断次第だ。
ゲーム中に出現するスペルは,キャラクターと同じようにゲームを繰り返す中でアンロックされていく。基本的に後から開放されるスペルはクセが強いものが多く“後から開放されるスペルだから強い”といったことはない
そんなこんなの試行錯誤を続け,筆者はだいたい7〜8時間ほどで最終ステージのボスまで辿り着くことができた。とはいえ,いまだ戦略を確立できていないキャラクターや,未開放のスペルとスキンも残っている。オフライン限定ではあるものの,2人で協力してクリアを目指すCo-opモードや,規定のデッキを使用して戦う1対1のPvPも残っており,まだまだ遊び尽くせていない。
スキンは単に色や装飾品が変わるだけでなく,ポーズやアクションからガラッと変化する。個人的にはレヴァのSFスキンがお気に入り
β版の段階ではコンセプト重視の作品かと思えた本作だったが,正式リリースでゲーム全体のボリュームが増し,それぞれの要素が複雑に絡み合って,遊び続けるほどにゲームプレイのモチベーションが湧く,実に“ローグライクな”作品へと進化を遂げていた。正直なところ簡単なゲームではないが,トライアル&エラーとデッキ構築の楽しみを知るゲーマーはぜひ試してみてほしい。
ゲーム内でストーリーはほとんど語られないが,キャラクターのちょっとしたやり取りから関係性が見えてきたりもする。こういった仕掛けのおかげで,色々な組み合わせでボスと戦ってみたくなる
このシルエットは,公式Twitterアカウントでコラボが発表されていた「CrossCode」(Tweetリンク )の主人公・レアのスキン。今にも「やぁ」と挨拶してくれそうだ
PvPでは構築済みのデッキを使って,2ラウンド先取したプレイヤーの勝利となる。いちプレイヤーとしては,ぜひオンライン対戦の実装を願いたいところだ