プレイレポート
「Death Come True」プレイレポート。既存のミステリーアドベンチャーゲームとは一線を画する小高和剛氏の新境地
本作は「ダンガンロンパ」シリーズでシナリオを手掛けた小高和剛氏がシナリオ&ディレクターを務めるタイトル。実写映像とインタラクティブ性を融合させたゲームデザインが特徴で,「これは,映画なのか?ゲームなのか?」というキャッチコピーを掲げている。本郷奏多さん,栗山千明さん,森崎ウィンさんら豪華キャストが出演していることでも話題となっている。
今回,そんな「Death Come True」をリリースに先立ちプレイする機会を得たので,プレイレポートをお届けしよう。なお,本稿の内容はiOS版でのプレイに準拠している。
目覚めたらホテルの一室。記憶のない主人公
まずはストーリー概要を簡単に紹介しておこう。とあるホテルのベッドで突如目覚めた主人公・カラキ マコト(本郷奏多さん)は,それまでの記憶を失っており,テレビのニュースに目をやると,自分が連続殺人犯として指名手配されている。そして,浴室には気を失っている見知らぬ女性の姿も……。ショッキングかつ理解不能な展開から「Death Come True」は幕を開ける。
冒頭部分は脱出ゲームを思わせる展開。キャラクターだけではなくプレイヤーにすら何の情報も与えられないので,マコト同様,まったくの白紙の状態からゲームはスタートするのだ。
初っ端からプレイヤーを謎の渦に誘い込む展開は,小高氏のセンスが光るシナリオと言えるのではないだろうか。
決して逃れられない「死」から得られるもの
ゲームシステムは,ムービーパートと選択パートに大別できる。
ストーリーは実写ムービーで進行し,重要な局面に差し掛かると選択肢が登場するので,適切と思われるものを選んでゲームを進めていく。操作方法は,選択パートで行うスワイプと長押しのみというシンプルさだ。チュートリアルも用意されているが,正直,見なくてもすんなり入り込めると感じた。普段ゲームに慣れ親しんでいない層でも十分に楽しめそうだ。
本作を本作たらしめる要素の1つが,「逃れられない死」と向き合わなければならないこと。例えば,冒頭で警察官がマコトの部屋を訪ねてくるのだが,初見ではどうあがいても死から逃れられない。
既存のアドベンチャーゲームとは明らかに異なる展開に,「死を受け入れるしかないのだろうか?」と違和感を覚えつつストーリーを進めるわけだが,ゲームオーバーを重ね,再びベッドから目覚めた際,死ぬ前の記憶が残っていることに気づく。
本作では引き継がれた記憶を頼りに物語を進めることが重要なポイントとなっており,ただ選択をするだけでは,状況を打破できない。死ぬことによって得られる情報を有意義に使うことが大切なのだ。
つまり必然的なゲームオーバーが存在しており,場合によってはゲームオーバーがネガティブなものにはならない。タイトル名通り,「死」を繰り返しながら真実に迫る展開が「Death Come True」の醍醐味であり,既存のアドベンチャーとは一線を画す部分と言えるだろう。
筆者もエンディングに到達するまで何回も死を経験したが,死を重ねるたび徐々に真相に近づいていく高揚感は本作ならではの魅力と感じた。
ちなみに,ゲームオーバーになるとベッドで目覚めるシーンから再スタートするわけだが,場面によっては冒頭部分が強制的にスキップされ,選択肢の直前から始まる。つまり,ゲームオーバーになったからといって振り出しに戻るわけではなく,ストーリーとしてはちゃんと前に進んでいるというわけだ。ただ,筆者は最初そのことに気が付かず,“ゲームオーバー=振り出し”だと勘違いしてしまっていた。
しかし,ゲームを進めて行くうちに,ゲームオーバーすらも小高氏の手の内だったと知った時は,「やられた!」という思いと同時に,やはり本作がただのアドベンチャーゲームではないと分かった。良い意味でプレイヤーをあざむいてくる「Death Come True」の片鱗を見た瞬間だった。
個性山盛りの濃厚なキャラクター陣
「Death Come True」を語るうえでは,魅力的な登場人物たちのことに触れないわけにはいかないだろう。
主人公のマコトは,序盤こそ焦りの感情が出ていたが,次第に冷静さを取り戻し,高い洞察力と行動力で困難に立ち向かう。その立ち居振る舞いはまさに主人公のそれであり,ゲームを進めるうちに彼のイメージは大きく変化していくだろう。
マコトと行動を共にする特殊捜査課の女性捜査官,サチムラ アカネも見逃せない。持ち前の身体能力や推理力を発揮して,捜査官ならではの活躍を見せてくれる。最初はマコトを疑ってかかっていたが,徐々に心を開いていく過程も見どころ。ストーリーを進めるうえで判明する彼女の過去も,本作をよりドラマティックにしている。
アカネと同じく,特殊捜査課の捜査官であるクジ ノゾム(森崎ウィンさん)も良い味を出している。一見すると軽いノリの性格だが,実績に裏打ちされた自信が垣間見えるエリート。ただ,その一方で何を考えているのか分からない不透明な部分もあり,次の行動が読めない。
梶 裕貴さん演じるホテルのフロントも独特の存在感がある。実は物語のコア部分に深く関わる重要人物だ。
淡々とした口調から真意をうかがい知ることはできないし,敵なのか味方なのか,それすらも定かでない。しかし,そのミステリアスさが魅力だ。個人的に,エンディングでの彼のセリフにはグッとくるものがあった。ぜひプレイして確かめてほしい。
クセモノ揃いの本作だが,クルシマ ネネ(山本千尋さん)は断トツでぶっ飛んでいる。殺人マニアで,連続殺人犯のマコトの大ファンを自称するという危ない女性。マコトを盲信しているふしがあり,一つ扱いを間違えるととんでもない行動をしでかしかねない。その狂気ぶりに関しては,筆者も身を持って知ったので,彼女に関する選択は慎重に行ってほしい。
ダンガンロンパのファンはもちろん,意外性に富んだミステリーが好きな人には掛け値なしにオススメ
実写映像とインタラクティブ性の融合という,自身の新境地を切り開いた小高氏の最新作「Death Come True」。濃密かつ尺もある映像部分は,クオリティが非常に高く,映画と言っても過言ではない。そして,映像の中で幾度となく描かれる主人公の「死」と,それを持ってしてプレイヤーが考え,選択し,真実に近づいていく様はまさにゲームである。こうして書くと,まさにキャッチコピー通り「これは,映画なのか?ゲームなのか?」とジャンルを決めるのが悩ましくなるが,筆者個人としては「映画でもあり,ゲームでもある」と言いたくなる作品だった。
インタラクティブなムービーゲームは,珍しいゲームジャンルではあるが,操作方法はシンプルなうえに,価格も手ごろなので,手に取りやすいのも特徴の1つだ。本稿を通じて,この謎めいた物語の真実が気になった人は,ぜひプレイしてみてほしい。
「Death Come True」公式サイト
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