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[TGS 2020]インディーズゲームの選考会「センス・オブ・ワンダー ナイト 2020」レポート。最優秀賞は「A Space For the Unbound」
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印刷2020/09/25 23:04

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[TGS 2020]インディーズゲームの選考会「センス・オブ・ワンダー ナイト 2020」レポート。最優秀賞は「A Space For the Unbound」

 東京ゲームショウ2020 オンラインのインディーズゲームイベント「センス・オブ・ワンダー ナイト 2020」の最終選考会の模様が,本日(2020年9月25日)配信された。
 センス・オブ・ワンダー ナイトは,毎年東京ゲームショウに出展しているタイトルの中から特に優秀で創造的なゲームデザインやアイデアを持つタイトルを表彰しているイベントで,今年で13回目を迎える。

※画像は配信映像をキャプチャしたものです
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 オンライン開催となった今年は,「選考出展」の80タイトルからファイナルへと駒を進めた,8タイトルのデベロッパたちがeXeField Akibaで実施された最終選考会でプレゼンテーションを行った。本稿ではその模様をレポートしていこう。

司会進行はゲームジャーナリストの新 清士氏とマザボ・イザベル氏が務めた
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審査員の面々。左から吉田修平氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント インディーズ イニシアチブ 代表),駒形一憲氏(TSUKUMO執行役員 営業企画部長),高橋建滋氏(NPO法人オキュフェス),北山 功氏(神奈川電子技術研究所代表)

ワイプ左から,小林信重氏(東北学院大学),Juan Gril氏(Gametapas Founder),Ramon Nafria氏(Videogame Ninja: Trusiga)
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例年は会場でオーディエンスがピコピコハンマーを振るい,音の大きさで反響を見て大賞(Grand Audience Award)を決めていたが,今回はSNS投稿や生配信のコメントで反響の大きさを見る形になった
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ゲームに込められた思いを開発者自らがプレゼン


 今回のファイナリストたちのうち,日本発のタイトルは2つ。オンライン開催ということもあってか,例年よりも国際色豊かな面々が名を連ねた。以下,プレゼンテーションの内容を交えて8タイトルを簡単に紹介していこう。

最終選考に残ったファイナリストたち
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●「Infini」 Barnaque(カナダ)
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 プレゼンテーションのトップバッターを務めたのは,“サイケデリック・パズルAVG”「Infini」を手掛けたDavid Martin氏。自らサイケデリックと称するだけに非常に個性的なグラフィックスが目を引くが,それ以上に特徴的なのが画面のループ拡大縮小を使ったシステムだ。
 本作は自由落下する自機を操り,ゴールへ導くのだが,行く先には壁や障害物が待ち構えていることが多々あり,一見どうやってもゴールできないように思えるコースも存在している。しかしそういったコースも,画面右端に到達すると自機が左端から出てくる性質を利用したり,画面を拡大して邪魔な障害を取り除いたりしてあげると,うまく進めるようになる。

自機が右端から左端に出てくる性質や,画面に表示されているものにしか当たり判定がなくなる性質を利用してコースを走破していくのが,「Infini」最大の特徴
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上下左右だけでなく,奥に表示されているレイヤーに進んでいくという立体的なコースも
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 「Infini」について,審査員の吉田氏は,「一目見ただけで好きになった」「シンプルな操作性ながら,指と頭を両方使わないとクリアできないので,パズルとしてもよくできていました」と絶賛していた。

●「ElecHead」 生高橋(日本)
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 2番手の「ElecHead」は,光がなくなった世界で漏電しているロボットを操作し,研究所の奥に進んでいくアクションパズルゲームだ。ロボットから流れる電気は,床や壁を伝って研究所内のさまざまなギミックを発動させてしまう。ギミックは助けとなることもあるが,時には障害となることもあるので,状況を確認しながら電気のオン/オフをどのタイミングで切り替えていくかが攻略のカギとなる。

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 また,漏電しているロボットのパーツは頭の部分のみで,ゲームが進むと頭だけを切り離せるようにもなる。これによってパズルの解法パターンが複雑になり,ゲームに深みが生まれているのだ。開発者の生高橋氏曰く,「2つの意味で頭を使うビリっとしたひらめきが求められるゲーム」とのこと。

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 審査員の北山氏は,「『触っただけで(仕掛けが)動く』という誰も思いつかなかったアイデアを掘り起こしてきたところが凄い。ゲームのアイデアは出し尽くされた時期もあったが,皆が今まで目を向けていなかったものはまだまだあるのではないか」と唸っていた。

●「カニノケンカ -Fight Crab-」 カラッパゲームス(日本)
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 「カニノケンカ -Fight Crab-」のプレゼンテーションでは,カラッパゲームスの大貫真史氏が本作のアイデアがどのように出てきたかを交えてゲーム内容を紹介した。

 カニノケンカは,カニ同士が殴り合う格闘アクションゲームとしてSNSを中心に話題を呼んでいるタイトルだが,大貫氏はこれまでにも「ACE OF SEAFOOD」や「NEO AQUARIUM」といったカニや海産物が戦うゲーム10年近く作り続けてきている。
 しかし,カニノケンカを作るにあたっては,「そもそも格闘アクションを作るのに題材がカニである必要があるのか」という悩みがあったという。そこで,本作では「カニの形を大事にする」というコンセプトのもと,体力制ではなく,ひっくり返したら勝ちといったルールを作ったり,カニの体格や形状にあわせて個性付けを行ったりしたそうだ。

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Switch版ではJoy-Conをまるでカニのハサミのように振るってプレイできる
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 審査員の高橋氏は「コンセプトの面白さから思わず投票してしまったが,プレゼンを聞くと見た目だけではない面白い要素がいっぱい詰まっている」と語っていた。

●「Nimbatus - The Space Drone Constructor」 Stray Fawn Studio(スイス)
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 「Nimbatus - The Space Drone Constructor」は,さまざまなパーツを組み合わせて自分だけの宇宙ドローン作るゲームで,もともとは2013年に開発者のArno Justus氏が個人的な趣味で作り始めたものだったという。その後にKickstarterで出資を集め,2020年5月14日にフルバージョンがリリースされた。

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 Justus氏は,Nimbatusにおいて重要な要素は「プレイヤーが自由に考えて遊べること」だと語る。というのも本作はドローンを作るだけでなく,さまざまなゲームやモノを作れるサンドボックス的な遊び方ができるからだ。プレイヤーの中には,○×ゲームや計算機を搭載したドローンを作った人もいるそうで,「楽しみながら実験し,ドローンで自己表現ができるゲームです」とJustus氏は魅力を語った。

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●「First Class Trouble」 Invisible Walls(デンマーク)
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 Niels A. Wetterberg氏がプレゼンしたのは,非対称型の対戦ゲーム「First Class Trouble」だ。
 本作の舞台はAIが反乱をおこした豪華客船。プレイヤーは人間とアンドロイドサイドに分かれ,人間サイドは人間を装っているアンドロイドを見つけて倒し,アンドロイド側は見つからないように人間を始末していく……といういわゆる人狼ゲームのようなタイトルだ。見た目ではアンドロイドと人間の区別はつかないため,プレイヤーたちはさまざま手を使って騙し合いを繰り広げ,チームの勝利を目指していくわけだ。

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Wetterberg氏曰く,歌って踊れるなど,対戦とは関係ないユーモラスな遊びが用意されているのもポイントだそう
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 審査員たちも興味を示していた本作だが,惜しむらくは対応予定の言語が英語のみとなっていること。審査員の小林氏も「ゲーム実況すると楽しそうなので,日本語版が出ればヒットしそう」とコメントしていた。

●「Arrog」 Leap Game Studios and Hermanos Magia(ペルー)
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 ペルーの開発者Mateo Alayza Moncloa氏が手掛けた「Arrog」は,生物の「死」という概念をテーマにしたアーティスティックなパズルアドベンチャーだ。
 Moncloa氏は以前から「人はなぜ白と黒の服に身を包んで死を悼むのか」「生前は笑いあっていた友達なのだから笑って別れることはできないのか」など,人々が捉えている「死」の概念にはもっと別の見方があってもいいのでないかと考えていたという。

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 「Arrog」はそんな「死」というものについて,皆に改めて考えてほしいという思いから生まれたタイトルで,ペルーの神話やギリシャの文化をモチーフにした描写が取り入れられているそうだ。

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「Arrog」というタイトル名に特に意味はないそう。これは先入観抜きにフラットな気持ちでゲームを遊んでほしいというMoncloa氏の思いがあるからだという
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●「Trash Sailors」 fluckyMachine(ポーランド)
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 7つ目の作品「Trash Sailors」は,ゴミだらけの海をいかだで旅する4人協力型のアクションゲームだ。カギとなるのは,ごみを海から拾って資源に変えるプロセスマシーンで,これを利用してとにかく長く航海することがゲームの目的だ。
 海の旅では,夜になれば視界を確保するために電気が要るし,ワニやサメにいかだを壊されれば修理する必要がある。修理や灯りの確保にはゴミから出る資源が必要なるので,トラブルになりそうなルートを避けていき,リソースを管理していくかが求められる。開発のPiotr Karski氏によると,9月中にはデモ版を出す予定もあるという。

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●「A Space For the Unbound」 Toge Productions(インドネシア)
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 トリを飾った「A Space For the Unbound」は,1990年代後半のインドネシアを舞台に主人公の少年と超能力を持った少女の関係を描くアドベンチャーゲームだ。不思議な赤い本を用いた「スペースダイブ」という能力で人々の意識に入り,深層心理に働きかけながらゲームを進めていく。

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 ゲーム内で描かれる美しい空やエメラルドグリーンの海は,開発者のEka Pramudia Muharram氏の子供のころに見た地元の風景を取り入れたものだそう。また本作は,新海 誠氏の作るアニメーション作品にも影響されているとのこと。男の子と不思議な女の子が紡ぐストーリーという構図も新海氏の作品から着想を得ているのかもしれない。

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 そして,8作品すべてのプレゼンが終わると,各賞の結果発表が行われた。結果は以下の囲みの通りだ。

●Best Experimental Game Award 賞金500USD
「Infini」

●Best Technological Game Award 賞金500USD
「Nimbatus - The Space Drone Constructor」

●Best Game Design Award 賞金500USD
「ElecHead」

●Best Arts Award 賞金500USD
「A Space For the Unbound」

●Best Presentation Game Award 賞金500USD
「カニノケンカ -Fight Crab-」

●Grand Audience Award 賞金3000USD
「A Space For the Unbound」

 オーディエンスの“ピコ書き込み”の盛り上がりによって選定される大賞・Grand Audience Awardには,「A Space for the Unbound」が見事に選ばれた。受賞したMuharram氏は「神に祈っていました。来年プレイしていただきたいと思っています。ありがとうございました」と感謝の気持ちを述べた。

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 今回の選評会では,審査員や視聴者の人たちが口々にプレゼンを聞きながら,「今年のセレクションはすごい」「革新的なアイデアが多い」とコメントしていたことが印象的だった。小林氏は「今年はオンライン開催だったこともあり,国際色豊かで,ほかの地域の文化を取り込んでいる作品も多かった。ファイナリストたちだけでなく,全体的に作品のレベルが高く,今後インディーがどうなっていくのか楽しみ」と語っていた。

 来年はどんな素晴らしいタイトルが見られるのか,今後のセンス・オブ・ワンダー ナイトに期待が高まる。

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「センス・オブ・ワンダー ナイト 2020」公式サイト

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