プレイレポート
推理サスペンスゲーム「Chicken Police」プレイレポート。“チキン”なバディ刑事が挑むハードボイルドアドベンチャー
プレイを開始すると,フィルム・ノワールと呼ばれるギャングなどが登場する犯罪映画の雰囲気が漂ってくるが,しかし,よくよく壁にかかった写真を見ると何か違和感を覚えることになる……。なんと,登場する者すべてが動物の頭を持つ獣人であり,主人公(主鶏公と言うべきか)はニワトリの頭を持つ引退間際のベテラン警察官なのだ。
前線を退いたはずの刑事が奮闘し,事件の解決に挑む本格サスペンス。深まる謎と独特の世界が織り成す本作のプレイレポートをお届けする。
<2020年11月6日14:55>
※日本語に対応したXbox One版「Chicken Police - Paint it RED!」の配信を確認しましたので,必要か所に追記しました
「Chicken Police」公式サイト
動物の頭を持つクロービルの住民たち
リアルな人間の体の上にリアルな動物の頭,そんな衝撃的なビジュアルに目を奪われる「Chikcken Police」。これがまたキャラクターの体格がすこぶるいいこともあり,事前情報を一切シャットアウトした状態でプレイした筆者は,この作品をギャグとシリアスのどちらに振りわけてプレイしたらいいものか相当に悩んだ。
しかし,しばらくプレイすると,これは渋くて軽快なかっこよさを詰め込んだハードボイルドなドラマであることが分かった。モノクロを基本とした世界の中で,一部に使用される赤や緑などの色が効果的に使われ,映画のような魅せかたと話の展開に,あっという間に夢中になってしまうのだ。
ちなみに,ゲームロゴの下に“Paint it RED!”と書かれているように,特に赤が象徴的に使われている。
舞台は色を失った独立都市国家・クロービルだ。すべてがモノクロの世界で,始めにレザーコートに身を包んだニワトリが一羽登場。彼が主鶏公のサンティーノ・フェザーランドで,親しい間柄の動物は彼をサニーと呼ぶ。
ベテランの警察官であり,バディのマーティとともに“チキン・ポリス”の名でクロービルの英雄として称えられている。ふたり(?)の活躍は小説になるほどの人気を博していたが,それも今は昔,マーティとはある事件がきっかけで疎遠になり,妻は数年前に出ていったきり。現在は引退を121日後に控えた哀愁漂う1羽のニワトリなのだ。
とさかに銃創があり,さまざまな死地を潜り抜けてきたことがうかがえる |
大晦日の夜,タバコを買いに出たサニーだが,財布を忘れてしまうという侘しい近況をさらに加速させるようなミスをする。もう部屋で大人しくしておこうと事務所であるホテルの一室に戻るが,想定外の訪問者が部屋の中に佇んでいた。そこからサニーの燻っていた日常に火が灯るのだ。ここからは,登場人物の会話を中心にゲームが進行していく。
すらりとした手足を持つ侵入者。施錠されていたはずの部屋になぜ? |
侵入者の名前はデボラ・イバネズ。女主人の使いでサニーに調査を依頼しに来たのだと言うが,肝心なことをしゃべらない。怯えているのか,隠しているのか,それともサニーを罠にはめようとしているのか……。なぜ,どうして,何をしに,という疑問を解決すべく,ベテラン刑事の才覚で彼女から情報を引き出していくのだ。
“話す”コマンドで他愛のないおしゃべりをしたり,部屋にあるオブジェクトを調べたりして少しずつ情報を仕入れていく。そして,何かを隠している相手には“質問(尋問)”という機能が使えるようになるので,知りたい情報を相手が話すように仕向ける。
方向性がわかっていても悩んでしまう選択肢 |
質問の良し悪しで警察官としてのランクも問われる |
オブジェクトにカーソルを合わせると目玉マークが現れる。そのままクリックすると,そのアイテムに関するマーティの独白や,一緒にいる動物から話を聞くことができる |
デボラの女主人の名前はナターシャ・キャッツェンコ。日々脅迫を受けており,それがだんだんとエスカレートしているということや,ギャングのボスであるイブン・ウェスラーの恋人であることが聞き出せた。彼女の依頼を受けたサニーは,大きなヤマになると踏んでかつての相棒・マーティに協力を頼むことになる。
デボラの女主人であるナターシャは,ツァーリ・クラブのオーナーであり歌姫。すべての動物を虜にするような妖しげな魅力を持つネコだが,何者からか脅迫を受けている |
サニーのバディであるマーティン・マクチキン。体格のいいニワトリで,銃を愛するがゆえにさりげなく散弾銃を持ち歩いてはサニーに咎められることも。合成肉を好んで食べる |
ナターシャ・キャッツェンコの脅迫事件を解決するためにチキン・ポリスのコンビが再結成! マーティがサニーを間違えて銃で撃ってしまって以来,疎遠になっていたが,そのことを笑い話にできるこの2羽の関係性がとてもいい。
マーティとともにナターシャの脅迫事件について調べ始めるサニー。まずは関係者への聞き込みからスタートする。さまざまな場所で動物と“話す”で会話をしたり,“尋ねる”で質問をしたり,オブジェクトを調べたりして情報を仕入れていく。
警察署の壁にある弾痕にまつわるエピソードからクロービルの成り立ちまで,小さなことから大きなものまでさまざまな情報を扱うことになるが,重要な情報はサニーがこまめに手帳にメモしているのでいつでも見返すことができる。
サニーは絵が上手い。英文にカーソルを合わせれば日本語訳された情報が表示される |
特定の事柄について尋ねることで,新たに聞けるようになる情報もある |
膨大な情報から手がかりを見つけ出すために,ときおり“調査”というパートが始まる。刑事ドラマや映画で,関係者や遺留品の写真,キーワードなどがホワイトボードに貼られているシーンがあるが,この“調査”はまさにそれにあたる。まだ点と点の状態である情報を繋いで線にして,考えをまとめていくのだ。
聞き込みで得られる情報は非常に多い。必要な情報を繋ぎ合わせて,答えを導き出す |
“容疑者”となっているが,ここで選ぶのは,今注目している情報の対象者。関係しそうな“手がかり”や“アイテム”を,マウスでドラッグして繋ぐとそこから推察できる情報がいくつか提示される |
正解を選ぶと物語が進む。間違えてしまっても選び直せるので安心して捜査を進められる |
こうして,ほしい情報を手に入れたら次の手がかりへと向かい,事件解決のために動いていく。しかし,サニーとマーティがあたったこの事件は,調べれば調べるほどに判明していくことも多く,そして謎が深まっていく。
また,捜査の途中でさまざまな“謎解き”に直面することがある。秘密が隠された金庫であったり,隠し扉のカギだったり,はたまた対象がとっさに隠した重要アイテムのありかだったりと,刑事の仕事は多岐に渡るのだ。
ダイヤルを回すとさまざまな動物が表示されるこの金庫を開けるためには正しい組み合わせをセットしなければならない。サニーの手帳もフル活用して,これまでに入手した情報の中から“4”という数字,そして“動物”というキーワードに関連するものを探していく |
クロービル市の紋章が見られる場所と言えば……という具合に謎を解いていくのだが,これが絶妙な難度で楽しい |
謎がうまく解けたときの爽快感は格別だ。必ずどこかに謎を解くためのカギがあるはずなので,刑事らしく注意深く周囲を観察することが必要になる。
しかし,捜査というものは予測不能なことが起こりがち。カーチェイスをしながらの銃撃戦や,複雑に縛られた縄をほどくなど……大事件に巻き込まれるとこんなことが起こるのかという事態が目白押しなのである。それぞれミニゲームのようになっていて,プレイが単調になりがちなアドベンチャーゲームのスパイス的な要素になっている。
このミニゲームは失敗してもやり直せるのだがなかなか歯ごたえがある。紆余曲折を経ながら,サニーとマーティは事件解決に向けて奔走するのだ。
複雑に絡み合った縄をほどくには…… |
警察署の地下には射撃場があり,そこで射撃の練習をすることができる |
ミニゲームでいちばん難しかったのはセクシーなキツネのお姉さんのチャックをあげるところ……何度も失敗し,謝りながらやり直させてもらうことに |
クロービルの個性的な動物たち
ここで本作で活躍する個性派動物たちの魅力を紹介していこう。プレイを始めて間もない頃は,主鶏公のサニーとバディのジャックは,体色が違うと言えど同じニワトリなので見間違えることも多かった。
しかし時間が経つにつれ,そして2羽が会話を重ねるにつれて,彼らの個性的な性格が見えてきた。その関係性に至るまでの出来事や一緒に過ごし時間に思いを馳せては胸がグッとなることもあり,そういった想像の余地が序盤からそこかしこに用意されている。
それは主鶏公たち2羽に限らず,「Chicken Police」に登場する動物たち全員がそうなのだ。
ウサギのルイス。サニーが滞在するホテルのオーナーであり,電話一本でサニーの頼みごとを聞いてくれる優しき友人。いろいろなところに顔が利く |
余談ではあるが,懐かしの黒電話が登場する。若い読者のために書いておくと,電話をかけるときは受話器を手に持ち,対象の番号に指をかけてダイヤルを下に回す必要があるが,本作では数字をクリックするだけでダイヤルを回してくれる。便利 |
情報屋のジップは顔に傷を持つアライグマ。チキン・ポリスとの間に因縁の深さやつき合いの長さといったものを感じる |
ハチドリのモニカは警察署の受付をしているが,実際は彼女が署を取り仕切っているらしい。サニーはモニカのことを天使だと思っている |
誰も彼もが流暢に洒落の効いた会話をくり広げる。こんなにウィスキーが似合うゲームはそうそうないだろう。
そして,衝撃的なビジュアルに目が生きがちではあるが,キャラクターのセリフにも注目してほしい。それぞれの性格に合ったセリフであることはもちろんだが,その動物に合った演出がされており,しっかりとこの「Chicken Police」の世界に根づいた言葉を話す。そう,動物の頭はとってつけた設定ではないのだ。
また人間が存在しないこの世界では,言葉の端々がそれ相応のものに変わっている。ここもこだわりが見えるポイントである。
年老いたコモドドラゴンのモートは目が見えない代わりに鼻が利く。キャラクターのセリフ(音声)はすべて英語だが,シューッという爬虫類独特のしゃべり方を随所に挟んでくる |
相手を罵倒する言葉にも才覚を感じる |
元々英語の作品であるが,セリフや説明文は日本語に訳されて表示される。英語版の雰囲気は分からないが,端々までウィットに富んだ小粋なやりとりが行われ,シャレの効いた皮肉が随所にちりばめられているこの日本語化は,どても素晴らしいと感じた。
また,さまざまな動物の話を聞いたりオブジェクトを調べたりすると,事件に関する情報だけではなくこの世界を知ることができる。これまで出会った人物や場所,事件の手がかりなどと同じように見やすくサニーの手帳に記されているので,うっかり見逃してしまっても,あとからゆっくりと見直せばいい。
ベテラン刑事の丁寧な仕事に感謝したい。
プレイを進めていくと,彼らが信仰する神は3体いることや,サニーはアヴィリヤ,キャッツェンコはストウォニア帝国出身であること,クロービルがどのように成り立ったか,そしてクロービルには巣箱と呼ばれる地域があって,そこには虫たちが住んでいることなどが判明していく。
捜査に有益な情報もあれば,そうでないものもあるのだが,この世界の奥深さを知るためには,時間の許す限りすべてのものに目を光らせていきたいところ。そして,知れば知るほどクロービルの闇は深いと感じられるのだ……。
徐々に明かされていく世界観に夢中になったり絶句したり,捜査で明かされていく事件の全容に驚いたり憤ったり,登場動物たちのスマートでユーモアあふれるやり取りに笑ったり頭を抱えたり……。つい仕事であることを忘れて楽しんでしまった本作。物語の骨子がしっかりしており,次から次に起こる捜査や事件に,プレイのやめどきがわからないぐらい夢中になれる。
腰を据えてじっくりとプレイしたくなる「Chicken Police」。ハードボイルドでスタイリッシュなかっこよさと動物味溢れるかけあいに興味がある人は,ぜひプレイしてみてはいかがだろうか。
「Chicken Police」Steamページ
「Chicken Police」公式サイト
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