プレイレポート
「ソルクレスタ」プレイレポート。3機の戦闘機を組み替え,多彩な攻撃で敵を撃つ!“クレスタ・サーガ”の最新作
ニチブツシューティングが令和の時代に復活!
「ソルクレスタ」は,1980年から展開されている「クレスタ・サーガ」の最新作だ。“ニチブツ”の愛称で知られた,ゲームメーカー・日本物産によるシューティングシリーズの系譜を受け継いでいる。
クレスタ・サーガは,ニチブツの「ムーンクレスタ」(1980年),「テラクレスタ」(1985年),「テラクレスタII マンドラーの逆襲」(1992年),「テラクレスタ3D」(1997)といった一連のシリーズに対し,プラチナゲームズが仮想戦史として統合する設定を行ったもの。
要するに“懐かしシューティングのシリーズを,今のソフトハウスが作った”ということになるのだが,プラチナゲームズとニチブツになんの関係もないことは,本作の総監督である神谷英樹氏が公式ブログで述べるとおり。
総監督 神谷英樹氏による「ソルクレスタ」誕生秘話
シリーズが持つ,“自機を合体・分離させることで,バリエーション豊かな攻撃を繰り出せる”という楽しさは,「ソルクレスタ」にも受け継がれている。
プレイヤーが操作する自機のヤマトは,3機の戦闘機が合体した機体だ。最初は壱號機でスタートし,「ソルエンブレム」を取るごとに,弐號機と参號機が出現して合体する。シールドが尽きた状態で被弾すると,合体している機体が失われていき,全滅すると1ミスになってしまう。
味方機と合体している間は,「合体」ボタンを押すことで,分離ができる。分離中に機体をうまく並べ,もう一度「合体」ボタンを押せば,合体パターンを変えたり,フォーメーション攻撃(合体ボタン長押し)の発動が可能だ。
合体パターンを変更すると攻撃も変化する。敵が沢山押し寄せてくるなら,壱號機を先頭にした拡散型の“トライレーザー”で撃ち漏らしなく仕留める。動きがトリッキーな敵には,弐號機を先頭にして追尾性能のある“エレキミサイル”でしっかり攻撃を当てていく。耐久力が高い敵が出てきたら,参號機の“ドリルショット”で大ダメージを……というように,状況に応じて,機体を組み変えると戦いを有利に運べるのだ。
壱號機を先頭にすれば,拡散するトライレーザーで攻撃 |
参號機が先頭ならば,貫通力のあるドリルショットを飛ばす |
分離状態で,機体を特定の形に並べて編隊を組めば,フォーメーション攻撃が発動する。逆三角形のときは,拡散弾を撃つ“デルタフォーメーション”。縦一列に並ぶと,旋回する弾を周囲に放つ“サイクロンフォーメーション”。L字の場合は,貫通ビームを放つ“ビームフォーメーション”など,編隊の形によって6種の特殊攻撃を使い分けられる。
つまり,分離状態からは「合体パターンを変えての再合体」と「フォーメーション攻撃」に派生できるのだが,この“バラして,組み替える”操作を,自分でやる辺りがポイントになる。
慣れないうちは,モタモタしてなかなかフォーメーションを組めなかったり,先頭にする機体を間違えたり,フォーメーションは組めたけれども方向が違ったり,別のフォーメーションを組んでしまったり……といったハプニングが起こる。
合体ロボットものの初期にあるようなエピソードを,自分でやってしまうということで,ちょっと恥ずかしくもおもしろい。
しかし,プレイに慣れてくると,これらの操作がスムーズに行えるようになる。敵の出現パターンに合わせて素早く合体と分離を繰り返し,群がる敵をフォーメーション攻撃で一掃できれば気分は爽快。分離中は,周囲の動きがスローになるため,これを利用して弾を避けることもできるのだ。
“敵弾の合間を分離で抜けて再合体”というムーブが決まれば,自分のプレイに酔うことができる。組み替えによる攻撃パターンの変化や,分離による回避というフィーチャーには,どことなく「ゲッターロボ」のテイストを感じさせてくれる。
「組み替えボタン」や「フォーメーション攻撃ボタン」の1押しではなく,自機の操作も必要な合体や編隊の変更は,インタラクティブ性も高い。操作量は増えるものの,慣れると気持ちよくなれるというわけで,上達のおもしろさを重視したシステムといえるだろう。
本作において印象的なのが,画面右側にある「ソルゲージ」である。敵を倒すと出現する「ソルメダル」を取ると増加し,攻撃力やシールドの増加,フォーメーション攻撃に使うリソース「SP」の最大値アップ,1UPといった戦局を左右する効果が得られる。
なかでも重要なのが「コマンドショット」の解禁だろう。これは,レバーを回して格闘ゲームのようなコマンドを入力すると,通常ショットとは別に左右攻撃や全周攻撃がリソース不要で発動できるもの。フォーメーションを使えないような状態でも,素早くコマンドショットを使えば側面や背後への迎撃が可能なわけで,これが使えるとプレイが有利になるどころの話ではない。
敵を倒しまくるほどプレイが有利になっていく仕組みで,“フォーメーション攻撃で敵を倒すと,ソルゲージが沢山増える金色のソルメダルが出現する”ことを意識しながら戦うと,さらにパワーアップが早くなるというわけだ。
そして,ここで重要になるのが,“ソルゲージは毎ステージ溜め直しになる”というルールである。アップしたSPやシールドの最大値,そしてコマンドショットも,次のステージに行けば使えなくなる。そして,ステージが進むほど敵の攻撃も激しくなるため,これに対応するべく,早期にパワーアップしたい。結果として,敵に食らいついてアグレッシブに戦うスタイルに誘導されていくのだ。
せっかく手に入れたパワーアップが,敵にやられたわけでもないのになくなってしまう。特に,便利なコマンドショットが使えなくなるという点では,好みが分かれるところかもしれない。しかし,スコアアタックをしない人であっても,上達することや敵出現パターンを覚えることを意識するようになるし,プレイの緊張感が維持されるという意味で,おもしろいルールといえるだろう。
画面右が「ソルゲージ」 |
「コマンドショット」はかなり便利。レバー1回転の「オールショット」は全周攻撃で,とっさの対空防御に役立つ |
溢れ出すニチブツ愛
神谷氏の“誕生秘話”にも書かれているが,本作は,熱い演出とニチブツへの愛に溢れている。母艦からの発進という,ニチブツシューティングのお約束を踏襲しつつ,ライバル機や謎の味方といった様々な演出がゲームを彩ってくれる。
特に,中盤以降の展開は,当時のファンなら胸に迫るものがあるだろう。音楽も,ニチブツ独特のサウンドがリスペクトされている。サントラのPVから,1面の「Neptune Storm」(動画の40秒ほどから)を聴けばお分かりいただけると思うが,もうなんというか,“ニチブツしている”のだ。
ネーム入れの際には,「テラクレスタ」の同じ場面で使われていた「Marching Raster」が流れるのだが,同作には,PSG版とFM音源版2種の基板があったことを踏まえて,両方のバージョンが収録されているのだから,なんともツボを押さえている。
ゲーム本体と同時配信される「ドラマティックDLC」を導入すれば,個性的なキャラクターたちがボイスの掛け合いで物語を展開する「ドラマティックモード」がプレイ可能だ。
シューティングゲームといえば,具体的な説明はないものの,意味ありげな演出で,プレイヤーを盛りあげたり泣かせたりしてくれるものが多い。しかし,本作のドラマティックモードでは,ここにキャラクターによる台詞などが入り,物語的にどういう意味を持つものであるかを教えてくれる。
例えばステージ2の場合,“半透明で姿はハッキリ見えないが,「テラクレスタ」の自機・ウイングギャリバーに似ている謎の機体”がこちらを援護してくれる。これがドラマティックモードだと,オペレーターアンドロイドが,「古い識別コードが受信された」とボイスで教えてくれた後に,謎の機体が飛来。全ステージをクリアすると,その正体が明らかになる……という具合なのである。
これまでのシューティングゲームファンとしては,意味深な演出に説明がない,なんてことはいつものこと。背景に謎の猫が出てこようが,月が割れようが,男女が絡み合うシルエットが表示されようが,考察こそはかどれど,説明不足と感じることはあまりなかったが,「ソルクレスタ」ではそうした部分にアプローチするモードがあるのだ。
画面中央付近にいる,謎の機体。「テラクレスタ」の自機・ウイングギャリバーに似ているようだが……? |
ヤマトに似た黒い戦闘機。あちらも分離攻撃を仕掛けてくるが,その理由とは……? |
オペレーターアンドロイドのレイチ(写真左)とレイニ(写真右)。ドラマティックモードに華やかさを添えてくれる |
もちろん,ドラマティックモードでも,様々な形でニチブツへのリスペクトが表現されている。詳しくは書かないので,ニチブツが好きな人は動画を見たりする前に,自分でプレイしてみてほしい。
特に注目なのが,全ステージクリア後に解禁される,設定資料閲覧モード「データベース」だろう。「ムーンクレスタ」から「テラクレスタ3D」という一連のシリーズを仮想戦史としているのだが,取り上げる事物が実にマニアックなのだ。
例えば,「テラクレスタ」の自機・ウイングギャリバーには,オリジナルのドット絵と,後に立体物として展開された際の2種類のデザインが存在するのだが,本作ではその両方を上手く仮想戦史に取り入れている。また,「クレスタ・サーガ」に含まれないニチブツシューティングのネタが拾われていたり,“「テラクレスタ」と「テラクレスタII」の敵はデザインの方向性が違うけどなんで?”という疑問に説明が付けられていたりと,とにかく濃い。
「テラクレスタ」と「テラクレスタII」で敵のデザインが違うことにも理由が付けられている |
パイロットの訓練用シミュレーターという設定の「テラクレスタ3D」。同作が,なぜか3機合体なのも,本作の自機・ヤマトにあわせたものであると解釈されている |
特にディープなのが,母艦関連である。もともと「テラクレスタ」のキービジュアルは,1982年頃に没となった,シューティング「コンステラ」のそれを流用したものである(2015年発行「シューティングゲームサイド Vol.11」36p,藤原茂樹氏インタビューによる証言)。そのため「テラクレスタ」では,“キービジュアルに出てくる機体と,ゲーム内に出てくるウイングギャリバーのデザインが全然違う”という現象が発生していた。
別ゲームのために描かれた絵なのだから当たり前だが,ここで神谷氏は,「コンステラ」は極秘に活動していた特務小隊として解釈。さらに,流用されたキービジュアルに描かれた機体のデザインを,地球奪回組織・テラクレスタの空母として採用し,同艦を「ウイングギャリバーを積んだコンテナを海底に投下,自身は特攻して消滅した」こととした。
この解釈なら,「テラクレスタ」のポスターに,ゲームに出てこない機体が描かれていても不自然ではない(ゲームが始まる前に消滅したのだから)。キービジュアルの流用が転じて,“歴史の影で戦った幻の小隊”と“自機を命がけで戦場に届けた悲劇の空母”のエモーショナルな物語となったのだから,愛のある解釈といえるだろう。
「コンステラ」のキービジュアルを「テラクレスタ」の母艦として解釈。ゲーム開始前の時点で消滅したため,ゲームに出てこなくても矛盾は生じない |
ニチブツがゲームを発表しなくなって約20年。2015年には,みなし解散の措置が取られており,いわば“消えたゲームメーカー”といっても差し支えないだろう。
その系譜を継ぐ新作が,リスペクトに満ちた形でこうして世に出たことは,ニチブツのゲームを遊んできた身としてはうれしいものがある。いつもゲームセンターの片隅にあり,独特のサウンドを鳴り響かせてきたのがニチブツのゲームだ。激しいシューティングから,フレンドリーな難度の脱衣麻雀まで,いつも楽しませてもらってきた。その中でも印象深い作品が「クレスタ・サーガ」として解釈・編纂され,一つの区切りを迎えたのだから感慨深い。
ニチブツテイストを受け継ぎつつ,現代的なテンポと,合体・分離にまつわるユニークなシステムで令和に現れたのが「ソルクレスタ」だ。毎回ソルゲージのパワーアップが初期化されるところと,フォーメーション編成にちょっと慣れがいるところは,人によっては好みが分かれるかもしれないが,どちらも理解するとおもしろい点ではある。
難度を低く設定すれば,シールドは自動で回復するし,ステージセレクトも可能なので,ひとまずはエンディングを見て,そこからやり込むという遊び方もできる。シューティングファンとニチブツファンはぜひ遊んでみてほしい。
ゲームの各所にはシークレットボーナスが隠されている。条件を探すのも楽しい |
「ソルクレスタ」公式サイト
キーワード
SOL CRESTA (C)PlatinumGames Inc. / (C)HAMSTER Co.
MOON CRESTA / TERRA CRESTA (C)HAMSTER Co.
SOL CRESTA (C)PlatinumGames Inc. / (C)HAMSTER Co.
MOON CRESTA / TERRA CRESTA (C)HAMSTER Co.
SOL CRESTA (C)PlatinumGames Inc. / (C)HAMSTER Co.
MOON CRESTA / TERRA CRESTA (C)HAMSTER Co.