プレイレポート
ディーゼルパンクなメカが闊歩するRTS「アイアンハーベスト コンプリートエディション」をプレイ。独特な世界を表現するビジュアルと演出が光る
本作は,ドイツの開発会社KING Art Gamesが手掛けるリアルタイムストラテジー「Iron Harvest」に,これまでリリースされたDLCを収録して日本語化した作品だ。各産業の自動化が進む近世の東欧をロボットが闊歩する独特な世界設定で話題を集めた作品が,ついに国内向けコンシューマデビューを果たす。
そんな本作を発売前にプレイできたので,そのプレイレポートをお届けしよう。なお,今回はPS5版を使用しており,本稿のボタンの表記などはそれに準じている。
「アイアンハーベスト コンプリートエディション」
公式サイト
戦禍が迫る東欧世界に,自然に混ざる巨大メック
3つのゲームモードで“1920+”の世界設定を味わおう
本作の世界設定は,ポーランドのアーティストであるヤクブ・ロザルスキー氏が作り上げたコンセプトアート“1920+”がベースとなっている。まずは,1920+と本作の関係を紹介しておこう。
1920+で描き出されるのは,謎の国家「ファクトリー」の出現により飛躍的な技術的発展を遂げた,20世紀初頭の東欧世界だ。農機具の自動化も完了していない牧歌的な田園風景に,ディーゼルパンクな巨大ロボット(メック)が当然のように存在する不思議な世界は,多くの話題と考察を呼んだ。
国内外で大きなヒットとなった重量級ボードゲーム「サイズ -大鎌戦役-」(以下,大鎌戦役)も同一の世界設定をベースとしており,登場する勢力の名称などが共通しているため,そちらで1920+の世界に触れた経験がある人も少なくないだろう。
1920+の世界の魅力の核となっているのは,なんといっても古めかしさと未来的なテクノロジーを融合させたビジュアル表現にある。本作もその魅力をしっかりと表現しており,独特な“文化と技術のズレ”を随所で感じることができる。
東欧の各国家もファクトリーの影響を大きく受けており,それぞれ現実とは異なる歴史を歩んでいる。その中でも本作にプレイアブル勢力として登場するのが,占領下からの独立を目指す「ポラニア」,革命の危機が目前に迫る「ロスヴィエト」,皇帝の力を復活させるために戦う「ザクセン」に,PC版ではDLCとして配信された新勢力「ユーソニア」を加えた4勢力だ。
いずれの勢力にもヒーローユニット(以下,ヒーロー)と呼ばれる物語の中核を担うキャラクターが存在し,キャンペーンモードのシナリオはヒーローたちの視点で語られることになる。
ボードゲーム「大鎌戦役」に登場するヒーローは,すでに“勢力の英雄”だったが,本作ではそんなヒーローたちが,いかにして英雄となったかを知ることができる。同じ1920+でも独立した物語を描いているため,単体でも十分楽しめるだけではなく,両作品を知ることでより深く世界設定を味わえる仕組みになっているのだ。
キャンペーンモード以外にも,ルールやマップを自由に設定してAIやプレイヤーと戦う「ミッション」や,オンラインでの対戦を楽しめる「マルチプレイ」などが用意されている。もちろん,これらの要素はキャンペーンモードをプレイしなくても選択できるので,最初から対人戦を中心に楽しむことも可能だ。
柔軟性に優れる歩兵,装甲と火力のメック
それぞれの利点を活かして敵勢力を制圧しよう
ゲームの勝利条件はゲームモードやシナリオによって異なるが,基本的にはマップ上に置かれた拠点を占領するか,相手の本拠地を破壊することが目標となる。プレイヤーは勢力を指揮するヒーローを中心とする軍勢を操作して,敵を殲滅しながらマップの支配を目指すのだ。
ゲームの流れは一般的なRTSと同様で,まずは資源を集めてユニットを生産する必要がある。ゲーム開始時点から一定量の資源を保有しているので,それらを使用して本拠地や兵舎,工房などを建設し,侵攻のためのユニットを生産していこう。
ユニットは大きく分けて,複数の人間で構成される「歩兵」と,野戦砲や重機関銃といった「兵器」,そして巨大ロボットである「メック」が存在する。それぞれに得手不得手があるので,状況に応じてうまく使い分けるのが重要だ。
歩兵は移動速度や射程距離に優れるほか,建物に駐留して戦闘したり,障害物に隠れて射撃をしたりと,地形を利用した柔軟な戦い方ができる。生産時に必要な原油が少ないため,序盤に数を揃えやすいのも大きな利点だ。ただし,体力が低いので範囲攻撃に巻き込まれると大打撃を受けやすい。
対する兵器とメックは,固有の特性を持つ強力なユニットだ。歩兵と比較すると体力が高いが,生産コストも相応に高く,歩兵と比較して移動速度が低い傾向にある。修理の際にも多少の資源を消費するので,数を揃えるのは難しい。
こうやって特徴を並べてみても,やはり単純な戦闘では兵器やメックが有利なようにも思えるが,実際に戦ってみると意外に弱点が多いことに気付かされる。
まず,重機関銃や迫撃砲,野砲といった兵器は強力な攻撃能力を持つが,攻撃範囲が限られている。そして兵器を固定する操作「展開」を行わなければ射撃できないので,側面や背面に回り込まれたり,接近されて白兵戦に持ち込まれたりすると無力化されてしまう。
メックは機体ごとに能力が異なるが,多くのメックは“背面からの攻撃に弱い”という特徴を持っている。強力な能力を持つメックは移動速度が低めに設定されていることが多いため,より背面からの攻撃を受けやすい。
使い捨てのグレネードを持つ「グレネーダー」や,小型の砲を装備した「対装甲ガンナー」など,歩兵側にも対装甲能力の高い兵種が存在するので,それらを活用すれば歩兵で強力なメックを撃退できる。歩兵側も単に敵に強力な敵から逃げるだけでなく,地形や状況次第では立ち向かう選択が正解になり得るというのが本作の戦闘の面白いところだ。
続いては操作システムについても触れていこう。コンシューマ版では,リング状のカーソルを動かしてユニットに指示を出していく。カーソルには,移動や攻撃など,その状況によって異なる最大4つのアクションが表示されるので,最良と思える行動を選択しよう。
それぞれのユニットは,兵種ごとに人数の異なる部隊単位で管理されており,[L1][R1]ボタンで操作する部隊を個別に選択できる。また,方向キーの各ボタンに複数部隊を割り当てたり,ワンボタンで画面内に存在する部隊すべてに指示を出す「全選択」を使ったりすれば,かなりシンプルな操作で大部隊を動かすこともできる。部隊を選択した状態で[R3]を押せば,選択した部隊にカメラが移動するので,マップ上の離れた位置にいる部隊同士を連携させるのも難しくはない。
ただ,さすがに10部隊以上を同時に管理したり,状況に応じて1画面内で各部隊に異なるアクションを実行させたりしたい場面では,コントローラでは操作が追いつかないことも多かった。
例えば「エンジニアに地雷の敷設を指示し,歩兵はカバーの裏で待機。メックとヒーローはエンジニアに近づく敵を攻撃する」といった,1画面内で各部隊に異なるアクションを実行させる必要のあるシーンでは,全選択を使いづらいためどうしても操作量が増えてしまう。慣れてくれば個別に指示を出せるようになるが,それでもPCと比較すると操作はやや煩雑に感じる。複数の部隊を1ユニットとしてまとめて管理できる機能(グループ設定)や,並べ替えを素早く行える機能があれば解決する部分なので,そこは今後のアップデートに期待したいところだ。
本作をプレイしてみて,ベースとなった1920+の不思議な世界設定を上手に解釈し,その魅力を最大限に引き出すビジュアルと演出の数々には驚かされた。ヒーローやメックといった世界設定の要素はしっかりゲームシステムに取り入れられており,またキャンペーンモードにも力が入れられているので,すでに1920+に馴染みがある人はもちろん,初めて触れる人もしっかり満足できる仕上がりとなっている。
ただ,前述の通り操作システムに少し気になる部分があり,初心者は少々取っつきにくいかもしれない。多様な特性を持つユニットを使いこなすことで有利に立ち回れるゲームシステムの基盤は非常に良質で,操作方法を掴みさえすればハマれる作品だけに,遊びにくさの点で投げ出してしまうのはあまりに惜しい。よりゆっくりとゲームに慣れるためにも,初心者はイージー(探求と発見)で経験を積むことをオススメする。
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(C)2021 Prime Matter, a division of Koch Media GmbH, Austria. Prime Matter and its respective logos are trademarks of Koch Media GmbH. Co-published in Japan by Exnoa LLC.(C)2021 Co-published and developed by KING Art Games. Iron Harvest and the Iron Harvest logo and KING Art Games are trademarks of KING Art GmbH. KING Art and their respective logo are trademarks of KING Art GmbH. World of 1920+ is a Trademark of Jakub Rózalski. All other trademarks, logos and copyrights are property of their respective owners. All rights reserved.
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