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印刷2023/09/16 00:00

プレイレポート

LA取材「Marvel’s Spider-Man 2」プレイレポート&インタビュー。ピーターとマイルズ,2人のスパイダーマンを操作する本作のストーリーに迫る

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントが10月20日に発売を予定しているInsomniac Gamesの“スパイダーマン”シリーズ最新作,「Marvel’s Spider-Man 2」のプレビューイベントが,カリフォルニア州ロサンゼルスにあるイベントスペースHudson Loftで開催され,本誌も招待されたので報告しておこう。

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 2018年にリリースされた「Marvel’s Spider-Man」は,Marvel Comicsから正式ライセンスを受けて,「ラチェット&クランク」シリーズで知られるInsomniac Gamesが開発したオープンワールド型アクションアドベンチャーゲームだ。スパイダーマンについては,いまさら説明する必要もないだろうが,ニューヨークのマンハッタンに暮らす若者,ピーター・パーカーが放射能実験を生き延びたクモに噛まれたことで特殊能力を得るという,1962年から始まるMarvel Comicsの人気作品である。街に蔓延る犯罪やさまざまな問題を解決しながら,背後にある徳企業やヴィランたちと戦うだけでなく,成功と挫折を繰り返し,孤独や責任を抱えるピーターという若者が,大人として成長していく姿がファンの間で大きな支持を得た。コミックのみならず,映画やアニメなどでも広く愛されるキャラクターである。

 「Marvel’s Spider-Man」はPlayStation独占タイトルとしても大きな人気を獲得している。具体的に公表されている数字では,同じ2018年にリリースされた「ゴッド・オブ・ウォー」が1950万本,2016年の「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」が1600万本,他には「The Last of Us Part II」(2020年),「Horizon Zero Dawn」(2017年),そして「Ghost of Tushima」がそれぞれ1000万本ほどなのに対して,「Marvel’s Spider-Man」は2000万本も販売したという。PlayStation 4向けの独占タイトルとしては最大のヒット作であることはあまり知られていない。

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Marvel's Spider-Man 2 Limited Edition仕様のPS5

 また,2代目スパイダーマンとして,“スパイダーバース”と呼ばれる別次元の主人公であるマイルズ・モラレスは,2011年に「アルティメット・スパイダーマン」として生み出されたばかりだが,こちらも大きな支持を獲得しており,最近では同じ世界を共有する師弟関係のように描かれることも多い。実際,このゲームシリーズでも2人のスパイダーマンがいるニューヨークがお馴染みとなっている。
 「Marvel’s Spider-Man 2」は,そのタグラインが「Be Greater. Together.」(さらに偉大になれ。共に。)というもので,これまで同様にシングルプレイ専用のオープンワールド型アクションアドベンチャーながらも,2人のスパイダーマンをとっかえひっかえプレイしていくというスタイルに仕上がっているのだ。


「Marvel’s Spider-Man 2」の基本的ストーリーを理解するためのネタバレ


 このゲームシリーズは,Marvel Comics監修のもとInsomniac Gamesによって開発されているので,「Marvel’s Spider-Man 2」のストーリーは前作,および前々作と非常に深く絡み合っている。そのため,本作がどんなゲームになるのかを説明するためには,どうしてもネタバレになってしまうことが避けられない。まずはそれをご了承いただき,気になる人は次のゲームプレイの解説まで読み飛ばしていただくのが良いだろう。

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 さて「Marvel’s Spider-Man」では,ピーターがマフィアのドンである“キングピン”ことウィリアム・フィスクを収容所送りにしてしまったばかりに,新たな中国系マフィアである“インナー・デーモン”と,そのリーダーであり陰と陽の二重人格を持つ“ミスターネガティブ”ことマーティン・リーと対峙する。そして,敬愛していたオクタヴィアス博士がオズコープのCEOである“ノーマン・オズボーン”に雇われ,徐々に狂気の奈落へと落ちていく様子が描かれていた。
 ノーマンは,息子のハリーの難病を治癒する方法を長年にわたって模索しており,一昔前に行った人体試験の失敗で超能力を獲得したのがマーティンだったという伏線があり,ゲームの終盤ではスパイダーマンのファンの一人に過ぎなかった高校生の“マイルズ”が,クモに噛まれてスパイダーのアビリティを獲得するに至っている。

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 そして「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」では,ピーターが恋人のMJとともにヨーロッパにバケーションを兼ねた取材旅行に行ってしまったという,クリスマスシーズンのマンハッタンが舞台となった。1台で500年もの長きにわたってニューヨークに電力を供給できるという装置を開発し,ハーレム地区に実験施設を建てたエネルギー企業ロクソンの武装警護隊に対し,ティンカラー率いる地下ハイテク犯罪集団であるアンダーグラウンドが抗争を繰り広げている。その中で,まだ2人目のスパイダーマンとしてニューヨークの市民からは十分に信頼を得ていないマイルズは,間違った判断をしてしまうことへ不安を覚え,誰を信用すべきかと思い悩む。

 この作品では,捕らえられていたミスターネガティブが脱獄し,マイルズの父である警官のジェファーソンが命を落とす原因になったことが,ゲーム中にマイルズの家族らによって語られている。母のリオ・モラレスはミスターネガティブの事件によって政治家を志すようになっただけでなく,自分の息子がスパイダーマンであるという秘密も知ってしまった。
 また,ノーマン・オズボーンの指示によりオズコープの科学者であったカート・コナーズ博士(ザ・リザード)が,ハリー・オズボーンを緑色の液体が詰まった生命維持装置から出すというエンドシーケンスだった。


ハリー,クレイヴン,そして……ヴェノムなど気になる敵味方


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 このような背景を受けて描かれているのが「Marvel’s Spider-Man 2」だ。今回のイベントでも,こうしたストーリーがどのようにつながっているのかは紹介されなかったものの,「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」から9か月後の世界が舞台になる。
 現時点では,ピーターがニューヨークに戻っていること,ピーターが大親友のハリーとともに長年の夢だった財団を立ち上げていること,ハリーの病気はまだ治癒されていないこと,そしてピーターとマイルズは,既にこなれた感じで一緒に活動していることなどが判明している。

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 面白いのは,ピーターは宿主のアドレナリンを餌にするという宇宙外来の寄生生物“シンビオート”と合成し,この時点ですでにパワフルだが火やソニックサウンド(反響音など)に弱いブラックスーツを身にまとっていることだ。
 今回メディア向けに公開されたプレイアブルデモに登場したハリーは一見すると元気そうで,映画シリーズとは異なりまったく陰がない優しそうな顔つきの青年であり,ピーターと共にコナーズ博士がザ・リザードにならないための血清剤を探している。シンビオートに寄生されてしまったピーターのほうが,どこかダークで闇落ちした雰囲気が出てきているのが不気味だった。

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 本作で,ヴィランとして登場するキャラクターの一人が,“クレイヴン・ザ・ハンター”だ。ロシア貴族クラヴィノフ家の末裔として生まれた富豪であり,何らかの薬品の力を得て強化されたパワーやスタミナを持つ。コミックシリーズでは何度もスパイダーマンの前に立ちはだかってきたキャラクターだ。
 コミックスでは孤高のハンターとして,強力な相手をつけ狙うが,本作においては大勢の部下たちを引き連れている。彼らのいで立ちは毛皮を身に着けたりフェイスペイントをしたりした野蛮人風だが,ドローンを駆使して,シャムシールのような三日月剣や銛,対スパイダーマン兵器と思われる電磁ネットなどで武装している。大きな体躯のタンク系や,銃器を手に高い場所に上っていくスナイパーなど,バリエーションに富んでいるやっかいなグループだ。

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 今回のプレイアブルデモは,ゲーム開始時点から10時間ほどやり込んだあたりとのことだが,クレイヴンから液体の入ったペンダントを奪ったピーターとハリーが血清剤を探し,コナーズ博士の元に向かったところ,コナーズ博士は失踪していた。代わりにクレイヴン・ザ・ハンターの一党が占領していたというのが導入部分だ。
 コナーズ博士が理性を失って,ザ・リザードに変体していくことが抑えられなくなることを心配するピーターは,マイルズの助力を得て居場所を探す。マイルズは大学受験をすべきか,“フレンドリー・ネイバーフッド”なスーパーヒーローになった運命を受け入れて街の犯罪者一掃に徹すべきかに悩んでいる。実際に今回のデモでも街のしがない音楽堂から盗まれた楽器やアートを取り返すなどという,地域に根差した政治活動を行う母から耳にした事件に精を出し,生き甲斐を感じ始めている。
 しかし,マイルズがクレイヴンのドローンをハッキングしてみると,コナーズ博士を含むさまざまな人物のリストが記録されており,クレイヴンがニューヨークのジャングルで無差別な狩りを行い始めたことを知る。そこでピーターはコナーズ博士の実家に向かい,さらに港近くの魚市場に向かったことを察知。クレイヴン一党がザ・リザードを追い詰めていく緊迫した状況の中,ピーターとマイルズはザ・リザードの居場所を突き止め,コナーズ博士としての理性を完全に失うのを阻止しようと試みるという,90分ほどのプレイが楽しめる内容になっていた。

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 ちなみに,「Marvel’s Spider-Man 2」のデモやメディア向けに公開された情報でも,シンビオートの権化であるヴェノムはどうなったのかということは全く公表されていない。ただ,7月に開催されたサンディエゴ・コミコン(San Diego Comic Con)では,ヴェノムの声優として1992年のホラー映画「キャンディマン」の悪役で知られるトニー・トッド(Tony Todd)さんが抜擢されたことがアナウンスされているので,ゲーム中でも重要な役どころで登場するのは間違いないだろう。
 さらに,まるで浮浪者のような身なりで警察の目から逃れて生きる,マーティン・リーの姿も以前の映像で公開されている。「Marvel’s Spider-Man 2」では過去2作品をつなぎ合わせるミスターネガティブのストーリーアークを完結させるとともに,未来のグリーンゴブリンになってしまうかもしれないハリーもしくはノーマン・オズボーン,そして新たなクレイヴンという宿敵を登場させるという,非常に複雑なストーリーになるようだ。

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ヴェノムとシンビオートの2つのパワーを使いこなすゲームプレイ


 「Marvel’s Spider-Man 2」では,ピーターとマイルズの2人のスパイダーマンを操作していくということは上記したとおりだが,マイルズは前作で覚醒させた生体電撃力「ヴェノム・パワー」を使い,ピーターは「シンビオート・パワー」を用いた戦闘を行う。少しややこしいが,マイルズの“ヴェノム”はヴィランのヴェノムから授かったパワーや名称ではなく,元からこういう名称だったそうだ。
 前作の基本的な操作方法である,□のアタック,Xのジャンプ,△のウェブストライク,○のドッジは継承されている。それと同時にL1ボタンを押すことで,それぞれのパワーアタックが繰り出されるというコンボアタックもほぼ同じであり,「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」をプレイしていた人ならピーターのシンビオート・パワーもそれほど違和感なく扱えると思われる。

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マイルズ
・ヴェノム・パンチ:ヴェノム・パンチを当てた敵から,円錐状にパワーが放たれ範囲内の敵にダメージを与える。
・ヴェノム・ダッシュ:敵の方向に向かってダッシュし,ヴェノム・パワーを爆発させて敵を投げ飛ばす。
・ヴェノム・ジャンプ:周囲の敵を空中に打ち上げ,敵をスタン状態にする。
・ヴェノム・スマッシュジョルト:スマッシュ中の敵に再度アタックを繰り出し,敵を空中に投げ飛ばす。

ピーター
・シンビオート・パンチ:触手のパンチを繰り出し,敵をノックバックさせる。壁などに近い場合は敵が張り付く。
・シンビオート・ストライク:敵に向かって複数の触手を繰り出し,敵を空中に持ちあげて落としつける。
・シンビオート・ブラスト:シンビオートの鋭いトゲを全方向に繰り出し,近くの敵にダメージを与えてノックバックさせる。
・シンビオート・プル:複数の敵を掴み,自分の方向に引き寄せる。

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 クレイヴンやそのミニオンの中には非常に大柄で力強いキャラクターも多いため,通常のドッジでは彼らの攻撃から逃れ切れない。そのため,敵の攻撃を察知してスパイダーマンの頭上にあるセンサーが赤く反応したら,素早く○ボタンに加えてL1ボタンを同時に押すという操作が必要になった。
 マイルズの「ヴェノム・スマッシュジョルト」とピーターの「シンビオート・プル」は,相手のヘビーアタックから身を守るために発動するパリー系アビリティだ。これを取り混ぜながら5〜6体の敵に囲まれてもクラウドコントロールしつつ,ウェブを使って身軽なクモが飛び回るように相手を仕留めていくという,軽快でアクション重視なプレイは変わらない。

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 R2トリガーと方向スティックを操作する,ウェブスウィング時の爽快感もシリーズならではだが,今回は2人のスパイダーマンを交互に使っていくだけあり,その違いが鮮明にコントローラのグリップに伝わってくる。マイルズは軽量で,まだウェブの扱いには完全に慣れていないからか,「Marvel’s Spider-Man: Miles Morales」同様に,滞空中に足が上を向いていたり,体が捩れていたりと安定していない。その反面,シンビオートと合成したスパイダーマンはさらに安定し,ずっしりとした重ささえも感じられる。

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 また,「Marvel’s Spider-Man 2」では,新たに空中滞在中に△ボタンを押すことによって,脇下にムササビスーツのような羽根を伸ばせる“ウェブ・ウィングス”が利用できるようになり,ストリングに頼らなくてもドローンさえ追跡できるし,横方向への移動はかなり早い。PlayStation 5のマシンパワーを利用し,これだけ高速で移動しても周囲のオブジェクトが急に写り込んで来る“ポップアップ”現象も起こらないし,遠くまで鮮明に見渡せる。

 このようなウェブ・ウィングスを使った横移動が可能になったのは,本作ではマップサイズがほぼ2倍になったからだ。具体的には,これまでのように摩天楼が並ぶ”マンハッタン”に加えて,ブルックリンとクイーンズという2つの地区も再現されたのだ。
 スパイダーマンの世界観では,よく「ニューヨークのローカルヒーロー」というような形容もされることがあるが,その活躍の場はマンハッタン島という南北に細長い商業地区が多く,実際にこれまでのゲームシリーズでも,メイおばさんの住むクイーンズの住居以外は,その他の地域はほとんど描かれることはなかった。

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 本作では,マンハッタン島からさらにイースト川を渡って東部(ロングアアイランド西部)にある,南のブルックリンと北のクイーンズという2つの地区も含まれるようになったが,元々はマンハッタンに労働者を送り込んでいた生活圏であるため,ストリングをひっかけるような高いビルがそれほどない。そのために,ウェブ・ウィングスや川に落ちた際のかかとサーフィンを取り入れ,並行的な高速移動もできるようになったのだ。
 ブルックリンは,さらにその最南部にある“コニーアイランド”という有名な遊園地までが描かれているとのことだが,今回のプレイアブルデモでも川をわたって3つの地域を往来するような展開も多かった。今回のデモでクレイヴン一党がザ・リザードを追い詰めたのもイースト川であり,大きなマップを縦横無尽に駆け回ることになるのだろう。
 これまでのシリーズ同様にファストトラベルも存在すると思われるが,ウェブ・ウィングスでドローンを追う専用ミッションもあったので,その操作にはしっかりと慣れておきたいところだ。

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 また,本作で特徴的なのが“ウェブ・ライン”だ。これは,どこか「Arkham」シリーズを思わせるようなステルス行動を重視したもので,相手に気づかれないよう天井近くに横線状のラインを張り,キャットウォークのように静かに別地点へと移動できる。プレイアブルデモの魚市場のシーンでは,これを使って孤立しているクレイヴン一党のメンバーを一人ずつ排除し,数を減らしてから大立ち回りするというような活用法が紹介された。
 他にもR1ボタンの長押しで,前作同様にガジェットをチョイスし,Holo Droneで狭い場所を探索したり,時限爆弾を設置したりできるし,R3(右スティック)の長押しでの環境スキャニングや左ボタン下でのヒーリングなど,「Marvel’s Spider-Man: Miles Morales」のコントロールスキームとはそれほど変わらない印象だった。


「Marvel’s Spider-Man 2」開発者インタビュー
〜 それぞれのキャラクターがしっかりと描き込まれたストーリーを堪能しよう


 さて,今回はInsomniac Gamesの「Marvel’s Spider-Man 2」開発メンバーと単独インタビューを行う機会があったが,お相手していただいたのはナラティブ・ディレクターのベン・アーフマン(Ben Arfmann)氏と,アドバンスド・シニアライターのローレン・ミー(Lauren Mee)氏という脚本チームだ。アーフマン氏は過去2作のストーリー制作に関わっており,ミー氏は「ラチェット&クランク パラレル・トラブル」に関わった後で本作の開発陣に合流したという。当然ながら,「Marvel’s Spider-Man 2」のストーリーにフォーカスしてみっちりと話を聞いてきた。

インタビューを受けていただいた,ナラティブ・ディレクターのベン・アーフマン氏と,アドバンスド・シニアライターのローレン・ミー氏
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4Gamer:
 Insomniac Gamesの「Marvel’s Spider-Man」シリーズでは,ヒーローとしてのストーリーだけでなく,主人公たちのパーソナルなストーリーもしっかりと描き切る印象ですが,前作までのストーリーから,今回の主人公たちの心情はどのように描かれていくのでしょう?

ベン・アーフマン氏
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ベン・アーフマン氏(以下,アーフマン氏):
 ええ。このシリーズのストーリーを練り込むときには,常に“マスクで顔を隠している男”の物語にも気を使ってきました。スーパーヒーローとしては,クレイヴン・ザ・ハンターやヴェノムという敵を迎えますが,おっしゃるとおり主人公としては彼らなりの葛藤にフォーカスしています。マイルズは高校卒業を迎えて,大学に入るためのエッセイを書くことにフォーカスしていますが,自分の父を殺したミスターネガティブが脱獄してニューヨークのどこかに紛れているのに,このまま野放しにして良いのかと思っている。一方のピーターは写真では自立するのが難しくて家賃の支払いにも悩まされていたところ,親友のハリーが戻ってきて一緒に新しい仕事をしようと誘ってくるのです。

ローレン・ミー氏
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ローレン・ミー氏(以下,ミー氏):
 ピーターに関しては,今回のデモの前の展開として,何かのイベントが発生してシンビオートに寄生されて,ブラックスーツを着ているという前提があります。我々のピーターは常に感情を押し殺して,孤独に耐えながらスーパーヒーローとして活動し,それを覆い隠すかのようにジョークを言ったりするようなキャラクターです。しかし,本作ではある意味シンビオートへの中毒のような状態で新しく獲得したパワーを祝福し,マイルズやMJから見ると,ときおり何を考えているのか良くわからないダークな雰囲気を増幅させていっているのです。

4Gamer:
 シンビオートを使い続けることで,ピーターには心理や肉体面でのネガティブな効果があるということですか?
 
ミー氏:
 そうですね。詳しく説明することはできないのですが,いつものピーターとしてジョークを言ったり人を思いやったりする反面,突然のように奇妙な言動をしたりします。ストーリーを通してそうした変化をプレイヤーの皆さんが感じ取り,ピーター自身がどうやって向き合っていくのかということに,エモーショナルな気分になってしまうかも知れません。

アーフマン氏:
 日常のピーターであれば,どんな困難にも立ち向かって軽くジョークで流してしまうところでしょうが,シンビオートはどのようなサイドエフェクトがあるのかなんて誰にもわからないですし,おそらく皆さんも身近だった人が何を考えているのかわからないような行動を取り始めたら,ちょっと薄気味悪く,もしかしたらゾッとした怖さを感じてしまうのではないでしょうか。でも,そうした暗やみの中でピーターがもがき続けるからこそ,それを乗り越えた時がさらに明るく感じるのだと思います。

4Gamer:
 デモで「僕にだって(ザ・リザードのような)牙はついているさ」とマイルズに話したとき,ジョークを言っているのか,本気なのか,マスクの下のピーターの顔を想像しちゃいました。

ミー氏:
 本当に同意します。特にマスクを着けているときは,スパイダーマンは目の動きだけで表情を演出しなければなりませんからね。映画であってもゲームであっても,マスクで顔を隠しているピーターの表情は見ている我々は想像するしかなく,それが彼の性格をさらに引き出しているのでしょうし,本作のテーマと上手くマッチしていると言えます。それでもピーターは,ゲームを通して彼なりのジョークをいっぱい話してきますので,クスっと笑っていただきたいですね。

4Gamer:
 前作の終わりでは,ハリーが生命維持装置のようなものから出てきますが,「Marvel’s Spider-Man 2」では普通に生活しているようです。ハリーにはどのようなストーリーがあるのでしょうか?

アーフマン氏:
 それはお話しできませんよ(笑)。でも,確かに装置から出てきたのはハリーであり,彼に何が起きているのかは本作を通して知っていくことになります。

ミー氏:
 それぞれのキャラクターを演じているのは,ピーター役がユリ・ローウェンサール(Yuri Lowenthal)さん,ハリー役がグラハム・フィリップス(Graham Phillips)さんですが,本当に彼らのシナジーが良く表現されています。2人は最も長い付き合いの幼馴染みで,お互いに思いやる大親友であることが絶妙な演技で伝わり,皆さんも2人の関係には恋に落ちてしまうと思いますよ。

4Gamer:
 マイルズとマーティン・リー(ミスターネガティブ)の関係も見どころになりそうですが?

ミー氏:
 ええ。前作では父親だけでなく,恋心を抱いていた大親友も失ってしまったマイルズですが,ピーターとは違って母親はマイルズがスパイダーマンであることも知っています。そんな中で,マイルズは今までのようなティーンエイジャーとして過ごしていて良いのか。本当はそうやって過ごしたいけど,スーパーヒーローとして自分の身の回りからこれ以上の犠牲を出さずに活動していくべきじゃないのかと,彼なりの様々な感情で揺れ動いているのです。父親という存在を失ってしまった10代の子が,どのような答えを自分で出していくのかを見て欲しいですね。

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4Gamer:
 確かに,デモのシーンでお父さんの墓前で弱音を吐くところに,マイルズに残るあどけなさが表現されていましたね。そんな過去のしがらみに立ちはだかるのが,クレイヴンという新しいヴィランなわけですが。

アーフマン氏:
 ピーターとマイルズは,自分の人生や生き方にさまざまな疑問を抱えて葛藤しているわけですが,クレイヴンは自分の意志に疑問を抱きません。“グレートハント”(大きな獲物)だけに興味を示して,シンビオートだとかワニのいるニューヨークにやって来て,狩りを楽しんでいるだけの無情なキャラクターなんです。

4Gamer:
 様々なキャラクターのパーソナリティや感情が絡み合った複雑なストーリーですよね。

アーフマン氏:
 ええ。脚本チームにとっては,単にストーリーに接合性を持たせたり,セリフを埋めたりといった作業をするだけでなく,非常に複雑なストーリーを上手く組み合わせていくというチャレンジがあるからこそ,私たちはInsomniac Gamesのメンバーであることに誇りをもって参加できているのです。もし,映画のような他のメディアと違う部分があるとすれば,ゆっくりと展開や接合性を吟味し,チーム内で話し合いながらビルドアップしていくという長期戦のスタイルでシナリオ作りを行っているということでしょうか。

4Gamer:
 今回のデモも,そうしたキャラクターたちの心情がうかがえる,緊迫感のあるシーンが連続していましたが,“フレンドリー・ネイバーフッド”的なサイドミッションについては?

ミー氏:
 もちろんご用意していますよ。確かにデモは緊迫感に溢れていましたが,だからと言ってピーターがMJとの時間を過ごしたり,マイルズがゲンキやヘイリーと会ったりする時間がないわけではありません。我々としてもお使いミッションに感じられないような,ニューヨークの市民たちが持っているであろう人間的な感情やライフスタイルをしっかりと表現したいと思っています。

アーフマン氏:
 プレイヤーの皆さんには,メインストーリーをプレイスルーするだけでなく,オープンワールドの良さを生かしてどんなアクティビティやコレクティブズがあるのか探索してみて欲しいと願っています。「Marvel’s Spider-Man: Miles Morales」でも評価をされた部分ですが,「Marvel’s Spider-Man 2」ではさらに充実させている部分ですね。

4Gamer:
 音楽堂で盗難を防止するシーンはサイドミッションのようでしたが,あれもメインストーリーの一部ですよね?
 
アーフマン氏:
 ええ。それも詳しく話せませんが,リオ(母)が政治家を志し,マーティン・リーが何をしようとしているのかという伏線になっています。スーパーヒーローの息子とその母という親子関係についてのストーリーも,本作で描かれているユニークなポイントであると思います。

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4Gamer:
 多くのオープンワールド型のゲームにある問題として,一方では世界が崩壊するような大問題が目の前にあるのに,プレイヤーがちょっと脇道にそれてコレクティブズの収集に没頭してしまうというような,間延びが発生してしまうことが挙げられます。どのように対処されていますか?

ミー氏:
 おっしゃるとおり,オープンワールド型ゲームのペーシングについては,インタラクティブメディアという特性上に非常に解決するのが難しい部分です。我々ゲームのシナリオライターの職分として,映画やTVドラマのシナリオ作りとは大きく違う部分であると認識して,「Marvel’s Spider-Man 2」では,いつサイドミッションに取り組み,いつメインストーリーに集中できるのかという流れを,プレイヤーに無理強いすることなく誘導できるよう努力しているんです。

4Gamer:
 では最後になりますが,それぞれの立場から,自分が手掛けたシナリオでプレイヤーに覚えていてほしい部分があればお教えください。

ミー氏:
 私自身は,先ほど話したマイルズとマーティン・リーのストーリーアークに注目して欲しいと思います。クレイヴンやヴェノムに絡まない部分でありますが,それだけに脚本チームがどうすれば印象深いストーリーになるのかに悩み,それを実現できたと思います。複数のミッションにわたって展開し,それが完結したときには泣いちゃうかもしれませんよ。作っている私がそうでしたから(笑)。

アーフマン氏:
 私もマイルズとマーティン・リーのストーリーはおすすめしておきます。そのうえで,私が手掛けた部分で言えば,まだ具体的にはお話しできないヴェノムについてのゲームエンディング近くのシーケンスで,本当にナラティブ・デザイナーとして誇りに感じたシーンになっています。様々なキャラクターの感情が一度に噴出し,それが見事に収まっていくということだけお話ししておきましょう。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

 PlayStation 5専用ゲームとしてリリースされる「Marvel’s Spider-Man 2」は,日本では10月20日にリリースされる予定で,すでにスーツ2着が添付される先行予約を受付中だ。通常版のパッケージ版およびデジタル版(ともに8980円)に加えて,様々なコスメティック関連のアイテムを加えた「デジタルデラックスエディション」(9980円),そして19インチの大型フィギュアやSTEELBOOKディスプレイケースが付属する豪華な「コレクターズエディション」(3万1980円)が販売される。
 PlayStation 5のラインアップとしても2023年最大級のヒット作となるのは間違いなさそうな「Marvel’s Spider-Man 2」だが,今回のプレイアブルデモでの感触や開発者たちの熱意から,さらに確信めいたものを感じた。残り1か月ほどとなった,そのリリースを楽しみにしておきたいところだ。


「Marvel's Spider-Man 2」公式サイト

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