プレイレポート
[プレイレポ]時を操り,お宝を略奪せよ! 女海賊が暗躍する「Shadow Gambit: カリブの呪い」はユニークなステルス・ストラテジーだ
Mimimi Gamesと言えば,高い評価を受けている「Shadow Tactics: Blades of the Shogun」「Desperados III」といったタイトルを手掛けてきたデベロッパだが,「Shadow Gambit: カリブの呪い」は同社初のセルフパブリッシング作品となる。日本の江戸時代,西部開拓時代を舞台とするステルス・ストラテジーを送り出している同社の最新作は,呪われた海域と島々という一風変わった背景になっている。
なお,前述の通り,今回使用しているバージョンはプレビュー版であり,製品版とは異なる可能性がある点をご理解いただきたい。
「Shadow Gambit: カリブの呪い」公式サイト
死を超越した海賊たちが超能力でステルス・キル!
本作の物語は,女海賊アフィアが幽霊船「レッド・マーリー」に乗り込むため,とある道化師と接触するところから始まる。
スクリーンショットを見れば分かるが,アフィアは片腕が骨になっているうえに胸のド真ん中に剣が刺さっている。そして,道化師はガイコツだ。これは一体どういうことなのか。
本作の舞台は「失われたカリブ海」と呼ばれる別世界の特殊な諸島で,この一帯にはある種の呪いがかけられているらしい。ゾンビのような風体で死なない体になったり,超常的な力を操って攻撃手段としたりと,アフィアをはじめとする海賊たちは不思議な力を有している。
だが,諸島を支配下に置いている異端審問会「燃える乙女」の軍団は“呪われた海賊”たちを快く思っていない。アフィアは審問会の連中と戦いながら,海賊らしく宝を追い求めていく……というわけだ。
さて,ガイコツ道化師の手引きによって,レッド・マーリーがいるらしい島に潜入したアフィア。まずは,ここでチュートリアルを進めることになる。
敵の視界が表示されていて,この範囲外であれば,走って近づいても大丈夫。一定の距離まで接近すると「キルするかどうか」の確認が出るので,静かに密かにキルしていく。
倒した敵の死体をそのままにしておくと,別の敵に死体を発見されて大騒ぎになったりもする。近くに草むらなどがあれば,死体をそこへ運んで隠しておくと安全だ。
また,アフィアは「ブリンク」という特殊能力を持っており,離れた位置にいる敵の元にワープしてキルできる。もちろん移動可能距離には限界があるが,高さを無視して発動できるため,ハシゴなどの高所への移動手段がない場所で発動すれば,「敵のキル」と「高所への移動」を兼ねることも可能だ。
さらに,アフィアは敵1体の時間を一時的に停止する能力も持つ。停止中は視界に入っても発見されないので,単体相手だと無類の強さを誇る。
さらにさらに,本作はいつでもどこでもクイックセーブが可能。見つかったり倒されたりしてしまったら,直前のセーブデータから何度でもやり直せるのだ。
ブリンク,時間停止,クイックセーブ。「オイオイ,最初から主人公たち,強すぎじゃね?」と思われたかもしれないが,これが意外とそうでもない。敵の配置や巡回ルートが完璧すぎて,「この鉄壁のフォーメーション,一体どこから崩せばいいんだ……!?」と冷や汗を垂らすことも珍しくない。
敵に見つかってしまうと,「普通に戦闘する」ということにはならない。敵に近づいていれば,見つかった後でもキルはできるが,その直後に増援がワラワラと集まってくることがほとんどだ。
また,敵をキルしたあと,自分が動けるようになるまでにはけっこう時間がかかる点にも注意だ。敵に剣を刺して引き抜いて,敵が倒れて……といった演出に大体5〜6秒を要するため,この間にほかの敵に察知されると,その後が厳しい状況になる。だからこそ,「周囲の安全を確保したキル」が非常に重要だ。「勢いで突撃してキルしたら,あとはなんとかなるやろ」的な作戦は通用しないと思っていい。
……そんなこんなで,時を巻き戻して失敗をなかったことにしたりして,レッド・マーリーの元へ到着。船は審問会に制圧されていたが,アフィアは間一髪のところでレッド・マーリーを救出する。
幽霊船を拠点にして,カリブの島々へ
さまざまな能力を持った仲間と協力しよう
アフィアとレッド・マーリーが出会う最初の島での冒険を終えると,いよいよ海賊稼業が本格化していく。幽霊船レッド・マーリーは,今後の冒険の拠点だ。
かつてのレッド・マーリーには凄腕の船員が多くいたようだが,今はもう見る影もない遺体と化し,甲板に転がっている。しかし,特殊な力を秘めた黒真珠があれば,彼らを蘇生できるという。心強い仲間を得るためにも,黒真珠の確保が先決。そして,黒真珠を所持しているのは,対立する審問会というわけだ。
レッド・マーリーが船内に隠しておいた黒真珠を使い,まずは1人蘇生してみることに。ここでは誰を蘇生するかを選べるので,筆者は料理人の「トウヤ」を選んでみた。
トウヤはレッド・マーリーの料理人だが,東洋出身の暗殺者でもある。音で敵を引き付ける能力「鳥の鳴き声」と,「形代」と呼ばれるものを投げつけ,そこへ瞬時にワープして攻撃する能力「影足」を持っている。イメージとしては,陰陽師と忍者を合わせたような感じだろうか。
また,実はアフィアは泳げないらしく,水辺に侵入できないのだが,トウヤは何の問題もなく水に入れる。こうした特性を利用して,トウヤが水に潜って先に進んでハシゴを下ろし,アフィアはそこを通って追いつく……といった行動もできる。
複数のキャラクターを共に行動させ,状況に応じてスキルの使い分けをするのもいいが,それぞれ別行動をしてもいい。とりあえずアフィアは草むらに待機させておいて,トウヤが先行して様子を探ったり,2人で別方向から各々の仕事を遂行したりもできる。
また,操作キャラクターが2人に増えると,「シャドウモード」の発動が可能になる。これは時間を停止した状態で,船員たちの行動プランをあらかじめ設定するというもの。行動決定後に実行すると,各キャラクターの時間が動き出して,事前に決めた行動を始める。
例えば敵が2人いる場所では,最初に1人目をキルした段階で審問会に警鐘を鳴らされてしまい,増援がワラワラと集まってくることがある。そんなときはシャドウモードでキルの動きを事前に設定し,2人の敵を“同時に”キルすれば解決するわけだ。
各ステージの目的は,審問会が保管する宝の奪取だったり,審問会の保有する書物の内容を読むことだったりするが,ゲームの進行に応じて新たな黒真珠が手に入り,かつてのクルーをさらに「蘇生」させられる。プレビュー版ではアフィアを含む最大3名だったが,製品版では最終的に8名の船員が仲間になるようだ。
「人数が増えたから,攻略がラクになる」ということには必ずしもならないのが,ステルス・ストラテジーの醍醐味だ。3人で別々の場所から攻めようとして,アフィアの行動をじっくり考えていたときに,「ここなら大丈夫だろう」と物陰に隠しておいた仲間が発見されてボコボコにされていたこともあった。
だからといって,固まって行動させると,3人並んで歩くことになるので目立ってしまう。この場合,1人でも見つかると芋づる式に全員発見されるのでリスクも高い。
とはいえ,各島のスタート地点は敵兵が少なく,2〜3人キルして死体を隠しておけば,ほぼ危険はない。操作しないキャラクターは草むらでしゃがませておけば,まず大丈夫だろう。
人数が増えるとリスクもあるが,使える特殊能力が増えるというメリットが上回る。とくに狙撃手のテレサは遠隔攻撃ができるので,メチャクチャ役に立った。
しかし,そんなテレサの遠隔攻撃にも弱点はある。1発撃ったら,倒した敵の位置まで行って弾を回収しなければならないのだ。そのため,敵の密集地で考えなしに狙撃すると,敵の警戒が解けた後,弾を回収しに行こうにも周囲は敵だらけ……ということになる。
それでも敵の動きをよく観察していれば,「コイツをキルしたら敵が大勢来るかもしれないが,警戒が解ければ,確実に1体ずつ減らしていけるな」と確信できる場面もある。本作には「待ち」の場面も多いが,「早送り」が可能なので苦にならない。とことん,“時”を操れるストラテジーというわけだ。
自由度が高く,攻略の幅は広い
ステルス・ストラテジーの入門にもふさわしい1作
本作をプレイして驚いたのは,攻略の幅の広さだ。解法がいくつかあるというレベルではなく,スタート地点となる「島の上陸地点」も選べるので,攻略ルートは無数に考えられる。まさに「プレイヤーの数だけ攻略法が存在する」と言ってもいい。
また,仲間が増えるにつれて,出撃するメンバーの組み合わせによっても攻略法は変わってくる。仲間は独特な特殊能力の持ち主が多く,プレイヤーには柔軟な発想が求められる。
難度に関しては,正直なところ,難しい部類に入ると思う。ゲームを始めたあとでも難度を選び直せるし,いかにもカンタンそうな低難度も用意されてはいるのだが,敵の配置が大きく変わってカンタンになるわけではなく,敵がこちらを察知する速度が遅くなるといった調整になっている。そのため,攻めるプランがちゃんとしていないと,何度もリトライを強いられるのだ。
ただ,難しそうだからといって及び腰になる必要はない。筆者はこのジャンルが好きではあるが,完全にヘタの横好きだ。決して上手ではない。そんな筆者でも「敵を1体減らせたら,それは着実な前進」の精神で,プレビュー版のラストまで進められた。
注意点を挙げると,ゲームのジャンルや見た目に反してかなり処理が重いようだ。PC版であれば,ある程度の本体スペックが必要であり,SSDが推奨される。HDDにインストールしてみたところ,ゲーム開始時の読み込みがビックリするほど長かったので,やはりSSDで遊びたいところだ。
レッド・マーリーの船員たちは皆ユニークで,アフィアと彼らの会話は見ていて飽きない。アフィアとレッド・マーリーの因縁や,レッド・マーリーの船長だった「黒目のモルデカイ」が残したとされる謎の宝といった,ストーリーの牽引力もある。時間の呪いがかけられた海域と島々。死を超越して生き生きと動く,一癖も二癖もある海賊たち。自我を持ち,しゃべる幽霊船。このような世界設定だからこそ,何が飛び出すか予想もつかず,本作は魅力に満ちている。
メーカー資料によると「プレビュー版のプレイ時間は,あなたのスキルレベルやプレイスタイルにもよりますが,およそ4〜5時間に相当します」と書かれていたのだが,筆者はその倍以上を費やすこととなった。製品版は「このジャンルの経験や難易度にもよりますが,ゲーム本編のプレイ時間は平均25時間以上と予想されます」と紹介されているので,ボリューム面の不安はまったくないだろう。
本作は決して易しいゲームではないが,自由度が高く,攻略の幅はとにかく広い。アイデア次第で鮮やかに攻略することも可能だし,筆者のようにチキンなチマチマ戦法で泥臭く突破してもいい。キャラクターとストーリーも魅力も十分なので,ステルス・ストラテジーに興味があるならば,ぜひ手にしてほしいタイトルだ。
なお,6月19日〜6月26日に開催されるSteam Next Festにて,本作の体験版が公開される。ぜひ,この機会に遊んでみよう。
「Shadow Gambit: カリブの呪い」公式サイト
開発者インタビュー
最後は,「Shadow Gambit: カリブの呪い」を手がけるMimimi Gamesのデザイン部門責任者を務めるモーリッツ・ワグナー(Moritz Wagner)氏へのメールインタビューを掲載する。ユニークなステルス・ストラテジーについて,さらに詳しく知りたい人はぜひ目を通してほしい。
4Gamer:
初のセルフパブリッシング作品のテーマに「カリブ海の海賊」を選んだ理由を教えてください。
モーリッツ・ワグナー氏:
「カリブ海の海賊」はかっこよくて,ステルス・ストラテジーのジャンルではまだ扱われていないからです。また,私たちは海賊の雰囲気が大好きです。
ゲームプレイの自由度,オープンなゲームの構造,そして私たちのスタジオのスタイルにとても合っています。ファンタスティックな海賊の設定は軽快で楽しい一方,深みのあるキャラクターを持つシリアスなトーンにもなります。
4Gamer:
スタジオの代表作である「Shadow Tactics: Blades of the Shogun」「Desperados III」にはない,新作のオリジナリティを教えてください。
モーリッツ・ワグナー氏:
本作をオリジナルなものにしている要素は,海賊というテーマであり,魔法の導入でしょう。ファンタジーな世界設定は,キャラクターに対して新しいメカニックやスキルのデザイン,または既存のものに変更を加えるための自由を提供してくれます。
幽霊船レッド・マーリーは,時間を操作する力を与えてくれます。戦略を考えるために時間を停止したり,キャラクターたちのアクションをキューに入れたり,過去の瞬間を記録して即座に戻ったりできます。キャラクターたちは,この機能を使用するあなたに対しても反応します。そして何よりも重要なことは,本作の主要なプロットと全体的な物語に大きな役割を果たしていることです。
魔法の能力を持つ乗組員のアイデアは,ゲーム全体のビジョンにマッチしています。キャラクターの個性と魔法のスキルセットを組み合わせることは,ステルス・ストラテジーゲームにとって完璧な基盤となります。プレイヤーは自分だけの解決策でゲームを進めて,自分のプレイスタイルを定義することができるのです。
ベテランプレイヤーは完璧なプレイでミッションを達成することを自由に挑戦できる一方、初心者は以前のタイトルと比較してゲームに参入するのがよりやさしく、楽しい時間を過ごすことができます。
4Gamer:
製品版のボリューム,収録されるエピソード数,ゲームモードやコンテンツについて教えてください。
モーリッツ・ワグナー氏:
製品版では10か所のロケーション/島を探索することができます。それぞれのサイズは異なり,30以上のミッションが存在します。
すべてのストーリー関連のミッションをクリアするには,25時間以上かかるでしょう。バッジの獲得や追加のチャレンジ,キャラクターのサイドクエストなどを含めると,その時間はもっと長くなります。ジャンルに慣れているかどうか,プレイヤーの経験次第になるので,数字をお伝えするのは難しいです。
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