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Intelが第14/13世代Coreの故障原因をようやく究明? 不具合の修正を8月中旬にリリース
北米時間7月22日,Intelは,同社のユーザーサポートフォーラムにおいて,故障原因の概要と,問題を修正したマイクロコードを8月中旬を目処にリリースすることを明らかにした。
同ポストをざっくり要約すると,マイクロコードのアルゴリズムに問題があり,プロセッサに対して過大な電圧要求が生じることがあったそうだ。「故障で返品となったプロセッサの分析に基づいて,この不具合が突き止められた」としていることから,おそらく8月中旬にリリースされるであろうマイクロコードが,半年以上続いた問題の最終解決になると期待していいのではないか。
ちなみに,CPUのマイクロコードは,マザーボードのUEFI(BIOS)とともに配布されるので,8月中旬以降にマザーボードメーカーがリリースするUEFIアップデートに修正済みマイクロコードが含まれると見ていいだろう。メーカー製PCの場合は,メーカーのサポート情報をチェックしておくといい。
裏を返すと,8月までは問題が解決しないわけで,それまでの第14/13世代Coreプロセッサは,いつトラブルを起こしてもおかしくない。同ポストでは,問題のマイクロコードが「K」型番のクロック倍率アンロックモデルに限定されているのか否かに触れておらず,「デスクトッププロセッサ」が対象となっているだけだ。ミドルクラスやローエンド市場向けCPUも,共通のマイクロコードを利用している可能性はあるので,ハイエンド市場向けCPUに限った問題でもないと考えておいたほうが無難だろう。
そういう状況なので,8月中旬以降のアップデートがあるまでは,あまり無理をさせずに利用することをおすすめしたい。大部分のLGA1700対応マザーボードでは,6月前後に「Baseline Profile」という,Intelが安全寄りに設計したパワープロファイルに対応したUEFIを配布済みだ。若干の性能低下が生じるのが難点だが,修正が入るまでは,UEFIの設定でBaseline Profileを適用して利用するといいのではなかろうか。
なお,不運にも8月のアップデートを待たずに壊れてしまった場合は保証が効くようだ。リテール版の第14/13世代Coreプロセッサを購入したゲーマーは,Intelのガイドにしたがって返品保証(RMA)手続きを進めてみるといいだろう。
一方,メーカー製PCの場合は,メーカー側のサポートに問い合わせてほしい。
Intelの「保証に関する規定」ページ
今後登場するIntel製CPUの方向性にも影響を与えるか
第14/13世代Coreプロセッサに起きていた問題を簡単に振り返っておこう。
2024年1月に,「Unreal Engineで作成されたゲームのクラッシュが増加している」という報告が開発者からあり,それを発端に,Unreal Engineに限らず,さまざまなゲームやベンチマークソフトウェアで,第14/13世代Coreプロセッサが原因不明のクラッシュを引き起こすという報告が多数上がってきた。
クラッシュだけに留まらず,CPUが使用不能になったという報告も現れ,Intelとしても放置できなくなって調査が始まる。そして2024年5月には,考えられる原因として,「マザーボードに設定されている,いささか極端なパワープロファイルが原因になっている可能性がある」ということで,Intelが対策を施したBaseline Profileの実装を,マザーボードメーカーに推奨した。
ただ,パワープロファイルは原因の可能性というだけで,原因かどうかは,はっきりしていなかった。また,Baseline Profileを適用すると大きな性能低下が生じるので,ユーザーとしても満足できる解決策とは言い難い。
2024年6月になると,「K/KF/KS」型番のCPUに搭載されているクロック引き上げ機能「Enhanced Thermal Velocity Boost」(eTVB)に不具合があることを,Intelが公表した。eTVBは,CPUの熱と消費電力の状況に応じて,ブーストクロックの上限を引き上げて動作させることで性能を向上させる機能だ。Intelによると,eTVBのしきい値設定に誤りがあり,安全な限界を突破してしまうことがあったという。
この不具合は同月に,公開となったマイクロコードで修正されており,すでに大部分のLGA1700対応マザーボードでは,UEFIアップデートとして配布済みだ。残念ながらIntelは,eTVBの不具合が根本原因でないことを6月の時点で明らかにしており,本当の原因は依然として不明のままとなっていた。
その後もさまざまな説が流布しており,たとえば「内部インターコネクトが,エレクトロマイグレーション※1や,ストレスマイグレーション※2で壊れる」と言った不吉な説まであったが,マイクロコードの修正でなんとか対応できる目処がついたというわけだ。
※1 LSIのパターンが電流により劣化して破断すること
※2 LSIのパターンが主として熱など物理的な力により破断すること
経緯はともかくとして,近年のCPUでは,熱や消費電力が極端に上昇していたことは確かだ。AMDとの競争が激しくなった第11世代Coreプロセッサ以降,IntelのCPUは,動的なクロックと消費電力の制御技術を駆使して,ピーク性能を引き上げる傾向が極端になっていった印象がある。典型的な例を挙げると,第13世代の「Core i9-13900K」ではコア電流に最大400Aを許容するという,いささか心臓に悪い「Extreme Power Delivery Profile」を導入したりもしている。
その結果,最新のハイエンドCPU製品では,CPUだけでピーク時消費電力が300Wを超えるような状況になっていた。「これで正常に動作するとは,神業的な電力制御だな」と筆者も舌を巻いていたが,やはり紙一重だったのだろう。極端に高度なパワープロファイルが直接ではないにせよ,今回の不具合の原因になったであろうことは否定できないはずだ。
故障はさすがに重大事なので,今後のIntel製デスクトップPC向けCPUでは,極端な熱や消費電力は控える方向に,トレンドが変わるかもしれない。「CPUが,扱いやすい方向に変わっていくなら歓迎」というゲーマーは多いのではなかろうか。
いずれにしても,半年間,PCユーザーを騒がせた本件が,今後のCPUにどのような影響を与えるか見守っていきたい。
Intel公式サポートフォーラムにおける当該ポスト
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