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「ゲームマーケット2024秋」のマーダーミステリー総まとめ。会場を彩った新作の数々から,マダミス界のトレンドを占う
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印刷2024/12/05 17:17

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「ゲームマーケット2024秋」のマーダーミステリー総まとめ。会場を彩った新作の数々から,マダミス界のトレンドを占う

 2024年11月16日と17日に開催されたアナログゲームイベント「ゲームマーケット2024秋」から,マーダーミステリー関連の出展をまとめて紹介していこう。

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 東京ビッグサイトから幕張メッセに会場を移した今回も,会場には数多くの新作マーダーミステリーが出展されていた。大手企業による出展や,各種IPとのコラボレーションもますます増えた印象で,前回のゲームマーケットと比べても,あくまで筆者の体感ではあるが,タイトル数にして1.5倍ほどの規模に感じられた。

ゲームマーケット公式サイト



今回も大盛況だったマーダーミステリーブース


 ゲームマーケットとStudio OZONの共同による特設ブースである「マーダーミステリーブース」には,今回も開場直後から多くの来場者が詰めかけ,大盛況となっていた。

開場と共に,いくつもの新作を抱えたマダミスファンたちがレジ待ちの列を形成していた
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 マダミス界の堅調さを示すかのように,ズラッと並べられた作品は約100点。新作はもちろん,初出展のレーベルも歴代最多の15団体を数え,ブースを案内してくれたスタッフからも,初めて見る作品やレーベルが多いとの声が上がっていた。

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店舗の空き時間を活用したフランチャイズ展開「間借りでマーダー」を発表するなど,話題に事欠かない「これからミステリー」の新作は,登録者50万人超のYouTuberグループ「積分サークル」とのコラボタイトル「デスゲームデステスト 〜記憶の解答用紙〜」。写真はPVE事業部の中野咲彩氏(右)と,インフルエンサーの白雪りらさん(左)
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 会場での売れ行きもなかなかの勢いで,列の長さは普段より短いように感じられたが,初日の15:00頃には例年を上回る売上を達成したという。会場が広くなった影響かとも思ったが,シンプルにレジの数が増えたとのことで,混雑が緩和されたのは素直に喜ばしい。

「無限水平思考殺人事件」で知られるRyusei Gamesの新作「ラビリンスミステリークラブ招待状」は早くも完売。とある秘密クラブから,未解決事件の調査資料が入った招待状が届くところから物語がスタートする
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引きの強いビジュアルと,ハードSFというジャンルで前評判の高かった「偶像の彫刻」。個人ブースでの販売も,夕方には完売となっていた。画像は作者の紺猿氏。プレイ時間270分という,大ボリュームのゲーム体験が楽しめるとのこと
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 ブースを統括する智景氏によれば,マーダーミステリーブースは今後も,ふらっと立ち寄った入門者が,ベストな作品が見つけるのにベストな場所として,続けていきたいとのことだった。

マーダーミステリーブース統括の智景氏。屋根付きの机には,当日同ブースで購入できるタイトルがずらりと並べられていた
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JOLDEENOの新作「東京リベンジャーズ ー炎の絆編ー」


 マーダーミステリーブースの中でも,ひときわ勢いがあったのがアニメ「東京リベンジャーズ」を題材としたコラボ作品「マーダーミステリー 東京リベンジャーズ ー炎の絆編ー」だ。

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 制作のきっかけは,JOLDEENO代表のジョル氏が,以前のゲームマーケットで講談社ブースを訪れ,話を持ちかけたことだという。そこからトントン拍子に話が進み,約2年の制作期間を経て,今回のリリースに漕ぎつけたそうだ。ただ当時は,原作がまだ完結しておらず,世界観の整合性を取るためのスクラップアンドビルドを繰り返したとのこと。

 シナリオはStudio OZON代表の久保よしや氏と,エモーショナルな作品に定評のあるクリエイターのとんとん氏が手がけており,2部構成の前半と後半を,それぞれが担当している。
 どのような展開になるかは,プレイしてのお楽しみとのことだが,途中に動画を閲覧するタイミングがあり,そこでは主要キャラクターのマイキー,ドラケン,タケミチの3名の撮り下ろし音声が聞けるようになっているとか。ファンアイテムとしても嬉しい一品といえる。

「マーダーミステリー 東京リベンジャーズ ー炎の絆編ー」の企画・制作を担当したJOLDEENO代表のジョル氏(右)と,同店の看板娘・ずっちー氏(左)
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「マーダーミステリー 東京リベンジャーズ ー炎の絆編ー」公式サイト



マダミス作家の連帯を目指す,日本マーダーミステリー作家協会


 また2024年10月に発足した「日本マーダーミステリー作家協会」で,共同代表を務める檜木田正史氏九尾まどか氏をマーダーミステリーブースで見かけたので,話を聞いてみた。
 同団体は,「ヤノハのフタリ」「ゲノムの塔」などを手がけたマダミス作家・しゃみずい氏のポストをきっかけに立ち上げられた組織で,公式サイトに掲載されている入会案内には,マーダーミステリー作家同士による「交流・共有・連携・向上」を目指すことが謳われている。

日本マーダーミステリー作家協会,共同代表の檜木田正史氏(右)と九尾まどか氏(左)
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 両氏によれば,協会を設立した目的は大きく二つあるという。
 まず現在個々の作家が独立して作品を作り上げている中で,作家同士で親睦を深めたり,知見を高め合ったり,制作ノウハウを共有したりすることで,制作能力そのものを高めていこうという,短期的・中期的なものが一つ。
 そしてもう一つが,マダミス作家,ひいてはマダミス業界そのものの社会的な地位向上を目指し,いちジャンルとしてしっかりとした地位を確立していく,長期的な狙いがあるのだそうだ。

  現在はDiscordをメインの活動の場としており,同団体のチャンネルには毎日のように会員が出入りして交流しているとのことで,サロンのようなイメージが近いそうだ。
 マーダーミステリーにまつわる会員の記事を共有したり,ボイスチャンネルで会員同士が交流できたり,テキストチャンネルでは「ハンドアウトの大きさについて悩んでいる」といった書き込みに,多くの意見が寄せられたりといった光景が日常的に見られるとのこと。

 入会には発表形態を問わず,何かしらのマーダーミステリーの制作実績があればよく,また作家でなくとも店舗運営やイラストレーター,BGM制作など,なんらかの形でマダミス業界に関わっていれば,賛助会員として参加可能とのことだった(運営委員からの推薦が必要)。

 会費は宣伝広告費,イベントの施設使用料,今後予定している弁護士や会計士を招いての講演時の謝礼金,ウェブサイトの制作や維持費用などに充てられる予定とのことで,発足から2か月足らずで参加者はすでに100名近くになっているとか。
 プレイヤーには直接関係がなさそうではあるが,こうした試みによりクリエイターが創作しやすい環境が整えられるなら,歓迎したい動きと言えるのではないだろうか。

日本マーダーミステリー作家協会 公式サイト



小説のマダミス化という新機軸を狙うグループSNE


 黎明期からコンスタントに作品を発表し続けているMYSTERY PARTY IN THE BOXシリーズを擁するグループSNEからは,今回のゲームマーケットに合わせて,一風変わった新作「〈三月うさぎ〉の鬼探し」がリリースされた。

グループSNEからは,このほかにもMurder Mystery Miniシリーズの新作「ケイヴァー 洞窟の煌めき」と,卓上探偵団シリーズの新作「魔都を翔ける鷲」も発売されていた
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 同作は,Frances Noyes Hart(フランセス・ノイズ・ハート)が1929年に発表した推理小説「Hide in the Dark」を原作に,「ホワイト・レイヴン、レッド・ダイ」「ムーンストーン邸殺人事件」を手がけた安田 均氏&柘植めぐみ氏のコンビが,1920年代のアメリカを舞台としたマーダーミステリーとして再構築したタイトルだ。
 そもそも「Hide in the Dark」は,マーダーミステリーの原型の一つとされるレクリエーションゲーム「Murder in the Dark」の,そのまた元ネタにあたる小説とされる。つまり「〈三月うさぎ〉の鬼探し」は,100年越しの本歌取りと言ってよいタイトルなのだ。

 もちろん小説をそのままゲームにはできないので,登場人物の調整や,配役ごとの体験の平均化など,追加要素も用意されているとのこと。さらにプレイ後には,同梱されたQRコードから400ページにもおよぶ原作小説を閲覧できるなど,本作ならではの特典も用意されている。
 今作が好評であれば,小説を元にしたマーダーミステリーの第2弾もあるかも,とのことなので,マーダーミステリーファンは期待しておこう。

MYSTERY PARTY IN THE BOXシリーズでは,これまでも発売前の新作をいち早く体験できる先行体験会がいくつかの店舗で行われていたが,このたび,その対象店舗に「これからミステリー」が加わったという
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 グループSNEでは,このほか中国産のマーダーミステリーを日本で遊びやすい形にアレンジした「Asian Murder Mystery」シリーズを,2025年春から展開予定だという。またテレビアニメ化も果たした「マーダーミステリー・オブ・ザ・デッド」シリーズは,今後も複数のメディアでの展開が予定されている。

 さらにオンラインプレイに対応したマーダーミステリー「MPB-Online」シリーズも,9月にスタートしている。こちらはオンライン専用に書き下ろされた2タイトル――2人用の「蠱毒殺人事件」と4人用の「スパイは踊る」が,すでにBOOTHで購入可能だ。
 一方,スマホ用のマーダーミステリーアプリ「ウズ」iOS / Android)内でも,「SNE-UZU ライト」「SNE-UZU オリジナル」という2つの新レーベルが立ち上げられた。前者ではGMウォーロック誌で発表された小品のオンライン版が,後者では鯖井 凌氏制作の「片割れがいたから」をはじめとした,3本の完全新作がすでに配信済だ。
 クオリティに定評のあるグループSNE作品のオンライン対応は,素直に喜ばしい。できれば過去作品のオンライン化にも期待したいところだ。


中国の大人気ジャンル“盗墓もの”とは


 グループSNEブースの取材後,マーダーミステリー界隈のトレンドについて代表の安田氏に話を聞いてみた。それによれば,氏は現在中国で流行中の“盗墓もの”にとくに注目しているという。

 盗墓とは文字どおり墓を暴いて盗掘を行うことであり,王族や貴族の豪華絢爛な陵墓を狙った盗墓は,中国では古くから存在している職業の一つなのだとか。
 中国では,この盗墓を題材にした小説が一つのジャンルを形成しており,それが近年,伝奇的な要素と融合して大ヒットとなった。とくに有名な作品であるWeb小説「鬼吹灯(きすいとう)」は中国で映画化やドラマ化が行われ,累計1200万部を達成した「盗墓筆記」シリーズも,つい先日KADOKAWAから日本語訳が出版されている。

 盗墓と聞くと日本ではあまり馴染みがないかもしれないが,「レイダース」や「ハムナプトラ」といった映画や,「トゥームレイダー」などのゲームに通ずる冒険活劇ものと考えれば,それほど違和感はない。あるいはファンタジーものに登場するシーフ(盗賊)のようなものだと,安田氏は説明していた。

 あくまで小説のトレンドなので,今のところ具体的な作品があるわけではないが,先の「Asian Murder Mystery」シリーズなどで,同テーマのタイトルが出てくる可能性は十分にある。
 安田氏によれば,12月末発売の「マーダーミステリー エントリーガイド 2025」でも盗墓ものについて詳しく語っているとのことなので,気になる人はそちらも手に取ってみてはいかがだろうか。

グループSNEの安田 均氏(左)と柘植めぐみ氏(右)
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グループSNE 公式サイト



オンラインプラットフォーム「ミステリーラボ」で参入する「ADICE」


 comipoなどのWebサービスや,VTuberグループ「あおぎり高校」などの運営を手がけるviviONは,同社が10月に立ち上げたアナログゲームレーベル「ADICE」の新作を携え,ブース出展を行っていた。

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 viviONは本日(2024年11月18日),アナログゲーム「マーダーミステリー」をテーマにした新サービス「ミステリーラボ」を,2025年春に開始すると発表した。ミステリーラボは,PCやスマートフォンからマーダーミステリーのオンラインセッションを行える,Webブラウザベースのサービスだ。

[2024/11/18 14:30]
 同ブースでは,すでに発表済のマーダーミステリー作品3タイトル「ひねもす落ちる栗の花」「神様のサイコロ After 4.」「牧場カマス事件」の展示・販売のほか,現在アニメのリブート企画が進行中の「メガゾーン23」とのコラボ作品「メガゾーン23 バハムートの残影」と,永井 豪氏の漫画「デビルマン」とのコラボ作品「デビルマン アーマゲドン序章」の新作マーダーミステリー2タイトルを発表。どちらもリリースは2025年春予定とのことで,来場者の注目を集めていた。

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「メガゾーン23 バハムートの残影」では,新旧アニメをつなぐ物語が展開されるという
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「デビルマン アーマゲドン序章」は,原作終盤を舞台にした物語になるそうだ

 また同じく2025年春にサービス開始予定のオンラインサービス「ミステリーラボ」でも,両作はプレイ可能とのこと。「ミステリーラボ」は,サービス内の通貨を用いてタイトルを購入し,オンラインを通じてマーダーミステリーをプレイできるサービスで,個人・法人を問わずシナリオの販売が可能なほか,観戦者を入れたオンライン公演型の収益化(投げ銭)も可能だという。

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 「ミステリーラボ」の企画責任者である前原賢一氏によれば,viviONがマーダーミステリーに参入した理由としては,その市場がグローバルに広がりつつあることと,自社IPの掘り下げ先としての可能性に魅力を感じているからだという。
 また今後は,すでにあるパッケージ作品のオンライン化を誘致して作品数の拡充に努めるほか,気軽に始められる1〜2人用のタイトルを充実させ,初心者が入りやすい環境の構築を目指すとも話していた。

「ミステリーラボ」の企画責任者でマネージャーの前原賢一氏(右)と,マーケティング部の南谷裕子氏(左)
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 先行の同様のサービスにはスマホアプリの「ウズ」や,シナリオ販売サイトTALTOを擁する「ココフォリア」などがあるが,「ミステリーラボ」がその第三の選択肢になりえるか,今後に期待したいところだ。

「ADICE」公式サイト


ここからは,会場で見かけた新作を写真で紹介しよう。謎解きの雄,タンブルウィードからはREDRUMシリーズ第4弾「アルテミスの断罪」が数量限定で先行販売された。パッケージ型で7人用は昨今珍しく,多人数用タイトルを求める人にはありがたいタイトルだ
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