連載
ビートに乗って命を救うリズムゲーム「Rhythm Doctor」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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しかし,頼りのモニターはウイルスに侵され,ノイズと共に踊り狂う。信じられるのは,己の耳とリズム感のみ。さあ,スペースバーに指を置け。
本日は,7th Beat Gamesが手掛ける「Rhythm Doctor」を紹介しよう。本作は救命救急を題材にしたリズムゲームだ。プレイヤーは遠隔医療プログラムに参加した研修医となり,次々と運ばれてくる患者たちの治療を目指す。
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このゲームの特徴は,音楽の「7拍め」に合わせてボタンを押すという一点に集約される。流れる音楽を聞き,心の中で「いち,に,さん……」と拍子を数え,7つ目のタイミングで決定ボタンを叩く。やることはそれだけだ。だが,治療が進むにつれて画面上の波形は激しく乱れ,ノイズが走り,時にはウインドウそのものがデスクトップ上を飛び回って視界を遮る。
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これらは単なる演出ではなく,ウイルスによる妨害だ。だからこそプレイヤーは,目に見える情報をあえて遮断し,耳から入る音楽だけを頼りにリズムを刻み続けなければならない。ボサノヴァの裏打ちや,不規則な変拍子など,さまざまな症状を持つ患者と向き合いながら,音楽の仕組みを体で覚えていくことになる。
暴れ回るゲーム画面
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治療が佳境に入ると,ゲーム画面自体がPCの画面上を移動したり,振動したりしてプレイヤーの邪魔をする。これはモニターの中だけで完結していた従来の遊びの枠を壊す仕掛けだ。ウイルスがPCを乗っ取ったかのような挙動に焦らされながらも,冷静に拍を刻む緊張感は,他の作品では味わえない。
現場の痛みを描く群像劇
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コミカルなドット絵の裏で進行するのは,過重労働や燃え尽き症候群といった現代医療の暗部をえぐる物語だ。不眠不休で働く同僚や,効率を強いる上司との会話は,単なる背景ではなく,プレイする指先に重みを与える。患者を救う行為が,やがて医師たち自身の心を救う道へとつながっていく。
理屈抜きの音楽体験
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複雑な音楽理論を,言葉での説明を一切省いて叩き込んでくる点も面白い。裏拍や多重リズムといった概念も,失敗と成功を繰り返すうちに自然と身につく。画面を見なくても遊べる設計は,目の見えない人への配慮であると同時に,音そのものに集中させるための極めて合理的な仕組みとなっている。
本作は,リズムに合わせてボタンを押すだけの単純な遊びを,演出と物語の力で忘れられない体験へと昇華させている。音楽が好きな人はもちろん,歯ごたえのある物語を求めている人にも遊んでほしい。数え続けた拍の先にある感動は,きっと君の心拍数も高めてくれるはずだ。
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Rhythm Doctor
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