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VAIO設立2周年記念のプレスツアーで安曇野本社工場を見学したついでに,「ゲームPC作って」とお願いしてきた
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印刷2016/07/19 13:53

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VAIO設立2周年記念のプレスツアーで安曇野本社工場を見学したついでに,「ゲームPC作って」とお願いしてきた

長野県安曇野市にあるVAIOの本社工場
画像集 No.002のサムネイル画像 / VAIO設立2周年記念のプレスツアーで安曇野本社工場を見学したついでに,「ゲームPC作って」とお願いしてきた
 2014年7月に,「VAIO」のブランド名で知られたソニーのPC部門が,投資ファンドに譲渡されたことにより,「VAIO株式会社」(以下,VAIO)が独立したPCメーカーとして発足してから,早くも2年が経った(関連記事)。
 世界的にPCの売り上げが減少している状況での船出とあって,先行きを危ぶむ声も少なくなかったが,同社の強みである高密度設計技術を生かしたハイスペックと携帯性,およびデザイン性を兼ね備えたノートPCの展開により,2015年度には黒字転換を果たすなど,厳しいPC市場の中でも健闘しているようだ。

 去る2016年7月15日,VAIOは,40人を超える報道関係者を集めて,本社のある長野県安曇野市の安曇野工場にて「VAIO設立2周年記念プレスツアー」を開催した。本稿では,説明会と工場見学を通じて,いまや日本でも数少ない「マザーボードレベルからノートPCを製造する設備と技術」を持った企業であるVAIOの現在を見てみよう。

安曇野工場の正門(左)。正門前の右側には,安曇野工場の通称でもある「VAIOの里」の石碑がある(右)
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PC事業とEMS事業で業績はV字回復

第三のコア事業立ち上げを目指す


大田義実氏(代表取締役社長,VAIO)
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 見学に先立って行われた説明会では,まずVAIO代表取締役社長の大田義実氏が登壇して,VAIOの現状と今後に関する概要を説明した。
 現在のVAIOは,大きく2つの事業を展開しているという。1つはソニーから継承したPC事業で,ノートPCの開発,設計から販売までを行うものだ。高性能な2-in-1ノートPCのVAIO Zシリーズや,柔軟なCTO構成が可能なビジネス向けノートPCのVAIO Sシリーズなどを展開しており,とくに2015年は,法人向けの販売が大きく伸びたという。
 Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの「VAIO Phone Biz」も,この事業分野に含まれるものだ。

Skylake世代のCPUを搭載するハイスペックなモバイルノートPC「VAIO Z」(左)。なお,写真のモデルは2-in-1タイプではなく,通常のクラムシェルタイプのノートPCである。右写真は,タブレットPCでありながら,Haswell世代の4コアCPU「Core i7-4770HQ」を搭載した「VAIO Z Canvas」。メインPCとして使えるほどのハイスペックなタブレットだ
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13.3インチ級のノートPC「VAIO S13」(左)。筆者も愛用しているが,ビジネスユーザー向けでありながら,VAIO Zと同じくらいハイスペックな構成が可能で,有線LAN端子も備えている。Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの「VAIO Phone Biz」(右)も法人ユーザーを狙った製品だ
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 もう1つは,同社が有する高度な製造技術を利用した「電子機器受託製造事業」(Electronics Manufacturing Service,以下 EMS)である。
 安曇野工場はもともと,1961年に東洋通信工業が豊科工場として設立したもので,1974年にソニーの子会社となって以降,オーディオ機器やPC,そして犬型のエンターテインメントロボットとして有名な「AIBO」(アイボ)の製造を手がけるといった,幅広い実績を有する。つまり安曇野工場は,PC製造以外にも高い技術力とそれを生かせる設備を備えており,それを利用してパートナー企業が求める電子機器を製造するEMS事業が,PC事業と並ぶ柱になっているというわけだ。

安曇野工場の歴史を示したスライド。設立は1961年というから,半世紀以上の歴史を誇る。VAIO以前には,MSX規格に準拠したPC「HiT BiT」やUNIXワークステーション「NEWS」などの製造も担当していたとのこと。AIBOもここで生まれた製品だった
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VAIOが製造を担当する富士ソフトのコミュニケーションロボット「Palmi」(パルミー,左)。右写真は,米国のAI開発企業であるAKA LLCの委託で製造するという英語学習AIロボット「Musio」(ミュージオ)のモックアップだ
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PC,EMSに並ぶ第三のコア事業を2016年度に開始するという
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 これら2本の柱に加えて,2016年度には,自社の強みである設計,製造技術を生かした「第三のコア事業」立ち上げを目指すと,大田氏は説明する。そのコア事業というのがどのようなものかは,一切明らかにされなかったが,今後のVAIOからどのような事業が登場してくるのか,今から楽しみだ。


安曇野工場を見学。中国生産のノートPCもストレージやOSは日本で導入


 説明会に続いては,3班に分かれて工場内部を見学するツアーが行われた。ただ,工場内部の撮影はすべて禁止であったため,以下で掲載する写真は,すべてVAIOから提供されたものとなることをお断りしておく。

 筆者のグループが最初に見学したのは,工場内で「EMCサイト」と呼ばれる電波関連の試験設備である。EMCとは,Electro Magnetic Compatibilityの略で,簡単にいえば電子機器が発する電波が他の機器に干渉したり,人体に有害なレベルになったりしないことを確認することだ。
 先述したとおり,ソニー時代からPC以外の製品も多数手がけていたこともあり,安曇野工場はPC工場としては異例なほど,EMC関連の設備が充実しているのである。筆者は,国内のPC工場を多数取材しているが,ここまでの試験設備があるPC工場は,他にないのではないかというレベルだ。

3m法電波暗室の内部。電波を外部に漏らさない試験室で,ターンテーブル上に設置したPC(左)から発生する電波を,離れた場所に設置した測定機器で検出する
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アンテナ性能測定設備の内部。無線通信機器のアンテナ性能を測定するテスト室とのこと
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こちらはWAN機器の性能を測定する設備の入口(左)と内部(右)
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 次に見学したのは,ノートPCのマザーボード部分を製造する基板実装のラインである。
 デスクトップPC,ノートPC問わず,大抵の国内PCメーカーはマザーボードを外注しており,部品を取り付けて完成したマザーボードを受け取って,本体に組み込むのが一般的だ。昔は大手のPCメーカーであれば,工場内にマザーボードの製造ラインを有していたものだが,高度に機械化されたシステムで維持運用にコストがかかることもあってか,今ではほとんどのメーカーがマザーボード製造から撤退してしまっている。
 だがVAIOの場合,最も製造難度の高いVAIO Zのマザーボードは,安曇野工場で製造しているという。基板自体は完成品として納品され,それに部品を実装してマザーボードとして完成させる作業を,本社工場内で行っているのだ。VAIO Zのためだけに維持するには高価すぎる設備のはずだが,おそらくはこの基板実装ラインを有することが,PC以外の製造受託や第三のコア事業などにも効いてくるのかもしれない。

基板の見本。金属製のプレートに基板を載せて,その上に部品を実装していく。1プレートに2枚のマザーボードが載っているのが分かるだろうか。表裏両面に実装するので,都合2回,ラインを通ることになる
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ペースト状のハンダを基板の部品実装部分に塗ったうえで,部品を載せていく(左)。小型の部品はオープンリールのテープで部品を載せる機械に取り込まれていく(右)。小型の部品といっても,1mm2未満の小さなものからUSBコネクタほどの大きなものまでと多彩だ
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CPUのように大きな部品は,さすがにテープではなくトレイから載せるとのこと(左)。余談だが,MMX Pentiumの時代には,CPUもテープで供給されていたこともあった。部品を載せたプレートは,加熱してハンダ付けする「炉」の中に運ばれる(右)。炉に入れる前に2回,炉の後でも1回,部品が正しく載っているかを画像マッチングで検査するプロセスがある
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 最後の見学は,ノートPCの組み立てや検査の工程だった。
 VAIO Zの場合,基板実装ラインで製造されたマザーボードや,外部のパートナー企業から納品された液晶パネル,キーボードなどを筐体に取り付けて,1台のノートPCへと組み立てていく。接着剤で外装を貼り合わせる作業は機械で,各コンポーネントをまとめて組み立てる作業は作業員が担当するという,分担により作業は行われていた。

接着剤を使ってベゼルや外装部分を組み立てる作業は,ロボットで行っていた
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キーボード(左)や液晶ディスプレイ部分(右)の組み立ては手作業だ
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 一方,国外のメーカーに委託して製造しているVAIO Sも,最終組立は安曇野工場で行っている。筐体にマザーボードやキーボード,液晶パネルを取り付ける作業は委託先のメーカー側で行うが,SSDやHDD,光学ドライブといったストレージなどは,安曇野工場で取り付けているのだ。
 OSやソフトウェアのインストールも同様で,完成状態でのシステム検査も安曇野工場の仕事となる。こうした最終段階を安曇野工場で行うことを,VAIOでは「安曇野FINISH」と呼んでいる。

外部で製造されたVAIO Sも,ストレージの取り付けは安曇野工場の仕事(左)。組み上がったPCのキーボードをテストするのも同様だ(右)
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完成したノートPCにOSをインストールし,検査用ソフトウェアを実行して動作を確認している様子
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VAIO Phone Bizも製造は外注だが,最終的な検査はすべて安曇野工場で行う。左は診断ソフトウェアをインストールして機能検査をしている様子で,右は人手による機能検査の様子
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 日本では珍しくなったマザーボードの製造プロセスがあることを除くと,PCの組み立てや検査の工程は,国内PCメーカーの一般的なものと変わらない。しかし,海外で最終組立までして国内は配送のみというメーカーに比べると,最終的な品質への責任を国内の工場でしっかり保証しているという点は心強い。
 VAIOのPCは比較的高価な製品が多いだけに,品質へのこだわりが言葉だけのものではないというのは,エンドユーザーにも歓迎できることだろう。


VAIOブランドのゲーマー向けノートPCを望む


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 さて,ここまではゲームと何の関係もない話だ。そんなVAIOの本社工場を4Gamerが取材した最大の理由は,ノートPCの商品企画や開発に関わるVAIOのスタッフに,「VAIOの技術でゲーマー向けノートPCを作ってください!」と直訴するためである。

 ソニー時代のVAIOが,ゲーマー向けのPCを作ったことは一度もない。しかし,単体GPUを積んだ重量1.5kg未満のモバイルノートPC「VAIO type S」「VAIO type Z」や,インタフェース規格である「Thunderbolt」の原型となった光インタフェース技術を採用して,専用の外付けグラフィックスボックス「Power Media Dock」で単体GPUを利用できる「VAIO type Z」の2011〜2012年モデルを展開するなど,単体GPUを組み合わせたモバイルノートPCの分野では先駆者であるのだ。

 現在,単体GPUを搭載したモバイルといえるノートPCといえば,Razerの「Razer Blade」か,MSIの「GS40」ぐらいか。グラフィックス性能と排熱設計を適当な重量に収める難しさ,それに加えて適正な製品価格を実現することの難しい点が,手がけるメーカーの少なさにつながっていると思われる。
 だがVAIOの高密度技術があれば,価格はともかく性能と排熱設計,重量のバランスが取れたゲーマー向けノートPCを作ることも不可能ではないはずだ。

 あるいは内蔵ノートPC路線ではなく,RazerのThunderbolt 3接続型外付けグラフィックスボックス「Razer Core」を利用したり,同様の外付けグラフィックスボックスを開発したりという手もある。
 他社にない魅力的なデザインや携帯性を備えたゲーマー向けノートPCであれば,国内だけでなく海外展開も可能であろう。

 といった話を,ソニー時代から旧知の同社幹部や商品企画担当者を捕まえて,熱弁を振るってきたわけだ。それが功を奏するかどうかは分からないが,VAIOのスタッフもゲーマー向けノートPCに求められる要素について,筆者にいろいろと質問をしてきたので,興味は引けたかもしれない。
 VAIOブランドのゲーマー向けノートPCが将来登場してくることを期待したい。

VAIO 公式Webサイト

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