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西川善司の3DGE:ここまで分かった,「PS4 Pro向けゲーム」と「HDR対応PS4ゲーム」のアーキテクチャ
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印刷2016/09/13 00:00

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西川善司の3DGE:ここまで分かった,「PS4 Pro向けゲーム」と「HDR対応PS4ゲーム」のアーキテクチャ

PlayStation Theaterの試遊コーナー
画像集 No.002のサムネイル画像 / 西川善司の3DGE:ここまで分かった,「PS4 Pro向けゲーム」と「HDR対応PS4ゲーム」のアーキテクチャ
 小さく,安価になった新型「PlayStation 4(以下,PS4)と,高性能版にあたる「PlayStation 4 Pro(以下,PS4 Pro)が発表となったのはすでにお伝えしているとおりだ。
 会場となった米ニューヨークのPlayStation Theaterでは,Sucker Punch Productionsの「inFAMOUS First Light」,Guerrilla Gamesの「Horizon Zero Dawn」,Naughty Dogの「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」(以下,Uncharted 4),Insomniac Gamesの「スパイダーマン」(仮称),SIE Bend Studioの「Days Gone」,そしてImpulse Gearの「Farpoint」といったタイトルのPS4 Pro対応版を試遊したり,ないしはプレゼンテーションへ参加したりできるようになっていた。

 筆者はそこで,上記タイトルを開発するスタジオのスタッフとざっくばらんに技術的なフリートークをすることができた。今回は,そこで聞くことのできた内容のうち,「PS4 Pro向けのゲームをどのようにして開発しているのか」というテーマに絞って,得られた情報をまとめてみることにしたい。

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インタビューに応じてくれたゲームスタジオのスタッフ達。エンジニアが中心だった。上段左からGraham Aldridge氏(Lead Graphics Programmer, SIE Bend Studio),Jason Connell氏(Tech Art Lead, Sucker Punch Productions),Alexander Hastings氏(Programmer, Insomniac Games)とChristian Gyrling氏(Programmer, Naughty Dog)。下段左からHermen Hulst氏(Co-founder & Managing Director, Guerrilla Games),Michiel van der Leeuw氏(Techincal Director, Guerrilla Games)
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PS4 Pro版と標準PS4版とでゲーム内容は変わらない


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 PS4 Proに向けたゲーム作りを知るための予備知識としては,PS4 Proというハードのスペック情報が必要だ。未読という人は,筆者の連載バックナンバー「PS4 Pro,そして新型PS4はいかなるゲームマシンなのか。現地取材で分かった新型機の深い話」に目を通しておいてもらえればと思うが,復習がてら簡単に振り返ると,PS4 Proは,標準仕様のPS4に対してCPUで約1.3倍,GPUで約2.28倍,メモリ性能で約1.24倍に強化されている。一方で,CPUとGPUが共有するメモリの容量は8GBに据え置きとなった。

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下,SIE)の方針として,ゲーム開発スタジオには,「PS4 Pro専用ゲーム」の開発を行わないよう,ガイドラインを出している(関連記事)。そのため,ゲームの仕様そのもの,いわゆるゲーム性の部分は,標準的なPS4の持つ性能に合わせて決まることになるわけだ。
 要するに,「従来型のPS4だとシーンあたりに登場する敵の数が10体なのに対し,PS4 Proでは20体になる」などといった違いは生じないということである。

 SIEは発表会で,PS4 Proのキーワードを,

  • One Game
  • One Community
  • Multiple ways to play

SIEが発表会で示したPS4 Proのキーワード。ゲームも,プレイ条件も変わらないが,プレイ方法の選択肢が増える
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としていたが,これは,「ハードによる違いのない,1つの共通仕様のゲーム」(One Game)を,「同じ条件でプレイする」(One Community)ことになるが,「遊び方の選択肢は増える」(Multiple ways to play)という意味だ。

 3つめのMultiple ways to playはやや曖昧な表現だと感じるかもしれないが,SIEによると,これは4K(3840×2160ドット)もしくはフルHD(1920×1080ドット),HDR(High Dynamic Range,ハイダイミックレンジ)およびその対義語としてのSDR(Standard Dynamic Range,標準ダイナミックレンジ)によるすべての組み合わせのこと。「4K&HDR」「フルHD&HDR」「4K&SDR」「フルHD&SDR」のどれでもPS4ファミリーのゲームはプレイできるようになったということである。

 ちなみに,今回話を聞いたゲーム開発スタジオの面々は,映像面におけるPS4 Proの恩恵として,「高フレームレートのサポートも含む,フレームレートの安定化」「より高度なシェーダプログラムを動かすことで得られる映像の高品位化」なども挙げていた。


PS4 Proの高性能はユーザーに何をもたらすのか


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 さて,PS4 Proを入手すると,同じゲームをプレイする場合に,ユーザーは標準PS4よりも1クラス上の映像体験が得られるようになるわけだが,具体的にどんな部分で違いが出てくるのだろうか。
 その点について開発スタジオのスタッフからは「遠方のディテールがきめ細やかに描かれるようになる」「HDR対応であれば,よりコントラスト感の高い映像表現や広色域表現が得られる」といった回答が得られた。

 一方,「PS4 Proの4K解像度出力に向けて,標準PS4版とは別の,高品位な3Dモデルやテクスチャなどを用意することになるのか」という質問には,きっぱり「No」という回答が返ってきた。PCゲームの世界でよくある,「高解像度のテクスチャを用意しておいて,それに切り換える」実装は行われないという。
 ゲームプログラム自体も,標準PS4版とPS4 Pro版で別のものを用意するということはしないとのこと。単一の共通プログラムが動作し,動作するハードに合わせた適応型の挙動をとることになるそうだ。

 では,なぜアセットを共通化するのかという話だが,これについてはすべてのゲームスタジオ担当者が口を揃え「メモリ容量が8GBのまま変わっていないため」としている。
 あるゲームの標準仕様が,その時点で総容量8GBを使い切っている場合,よりデータ量の多い3Dモデルやテクスチャに置き換えることは確かにできない。なるほど,納得のいく回答である。

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 しかし,フルHD前提の標準仕様PS4と同じアセットの使い回しだと,PS4 Pro版での4K出力時の恩恵が薄れてしまわないだろうか。
 その点はゲームスタジオによって回答が分かれ,「4Kをとくに意識せず,標準仕様PS4版をターゲットにゲームを開発していても,PS4 Proで映像品質の十分な向上が得られる」といった内容を答えるところと,「PS4 Proで最大の映像品質向上効果が得られるよう,最大公約数的なアセット制作を意識して取り組んでいく」といった話をするところがあった。
 これは,各スタジオのPS4向けゲーム開発の姿勢によるもので,ある種の「スタジオのカラー」的なものと言えるかもしれない。

 また,あるスタジオは,「テクスチャに関して言えば,PS4 Pro版での4K出力にあたって,ピクセルシェーダプログラムがランタイムで選択するMIP-MAPレベルを一段ないし二段上質なものとする。そうすれば高品位なテクスチャ表現を行える」とも述べていた。

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 この発言を少し噛み砕いてみると,まず,ゲームにおいては,遠方の3Dモデルに適用することを想定して,オリジナルのテクスチャマップよりも解像度を落とした圧縮テクスチャマップをあらかじめ用意しておくことが多い。これがMIP-MAP(ミップマップ)である。
 MIP-MAPでは,元解像度の縦横を半分にしたもの,縦横を4分の1に低解像度化したものといった具合に,どんどん低解像度化を進めておくことになる。なので,「MIP-MAPレベルを一段ないし二段上質なもの」にするというのは,フルHD出力時に選択して適用する低解像度テクスチャよりも,より高解像度のテクスチャを適用すれば,テクスチャ表現品質が自ずと向上する,という意味になるわけだ。

 なお,こうしたMIP-MAPレベル制御について詳しく知りたい人は筆者の連載バックナンバー「『テクスチャの異方性フィルタリング』ってなに?」を参照してほしい。

 さて,MIP-MAPに関連して筆者は,「それでは,PS4 Pro版ではLevel of Detail(LoD)制御を変えて,より遠方でも高品位な3Dモデルを選択して描画したり,あるいはランタイムでテッセレーション技術を駆使して,より多ポリゴン3Dモデルに変換してから描画したりするような実装にはしていないのか」と聞いてみたが,それは全員「行っていない」とのことだった。
 ただ,ここでも回答は分かれた。「LoDのPS4 Pro向け最適化は,技術的に可能ではあるけれども,ポッピング(※)への対策(という手間が増えること)などを考えると,手を出しにくい」と言うところと,「もともと遠方の低ポリゴン3Dモデルは,フルHD出力時でも十分な解像度で描けていない。4K出力時にちゃんと描けるようチューニングしておけば,標準仕様PS4版でもPS4 Pro版でも最良の動作が得られるだろうから問題ない」と言うところがあった。これは興味深い返答である。

※LoDレベルの異なる3Dモデルに切り換えたとき,その切り換えタイミングにおいて3Dモデルの体積変化などが生じることで,エンドユーザーに当該タイミングがバレる現象のこと。見た目に大変残念な感じとなる。

 PS4 Pro版でシャドウマップの解像度を上げたり,シャドウマップのカスケード枚数を増加させたりして,より高品位な影生成を行ったりすることはないのかと一応聞いてみたが,これへの回答は3Dモデルおよびテクスチャについて聞いたときと同じだった。そう,「メモリ容量の問題があるので,そうした対応はしにくい」というものだ。
 シャドウマップの解像度を上げればたしかに影の品質は上がるが,メモリ使用量は増加する。カスケード枚数を増量しても同様なので,現実的ではないということなのだろう。


PS4 Proの4K出力は,4Kレンダリングと同義ではない


 9月9日掲載の記事でも触れたが,ゲーム開発スタジオのエンジニアにも,あえて同じ質問をぶつけてみた。「4Kのリアル解像度レンダリングは,従来比約2.28倍のGPU性能向上と約1.24倍のメモリバス帯域幅向上程度ではまかないきれないのではないか?」というものだ。

 その回答は,当然のことながら先の記事と同じ。「そのとおり。実際に4Kレンダリングを行っているわけではなく,フルHDよりも高い解像度でレンダリングして,これをアップスケールして表示する実装だ」だった。先の記事で簡単には触れているが,PS4 Proでは,2560×1440ピクセルや2840×1600ピクセルなどといった,フルHDを超える適当な解像度でレンダリングし,これを4K解像度にアップスケールして出力する実装となっているとのことである。

 「リアルな4K描画じゃないなら,効果は薄いのでは? PS4 Pro見送ろうかな?」と思った人もいるだろうが,なかなかどうして,Uncharted 4やHorizon Zero Dawnでは相当念入りに観察したが,まるで自分の視力が上がったのではないかと錯覚するほどディテール表現が増して,ジャギー感の低減が感じられた。大画面サイズの4Kテレビだと,その恩恵がとくに分かりやすい。


 9月9日掲載の記事ではもう1つ,PS4 Proが採用するGPUコアは,PS4と同じく「Graphics Core Next」アーキテクチャを採用した「GCN 1.1」世代で,そこに,Polarisマクロアーキテクチャの「GCN 1.3」世代が持つ要素技術を取り入れたものになるとSIEが語っていたこともお伝えしている。
 では,その「要素技術」に,「GCN 1.2」世代の「Lossless Delta Color Compression」(ロスレス・デルタカラーコンプレッション,以下 LDCC)は含まれているだろうか。

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 LDCCというのは,リアルタイム可逆圧縮技術を用いてカラーデータをフレームバッファなどへ圧縮して書き込み,それを読み出して展開する手順によってグラフィックスメモリにアクセスするもので,グラフィックスメモリの実効帯域幅を向上させることができる技術だ(関連記事)。その効果は,AMDの見立てで「通常伝送時と比べて2倍の効率を持つ」とのことだが,この件について,ゲームスタジオ担当者とのフリートークとは別のタイミングでSIEに確認したところ,「PS4 ProにおいてLDCCの世代が新しくなっているかどうかの情報は,現時点では非公開とさせてほしい」という回答が得られた。

※2016年11月5日追記:
 初出時,「初期型PS4からLDCCは実装済み。PS4 ProにおいてLDCCの世代が新しくなっているかどうかの情報は非公開とさせてほしい」というSIEからの回答をお伝えしていましたが,その後,初期型PS4にLDCCは搭載していなかったと,SIEから情報のアップデートが入ったため,記事を更新しました。続報が「西川善司の3DGE:知られざるPS4 Proの秘密(1)メモリ増量に,Polarisと次世代GPUの機能取り込み!?」にありますので,合わせて参照してください。


 仮に2560×1440ピクセルでレンダリングするにしても,シェーダ性能が約2.28倍に上がっているのみでは心許ない。解像度を上げてレンダリングしたうえで,フルHD時と同じフレームレートまでを実現するとなると,レンダリング結果を出力するグラフィックスメモリも高速でないと困難である。
 PS4 Proのグラフィックスメモリ帯域幅は標準仕様PS4に対して約1.24倍。LDCCの効果で,この倍率をさらに引き上げていると考えれば,納得のいく話だが,果たして。


HDR対応ゲームのレンダリングパイプライン


 ここまでのことを踏まえ,標準PS4版とPS4 Pro版とで,レンダリングパイプラインで大きく変わってくるのはフレームバッファの解像度だけなのかと確認してみると「大体そうだ」という答えが返ってきた。
 しかし,HDR対応にまで話を広げると,一部で改変しなければならない部分も出てくるという。HDR対応は,PS4 Proの専売特許ではなく,初期型も含むすべてのPS4で実現となるからだ。

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 順序立てて解説しよう。
 現在のHDR対応テレビが採用するHDR出力フォーマットは「HDR10」と呼ばれ,これは,人間の視覚特性に対応させた階調割り振りのPQ(Perceptual Quantization)関数を用い,10bit深度で映像を量子化するものとなっている(関連記事)。
 4K&HDRの場合,映像データは色差(YUV)=4:2:0形式(※輝度はフル解像度,色解像度は4分の1)ないしは,4:2:2形式(※輝度はフル解像度,色解像度は2分の1)で表現する。いうまでもないが後者のほうが高画質だ。
 一方,フルHD&HDRの場合は,RGB各10bitでの表現となる。フルHD解像度の伝送であれば,HDMIの帯域幅に余裕があるからだ。さらに,この状況で接続先のテレビやディスプレイがDeep Color対応であれば,RGB各12bitでの接続が行われるということだった。
 なお,色空間はITU-R Recommendation BT.2020(俗称BT.2020)が規定したものになるため,映像を出力する段階で「BT.2020色空間に対応したHDR10フォーマット」になっていなくてはならない。

 そこで確認したところ,今回筆者の質問に答えてくれたすべてのゲーム開発スタジオは,テクスチャをsRGB色空間で,光源についてはHDR光源を設定しているという。
 なので,彼らのゲームタイトルにおけるPS4 Pro版のHDRレンダリングパイプラインは,下に示すとおりの流れになっていると見られる。

  1. レンダリングにおけるテクスチャマップ読み出し時に,BT.2020色空間へ変換する
  2. 光源色などをBT.2020色空間前提で設定し,ライティング計算もBT.2020色空間へ対応させる
  3. PQ関数でHDR10フォーマットに変換してHDR出力する

あるいはもう少しシンプルに,次のような実装パターンもあり得る。

  1. sRGB色空間でHDR光源を設定してHDRレンダリングする
  2. ディスプレイデバイスへの出力時にBT.2020色空間へ変換する
  3. PQ関数でHDR10フォーマットに変換してHDR出力する

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 フレームバッファのフォーマット自体はαRGBが各16bitの64bit浮動小数点だそうで,後段におけるHDR10フォーマット変換時に,4K&HDRの場合は,YUV各10bit整数(YUV=4:2:0ないしは4:2:2形式)に,フルHD&HDRならば,RGB各10bit整数へ変換することになるという。
 一部のスタジオは「すべてのアーティストにBT.2020色空間対応のディスプレイを与え,テクスチャをBT.2020色空間で制作するような開発体制を整えたい」とも述べていた。

 BT.2020色空間は,現実世界に存在する物体色の99%を再現できる広色域系で,テレビやディスプレイで現在一般に採用されている標準的な色空間であるsRGBと比較すると,とてつもなく広い。テクスチャ素材や光源色をBT.2020色空間で制作するようになると,ゲームグラフィックスは「フォトリアル」から「現実世界的なリアル」な色表現に到達できるようになるかもしれない。


PS4 ProはPS VRに何をもたらすのか


 VR(Virtual Reality,仮想現実)ゲーム体験を提供するヘッドマウントディスプレイ「PlayStation VR」(以下,PS VR)に,PS4 Proの高性能は何をもたらすのかだが,恩恵は2つあると見込まれている。

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 1つはフレームレートの向上だ。
 PS VRは,ハードウェア的には120Hz(120fps)の映像表示を行える設計になっている。ただ,一部の例外を除けば,ほぼすべてのPS VR対応ゲームは,たとえばキャラクターの移動やアニメーションを60fps程度で実装しつつ,タイムワープ処理などを組み合わせたヘッドトラッキング映像表示にだけ90fpsや120fpsを利用している。
 それが,高性能なPS4 Proであれば,ゲームコンテンツ側のフレームレートも90fpsないしは120fps対応させることができるようになるのである。

 もう1つは映像表現の向上である。
 PS VR向けタイトルでも,3Dモデルやテクスチャのアセットは単一で,共通になるのは変わらない。また,PS VRの映像解像度は,PS4 Proで動かそうが標準仕様PS4で動かそうが「両眼でフルHD相当」のまま変わらないので,映像の品質が向上するように思えない。

 しかし,違うのだ。
 PS VR用タイトルであるFarpointをデモ展示していたImpulse Gearのエンジニアに聞いたところ,Farpointの場合,標準仕様PS4ではフルHD解像度でレンダリングしている映像を,PS4 ProではフルHDよりもかなり高い解像度でレンダリングし,それをオーバーサンプリングしてフルHD解像度へ圧縮して,PS VRに表示させているという。

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 PS4 Proが4K出力を行うのと同じアイデアで高解像度レンダリングを行う。すると,テクスチャのMIP-MAP上位選択によって,テクスチャ表現等のディテール表現が向上する。
 PS VRに表示する段階で映像はオーバーサンプリングされるため,アンチエイリアシング効果が得られる。さらに,アンチエイリアシング効果は,ただジャギー感を減らすだけでなく,時間方向にピクセルがうねる「Pixel Shimmer」(ピクセルシマー。「Pixel Crawling」とも言う)現象の低減にも効果があるそうだ。
 Impulse Gearによると,PS4 Pro版と標準仕様PS4版とで,フレームレートは「Identically the same!」(完全に同じ!)とのことなので,Farpointでは,ゲーム性に影響するフレームレートを弄ることなく,映像表現の向上だけにPS4 Proの高性能を活かしたということになるだろう。


PS4ユーザー歴が長い人に向く!? PS4 Pro


 いかがだろうか。PS4 Proに何を期待でき,何ができそうかが,ある程度見えてきたのではないかと思う。

 筆者としては,PS4 Proは,現行PS4のユーザー歴が長い人ほど,買い替える価値があると思っている。Unchartedのような発売済みのゲームに対しては無料で4K&HDR対応パッチが提供される予定とのことなので,手持ちのタイトル数が多いほど,「上位性能の恩恵」を肌で感じられるはずだ。

 それと,これまでPS4を所有していない人で,VRに関心が高く,PS VRの購入とともにPS4も購入しようとしている人にも,PS4 Proをお勧めしたい。
 ネイティブ120fpsに対応して“しまって”いるPS VRは,標準のPS4からすると,性能が高すぎるのである。これは悪口ではなく,PS VRの高性能は,PS4 Proと組み合わせることによって真価を発揮すると言いたいのだ。

 そんなわけで,PS4 Proの発売を心待ちにしたい。


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PlayStation公式Webサイト

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