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PS4 Proによって提供する上位体験には,まだ“隠し玉”がある。西川善司氏によるSIE吉田修平氏への単独インタビュー
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印刷2016/09/23 16:05

インタビュー

PS4 Proによって提供する上位体験には,まだ“隠し玉”がある。西川善司氏によるSIE吉田修平氏への単独インタビュー

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下,SIE)は,東京ゲームショウ2016(以下,TGS 2016)に合わせるようにして,新型のPlayStation 4や,ハイエンド的な位置づけとなる「PlayStation 4 Pro」を初披露し,今後のタイトルラインナップについての情報も多数発表するなど,活発な動きを見せた。

 TGS 2016の会期中,そんなSIEのワールドワイド・スタジオ プレジデントを務める吉田修平氏に単独インタビューする機会を得たので,その模様をお届けしよう。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / PS4 Proによって提供する上位体験には,まだ“隠し玉”がある。西川善司氏によるSIE吉田修平氏への単独インタビュー

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「PS4,始まったな」を実感できる今後のPS4向けタイトル


4Gamer:
 新型というか薄型PS4が発売され,来月にはPlayStation VR(以下,PS VR)が発売されます。そして11月にはPS4 Proも発売になりますね。ハードウェアの方ばかりに目が行きがちではありますが,せっかくコンテンツ制作部門の司令塔である吉田さんとお話ができるのですから,今後のソフト面の戦略というか方針というか,動向のような話を聞かせてもらえれば,と思います。

吉田氏:
 はい。まずPS4 Proへの対応ですが,東京ゲームショウやニューヨークのPlayStation Meeting 2016で見せていたものは,まだ,試作段階という位置づけです。年内に既存タイトルへのPS4 Pro対応パッチが提供されるタイトルもありますが,PS4 Proユーザーに向けた最高の体験が提供できるのは,2017年以降に発売されるものになると思います。

TGS 2016のPlayStationブース
画像集 No.002のサムネイル画像 / PS4 Proによって提供する上位体験には,まだ“隠し玉”がある。西川善司氏によるSIE吉田修平氏への単独インタビュー

4Gamer:
 今年後半になって,PS4向けの著名タイトルで発売が延期になったものがチラホラありますが,あれはPS4 Proへの対応と関係があるんでしょうか。

吉田氏:
 いえ,そちらのタイトルの発売延期はPS4 Proへの対応とは無関係です。今期発売予定のタイトル群は,標準PS4の性能や特長をタイトルごとに効果的に引き出してくれているのですが,その方向性は維持しつつ,よりよい作品にするために延期になったとご理解下さい。私がこのタイミングで言うのもなんですが,これから出てくるタイトル群はきっとみなさんに「PS4,始まったな」と感じてもらえると思いますよ。

4Gamer:
 さきほど,「PS4 Proユーザーに向けた最高の体験が提供できるのは2017年以降」という話がありましたが,もう少し詳しく聞かせてください。

吉田氏:
 現在,多くのゲームデベロッパの皆さんが,PS4 Proの性能と向き合って研究,解析を行っています。西川さんが書かれたあの記事は,広くヒアリングされていて,よく書かれていましたが,PS4 Proで提供できる上位体験はあれだけではないんですよ。
 我々は,そのあたりの技術サポートをライセンシー様に対しても行っています。GPUの性能向上分以上の高い表現力をお楽しみ頂けるようになるはずです。詳細は,その時が来たときに開示できると思います。

4Gamer:
 それは楽しみですね。

吉田氏:
 それと,繰り返し我々から申し上げていることですが,高性能なPS4 Proでは,標準PS4と違うゲーム内容になる……とか,PS4 Proだからこんなゲームが作れる……ということにはなりません。ゲーム体験としては標準PS4でもPS4 Proでも同じです。
 どうしても「新しいモノ」としてPS4 Proの方に目が行きがちですが,今期以降のPS4向けタイトルは,標準PS4でプレイしても,これまでのタイトルよりさらにゲーム内容,映像美,音響表現がステップアップしていると思います。

4Gamer:
 具体的にはどのタイトルですか。

吉田氏:
 我々のものでいえば「GRAVITY DAZE 2」「人喰いの大鷲トリコ」「Days Gone」「Horizon Zero Dawn」などは,同じPS4で動いているとは思えないほどの完成度,表現力になっていると思います。
 既にリリースされている「KILLZONE SHADOW FALL」,「inFAMOUS Second Son」なども幸い高い評価を得ていますが,実を言うと,あれらはPS4の発売タイミングに間に合わせて開発するという命題があったため,採用した要素技術に少々遠慮があったんです。

4Gamer:
 それを聞いて期待が高まりました。

「Horizon Zero Dawn」
画像集 No.003のサムネイル画像 / PS4 Proによって提供する上位体験には,まだ“隠し玉”がある。西川善司氏によるSIE吉田修平氏への単独インタビュー

HDR対応/非対応は開発者が選択可。「グランツーリスモSPORT」はアセット制作段階からHDR/広色域対応


4Gamer:
 PS4 Proが4K(3840×2160ピクセル解像度)とHDR(ハイダイナミックレンジ)に対応するのは予想できましたが,標準PS4もHDRに対応することには驚かされました。ちなみに,競合のXbox Oneは,薄型/新型のXbox One Sが4KとHDRに対応していますが,初期型Xbox OneのHDR対応は今のところアナウンスされていません。

吉田氏:
 私もハードウェア側の部隊から「調査の結果,初期型PS4でもHDR対応できます」と聞いて驚いたくらいです。なので,我々,ゲーム開発の方も,HDR対応に関しては急ピッチで作業を進めています。

4Gamer:
 4KとHDR,この映像に関する新2大要素はゲームファンにとって非常に魅力的なものだと思うのですが,心配なのは開発作業量の増大です。

吉田氏:
 4K対応は,PS4 Proの性能と向き合うという部分での手間はありますが,開発側の実作業はそれほどでもないんです。HDR対応も,プロセッサにかかる追加負荷という意味ではそれほどでもありません。だからこそ標準PS4でも対応できるわけですし。
 しかし,HDR対応は,映像の見え方が変わることで,ゲームデザイン(≒ゲーム性)やアートディレクションに大きく関わってくる可能性がありますから,開発サイドの負荷はそれなりにあります。

4Gamer:
 「HDR版だと,暗がりに隠れているゾンビが,標準版より遠くから見えてしまう」……みたいなことを回避しないといけなくなって,そうした調整に手間を取られる可能性がある,ということですね。

吉田氏:
 そうなんです。なので「HDR対応」について,現状は「オプション扱い」(対応するかしないかは開発スタジオ側の判断に委ねる)としています。
 「Horizon Zero Dawn」「Days Gone」「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」のような,現実世界をリアルに描き出す方向のグラフィックスならHDR対応の効果は大きいと思いますが,アニメタッチのグラフィックスのゲームなどでは,もしかするとHDR対応の意味があまりないかもしれません。そこに開発サイドの選択の幅を設けています。

4Gamer:
 ただ,HDRは一度見てしまうと,もとのSDR(スタンダードダイナミックレンジ)には戻れないほどの魅力がありますよね。4Kは空間方向の情報量拡大なので,面積の小さい画面では高解像感が分かりづらく,具体的には40インチ後半か,あるいは50インチ以上の画面サイズでないと,そのありがたみが伝わりにくいというか。
 しかし,HDRは各ピクセル単位の表現力が拡大される……いわば画面の奥行き方向に表現力が増大するので,どんな画面で遊ぶユーザーにも分かりやすい映像要素だと思います。

吉田氏:
 確かにそうです。実際問題として,HDR,そしてそれに付随する広色域表現は初期型PS4を含む全てのPS4ユーザーに届けられる新しい映像体験要素ですから,積極的に対応を進めようと考えています。

4Gamer:
 HDRについては,PCの世界ではまだ「デモ止まり」といった感じですが,PS4,そして競合のXbox One Sといったコンシューマゲーム機が,意外にも共にHDR対応を積極的に進めてくれるようで,自分のような映像ファンとしては嬉しい限りです。もしかすると,HDRコンテンツは,映画よりもゲームの方が充実していくかもしれない……とすら思っています。

吉田氏:
 そうですね。力を入れていきたいと思っています。ファーストパーティでは,「グランツーリスモSPORT」が,テクスチャをはじめとした各アセットの制作段階からHDRと広色域前提で開発を進めていますから,楽しみにしていてください。

「グランツーリスモSPORT」
画像集 No.006のサムネイル画像 / PS4 Proによって提供する上位体験には,まだ“隠し玉”がある。西川善司氏によるSIE吉田修平氏への単独インタビュー

4Gamer:
 それは凄い。本物のフェラーリの赤が,各プレイヤーのテレビ画面で再現される日がついに来るというわけですね。ただ,フルHD(1080p)解像度のHDR対応ディスプレイやテレビ製品がないなど,HDR環境の導入難度の高さが,現時点では気になっています。HDR対応のディスプレイ装置を買い求めようとすると,自ずと高価な4Kテレビを選択するしかないですからね。

吉田氏:
 そうなんですよね。そこには課題を感じてはいます。逆に,比較的安価な4KのPCディスプレイ製品になると,HDRに対応しているわけでもなかったり。

4Gamer:
 ここはテレビやディスプレイのメーカーに頑張ってもらうしかないですね。安価な「フルHD解像度×HDR」対応の製品が登場してほしいと思っています。それと,安価で粗悪なHDMIケーブルだと,4K出力に失敗したり,接続が不安定になったり……といった地味な接続性の問題も出てきそうですよね。

吉田氏:
 PS4およびPS4 Proユーザーには,そのあたりの品質が保証された商品同梱のHDMIケーブルを使ってもらえればと思います。


PS4 ProはPS VRと相性がいい?


4Gamer:
 PS VRがついに来月発売になります。個人的には,PS VRはPS4 Proと組み合わせると本領発揮……みたいな視点を持っているんですが,そのあたりは吉田さんから見てどうですか。

吉田氏:
 「PS VRにはPS4 Proが必要」ということはありません。ただ,「この機会にPS VRも買うし,PS4も買う」「しかも予算的に両方買える」……そんな人にはPS4 Proをお勧めしたいです。

4Gamer:
 自分は,PS4 ProとPS VRで動いている「Farpoint」をニューヨークのイベントで体験しましたが,たしかに映像のクオリティが格段に違っていました。

吉田氏:
 PS VR自体の解像度はフルHD(1080p)ですが,VRの場合,映像に拡大光学系の逆の歪みを与えて表示する関係で,解像度が不均衡になります。こうしたシステムでは,元の映像を高解像度で描画すればするほど,表示自体の品質は自ずと上がります。なので,PS4 ProをPS VRと組み合わせるのはお勧めですよ。4Kテレビを持っていなくても,PS VRに重きを置く方であれば特に。

画像集 No.005のサムネイル画像 / PS4 Proによって提供する上位体験には,まだ“隠し玉”がある。西川善司氏によるSIE吉田修平氏への単独インタビュー

4Gamer:
 PS4 ProでPS VRを使ったときに違いが分かりやすいVRコンテンツには,ほかに何がありますか?

吉田氏:
 我々で制作したものとしては「THE PLAYROOM VR」が分かりやすいと思います。PS4 Proでは相当のクオリティアップが体験できますよ。

4Gamer:
 既存のPS4ユーザーで,PS VRを買おうと決意している人は,PS4本体もProへ買い換えるのが良さそうですね。

吉田氏:
 PS VRは標準PS4で使って頂いても十分な体験ができることは強調しておきます。PS4 ProでPS VRコンテンツが高品位に楽しめる,というのは,あくまで「両者を比較したら」という話です。ただ,既存のPS4ユーザーには,PS4 Proを買い増しして頂くのもいいんじゃないかな,とは思っています(笑)。

4Gamer:
 PS4の2台体勢ですか。

吉田氏:
 私もPS4 Proが発売されたら,一緒に4Kテレビも買おうかなと思っていて。もともとあったPS4は別の部屋のテレビにつないでそのまま使い続けようと思っています。
 同一のSony Entertainment Network(SEN)アカウントで複数台のPS4から同時にログインすることは認められていませんが,あるアカウントでの購入コンテンツを複数のPS4に入れることはできますので,同時ログインしないようにすれば,それぞれのPS4でコンテンツを楽しめます。

4Gamer:
 ただ,家族内で同一のSENアカウントを共用している場合,新たにログインしたPS4の方が優先されて,それまでログインしていたPS4の方は強制ログアウトになってしまいますよね。まぁ,ネットワークにつながず,オフラインでのゲームプレイであれば,そうしたことも起きないでしょうが。

吉田氏:
 既存PS4ユーザーの皆さんには,PS4 Proも買い増しして頂いて,ぜひ,手持ちのPS4も有効利用して頂きたいですね。
 私自身の場合だと,PS4 ProはPS VR用に使うとして,手持ちのPS4は普通のゲームプレイ用にしようかと思っています。ただ,結局,そっちもPS4 Proにしたいと思っちゃうかもしれませんねぇ。

4Gamer:
 根っからのPS4好きですね。まぁ,当たり前でしょうが(笑)。ありがとうございました。

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