連載
レトロンバーガー Order 51:Xbox Series Sの後方互換で旧作シューティングをプレイして「うまい 確かにうまいんだが」とか言う編
新世代のゲームハードが発売されましたね。筆者も買いました! Xbox Series Sを!!
「なんでXじゃないんだよ。ヌルゲーマーか? その体たらくで『ゲームメディアの編集者です』ってのは,『年内には死ぬので勘弁してください』ってことか?」と思う人もいるかもしれませんが,だって来年(2021年)って初代Xboxの米国発売(2001年)から20周年じゃないですか。なので「PlayStation 4 20周年アニバーサリーエディション」のXbox版みたいなやつが出るはずです(※)。
※個人の霊感および第六感に基づく予想です。
Xbox Oneは「Xbox One+Kinect(Day One エディション)」から始まり,「Xbox One 1TB Forza Motorsport 6 リミテッド エディション」や「Xbox One X Project Scorpio Editon」,裏面にレッドストーン回路の意匠が盛り込まれた「Xbox One S Minecraft Limited Edition Bundle」など,たくさんの限定版本体がありました。それなのに「Xbox 20周年だからと言って出すものは別段ありません」なんてことがあるでしょうか?
もし「Xbox Series X 20thアニバーサリーエディション」なんてものが出たら,当然欲しくなります。なのに今Xbox Series Xを買ったら「Xbox Series XとXbox Series Xでダブってしまった」となりかねません。筆者宅にはゲームハードがちょっと一般より多めに,例えばPS4は初期型とProで2台あったり,メガドライブはSoCになったものを含めれば16台くらいあったり,レーザーアクティブはパイオニア版×2とNEC版×1で計3台あったりして,常日頃「うわあ なんだか凄いことになっちゃったぞ」と思っているわけですが,正直言うと同ハードのダブりは(まして同バージョンの基板は)極力避けたいところ。筆者にとって,あればあるほど良いのはドリキャスのシェル違いくらいのものです。
そしてXbox Sereis Sと言えばシューティングゲームですね。末尾のSはシューティングのSな気もします。Microsoft Storeには昔のシューティングゲームがけっこうありますし,Xbox Series X/Sは後方互換で旧ハードのゲームをプレイできたりしますので,今回はXbox Series Sでやっていきましょう。ちなみにPS5は抽選漏れを繰り返してます。
この辺に,ひとりでチャチャッと何か遊べるシューティングなんてありますかね?
まずは「現行プラットフォームだとXboxプラットフォームでしかプレイできないタイトル」からやっていきましょう。それもMicorosoftが直に販売しているやつを。そういったタイトルは,例えばXbox用ソフト「プロジェクト ゴッサム レーシング2」のミニゲームだったものが独立・発展した「Geometry Wars: Retro Evolved」および「Geometry Wars: Retro Evolved 2」なんかがあったりしますが,トップバッターには華のあるやつを……というこで,Xbox 360用ソフト「トリガーハート エグゼリカ」です。
トリガーハート エグゼリカ
Microsoft Studios(現Xbox Game Studios)が販売しているXbox 360版「トリガーハート エグゼリカ」は,2006年にリリースされたアーケード版を移植したもの。ドリームキャスト版やPS2版のようなストーリーモードはありませんが,グラフィックスとサウンドがブラッシュアップされています。
本作の特徴は,メカ少女(スク水)というキャラクターデザインと,“アンカー”の要素です。アンカーは,空中の敵に撃ち込むとキャプチャ(捕獲),地上の敵に撃ち込むとロックオンできる特殊ショット。キャプチャした敵はレバー入力で回転させて(アーケード版の仕様。Xbox 360版は自動回転がデフォルト)ハンマー投げさながらの投擲攻撃(ファン間での通称:室伏)ができます。投擲攻撃はスコア稼ぎに直結しているのですが,あえて投擲を控えて低スコア進行に努めれば,ゲーム内ランク(難度)の上昇をかなり抑えられるので,ビギナーでも「駆け引きと挑戦のあるゲームプレイ」を楽しめる設計となっています。あとメカ少女(スク水)です。
レイディアントシルバーガン
こちらもMicrosoft Studios販売の「レイディアントシルバーガン」は,1998年にリリースされたセガサターン版をブラッシュアップして移植したもの。数あるシューティングゲームの中でもとくにギミック寄りのゲームシステムで,ショットが7種類(+ハイパーソード)もあるうえ,多彩な隠しフィーチャー(犬とか)が存在します。
本作の実質的な続編である「斑鳩」もXbox 360向けにリリースされていて,その実績を何かしら所持していると,Xbox 360版「レイディアントシルバーガン」で“IKARUGAモード”をプレイできるようになります。「斑鳩」はPC/PS4/Nintendo Switchなど多くのプラットフォームでリリースされていますが,せっかくならXbox 360版も購入しちゃいましょう。
ぐわんげ
Xbox 360でリリースされたケイブのタイトルは大抵が後方互換に対応していませんが,室町妖怪シューティング「ぐわんげ」はXbox OneおよびXbox Series X/Sでもプレイ可能です。ケイブのシューティングゲームというと一般的には「弾幕! 鬼畜! 難しい!」みたいなイメージがあるかと思いますが,本作は残機制でなく体力制だったり,体力回復アイテムがプレイ中に複数出たりするので,比較的プレイしやすいゲームデザインとなっています。1999年にリリースされたアーケード版を再現したモードのほか,プレイヤーキャラクターと式神を個別に動かせるのでビギナーに易しい“アレンジ(Xbox 360)モード”や,システムが改修されて熟練者でもさらに楽しい“アレンジ(青)モード”が搭載されています。
ナツキクロニクル
キュートから2019年12月にリリースされたXbox One用ソフト「ナツキクロニクル」も見逃せないタイトルです。本作は,2013年にXbox 360版がリリースされた“ドラマティック縦スクロールシューティング”の「ギンガフォース」とリンクした作品で,そちらではステージボスとして登場したナツキを主人公とした“ドラマティック横スクロールシューティング”。
“レトロどころか最新作”ですが,自機のウェポンにはワインダー(高度が自機に追従)するレーザーがあったり,ウェーブショットが地形を貫通したり,敵弾を防ぐ光球の射出攻撃ができたり,その光球に自機の周囲を回転するバージョンがあったりと,レトロな横スクロールシューティングの名作をリスペクトしたと思われるものが多数存在します。
リスペクトばかりというわけでもなく,「攻撃目標地点に降下する」というミッションプランで空戦から対地のシーンにシフトしたり,「護衛対象が攻撃を受けている」という通信を受けて逆スクロールが始まったりと,シナリオとステージの演出が噛み合ったデザインは,“ドラマティック”を謳うだけのことはあるといったところ。見た目的な要素だけでなく,“ちゃんと死なす”ようなレベルデザインの構築にも成功しています。
何も名物にとらわれなくてもいいじゃないか 面白ければそれで
今はマルチプラットフォームが当たり前となっているので,Xbox Series X/S“でも”遊べるタイトルが多く出ています。いかにもレトロゲームな「アケアカNEOGEO」シリーズや,「R-Type Dimensions」「NAMCO MUSEUM ARCHIVES」「アーケードクラシックス アニバーサリーコレクション」「婆裟羅コレクション」などなどなど。「式神の城」の系譜を継ぐ「シスターズロワイヤル 5姉妹に嫌がらせを受けて困っています」もレトロゲーマーに刺さるタイトルです。
バトルガレッガ Rev.2016
エムツーからXbox One版は2017年に発売された「バトルガレッガ Rev.2016」は,エイティングが1996年にリリースしたアーケードゲーム「バトルガレッガ」を移植したもの。エムツーならではの職人芸でアーケード版が再現されているうえ,便利かつ見た目的に楽しい“ガジェット”も搭載されています。「バトルガレッガ」と言えばスコアを稼ぎつつも内部ランクを調整しながら進んでいく綱渡りのようなプレイが魅力ですが,SUPER EASYモードでは「ガンガンパワーアップして撃って壊して楽しいガレッガ」(公式サイトの表記より)を楽しめたりもします。
雷電V
こちらも“レトロどころか最新作”ですが,「雷電V」は,モスが2016年2月にリリースしたXbox One用タイトル。「雷電」シリーズのナンバリングタイトルとしては13年ぶり,しかも家庭用初の完全オリジナル作品なうえ,自機セレクトや明確なストーリー展開の搭載,ことぶきつかさ氏が描いたキャラクターの起用,他プレイヤーと間接的に協力するチアーシステムなど,“雷電らしさ”は保ちつつも多数の新たな試みが行われています。他プラットフォームでもリリースされていますが,オリジナルと言えるのはXbox One版です。
このどこか野暮ったい味って……いい意味で取り残されたゲーセンのようだ
Microsoft Storeでは,インディーズゲームも多く配信されています。昨今はレトロオマージュがブームなので,ベクタースキャンゲームをオマージュした「Debris Infinity」やピクセルアートをフィーチャーした「Project Starship」など,“レトロ感ある新作”も盛り沢山!
STURMWIND EX
そんなインディーズゲームの1つ「STURMWIND EX」は,2013年に発売されたドリームキャスト用ホームブリュー(セガ非公認)ソフト「Sturmwind」を高解像度化のうえ移植したもの。大まかな「地球がエイリアンによる侵攻を受けている」といったシチュエーションをバックボーンに,SF戦闘機でタコとかメカとか巨人とかを倒していきます。「多彩なステージ! 多数のボス!」といった感じの,物量的プレイバリューが充実したタイトルです。
ちなみに「ドリームキャスト用のホームブリューソフトとしてリリースされたシューティングゲームを現行機に移植したもの」では「Ghost Blade HD」というタイトルもあって,Xbox Oneを含む複数のプラットフォームでリリースされていますが,なぜか日本からはXbox One版のみ購入不可。なんか,まあ,アレですね。
まいったな……ピーンときたのになぁ
そんな感じで,妙な「おま国」が存在するXboxプラットフォーム。Xbox Game Passも,リージョンによって提供タイトルに違いがあります(「日本のみに提供されている」という場合もあるようです)。
後方互換も,けっこうな数の非対応タイトルがあります。先述の「ギンガフォース」も非対応で,Xboxプラットフォームで「ナツキクロニクル」と「ギンガフォース」を遊びたいとなったら,Xbox 360とXbox OneまたはXbox Series X/Sが必要となります。PCやPlayStationプラットフォームだったら(「ナツキクロニクル」が発売されれば)1台でイケんのにな! あと周辺機器の互換性が無いから,Xbox 360時代にやたら出たアーケードスティックも,今や持て余すし!
そんなわけで,非互換の旧作もついでに見てみましょう。
※以下のスクリーンショットはXbox 360の映像出力をキャプチャしたもの。
オトメディウスG / オトメディウスX
KONAMIから2007年にリリースされたアーケードゲーム「オトメディウス」の家庭用移植版が「オトメディウスG(ゴージャス!)」,その続編にあたるのが「オトメディウスX(エクセレント!)」です。「オトメディウス」シリーズは,簡単に言えば“自機が乙女になった「グラディウス」”といったタイトル(一部男性あり)。「グラディウス」系譜のタイトルとしては珍しく,任意に発動できるボム的なシステムの“バースト”が搭載されています。
RAYSTORM HD
タイトーの「RAYSTORM HD」は,1996年にリリースされた「レイストーム」のグラフィックスをモダンに(と言っても10年前のモダンですが)刷新したもの。特定の条件を満たすことで,過去の家庭用移植版に隠し要素として搭載されていた機体「R-GRAY0」と,本作独自の機体「R-GEAR」が使用可能となります。
まもるクンは呪われてしまった!
Xbox 360版「まもるクンは呪われてしまった!」は,2008年にリリースされた同名アーケードゲームに,ストーリーモードなどの新要素を追加したうえで移植したもの。珍しい任意スクロール型のシステムを採用しているほか,敵にも自分にも影響を与える“呪い弾”の扱いが難しくも楽しい,「レイディアントシルバーガン」とは別の路線でギミック寄りのタイトルです。
それ以外にも「式神の城」シリーズの家庭用移植もありましたし,「バレットソウル」シリーズや「カラドリウス」の初出もXbox 360でしたし,「シューティングラブ。」シリーズも複数出ましたし,「サクラ……は,なんかいろいろあったそうなので置いとくとして,Xbox/Xbox 360はシューターにとって非常に素晴らしいプラットフォームでしたね! でした!!
ゲームを遊ぶときはね,誰にも邪魔されず自由で,なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……
Xbox Series X/Sは,Microsoftのカンファレンスでも華々しいゲームや「やってみたい!」と思えるゲームが多く発表され,「ゲームをプレイするプラットフォーム」としては優れていると感じられます(でなければ買ってませんよ!)。「Halo」や「Gears of War」,「Forza Horizon」といった定番シリーズはもちろん楽しみですし,「Grounded」や「Everwild」といった新規IPも魅力的で,言うなればフルコース料理のような豪勢さです。
ただ,欠けているように感じるのが“味の多彩さ”。初代Xboxは“未知のプラットフォーム”だったため,「鉄騎」「メタルウルフカオス」「NINJA GAIDEN」といった挑戦的なタイトルが多く芽生えました。それらによって醸成されたXbox 360の“奇抜なタイトルでも受けいれられる”という土壌からは,「デッドライジング」「ロストプラネット」「アイドルマスター」「STEINS;GATE」といった,後の時代の基盤となるタイトルが実りました。このころのXboxユーザーからすれば,Xboxプラットフォームは数々のビビッドな味を楽しめるのが魅力でした。
ですがXbox Oneは,一転して「複数プラットフォームで出るビッグタイトルと,Microsoftご謹製タイトル」ばかりが目立ちました。確かにシンプルな“華やかさ”で言えば向上しています。ですが,「メゾン・ド・魔王」や「まもって騎士」など(と,チープでイカれた無数のタイトル群)の土壌となった「Xbox LIVE インディーズゲーム」が2017年に閉鎖されたことなどもあり,それ以前からのユーザーとしては「個性的で好きだったラーメン屋がチェーン展開を始めて,メニューが平凡になったし,味も大衆向けになった」という感覚が否めませんでした。
そしてXbox Series X/Sはどうなるでしょうか。Xboxブランドのリーダーであるフィル・スペンサー氏は,11月24日に公開されたThe Vergeのポッドキャスト番組で,tribalism(部族主義。要はプラットフォームごとの閉鎖的な姿勢)を批難し,「The biggest competitor we have s apathy over the products and services, games that we build」(我々にとって最大の競合相手は,製品やサービス,ゲームに対する無関心だ)と述べました。ですがXboxプラットフォームの実情は,マス向けのサービスやビッグタイトルへの特化による大衆娯楽志向へと向かっていて,ニッチな部族に対しては,むしろ無関心であるような印象です。
まあ,ニッチなニーズに応えることが商業的勝利に結びつくとも限りませんし,世界規模で考えると日本市場は,ましてシューティング市場は極めて小さいものなので,そこでの成功に執着すべきとも言えません。ただ,XboxやXbox 360で個性的なタイトルの数々をプレイした経験があると,「うまい 確かにうまいんだが」と,肉のうまささえどこか上滑りしていくような感覚が湧いてくるのが現状です。
Microsoftは2018年にObsidian EntertainmentやinXile Entertainmentなどを買収,現在はBethesda Game Studiosやid Softwareなどを擁するZenimaxの買収を進めていて,開発力増強に勤しんでいます。それがMicrosoftという帝国の領内に尖塔をそびえさせて光の差さない路地を増やすことになるのか,またはXboxプラットフォーム全体を盛り上げて,かつてのように大小のデベロッパがひしめく市場へと導くのか。個人的には,大勢で楽しめるアリーナFPSや,人々がナラティブを紡ぐオープンワールドアドベンチャーなどが居並ぶラスベガスのような市場も悪くはありませんが,ぶらりと食べ歩きのようなワンプレイを楽しめる,台湾の夜市のような市場が拓かれることを期待したいところです。
とどのつまり「ゲームゲームしたゲーム」ですよ我々。コントローラにスティックとボタン,そこに映像と音! この三本柱があれば,XboxでもPlayStationでもNintendoでも,どこでもゲーム!
それを追求していた昔のアーケードゲームって好きだな,シンプルで。とくにシューティングゲームの味って男のコだよな。逆にそれが無ければ,どれだけ他の面で優れたハードやラインナップだったとしても,「なんだかちょっぴりさびしんぼ」だな。
〜今日のQ&Aコーナー〜
Q. どうして今回は「孤独のグルメ」(原作版)をパロディしているんですか?
A. 気まぐれと悪ノリと,すてきなものい〜っぱい(毒性)で構成されているこのコーナーに,理由や動機はそもそも無いんだよなあ。
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