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[TGS 2018]「日本のゲーム配信は多様性が顕著」。拡大し続けるTwitchのキーパーソンに現状とこれからを聞く
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印刷2018/09/23 00:00

インタビュー

[TGS 2018]「日本のゲーム配信は多様性が顕著」。拡大し続けるTwitchのキーパーソンに現状とこれからを聞く

 「配信」というエンターテイメントは,配信する側にとってもそれを見る側にとっても,ごくごくありふれたものになってきている。そしてその一方で実況コンテンツの収益化手段からバーチャルなアバターを用いた実況配信まで,「配信」を囲む環境は劇的な変化をし続けている。

 そんななか,世界有数の巨大プラットフォームであるTwitchは,「配信」という文化をどう考え,どうサポートしていこうとしているのだろうか。東京ゲームショウ2018に合わせて来日した同社のMichael Aragon氏とKendra Johnson氏,Chase氏,Twitch日本法人のJon Anderson氏に話を聞いてみた。

左からKendra Johnson氏(GM, Global Content Development and Emerging Markets, Twitch),Jon Anderson氏(AD Sales Director, Twitch Japan),Michael Aragon氏(SVP, Content, Twitch),Chase氏(Public Relations, Twitch)
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日本での人気ゲーム実況は,ジャンルの多様性が顕著


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは「日本市場におけるTwitchの現状」について,簡単に概要を教えてください。

Jon Anderson氏:
 この1年で日本におけるTwitchは大きく成長しました。「大きく」と言っても具体的な数字が必要かと思いますので,弊社が重視している数値を紹介しますと,視聴者あたりの1日視聴分数,そしてクリエイター(実況者)数の2点が急激に増大しています。

4Gamer:
 具体的な数字をいただけたりしますか。

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Jon Anderson氏:
 1日に視聴される「分」数の平均は,100分を超えました。成長率で言うと前年比150%ということになります。この成長率は世界ベスト3に入りますね。

 またクリエイター数も各部門で増大しています。クリエイターの中でもすべての収益プログラムを利用できる「Partner」は前年比で180%増大し,それよりももっと手軽に参加できる「Affiliate」は200人から2000人に増加しました。AffiliateからPartnerへの昇格を目指している人も多いです。

 運営方針としては変わらず,Creator First(クリエイターファースト)が基本的な理念となります。実況者にとって最も便利で,かつ収益性のあるサービスの提供が目標ですね。
 日本オフィスに関して申し上げますと,規模的にも人員的にも拡大しておりますし,コンテンツチームやビジネス部門も拡充・創設しています。

4Gamer:
 ユーザーの特徴について伺いたいのですが,やはり男性ユーザーが多いのでしょうか?

Jon Anderson氏:
 そうですね。日本だとユーザーの70%が男性で,年齢としては16〜34歳,いわゆるM1層がユーザーの中心であり,利用時間も最長となります。

4Gamer:
 Twitchではゲーム実況が中心的なコンテンツになるかと思いますが,とくに人気のあるゲームを教えてください。

Jon Anderson氏:
 「League of Legends」と「PUBG」,“ストリートファイター”,「ハースストーン」,“モンスターハンター”がトップ5となります(※ストリートファイターとモンスターハンターはシリーズのどれを指すか明らかにされなかった)。

4Gamer:
 「レインボーシックス シージ」や「Overwatch」はベスト5から漏れるんですね。

Kendra Johnson氏:
 それらのタイトルも人気がありますよ。ベスト10には入ってきますね。

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Michael Aragon氏:
 日本市場における大きな特徴としては,MOBAの人気タイトルに偏りがあることが挙げられるように思います。日本でMOBAの人気は世界に比べると今ひとつという話は知っていますが,それでもLeague of Legendsは人気があるんですよ。ただ,「Dota 2」はほとんど見られないですね。

 あともう1つ重要な特徴として,ゲームジャンルにバリエーションが多いことが挙げられます。ベスト5を見ると,順にMOBA,バトルロイヤルFPS,格闘ゲーム,カードゲーム,アクションゲームと,ジャンルの被りがありません。
 他の地域では「シューターが人気」「MOBAが人気」といったようにジャンルの偏りが見られたりするんですが,日本における人気ジャンルのバラツキは,日本のゲーム文化の多様性を反映していると考えています。


視聴プラットフォームとしても重要な据え置き型ゲーム機


4Gamer:
 日本でもハイエンドなゲームPCを購入するユーザーは増加傾向ですが,それでもなお据え置き型ゲーム機の市場に強い文化があります。Twitchでのゲーム実況においても,その傾向は見られるでしょうか?

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Kendra Johnson氏:
 「ゲーム機で遊んでいるものを,PCを経由して実況する」ケースも多いので,こちらから明確なデータを出すのは難しいのですが,ただやはり傾向としては明らかに据え置き型ゲーム機の強さを感じますね。実際,PS4からの実況も多いですし。
 「据え置き型ゲーム機の強さ」も,実況されるゲームタイトルの多様性におそらく影響を及ぼしていると思います。

Chase氏:
 実は,世界的に見ても据え置き型ゲーム機は重要なポジションを有しています。というのも,けして少なくない数のユーザーさんがゲーム機からTwitchを視聴しているんです。

4Gamer:
 ほう。

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Chase氏:
 これはあくまで世界全体でのデータですが,ゲーム機から視聴しているユーザーの数は前年比175%となっています。またゲーム機からの実況も前年比130%と増加傾向にあります。

4Gamer:
 それはまったくもって無視できない割合ですね。

Chase氏:
 ええ。ですので,この事実を踏まえ,Twitchではゲーム機からの視聴環境も整備を続けています。具体的に言えば,ゲーム機用のTwitchアプリの改修および改善ですね。
 いずれにしても,ゲーム機は我々にとって重要なプラットフォームです。

4Gamer:
 視聴デバイスの話が出ましたが,日本での視聴デバイスはやはりモバイルが優勢でしょうか?

Michael Aragon氏:
 日本はモバイル先進国ということもあって,やはりそうなりますね。
 世界的に見てもモバイル端末から視聴するユーザーは急増しており,前年比190%となっています。

4Gamer:
 ゲーム実況以外のコンテンツではどのようなものに人気がありますか?

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Michael Aragon氏:
 雑談カテゴリは急成長しています。eスポーツ選手がゲーム実況をしたあとで雑談に移行したりすることは多いですね。
 また,海外の大会に出場した選手が,試合の後の自由時間を使って観光して,それを実況したりして,一時的な旅番組的なものが始まることもあります。
 これ以外にも料理実況など,ゲーム実況以外にもさまざまなジャンルへと「実況」は拡大している状況です。

4Gamer:
 実況では,日本市場だと「顔を出さずに実況する」ケースが多いと言われていますが,実感としてはどんな感じでしょう。

Michael Aragon氏:
 雑談でもゲーム実況でも,顔を出して実況する人が増えていますね。とくにゲーム実況では使っているキーボードやマウスなどを視聴者に見せるという実況も多くなってきています。

Kendra Johnson氏:
 やはりTwitchの場合は視聴者と実況者がコミュニケーションをするところに価値を見出しているユーザーさんが多いので,必然的に顔を出しての実況が多くなるように思えます。

Michael Aragon氏:
 それからもうひとつ重要なこととして,「顔を出すかどうか」よりも,「視聴者に何を見せたいか」がより大事にされてきているということがありますね。

4Gamer:
 と言いますと。

Michael Aragon氏:
 何かを作っているところを実況したいのであれば手元がクローズアップされますし,eスポーツの実況なら,選手がカメラを背負って,肩越しの視点で「選手が見ている風景」を画面で見せていくという試みも始まっています。。
 「顔を出すかどうかはコンテンツ次第」という流れになってきているのかなと思いますね。

Jon Anderson氏:
 顔出し問題は日本でとくに議論に登りやすい話題でしたが,実のところ,海外でも顔出しをしない有名実況者はいます。ですから,「Twitchにおいては,顔出ししないと人気が出ない」ということはありません。


配信者と視聴者を邪魔しない広告コンテンツ


4Gamer:
 Twitchにおける広告配信プログラムについて伺いたいのですが,まずはその特徴を教えてください。

Jon Anderson氏:
 放送の前後ないし中間に動画広告を挟むことができますが,だからといって,ゲーム実況の場合,ゲームがものすごく盛り上がっている真っ最中に突然動画広告が入ったりしたら,視聴者も配信者も嫌な思いをしますよね?

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 TwitchではCreator Firstのモットーに則り,そういった不愉快なことが起こらないように配慮しています。具体的に言えば,配信中に広告を入れるタイミングは,実況者が自由に決められるんです。
 なのでたとえばマッチメイキングの間であるとか,1ゲーム終わって切りが良いタイミングであるとか,あるいは実況者がちょっとお手洗いに席を外すタイミングであるとか,そういうった「ほどよいタイミング」で広告を入れることができるようになっています。

4Gamer:
 可能であれば,「こういう広告のスタイルが効果的に機能している」という例を聞かせていただけませんか。

Jon Anderson氏:
 そうですね,やはりインフルエンサーと広告の組み合わせで高い効果が得られることが多いですね。
 一例ですが,いわゆる「掴むまでが難しい」系のゲームの場合は,「初心者向けのガイドを実況し,その実況が終わったところで当該のゲームのCMを入れる」といった組み合わせは大変効果的に機能します。

4Gamer:
 ああ,確かに。それは想像できます。

Jon Anderson氏:
 スポンサー企業としても,そういった「ゲーム実況における特定のタイミング」から自社サイトや自社のSNSアカウントへリンクで引っ張れますから,インフルエンサーによる序盤チュートリアル+自社CMを1つのコンテンツとしてユーザーに提供していくことが可能です。
 また,カスタムCMも進行しています。

4Gamer:
 カスタムCM,ですか。

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Jon Anderson氏:
 インフルエンサーがCMに直接出演するパターンですね。eスポーツの選手がCM動画に登場する,といったパターンを想像していただくと分かりやすいでしょう。そういったCMも非常に高い効果があります。
 こういった広告に配信者やeスポーツ選手が出演することは,彼ら彼女らが収入を得る機会ともなるでしょう。

4Gamer:
 広告について言えば,動画広告の世界,とくにゲームジャンルにおいては最近,「プレイアブル・アド」の重要性に注目が集まっています。
 Twitchの動画広告でプレイアブル・アドを配信することは可能でしょうか?

Jon Anderson氏:
 現状では正式なサポートはしていませんが,技術的には可能です。
 また配信動画とユーザーのインタラクションという面からお話しするなら,たとえばハースストーンの実況で,視聴者がカードにマウスオーバーすると,そのカードの詳細なデータが表示されるといったことは可能になっています。
 プレイアブル・アドにも大いに注目していきたいですね。


Twitchの教育利用とVR


4Gamer:
 個人的に注目しているものとして,リカレント教育やリモートでの教育など,動画配信コンテンツと教育という分野があります。
 Twitchではゲーム実況以外の配信も盛り上がっていますが,「教育」というジャンルに対して,Twitchとして何か試みている内容があったりしますか。

Michael Aragon氏:
 絵を描いたり,料理を作ったり,あるいはコーディングしたりといった,「Creator Content」(クリエイターコンテンツ)と呼ばれるコンテンツはすでに多数存在します。
 これらのコンテンツは「どうすればもっと上手く絵を描けるのか」「おいしい料理を作るにはどうしたらいいか」といったことを学べるコンテンツですから,教育コンテンツと呼んでいいのではないでしょうか。

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Chase氏:
 ご存じのとおり,eスポーツはいまや大学における研究対象になっていますし,その流れはアジアにも波及しています。
 そういったコースではeスポーツの歴史やビジネスモデルを学ぶだけでなく,「実際にTwitchで配信し,そこから収益を得てみる」といった講義(=実習)が行われていますが,これらにはTwitchが協力していたりしますね。

 また2012年には,Twitchがeスポーツで頑張る学生に奨学金を出しています。この奨学金の給付にあたっては,学力だけでなく,eスポーツにおける成績も考慮していました。

Michael Aragon氏:
 繰り返しますが,TwitchのモットーはCreator Firstです。ですから,教育分野でTwitchを利用する場合においても,「やってみたい先生方の,『やってみたい』が最優先される」と考えています。

 Twitchは「誰でも,いつでも,無料で利用を開始できるサービス」ですから,こちらで何かハードルを設けたりすることは決してありません。
 塾や予備校の先生方,あるいはリカレント教育に携わっている方が,Twitchを利用したいということがあれば,どんどん活用してほしいと考えています。

4Gamer:
 最後の質問になりますが,TwitchはVRコンテンツの実況であったり,あるいは視聴環境そのものをVR化していったり,「ストリームで提供されてるVRコンテンツを,視聴者がVRヘッドマウントディスプレイから見る」といった,VR分野への進出はどれくらい真剣に検討していますか。

Michael Aragon氏:
 率直に申し上げますと,我々のビジネスから見た場合,VR対応ヘッドマウントディスプレイの普及率はまだまだ低いと言わざるを得ません。
 我々としても,「VRコンテンツにとってTwitchがどのような仕様であるべきか」をVR関係のクリエイターから直接聞きたいと思っているのですが,現状では「こうしてほしい」という意見を聞くことがほとんどないんです。
 これは彼らが消極的だというわけではなく,VR対応ヘッドマウントディスプレイの普及率から見て当然かと思います。

4Gamer:
 日本ですと,VR空間で自分のスマートフォンを見て,その画面からTwitchを視聴したい……といった未来的な欲求や,VRChatを実況したいといった直近の要望まで,さまざまにあるかと思うのですが,Twitchに届く声としてはやはりまだ少数ということでしょうか。

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Kendra Johnson氏:
 そうですね,やはり数としては少ないです。
 それからもうひとつ,ここにはTwitchの特性も関与しているかと思います。Twitchユーザーは,ごく普通に2時間や3時間といった長時間にわたって配信を見ています。なかには6時間,7時間というユーザーもいるわけです。
 こういう長時間視聴に対して,VRは端的に“重すぎる”のかもしれません。

4Gamer:
 確かに……。

Chase氏:
 技術的側面からお話しすると,「VRコンテンツをストリームして,それをユーザーが自分のヘッドマウントディスプレイから同時に体験する」というのは,一定以上の解像度を持った360度映像を配信し続けるということですから,データ量的に負荷が高くなりすぎるという問題もありますね。

Jon Anderson氏:
 もっとも,個人的にはVRは面白いと思っていますし,「Dota 2の対戦をVRヘッドマウントディスプレイで見る」というのをしたことがありますが,得がたい体験でした。

Michael Aragon氏:
 繰り返しになりますが,我々としてもVRコンテンツのクリエイターや技術者からの意見をもっと聞きたいと思っています。VRコンテンツを配信するにあたってどんな機能があることが望ましいのか,コミュニティの皆さんから意見を頂戴できれば幸いです。

4Gamer:
 本日はどうもありがとうございました。

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Twitch公式Webサイト

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