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ゴミ拾いばかりしてたら「夢の島」が出来ちゃった!――伝説のクリエイター集団Bio_100%の森 栄樹氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第10回
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印刷2013/04/23 09:00

インタビュー

ゴミ拾いばかりしてたら「夢の島」が出来ちゃった!――伝説のクリエイター集団Bio_100%の森 栄樹氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第10回

ウチの社員が認められた!


川上氏:
 しかし,さっき森さんがちょこっと言ってたけどさ。改めて昔を思い返すと,ドワンゴの初期の頃って,割とツライことも多かったんだよね。なんか「昔のドワンゴは良かった」みたいな感じで,僕の記憶が美化されてたけど。

森氏:
 いろいろありましたよねぇ。騙されたりとか。

川上氏:
 うん。さすがに公の場では語りづらい話だけど,本当に酷い扱いを受けてた気がする(笑)。

森氏:
 「後でいい仕事を回すから,今回はタダでやってくれ」みたいな話も多かったよね。結局,その“いい仕事”が回ってきた試しはなかったけど。いやいや,ゲーム業界は本当に酷いところやで!

川上氏:
 そういえば,ハドソンの誰だっけ。あの人が僕らの目の前で清水くんをヘッドハントしようとしたことがあったじゃん。あの時は,本当にドワンゴがゲーム業界でのヒエラルキーの底辺にいるんだって感じたよ。

森氏:
 中本さん()のことかな?

※中本伸一(なかもとしんいち):元ハドソンの代表取締役副社長。「ボンバーマン」などの産みの親として知られるプログラマーで,数多くのソフト制作を手がけた。

川上氏:
 ああ,中本さんだ。僕らの目の前で「こんなくだらない会社を辞めて,ウチに来なさいよ」みたいなこと言ってたんだよね。割と本気で(笑)。

森氏:
 いやでも,あれは僕,嬉しかったけどね。ウチの社員があの中本さんに認められたんだよ。

川上氏:
 そういえば,森さんはむしろ,清水くんをハドソンに行かせようとけしかけてなかった?

森氏:
 うん,「凄いじゃん清水,ハドソン行けよ!」って煽ってた。そして,ハドソンの仕事をドワンゴに回してくれ!みたいな(笑)。

一同:
 (爆笑)。

森氏:
 さっきの話の後でさらに中本さんから,もの凄い熱い内容のメールが清水に送られたりしてるわけですよ。清水に相談されたとき,見せてもらってるんだけど,それがまた,とてもいい内容で。だから余計に「行けば?」とは思ってた。

川上氏:
 あの時は清水くんもその気になってたよね。

森氏:
 ちょっと行こうと考えてたと思う(笑)。

川上氏:
 清水くんがドワンゴに入るときって,森さんから
「奴は天才だ。ドワンゴに来ても働く必要はない。遊んでいればいい。それだけでドワンゴにとってはプラスになる。どうせドワンゴには長くいないし,何年かしたら辞めるだろう。そして,その時がきたらドワンゴの悪口を言って辞めていく。それはわかってるんだけど,それでも採ろう」
 って言われて採ったんだけど,もうなんというか,完全に予言通りだったよね。

森氏:
 いやもう,そうなるとしか思ってなかったし。

川上氏:
 最後は森さんと喧嘩してドワンゴを辞めていったわけだけど……。僕は,最後に彼が森さんを怒らせたのだけは許せないんだよね

森氏:
 別に怒ってはいないですよ。

川上氏:
 ええ? 結構怒ってたじゃん。

森氏:
 「こういうアングルで終わっておこうかな」って思ってただけです。

4Gamer:
 しかし森さんは,そこまで分かったうえで,なんで清水さんを採りたいと思ったんですか?

森氏:
 面白かった。とにかく面白かったんですよ。そんだけ(笑)。

川上氏:
 彼は,最初から面白かったよねぇ。変だったけど。

森氏:
 正直,彼がドワンゴに入ることで,いろいろな問題を起こすことも分かっていたんです。だけど,あの時は僕も川上さんも,「こんな会社,爆発しろ!」ってノリでやっていましたから。

川上氏:
 あの時は,あんな状態で会社が成立していること自体が面白かったからね。

森氏:
 そうですねぇ……って,なんだか清水の話になってしまった。止めよう。奴が喜んじゃうから,この話はもう止めよう。

川上氏:
 そうだね(笑)。


ドワンゴがまさか上場できるなんて


4Gamer:
 しかし,昔のドワンゴの話って,聞けば聞くほど「めちゃくちゃな会社だな」って思うんですけど,森さんは,なんで川上さんと一緒に会社をやろう,この人についていこうと思ったんですか?

川上氏:
 いや,ついて行くも何も,森さんの方が上だったからね。僕は社長をやらされていただけで。

森氏:
 そんなことないでしょ。

川上氏:
 でもドワンゴの実態としては,森さんが連れてきたエンジニアが主体だったじゃん。

森氏:
 いや,Bio_100%のメンツで会社を興すって話と,川上さんが会社を興すってのは,もともと別軸の話だったじゃないですか。最初は二つの会社が同居している状態で。

川上氏:
 あれ,そうだっけ?

森氏:
 そうですよ。それで,もともと別々の会社で,僕たちは川上さんの会社に間借りさせてもらってる状態だったんだけど,あの時って,川上さんのお父さんに会社の経理周りをやってもらっていて。忙しいなかで川上さんのお父さんが,2つの会社の経理をやってくれてるのを見ていて,それがとても大変そうだったから,「申し訳ないから一つにまとめよう」って。そういう話だったじゃないですか。

川上氏:
 そんな話だったっけ。

森氏:
 それ以外に何があるのよ(笑)。

川上氏:
 いやでも,会社を一つにした時に,森さんが社長をやってくれると思ってたんだけど,まさかの拒否で。あの時は森さんを恨んだよね。

森氏:
 やるわけがない!

川上氏:
 でも,ほどなくして小林さん()っていう都合のいい人が来てくれて,本当に助かったけどね。

※小林 宏(こばやしひろし):日本の実業家。スクウェア取締役を経てドワンゴへ。10年以上もドワンゴの代表取締役社長を務めた。2012年12月19日付で,同社の取締役相談役に就任。

森氏:
 助かった。ちょうど都合のいい人がいてよかったよね。

4Gamer:
 都合のいい人って……(笑)。

川上氏:
 当時,小林さんをどうやって騙そうかって,二人で相談してたんですよ。懐かしいなぁ。

森氏:
 え? 別に騙したりはしてないでしょ。

川上氏:
 でも,あの時ってさ。最初に小林さんに「社長をやってくれ」って言ったら絶対に引いちゃうから,まず顧問って形で引き込もうって話をしてたじゃないですか。で,ジャフコやコナミから出資の話が来てるんですけどって話を何気なく相談しようと。そうしたら小林さんが興味を持つんじゃないか,小林さんに「いっちょ俺がやってやるか」って思ってもらえるように仕向けようって。そんなシナリオを二人で描いていましたよね。

森氏:
 そうだね。でもそれは,別に策にハメたわけでもないし,普通の話じゃない?

川上氏:
 いやでも,小林さんは株式公開する前提でドワンゴの社長を引き受けてくれたわけだけど,あの時,ドワンゴが上場できるとか,森さん夢にも思ってなかったでしょ?

森氏:
 ……確かに思ってなかった(苦笑)。

川上氏:
 でしょでしょ。やっぱり,騙してるじゃん!

森氏:
 うーん(笑)。まぁでも,小林さんは本当にドワンゴを上場させちゃったんだから凄いですよね。

川上氏:
 あれにはびっくりしたよね。今でも信じられないよ。

森氏:
 うん,本当にびっくり。


ゴミ拾いばかりしてたら「夢の島」ができちゃった


森氏:
 上場もそうなんだけど,あのドワンゴがまさか,今みたいな状況になるとは本当に信じられないよ。

川上氏:
 まぁでも,着メロ事業もニコニコ動画も,ドワンゴ本体の流れとは全然別のところから生まれたものですからね。僕はこれが“ドワンゴを経営した結果”なのかっていうと,ちょっと疑問なんだよねぇ。

4Gamer:
 どういうことですか?

川上氏:
 いや,着メロ事業は太田さん(ドワンゴ副社長)や横澤くん(ドワンゴ取締役)たちが成功させたものだし,ニコニコ動画にしたって,こいちゃんや中野くんとかが頑張ったわけで。僕は経営者として何かを生み出したわけじゃないから。そもそもドワンゴは,ずっと僕の意見が通るような会社じゃなかったんだからさ。

4Gamer:
 え,そうなんですか?

川上氏:
 そうですよ。以前にも少しお話したかもしれませんけど,そもそも僕は,一時期,ちゃんと会社に行ってなかったから,自業自得なんだけど(笑)。

森氏:
 本流のプロジェクトじゃなかったのかもしれないけど,その“新しい芽”をちゃんと育てられたっていうのが大事なんじゃないの?

川上氏:
 うーん。結局,ドワンゴって本業では常に失敗し続けてきた会社なんだよね。いろんな業界で負けて負けて,だから新しいことをやり続けてきた。それがたまたまうまくいった結果としての今があるだけで。

森氏:
 まぁ元々ドワンゴってメジャーじゃない裏側の分野で,ずっとゴミ拾いみたいなことばかりやってきた会社だと思うんですよ。そうしたらさ。いつのまにか“出来ちゃった”

4Gamer:
 出来ちゃった?

森氏:
 そう,「夢の島」が(笑)。

一同:
 (爆笑)。

川上氏:
 しかも,誰も予想しない場所にね。なんだこれ,みたいな(笑)。

4Gamer:
 なるほどなぁ……。

森氏:
 僕はね,ドワンゴの今の成功って,きっとそういうことだと思うんですよ。



僕に欠陥があるから,会社には居場所ができる


4Gamer:
 しかし,今のドワンゴには,本当にいろいろな人材が集まっていますよね。

森氏:
 ほんとそうだよね。素直に凄いなって思う。

川上氏:
 うんまぁ,世間で思われてるほどの大軍団かって言われると,個人的には「そうでもない」って気がするけど。でも,あのセガラリー2の頃に比べたら,もう天国よ(笑)。

森氏:
 ドワンゴは昔から,人材には恵まれてるよね。

川上氏:
 恵まれてますねぇ。

4Gamer:
 でも,それってなんでなんでしょう。単なる運……というわけでもなさそうに思えるんですけど。

森氏:
 それはやっぱり,川上さんの人柄というか,キャラクターのせいだと思いますよ。

川上氏:
 そこは一度,冷静に分析したことがあるんですよ。

4Gamer:
 お,それはぜひお聞きしてみたいですね。

川上氏:
 いや,さっきの話とちょっと被るんですけど,やっぱり僕って欠陥がある人間じゃないですか。もっと正確に言うと,「外部からもあからさまに欠陥があるように見える」人間じゃないですか。

森氏:
 まぁそうかもね(苦笑)。

川上氏:
 でも,そのおかげで,逆にいろいろな人の“居場所”ができてるんだと思うんですよね。欠陥があると思ってくれるから,いろんな人が助けに来てくれるんじゃないかなって感じるんですよ。世の中には,完全無欠の凄い人っていうのも実は結構いると思うんだけど,そういう人がワンマンでやっていたら,どんなに優秀な人でも,会社に居場所がなくなっちゃいますよね。

4Gamer:
 なるほど。でも一方で,どこかに“凄み”というか,この人についていけば大丈夫だって思える部分も必要じゃないですか?

川上氏:
 そういうのは僕にはない。まったくない!

森氏:
 いやいや,そういう部分も昔からちゃんとあったと思うけどね。技術的な知識もしっかりしてたし,ビジネス面においても,川上さんだから仕事を取ってこられてたところは実際あったと思う。そこは,みんなが認めてたと思うよ。

川上氏:
 うーん,そうだったの? 当時は,あんまりそんな感覚はなかったけどなぁ。

森氏:
 しかし……今日,いろんな話をしていて改めて思ったけど,最近の川上さんは本当に楽しそうですよね。

川上氏:
 え,何が?

森氏:
 いや,仕事や人生が。

川上氏:
 うんまぁ,最近はとても楽しいですよ。ジブリも楽しいしね。

森氏:
 なんか,昔と比べてずいぶんと前向きになったよね。

4Gamer:
 そんなに変わったんですか?

森氏:
 昔は,もっと……ね(苦笑)。実際,僕がドワンゴを辞めてからは,10年以上会ってなかったし,お互い用もないと思っていたんですよ。だけど,去年くらいに川上さんの方から連絡をくれて,それが今回の話につながっているんです。それだけでも,川上さんの内面に何か変化があったんだなって思いますよね。僕は,あくまで外から川上さんを見ているだけなんですけど,今日の印象にしても「ずいぶん変わったな」って感じますし。

4Gamer:
 うーん,なるほど。

森氏:
 世の中もね,川上さんにある種の「役割」を求めているというか。そういう空気になってきているじゃないですか。そして,それに対して逃げずにちゃんとやろうって,川上さん自身も向き合っている。当時の川上さんからは,この前向きさは絶対に考えられないですよ。

川上氏:
 いや,僕が人前で話すようになったのは,別にそんなにいい話ってわけでもなくて,単にいきがかりなんですよね。なんか,僕がメディアに露出するようになったのは「ドワンゴの戦略の一環だ」みたいに言う人も多いんだけど。全然そんなことはないんです。

4Gamer:
 どういうことですか?

川上氏:
 いや,もともとニコニコ動画のプロモーションって,夏野さんとひろゆきの二人が担当してたじゃないですか。

4Gamer:
 そうでしたね。

川上氏:
 だから当初は,イベントとかで彼らにいろいろな発表をしてもらってたわけなんですけど……。この二人は,発表の場でとにかくニコニコ動画をディスるんだよね(苦笑)。いくら「それはやめて」と伝えても,もうまったく言うこと聞いてくれないわけ。

4Gamer:
 な,なるほど。

川上氏:
 だから,なんとかディスるのを止める……ってことを考えたら,もう僕が出るしかなかったという。それだけなんだよね。とくにライブイベントは,その場で止めないと,彼らはどんどん言っちゃいけないことしゃべりまくるから。僕が抑止力として現場に行くしかないって流れになってしまったんです。

森氏:
 でも,昔の川上さんだったら,それも引き受けてないんじゃないですか。やっぱり変わったと思いますけどね。

川上氏:
 そこそこ前向きな人間になったのは確かですね。でも,そういう森さんだって割と楽しそうにしてますよね。

森氏:
 僕は,もう表に出ない人だから(笑)。自由に楽しくやってますよ。

川上氏:
 っていうか,森さんは,ドワンゴにいた頃とは本当に別人ですよねぇ。痩せすぎ。

森氏:
 えっ。今さらそこですか?

川上氏:
 僕もダイエットしないとなぁ。

森氏:
 じゃあ,僕の通ってるジムを紹介しようか? 僕の写真が「成功事例」として掲げられているジムだけど(笑)。

川上氏:
 ジムに写真が載ってるの? ウケる。それ面白いから,4Gamerさんにも掲載しましょうよ。「劇的ビフォーアフター」みたいな感じで(笑)。

4Gamer森氏:
 えっ。

川上氏:
 というわけで,今日はこんなところで。いやぁ,今回もいろんな話ができたよねぇ。

(つづく)


川上量生(かわかみのぶお):
ドワンゴ代表取締役会長。1968年,愛媛県生まれ。京都大学工学部卒業後,ソフトウエア専門の商社勤務を経て,1997年に株式会社ドワンゴを設立。携帯電話向けサービス「いろメロミックス」などをヒットさせ,同社を東証一部上場企業へと成長させた。近年では,ニコニコ動画を成功に導くなど,独特の考え方をする実業家として知られる。2011年1月に突如としてスタジオジブリに入社し,プロデューサー見習いとして,鈴木敏夫氏に師事している。

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